平成27年度 電気事故 の 概要 について に 中部近畿産業保安監督部 電力安全課 平成 27 年度に中部近畿産業保安監督部管内(近畿支部及び北陸産業保安監督署を除く。以 下「管内」とする。 )で発生した電気事故件数は 52 件で、前年度より 49 件の減少となりました。 (絶縁油漏洩に係る事故を除く) (第 1 表参照)これは、雷、風雨等による自然災害による波及 事故が 76 件から 28 件に大幅に減少したことが主な要因となっています。 感電死傷事故 第1表 平成27年度に管内で発生した電気事故件数総括表 事業用 計 感電死傷事故は電気事業用で 自家用 作業者 公衆 計 平成27年度計 作業者 公衆 計 (単位:件) 平成 26 年度計 作業者 公衆 計 作業者 公衆 感電死傷事故 3 2 1 10 4 6 13 6 7 3 1 2 電気工作物に係る感電以外の死傷事故 0 0 0 4 3 1 4 3 1 4 3 1 (発電所で発生した事故 : 外数) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 電気火災事故 0 0 0 1 又は社会的に影響を及ぼした事故 0 0 0 0 発生しました。 (発電所で発生した事故 : 外数) 1 0 1 0 主要電気工作物の損壊事故 0 1 1 2 被災者の内訳は、電気工事に (発電所で発生した事故 : 外数) 3 2 5 14 供給支障事故 0 0 0 1 従事する者等、いわゆる電気に 波及事故 0 28 28 76 3 件( 前 年 度 は 2 件 ) 、自家用 で 10 件( 同 1 件 ) の 合 計 13 件 関係する「作業者」の事故が 6 件、 「公衆」 (電気作業者でない 人)の事故が 7 件でした。 このうち、感電死亡事故(死 者 数 2 名 ) は、600V 以 下 の 低 公共の財産に被害を与えた事故 11 号事故(異常放流) 0 0 0 0 法 106 条に基づく報告徴収 0 0 0 0 (発電所で発生した事故 : 外数) 0 0 0 0 絶縁油漏洩に係る事故 10 0 10 14 合 計 17 2 1 45 7 7 62 9 8 115 4 3 7 2 1 45 7 7 52 9 8 101 4 3 絶縁油漏洩に係る事故を除いた件数 ※表内の「作業者」は作業者による事故で内数。 「公衆」は公衆による事故で内数。 ※表内の「発電所で発生した事故」は外数。 ※表内の「絶縁油漏洩に係る事故」は平成24 年 9 月19 日改正により PCB 含有率が0.5ppm 以下の ものは報告対象外となった。 圧で 1 件、600V 超∼ 7.0kV 以下 の高圧で 1 件発生しています。 人身災害を防止するには以下の対策を立て、確 平成 27 年度に発生した「作業者」の死亡事故は、 実に実行していただくことをお願いします。 電気管理技術者が月次点検でキュービクル内の保 < 作業者に関するもの > 護用アクリル板を外し、内部機器の銘板確認を ①電気工事を行う場合は、活線作業、充電部近 しようとして上半身をキュービクル内に入れて、 接作業は行わないこと。やむを得ない場合は、 誤って高圧電線接続端子(6.6kV)に触れて感電 工事開始前に停電部と充電部の区域を図面及 したものと推定されます。 び現地にて作業者全員に周知徹底すること。特 「公衆」に関係する死亡事故については、事業 に充電部近接作業においては、充電部の防護 場内の浴室の清掃作業に従事中、浴槽の水を入れ を確実に行うとともに注意喚起の表示を行う 替えるために、ケーブル芯線が露出した可搬式水 こと。 中ポンプを水中に設置したところ、被災者が水中 ②作業手順書の作成の際は単線結線図との照合を で感電(100V)したものです。 確実に行い、作業範囲内の電路に充電部が残ら 例年発生している「作業者」の事故の殆どが「作 ないようにすること。やむを得ず充電部が残る 業準備不良」又は「作業方法不良」が原因であり、 場合は①と同様に周知及び注意喚起等を行うこ 感電に対する保安教育や KY 活動を行うことで防 と。 げた事故、手順を守っていれば防げたと思われる ③作業前に TBM − KY(ツールボックスミーティ 事故です。事故は個人だけではなく、 「組織とし ング−危険予知)を確実に実施し、作業範囲や て防ぐ」という意識をもっていただくことが大切 作業手順等(手順の遵守、保護具の適切な使用 です。 等安全作業の徹底等)を再度確認するとともに、 6 電気と保安 2016.9・10 監督者と作業者双方の意志疎通を図ること。作 また、日頃の点検においては、太陽光モジュー 業途中で作業内容に変更があった場合には再度 ルや架台などの固定状況、配線、接続の状況等も TBM − KY を確実に実施すること。 確認いただき、事故防止に努めていただくようお ④機器の点検修理を行う場合は、必ず電源を切り、 開閉器類には、操作禁止等の表示札の取付けを 行うほか、作業範囲内の電路は、必ず検電を行っ てから作業に着手すること。 ⑤監督者は、工事工程ごとに状況を確認し、作業 願いします。 感電以外の死傷事故 平成 27 年度の感電以外の死傷事故(主にアー クによる火傷等の負傷事故)は自家用で 4 件(前 の安全を的確に遂行するよう努めること。又、 年度は 4 件)でした。 危険場所での作業では、決められた手順以外の 防止対策は、前述の感電死傷事故の防止対策と 作業を行わないよう、常時作業を監視するなど、 同様です。事故は個人だけではなく、 「組織とし 適切な指示をできるようにしていること。 て防ぐ」という意識をもっていただくことが大切 < 公衆に関するもの(一般作業者も含む)> です。そして、監督者や設置者による工事の管理、 ①作業者以外の者は、電気工作物にみだりに触れ 作業者による作業手順の確実な実施が、人身事故 ないようにし、充電部に接近して作業を行う場 という、起こしてはならない事故を防ぐ意味で、 合は、電気保安担当者への連絡を徹底すること、 何よりも肝要といえます。 電気室やキュービクル、分電盤は施錠し、鍵の 管理を徹底するとともに、むやみに貸し出さな いこと。 (保安教育等において周知されている こと)。 ②電気保安担当者は、電気設備と直接関係しない 公共の財産に被害を与えた又は 社会的に影響を及ぼした事故 平成27年度は電気事業用で 1 件(前年度は 0 件) 発生しました。 建物工事(解体工事)等であっても、工事場所 なお、主要電気工作物の損壊事故の対象になら 近傍に分電盤や、壁・天井の裏側の配線等の有 ない設備関係事故や、いわゆるヒューマンエラー 無を確認し、現場において事前に工事担当者と による事故であっても、社会的影響の大きかった 充電部の有無の確認を行うこと。 事故については、保守管理面における対策が必要 (平素の事業場内における教育や工事管理、連 絡に係る体制作りを行っておくこと。) ③電気設備の設置者は、電気主任技術者等の保安 であることから、報告対象としています。 電気火災 に係る意見具申等を尊重し、電気設備を常に最 平成 27 年度は電気火災の対象となる電気事故 良の状態に保つよう適切な措置を行うこと。 報告はありませんでした。(前年度は電気事業用 以上の対策を確実に行い、感電死傷事故の撲滅 に努めていただくようお願いします。 で 0 件、自家用で 1 件) なお、電気事故報告の対象となる報告対象は半 なお、昨今、太陽光発電設備が多く普及し、設 焼以上「延べ床面積の 20%以上を焼失した場合」 置されてきていますが、太陽光発電設備の特徴と に限定されているだけで、報告対象にならない小 して、昼間など太陽光モジュールに光が当たり続 火程度の電気火災は毎年数件発生しており、決し ける限り発電を行い、止めることが出来ません。 て電気火災事故自体が少ない訳ではありません。 例えば、台風や竜巻、突風等により太陽光モジュー この点に十分ご留意の上、分電盤内の点検の他、 ルが飛ばされた場合などであっても、飛ばされた コンセントやプラグ、古くなったコード等も定期 場所で発電を行っており、感電の危険性がありま 的に点検を行っていただくようお願いします。 す。こうした状況となった場合、直ちに周辺の立 入を制限していただくとともに、撤去作業等にお 主要電気工作物の損壊事故 いては、感電に対する防護等を十分に検討したう 主要電気工作物の損壊事故は、「電気事業用」 えで実施いただくようお願いします。 において、水力発電所で 1 件(前年度は 4 件)、 電気と保安 2016.9・10 7 火力発電所で 1 件(同 1 件) 、 風力発電所で 1 件(同 置を早期に講ずることが求められます。 0 件)の合計 3 件(同 6 件)発生しました。 具体的には次のような注意が必要です。 また「自家用」では、需要設備で 1 件(同 1 件)、 ①区分開閉器近傍に避雷器を設置する【雷害対策】 火力発電所で 2 件(同 7 件)の合計 3 件(同 10 件) 雷を原因とするものが年々増加傾向にありまし 発生しました。 たが、平成 27 年度は前年度の 49 件から 7 件と大 波及事故 幅に減少しました。避雷器によって 100%雷サー ジによる設備の影響を防げるものではありません (1) 波及事故の概要 が、 波及事故という周辺地域への影響のみならず、 波及事故は、自家用で 28 件(前年度は 76 件) 自らの事業場内の停電リスク低減にもつながりま 発生しました。 す。例え 500kW 未満であっても、事故を起こし 原因は、雷によるものが 7 件(同 49 件) 、鳥獣 てしまう前に、避雷器の設置を積極的にご検討く 接触によるものが 2 件(同 4 件)、自然劣化によ ださい。なお、避雷器内蔵タイプの SOG もあり るものが 4 件(同 6 件)、保守不完全によるもの ますので、更新時に採用することも一つの方法で が 9 件(同 5 件)、作業者の故意・過失によるも す。 (平成 27 年度の雷による波及事故 7 件中 6 件 のが 1 件(同 3 件)、公衆の故意・過失によるも は避雷器なし)。 のが 2 件(同 2 件)などとなっています。 ②充電部が非露出型のものを設置する【他物接触 雷や風雨・氷雪以外の原因としては、自然劣化、 対策】 保守不完全によるものが主な要因となっていま 平成 27 年度における他物接触(鳥獣接触、樹 す。自然劣化による事故は、計画的な設備更新 木接触等)は、AOG で 2 件発生した他、電気室 を行うことで防ぐことができた事例が多くなっ 内にネズミが侵入・接触した波及事故が 1 件発生 ています。加えて、保守不完全による事故につ しています。 いては、日頃の設備点検と、その結果を踏まえ また、月次点検等において強風による飛来物や た計画的な設備更新等により防ぐことができる 樹木接触の可能性を考えて受電設備付近の樹木接 ものですが、残念ながら毎年のように一定数発 近状況を確認し、必要に応じ伐採・清掃を行って 生しているのが実態です。また作業者による過 ください。また、繁殖期には鳥の営巣状況を日々 失では、年次点検時に誤った手順により SOG 内 確認するとともに、電柱等に営巣させないような 蔵の VT が焼損したが、十分な原因究明がされ 工夫も必要です。 ないまま SOG を投入したため、SOG 内部地絡に ③絶縁劣化の兆候をつかむ【自然劣化】 より波及事故となったものがあります。さらに、 自然劣化による 4 件の事故のうち 1 件は、SOG 公衆による過失では、電力用コンデンサの絶縁 等構内引込み第 1 柱上の開閉器で発生しました。 不良により構内第 1 柱上の SOG が動作したもの SOG の自然劣化の判断としては絶縁抵抗測定の の、建物管理担当者が電気保安法人に連絡する 他、引きひもによる操作確認(機構部がさびつい ことなく原因調査を行い、SOG の投入操作を繰 ていると異常に重い)や GR 連動試験などによる り返したため、波及事故となったものが含まれ 確認手段があります。 ています。 使用環境にもよりますが、一般的に使用期間が 管内の波及事故発生件数は、近年増加傾向にあ 長くなった機器は劣化により事故を起こす危険性 りますが、雷や風雨・氷雪の自然現象を除いた件 が高まるため、設備更新を計画的に行っていくこ 数は、ほぼ横ばいとなっています。 とが大切です。 (2) 波及事故の防止対策 なお、近年設置者の都合により年次点検を延 遮断器や保護装置は、事故の拡大を防止するた 伸する場合がありますが、当部では年次点検(停 めの重要な電気設備です。年次点検等で動作確認 電点検)を毎年実施することを推奨しています。 を行うなど電気工作物の維持管理を的確に行い、 電気設備の信頼性が高く、一定の条件を満たす場 機能の低下している機器は修理や更新を含めた措 合に年次点検の延伸を認めていますが、更新推奨 8 電気と保安 2016.9・10 時期を超えてまで年次点検を延伸することは上 主任技術者等に入るような体制作りが必要であ 記のような事故が発生する恐れがありますので、 り、他の部門や担当者とのコミュニケーションを 更新推奨時期を超えたものについては、毎年の年 日頃から密にすることが大事です。 次点検実施や、計画的な設備の更新をお願いしま また、キュービクルや電気室、分電盤などは施 す。 錠するとともに、電気の知識の乏しい者が誤って ④保護継電器の動作状況を確認する【機器の動作 近づかないよう、鍵の管理を徹底してください。 確認】 ○作業者(監督者)の方へ 保護継電器の保護範囲内で発生した事故につい 平成 27 年度には、作業者の過失による感電死 ては、本来区分開閉器等が作動して波及事故とは 亡事故が発生しています。 ならないはずですが、波及事故となった事例が平 誰もが事故を起こしたくて起こす訳ではありま 成 27 年度は 11 件(前年度は 16 件)ありました。 せん。普段は幾つものチェックで事故を防いでい 保護継電器の保護範囲内で発生した事故には、 たはずが、ちょっとした気の緩み、確認ミス、連 例年同様、操作用電源の喪失や開閉器の操作機構 絡ミスがそのチェックをすり抜けて事故に繋がっ の不良を原因とする事故が散見されました。 ています。 また、停電したときには、速やかに電気主任技 作業者、監督者方には、電気工事、電気保守に 術者等に連絡をとり、指示を仰いだうえで作業を 携わるプロフェッショナルとして、事故を起こさ 行うようにしてください。その上で、復旧を急ぐ ないという意識に基づいた正確且つ安全な作業が あまり保護継電器の誤作動と決めつけることのな 求められます。 いよう、作動要因を確認したうえで故障原因を除 おわりに 去し、保護継電装置の操作電源の有無を確認した うえで、正しい手順により設備を復旧させること 自己責任(自主保安)において、電気主任技術 が肝要です。 者は保守、維持は勿論のこと、設備の点検、更新 事故を防ぐために の計画や、新しい設備の導入時には膨大な情報を 集めて工事から運用まで事故やトラブルを防ぐ体 ○設置者責任について 制作りを考えて行かなければなりません。電気主 昨今、オフィスにおいても 24 時間稼働する設 任技術者の担う責任は非常に大きく、決して他人 備が多い中、定期点検(年次点検等)に十分な時 任せにはしておけません。 間をかけられることが少なくなっています。また、 しかし、あらゆる電気事故を防ぐには電気主任 停電作業自体は実施しても、停電作業が深夜また 技術者一人の力では限界があります。安全文化を は早朝に、しかも短時間に行う等、作業環境の悪 構築し、組織全体で事故を防いで行かなければな 化が懸念される状態が散見されます。 りません。そのためには、経営層から現場までの 波及事故や電気火災等の電気事故は、一度発生 縦の関係、各部門、担当を跨がる横の関係が大事 すると、周辺地域に多大なる損失とご迷惑をお掛 です。全ての者が関わり合い、コミュニケーショ けすることになりかねません。特に保守不完全は、 ンを取り合う中で、念には念を入れて確認し、お 日頃の設備点検と、その結果を踏まえた計画的な 互いに目を掛け合い、一言注意を呼び掛け合って 設備更新などにより防ぐことができるものが多く いくことで、安全文化は構築されていきます。 あります。防ぐことができる事故を低減する努力 全ての皆様のご理解とご協力をお願いいたしま をすることは、電気の使用者(設置者)の責務で す。 あり、地域の信頼につながるものであると考えま す。 ○電気主任技術者(電気管理技術者)の役割 事故の多くは、電気主任技術者等の承知しない 状況で発生しています。工事・作業の情報が電気 なお、平成 27 年度の電気事故の概要につきまし ては、下記のホームページに詳細を公開しています。 (電気保安ページ http://www.safety-chubu.meti. go.jp/denryoku/denryoku-index.htm:電気事故) 電気と保安 2016.9・10 9
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