2016年中国民営企業上位500社ランキング~量より質の向上が期待される

BTMU(China)経済週報
2016 年 9 月 6 日 第 317 期
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2016 年中国民営企業上位 500 社ランキング
~量より質の向上が期待される
中国投資銀行部
中国調査室
メイントピックス ....................................................................................................................2
2016 年中国民営企業上位 500 社ランキング~量より質の向上が期待される................................2
民営企業の業界連合である中華全国工商業聯合会は、1998 年以降、全国 32 地域における工商聯合
会分会や商会などを通じ、年間売上高が 5 億元以上の民営企業(私営企業、非公有制経済がマジョリ
ティを取得する有限責任公司と株式有限公司)を対象に経営状況や企業管理などについて調査を実
施し、企業の年間売上高に応じて、「中国民営企業上位 500 社ランキング」、「中国民営製造業企業上
位 500 社ランキング」、「中国民営サービス業企業上位 100 社ランキング」を公表している。このほど 8
月 25 日に、「2016 年中国民営企業上位 500 社調査分析報告」が発表された。
民間投資の伸び率が鈍化する中、民営企業の経営動向や新たな業界への参入が注目されている。民
営企業上位 500 社は発展戦略、経営管理、コーポレート・ガバナンス、技術革新などにおいて顕著な
向上が見られ、社会貢献も継続的に拡大している。一方、中国経済の減速や国内の人件費、土地な
どのコスト上昇および資金調達難により、大手民営企業の海外進出が加速しており、技術開発や自主
ブランド立ち上げなどへの投資が増加するなど、「新常態」の下、企業の構造転換が進められている模
様である。
君合の中国法コラム............................................................................................................10
「中華人民共和国消費者権益保護法実施条例(意見募集稿)」において個人情報保護に関する
規定を更に明確化 .............................................................................................................................................................10
2016 年 8 月 5 日に、国家工商行政管理総局は「中華人民共和国消費者権益保護法実施条例(意見
募集稿)」(以下「意見募集稿」という)を公布し、パブリックコメントを求めた。意見募集稿は、2014 年に
修正した「消費者権益保護法」(以下「消保法」という)をベースに、「消保法」の関連規定を更に詳細に
規定している。
BTMU の中国調査レポート(2016 年 8~9 月).......................................................................12
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A member of MUFG, a global financial group
1
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メイントピックス
2016 年中国民営企業上位 500 社ランキング~量より質の向上が期待される
民営企業の業界連合である中華全国工商業聯合会(以下、「全国工商聯」という)は、1998 年以降、全国 32
地域における工商聯合会分会や商会などを通じ、年間売上高が 5 億元以上の民営企業(私営企業、非公有
制経済がマジョリティを取得する有限責任公司と株式有限公司)を対象に経営状況や企業管理などについて
調査を実施し、企業の年間売上高に応じて、「中国民営企業上位 500 社ランキング」、「中国民営製造業企業
上位 500 社ランキング」、「中国民営サービス業企業上位 100 社ランキング」を公表している。ただし、報告の
提出がない企業は、ランキングされないので、EC 最大手のアリババなど大手民営企業の一部はランクインし
ていない。
8 月 25 日、全国工商聯は大手民営企業の 2015 年度における経営状況をまとめ、「2016 年中国民営企業上
位 500 社調査分析報告」(以下、「分析報告」という)として発表した。今回の調査は、調査開始以降、18 回目
となる。本稿では、全国工商聯の機関紙である「中華工商時報」に公表された「分析報告」の要約などに基づ
き、2015 年度の民営企業の状況を概観してみたい。
Ⅰ.民営企業上位 500 社の経営状況
民間投資の伸び率が鈍化する中、民営企業の経営動向や新たな業界への参入が注目されている。民営企
業上位 500 社は発展戦略、経営管理、コーポレート・ガバナンス、技術革新などにおいて顕著な向上が見ら
れ、社会貢献も継続的に拡大している。一方、中国経済の減速や国内の人件費、土地などのコスト上昇およ
び資金調達難により、大手民営企業の海外進出が加速しており、技術開発や自主ブランド立ち上げなどへの
投資が増加するなど、「新常態」の下、企業の構造転換が進められている模様である。
ランク入りの基準は「売上高 100 億元突破」
2016 年の中国民営企業上位 500 社ランキングでは、2015 年における売上高が 101 億 7,500 万元以上の民
営企業がランク入りしており、ランク入りするための最低売上高は前年(95 億 900 万元)より 6 億 6,600 万元高
くなり、初めて 100 億元を突破した(図表 1)。なお、民営サービス業上位 100 社の最低売上高は 124 億 3,700
万元と前年(116 億 8,800 万元)より 7 億 4,900 万元増加したが、民営製造業企業上位 500 社の最低売上高
は 45 億 2,000 万元と前年(46 億 6,700 万元)より 1 億 4,700 万元の減少しており、近年の製造業とサービス
業の発展傾向にも適合するものである。また、2015 年、中国民営企業上位 500 社のうち、12 社がフォーチュ
ン誌の世界トップ 500 企業にランキングされ、昨年より 5 社増加した。
【図表1】201 0-2015年における
民営企業上位500社の
ランク入り最低売上高の推移
120
100
38.25%
95.09
45%
101.75
8,000
40%
7,000
18.31%
40
7.00%
0
2011
2012
2013
ランク入り最低売上高(億元)
3,911.34
40%
2014
30%
17.43%
2,000
10%
5%
1,000
0%
0
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19.12%
12.17%
20%
17.67%
10%
0%
-3.39%
-10%
2010
2015
伸び率
2011
2012
2013
税引き後純利益(億元)
(出所)中華全国工商業聯合会のデータを基に当行中国調査室作成
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50%
3,000
15%
4.24%
2010
4,000
4,387.31 4,238.44
20%
17.38%
20
60%
4,977.36
5,000
2
80%
70%
6,000
30%
25%
50.60
90%
6,976.60
79.46%
5,928.95
35%
77.72
29.82%
65.69
80
60
91.22
【図表5】2010-2015 年民営企業上位500社
の税引き後純利益の推移
2014
伸び率
2015
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【図表2】2016年中国民営企業上位500社のトップ10
1
2
3
4
5
華為投資控股有限公司
広東省
コンピューター、通信・電子機器製造業
蘇寧控股集団
山東魏橋創業集団有限公司
江蘇省
山東省
北京市
広東省
小売業
非鉄金属製錬・圧延加工業
コンピューター、通信・電子機器製造業
非鉄金属製錬・圧延加工業
売上高
(万元)
39,500,900
35,028,812
33,323,772
30,982,614
30,036,385
6
7
8
9
10
大連万達集団股份有限公司
中国華信能源有限公司
恒力集団有限公司
江蘇沙鋼集団有限公司
遼寧省
上海市
江蘇省
江蘇省
広東省
不動産業
卸売業
化学原料・化学製品製造業
鉄金属製錬・圧延加工業
不動産業
29,016,000
26,315,060
21,207,961
20,584,340
19,554,913
順位
企業名
所在地
聯想控股股份有限公司
正威国際集団有限公司
万科企業股份有限公司
所属業種
【図表3】2016 年中国民営企業製造業上位500社のトップ10
1
華為投資控股有限公司
広東省
コンピューター、通信・電子機器製造業
売上高
(万元)
39,500,900
2
3
4
5
6
山東魏橋創業集団有限公司
聯想控股股份有限公司
正威国際集団有限公司
恒力集団有限公司
江蘇沙鋼集団有限公司
山東省
北京市
広東省
江蘇省
江蘇省
非鉄金属製錬・圧延加工業
コンピューター、通信・電子機器製造業
非鉄金属製錬・圧延加工業
化学原料と化学製品製造業
鉄金属製錬・圧延加工業
33,323,772
30,982,614
30,036,385
21,207,961
20,584,340
7
8
9
10
浙江吉利控股集団有限公司
海亮集団有限公司
浙江省
浙江省
広東省
広東省
自動車製造業
非鉄金属製錬・圧延加工業
電気機械・器材製造業
コンピューター、通信・電子機器製造業
16,530,399
14,016,131
13,934,712
10,487,763
順位
企業名
美的集団股份有限公司
TCL集団股份有限公司
所在地
所属業種
【図表4】2016年中国民営企業サービス業上位100社のトップ10
順位
企業名
1
2
3
蘇寧控股集団
4
5
6
7
万科企業股份有限公司
京東集団
恒大地産集団有限公司
大連万達集団股份有限公司
中国華信能源有限公司
泰康人寿保険股份有限公司
蘇寧環球集団有限公司
8
碧桂園控股有限公司
9
三胞集団有限公司
10
(出所)中華全国工商業聯合会
所在地
所属業種
江蘇省
遼寧省
上海市
小売業
不動産業
卸売業
広東省
北京市
広東省
北京市
江蘇省
不動産業
インターネットおよび関連サービス
不動産業
保険業
不動産業
広東省
江蘇省
不動産業
小売業
売上高
(万元)
35,028,812
29,016,000
26,315,060
19,554,913
18,128,696
13,313,000
13,231,300
12,637,509
11,322,264
10,806,963
華為(ファーウェイ)が首位に浮上、聯想(レノボ)は 4 位に転落
民営企業上位 500 社の 2015 年における総売上高は、前年比+10.1%の 16 兆 1,569 億元で、1 社当たりの売
上高は同+10.1%の 323 億 1,400 万元となった。国家統計局のデータによれば、2015 年の国内総生産
(GDP)は 67 兆 6,700 億元であったことから、民営企業上位 500 社の 2015 年における売上高の合計は同年
における GDP の約 1/4 に相当する。
通信設備・機器の世界最大手、華為投資控股(ファーウェイ)の売上高は、前年比 1,068 億元の増加となり、
聯想控股(レノボ)に取って代わり、民営企業上位 500 社および民営製造業企業上位 500 社の首位となった。
同社が首位となったのは、2011 年に民営企業上位 500 社のトップとなって以来の 5 年ぶりである(図表 2、3)。
昨年のランキングでは、聯想が 2,895 億元の売上高で首位を占め、華為は 12 億 7,900 万元の差で続く 2 位と
なっていたが、2016 年、華為の売上高は前年比+37%の 3,950 億 900 万元となった一方で、聯想の売上高は
同+7%の 3,098 億 2,600 万元にとどまった。なお、この華為の売上規模は、2015 年の中国インターネット関連
企業の最大手 3 社 BAT(百度、アリババ、テンセント)の売上高の合計 2,635 億元を大きく上回るものである。
中国のハイテク企業の代表格として、2015 年における華為の通信キャリア向け、企業向け、消費者向けといっ
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た三大業務の販売収入は、それぞれ+21%、+44%、+73%の増加となり、世界各地における 4G ネットワーク
の構築、公共安全、金融、交通、エネルギー業界における好調な発展、スマートフォン出荷台数の大幅な増
加が好調な業績につながった。一方、近年来、低迷しているパソコン市況は聯想の業績に影響し、同社の
2015 年における売上高は 204 億元の増加となったが、伸び率は華為を下回り、順位も 4 位に転落した。
このほか、上位に位置した企業は、家電量販大手の蘇寧雲商などを有する蘇寧控股が 2 位、紡績・火力発
電・アルミ業を手掛ける山東魏橋創業が 3 位、非鉄金属生産・電子部品製造の正威国際が 5 位と続いており、
売上高はそれぞれ 3,502 億 8,800 万元、3,332 億 3,800 万元、3,003 億 6,400 万元となった。
昨年度のランキングで年間売上高が 2,800 億元を超えた企業は 4 社(聯想控股、華為投資控股、蘇寧控股と
山東魏橋創業)だったのに対し、今年のランキングで同 4 社の年間売上高は、全て 3,000 億元の大台を超え
た。また、2016 年、蘇寧控股は民営サービス業企業上位 100 社の 1 位を維持した。
不動産、インターネット企業が高い伸び率を記録
民営企業上位 500 社を見ていくと、業界毎で明暗が分かれており、一部の業界に至っては売上の減少も見ら
れた。例えば、江蘇沙鋼の 2015 年の売上高は 2,058 億 4,300 万元と前年より 400 億元の減少、家電の美的
は 1,393 億 4,700 万元と同 30 億元の減少となった。一方で、一部の不動産企業の売上は大幅に増加した。
例えば、不動産大手の碧桂園、恒大地産、万科、大連万達の 2015 年における売上高はそれぞれ 1,132 億
2,300 万元、1,331 億 300 万元、1,955 億 4,900 万元、2,901 億 600 万元で、前年よりいずれも 200~500 億元
増加した。また、特筆すべきことは、インターネット企業の伸び率が高く、例えば、京東の 2015 年の売上高は
前年比 723 億元増の 1,812 億 8,700 万元で 150%の増加となり、順位も 30 位から 11 位に上昇した。
民営サービス業企業上位 100 社のランキングでは、蘇寧控股、大連万達、華信能源がトップ 3 を占めた(図表
4)。近年来、不動産市場の過熱はやや沈静化したものの、不動産企業がサービス業全体の売上増加に占め
る割合は依然として大きく、上位 100 社のうち、不動産企業は 28 社に達した。トップ 10 のうち、半数が不動産
企業であり、大連万達のほか、万科、恒大地産、蘇寧環球および碧桂園が含まれ、5 社合計で 8,584 億元の
売上高を計上した。一方で、インターネット企業が順位を上げており、京東と百度が昨年の 14 位から 5 位へ、
19 位から 15 位へとそれぞれ上昇した。
【図表6】民営企業上位500社の主要指標の推移
指標
2008
ランク入り最低売上高(億元)
前年比伸び率(%)
売上高総額(億元)
前年比伸び率(%)
資産総額(億元)
前年比伸び率(%)
税引後純利益(億元)
前年比伸び率(%)
ROA(%)
ROE(%)
納税総額(億元)
前年比伸び率(%)
全国に占めるシェア(%)
2009
30
2010
37
51
2011
66
2012
78
2013
2015
95
102
4.3
7.0
132,122
24.9
146,916
11.2
161,569
10.1
90,887
110,227
138,227
173,005
17.0
21.3
25.4
25.2
4,387
4,238
4,977
5,929
6,977
12.2
▲3.4
17.4
19.1
17.7
5.6
6.7
4.7
5.7
4.0
4.7
4.5
14.4
4.3
14.0
4.0
13.3
1,776
2,739
4,094
4,335
4,725
5,728
6,421
12.8
19.7
54.2
49.5
5.9
9.0
20.7
12.1
2.7
3.0
3.7
4.6
4.3
4.3
4.8
5.1
751
1.8
827
10.1
15.0
23.3
38.2
29.6
41,099
15.7
47,363
15.2
69,849
47.5
93,072
33.3
105,775
13.7
28,250
38,982
58,825
77,704
12.4
38.0
50.9
32.1
1,641
2,180
3,911
▲0.1
32.8
79.5
4.0
5.8
4.6
5.6
1,484
雇用人数(万人)
18.3
91
2014
17.4
413
452
561
630
676
737
19.9
9.5
24.0
12.2
7.3
9.1
前年比伸び率(%)
(出所)中華全国工商業聯合会各年度の「中国民営企業上位500社分析報告」を基に当行中国調査室作成
利益は引き続き拡大も、収益力は弱まりを見せる
民営企業上位 500 社の総資産額は、引き続き拡大傾向を維持している。2015 年、民営企業上位 500 社の総
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資産額は前年比+25.2%の 17 兆 3,005 億元となり、1 社当たりの平均総資産額は 346 億元となった。総資産
額が 1,000 億元を超えた企業は 34 社と、同 13 社増加し、うち不動産大手の大連万達が 9,034 億元の総資産
額で首位を維持した。
また、民営企業上位 500 社の総利益額も引き続き増加しており、2015 年における税引後の総利益額は前年
比+17.7%の 6,977 億元に達し、純利益率は前年より 0.3 ポイント上昇の 4.3%、総資本回転率は同 14.8 ポイ
ント低下の 100.5%となった(図表 5)。これを受け、資本利益率(ROA)は 2014 年の 4.3%から 4.0%に、自己
資本利益率(ROE)は同 14.0%から 13.3%にそれぞれ低下したなど、企業の収益力は弱まる様相を見せてい
る(図表 6)。
社会貢献度は引き続き拡大
民営企業上位 500 社の 2015 年における納税額の合計は前年比+12.1%の 6,421 億元で、全国の税収全体
に占める割合は 5.1%となった。納税額が 200 億元を超えた企業は華為、万科、大連万達、恒大地産の 4 社
で、納税額はそれぞれ 460 億元、312 億元、302 億元、200 億元となった。
2015 年末時点、民営企業上位 500 社が雇用していた従業員数は前年比+10.1%の 826 万 9,800 人で、1 社
当たり 1.65 万人となった。企業別では、電池・自動車メーカーの比亜迪股份有限公司(BYD)で働く従業員が
19 万 6,000 人に達し、最多となった。
Ⅱ.地域別・業界別の特徴
東部地域が引き続き主導
2015 年、東部地域のランク入り企業は 392 社で昨年より 8 社増加し、全体の 78.4%を占め、売上高は同
80.8%、資産規模は同 74.8%を占めた。この結果から、大手民営企業が東部地域に集中する構図は依然と
して変わっていないと言えよう。一方で、中部地域のランク入り企業は昨年より 5 社減の 51 社で、全体に占め
る割合は 1 ポイント低下した。また、西部地域のランク入り企業は昨年より 3 社減の 48 社で、全体に占める割
合は 0.6 ポイント低下し、東北地域のランク入り企業は昨年と横ばいの 9 社となった(図表 7)。
企業の本社所在地別にみると、浙江省の民営企業が 134 社と 18 年連続で首位を維持しており、このほか、
江蘇省が 94 社、広東省が 50 社となった。広東省の企業数は昨年より 10 社増え、初めてトップ 3 に入ったほ
か、ランク入り企業の資産総額が占める割合は 25.3%で全国トップとなった。
【図表7】2014-2015年民営企業上位500社の地域分布
地域
東部
ランク入り企業数(社)
2014
数量
384
76.80%
売上高(億元)
2015
392
78.40%
2014
117,423.09
79.93%
上位500社に占める割合
数量
56
51
11,220.61
中部
上位500社に占める割合
11.20%
10.20%
7.64%
数量
51
48
14,129.86
西部
10.20%
9.60%
9.62%
上位500社に占める割合
数量
9
9
4,142.14
東北
上位500社に占める割合
1.80%
1.80%
2.82%
(出所)中華全国工商業聯合会のデータを基に当行中国調査室作成
資産規模(億元)
2015
130,569.31
80.81%
2014
98,728.81
71.42%
2015
129,351.07
74.77%
11,343.36
7.02%
14,877.24
9.21%
4,780.66
8,745.07
6.33%
21,379.05
15.47%
9,374.47
9,206.60
5.32%
23,246.71
13.44%
11,200.48
2.96%
6.78%
6.47%
企業数は製造業に集中するも、第 2 次産業のランク入り企業数が減少
企業数を産業別にみると、2015 年の民営企業上位 500 社のうち、第 3 次産業の企業数は 5 年連続増加し、
前年の 130 社から 137 社へと増加したが、第 2 次産業1に属する企業は前年の 364 社から 357 社へと減少し
1
第二次産業は一般的に工業・建設業を言うが、ここでは工業に採掘業、製造業、電力・熱力・水の供給も含む。
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た。なお、第 3 次産業の資産総額が占める割合は 51.7%に上昇し、初めて第 2 次産業を超えた。第 2 次産業
の中でも製造業企業が前年と横ばいの 291 社で、依然として上位 500 社全体の 58.2%を占めている。
民営企業上位 20 社のうち、1/4 は不動産企業であり、製造業のランク入り基準の低下を考えれば、経済は
「脱実向虚」2の兆しがあると指摘されている。
また、2015 年の民営企業上位 500 社のうち、企業グループ全体として上場している、または上場企業の持ち
株会社である企業は 211 社となり、全体の 42.2%を占めたほか、上場企業に資本参加した企業は 106 社で、
全体の 21.2%を占めた。
産業構造の転換が進む
2015 年の民営企業上位 500 社ランキングに入った企業数を業界別に分けてみると、上位 10 位を占めた業界
は、伝統的産業から新興産業へとシフトする傾向を示している。建築業、鉄金属精錬・圧延加工業、非鉄金
属精錬・圧延加工業、卸売業、小売業のランク入り企業数はいずれも減少し、うち鉄金属精錬・圧延加工業
が前年の 41 社から 37 社、非鉄金属精錬・圧延加工業が前年の 33 社から 30 社にそれぞれ減少した。これに
対し、電気機械・器材製造業は前年の 24 社から 26 社、コンピューター、通信・電子機器製造業は前年の 11
社から 18 社に増加したほか、500 社ランキングの中で企業数上位 10 位を占める業界にも入った。
上記の傾向に応じ、2015 年、民営企業上位 500 社の収益力も業種毎に二極化の傾向が強まっている。イン
ターネットおよび関連サービス業、ビジネスサービス業、コンピューター、通信・電子機器製造業といった新興
産業と現代サービス業の総資本利益率(ROA)は、それぞれ 25.13%、23.1%と 18.88%に達したのに対し、石
炭採掘・精錬業、鉄金属精錬・圧延加工業、化学繊維製造業、非鉄金属鉱物製品業といった伝統的産業、
特に生産能力が過剰となっている産業の ROA はそれぞれ 0.13%、4.65%、5.48%、9.24%にとどまり、上位
500 社の ROA 平均水準(13.32%)をはるかに下回っている。
このほか、2015 年は民営企業上位 500 社の海外進出が加速し、海外投資は引き続き拡大している。138 社が
国外への直接投資や工事請負で海外の事業を受注し、受注総額は前年比+35.2%の 1,641 億 5,400 万米ド
ルとなり、前年より 427 億 3,600 万米ドル増加した。一方、国際市場の需要鈍化を受け、製品・サービス輸出を
行う企業は 240 社で、輸出総額は同▲23.8%の 1,099 億 6,100 万米ドルにとどまった。
企業発展に影響する主な要因
2015 年、民営経済の発展を支援する国家政策の下、民営企業発展の市場環境、公共政策環境、法律環境
と社会環境がさらに改善したが、過去数年間、民営企業を煩わせた問題は、2015 年においても依然として改
善がみられなかった。全国工商聯の調査によると、人件費の上昇(333 社、全体の 66.6%)、重い税負担(287
社、全体の 57.4%)、資金調達の困難さ(255 社、全体の 51%)といった項目が企業発展に影響する問題とし
て挙げられた。
なお、新たな問題として、市場需要の不足と市場秩序の未整備が挙げられており、全体の 54%と 43.4%を占
めた。そのほか、ネガティブな世論が多いこと3、省エネ・排出削減の圧力が大きいこと、知的財産権に対する
保護不足および独占産業の開放度が高くないといったことも民営企業の経営環境を悪化させ、競争力を低
下させる要因として挙げられた。
Ⅲ.新たなビジネスチャンスを模索
国家発展戦略に積極的に参加
経済下振れと各種の困難に直面する中、民営企業上位 500 社は産業構造と発展戦略の最適化を通じ、事業
実物投資に資金が回らず、実体経済から離脱し、金融業や不動産業などの仮想経済へ転換するという意味を指す。
中国では、国の政策が国有企業に対して有利に傾くことが多いうえ、民営企業は社会的地位が低く、世間においても発言権がな
く、差別される傾向がある。民営企業が最も多い浙江省を例にすると、電子商取引のアリババ、飲料メーカーの娃哈哈(ワハハ)と農夫
山泉はいずれも模倣品や品質問題などで連続して各種不祥事に巻き込まれている。
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内容の転換や高度化を加速している。2015 年に上位 500 社の 75%を占める 375 社が事業内容の転換や高
度化を加速していると答え、全体に占める割合は 2014 年より 4.8 ポイント上昇した(図表 8)。これらの企業は
本業に注力しながらも、イノベーションの強化や資本の投入拡大、製品付加価値の向上を図っているほか、
将来に備え、主体的に新興産業にも参入している。
【図表8】2015年民営企業上位500社の事業内容転換・高度化の進捗度
事業内容転換 ・
高度化の進捗度
2014年企業数
明らかに加速
スタートしたばかり
鈍化した
351
80
17
上 位500社に
占める割合
70.20%
16.00%
3.40%
2015年企業数
375
57
17
まだスタートしていない
9
1.80%
調査に参加した企業数
457
(出所)中華全国工商業聯合会のデータを基に当行中国調査室作成
上 位500社に
調査した企業数に
占める割合
占める割合
75.00%
80.99%
11.40%
12.31%
3.40%
3.67%
14
463
2.80%
3.02%
中央政府が「一帯一路」、「京津冀協働発展」、長江経済ベルトという三大戦略を打ち出して以降、民営企業
は積極的に国家戦略に参加する姿勢を示している。全国工商聯の調査では、2015 年、民営企業上位 500 社
のうち、「一帯一路」建設に参加した企業は最多の 183 社で、全体の 36.6%を占め、前年より 118 社増加した。
長江経済ベルト建設には 179 社が参加し、同 35.8%を
【図表9】民営企業の新興産業への投資
占め、前年より 12 社増加し、また京津冀一体化建設に (社)
(分野別)
は 95 社が参加し、同 19%を占め、前年より 16 社増加 250
した。
200
2014
2015
150
100
50
0
新 エ ネ ルギー自動車
新材料
新 エ ネ ルギー
ハイ テク製造設備
バイオ
次世代情報技術
省 エネ ・環境保護
第 12 次 5 ヶ年計画では戦略的新興産業の発展が打ち
出されて以降、2011~2015 年の 5 年間、民営企業上
位 500 社の戦略的新興産業分野への投資は継続的に
拡大している。調査データによると、省エネ・環境保護
産業が前年の 51 社から 217 社、次世代情報技術産業
が 14 社から 119 社、バイオ産業が 13 社から 67 社、ハ
イテク製造設備が 11 社から 92 社、新エネルギー産業
が 23 社から 130 社、新材料が 28 社から 171 社、新エ
ネルギー自動車(エコカー)が 5 社から 46 社へとそれぞ
れ増加した(図表 9)。
改革・革新に取り組む企業動向
混合所有制改革への参加ルートの多様化
2015 年、民営企業上位 500 社のうち、国有企業と共同で設立した新規企業は 69 社で全体に占める割合は
13.8%と前年より 5.6 ポイント上昇した。国有企業に資本参加したのは 61 社で、全体に占める割合は 12.2%と
同 3.2 ポイント上昇、また国有企業からの資本参加があるのは 37 社で、全体に占める割合は 7.4%と同 3 ポイ
ント上昇した。このほか、国有企業のマジョリティを取得したのは 21 社で、全体に占める割合は 4.2%と同 2.6
ポイント上昇した。
PPP プロジェクトへの投資拡大
2015 年、中央政府は投融資体制改革を深化させ、民間投資の活力を喚起し、公共製品とサービスの供給効
率を向上するため、官民パートナーシッププロジェクト(PPP)の推進を強化した。国家発展改革委員会は、初
の中央政府の部レベル(日本の省庁に相当)における PPP プロジェクト・データバンクを設立したうえで、全国
工商聯と共同で民営企業向けの PPP 協力プロジェクト推進説明会を行い、287 件のプロジェクトを公表し、総
投資額は約 9,400 億元となった。全国工商聯の調査では、2015 年、上位 500 社企業の 98 社が PPP に参加
し、全体の 19.6%を占め、前年より 40 社増加した。参加の意向がある企業数は前年の 136 社から 164 社に増
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加し、参加の意向がない企業数も前年の 242 社から 99 社へと大幅に減少した。
分野別にみると、インフラと交通施設が民営企業上位 500 社が PPP に参加する最も多い分野となっている。
そのうち、建設業企業の参加が最も多く、インフラ分野に参入した 33 社のうち、建設業企業が 17 社で 51.5%
を占めているほか、交通分野においても、参入した 32 社のうち、建設業企業が 14 社で 43.8%を占めている。
自主革新力の向上
民営企業上位 500 社のうち、2015 年、研究開発(R&D)に携わる従業員数が全社員数の 3%以上を占めた企
業は 299 社となり、全体の 59.8%を占め、前年より 6.4 ポイント上昇した。研究開発費用が売上高の 1%を超え
た企業は 178 社で、全体に占める割合は 35.6%と前年より 2.6 ポイント上昇した。特に、百度と華為の研究開
発費用の割合が 15.45%と 15.09%で最も高かった。
研究開発投入の拡大に伴い、2015 年、コア技術が自社の研究開発からなる企業は 389 社で、全体に占める
割合は 77.8%と前年より 2.2 ポイント上昇した。民営企業の「専利」(特許、実用新案、意匠)取得件数も増加
傾向を維持しており、国内で取得したものは 2014 年の 13 万 6,408 件から 15 万 5,313 件へと 13.86%増加し、
海外で取得したものも 2014 年の 2 万 2,921 件から 2 万 6,117 件へと 13.94%増加し、民営企業の技術レベル
向上への意欲の強さが示された(図表 10)。
【図表10】民営企業上位500社の専利出願件数の推移
2012
2013
2014
専利出願件数
102,106
131,732
159,329
うち:国内
90,891
116,801
136,408
海外
11,215
14,931
22,921
(出所)中華全国工商業聯合会のデータを基に当行中国調査室作成
2015
181,430
155,313
26,117
伝統的産業とインターネットの融合加速
インターネットを代表とする次世代情報技術の持続的革新および伝統的産業との融合は、世界的に新たな産
業変革の重要な特徴と見なされている。民営企業上位 500 社の大多数は伝統的産業であるため、中国にお
いても、インターネットと伝統的産業の融合的発展という産業変革が着実に進行している。調査データによる
と、2015 年に民営企業上位 500 社の 45%を占める 225 社がインターネットに基づいた開放・協働研究開発・
革新モデルを構築し、39%を占める 195 社がスマート製造設備を通じたスマート生産化を行い、32%を占める
160 社がリアルタイムモニタリングやリモートメンテナンスの提供を通じて、製造業のサービス化4の発展を推進
した。また、26.4%を占める 132 社がインターネットを通じてユーザーの個性化したニーズを把握し、低コストか
つ大規模なカスタマイズを実現し、15.2%を占める 76 社が社会全体を対象とした「大衆の創業、万衆の革新」
サービスプラットホームを構築した。
2015 年以来、複雑な国内外情勢と高まる景気下振れ圧力に直面する中、政府は「穏中求進」(安定を保ちつ
つ経済成長を促す)のマクロ経済政策を堅持し、供給側構造改革を推進することで、新たな成長原動力の育
成に取り組んできた。過去 1 年間、多くの民営企業、特に大手民営企業は積極的に技術革新、産業構造調
整、事業内容の転換や高度化を行い、成長安定、革新促進につなげているほか、就業拡大や民生改善にお
いても重要な役割を果たしてきた。
上述の通り、過去数年間、民営企業上位 500 社が集中するトップ 5 業界は依然として製造業が占め、鉄鋼、
非鉄金属、石油化学、紡績といった高エネルギー消費・高汚染業界に集中しているが、経済の減速および生
産設備の過剰により、こうした民営企業の経営環境が厳しくなっている。かかる中、民営製造業にとって、数
4「 製造業のサービス化」とは、「価値提供から価値共創へ」ということを意味しており、すなわち、製造業が従来のように「モノを製造・
提供して、それを消費した顧客から対価を得る」という考え方から、「価値は顧客が経験したときに生まれるものであり、そのためにモノ
に加え何かしらのサービス的要素を含めて提供し、顧客と共に価値創造を行う」という考え方にシフトする考え方である。
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量の拡大から製品付加価値の向上へのグレードアップや技術の高度化、運営方式の革新などといった構造
転換が急務とされており、積極的に技術革新や構造改革を行い、経済減速、構造転換などの困難を乗り切ろ
うとしている。「中国製造 2025」実施の好機をとらえ、スマート製造および「両化融合」(情報化と工業化の相互
依存、相互促進)に合わせ、研究開発投入を拡大し、企業の核心競争力を向上し、イノベーションによる発展
を実現することによって、製造業、サービス業と戦略的新興産業における民営企業の更なる躍進が望まれて
おり、その動向に引き続き注目したい。
三菱東京 UFJ 銀行(中国) 中国投資銀行部
中国調査室 孫元捷
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君合の中国法コラム
「中華人民共和国消費者権益保護法実施条例(意見募集稿)」において個人情報保護に関する規
定を更に明確化
2016 年 8 月 5 日に、国家工商行政管理総局は「中華人民共和国消費者権益保護法実施条例(意見募集
稿)」(以下「意見募集稿」という)を公布し、パブリックコメントを求めた。意見募集稿は、2014 年に修正した「消
費者権益保護法」(以下「消保法」という)をベースに、「消保法」の関連規定を更に詳細に規定している。
Ⅰ.個人情報保護に関する規定を更に明確化
1. 消費者個人情報につき定義
2015 年 1 月 5 日、国家工商行政管理総局が公布した国務院の部門規則である「消費者権益侵害行為処罰
弁法」(以下「処罰弁法」という)において、消費者個人情報の定義を「事業者が商品又はサービスの提供過
程において収集する消費者の氏名、性別、職業、生年月日、身分証番号、住所、連絡先、収入及び財産状
況、健康状況、消費動向等の単独又はその他の情報と照らし合わせて消費者を特定可能な情報」とした。
意見募集稿の第 22 条において、初めて行政規定レベル(処罰弁法の上位法)において消費者個人情報の
定義を明確化した。その定義とは、「事業者が商品又はサービスの提供過程において収集する消費者の氏
名、性別、職業、生年月日、身分証番号、住所、連絡先、収入及び財産状況、健康状況、消費動向、生物識
別特徴等の単独又はその他の情報と照らし合わせて消費者を特定可能な情報」であり、「処罰弁法」と非常
に類似しているが、初めて生物識別特徴が消費者個人情報として明確に挙げられた。
2. 初めて「商業的な情報」の明確化
「消保法」第 29 条において、「事業者は、消費者の同意若しくは請求がない場合、又は消費者が明確に拒絶
の意思表示を示した場合は、消費者に対し商業的な情報を発信してはならない」と規定されており、意見募
集稿の第 23 条においても、「商業的なセールス電話をしてはならない」と規定されている。なお、同条におい
て、「商業的な電子情報及び商業的なセールス電話」に関する解釈が明確化されており、「事業者が、商品
又はサービスを販売するために、消費者の固定電話若しくは携帯電話等の電子端末、又はEメール若しくは
オンラインストレージ等の電子情報スペースに対して情報を発信し、又は電話をかける」ことであると定義し
た。
3. 初めて「業務に関係のない情報を収集してはならない」旨を明確化
意見募集稿の第 22 条において、「事業者は業務に関係のない情報を収集してはならず、又は不正な方法で
情報を収集してならない」ことを初めて明確化した。これまでも、「消保法」及び「オンライン情報保護の強化に
関する全国人民代表大会常務委員会の決定」(以下「人大決定」という)において、情報収集する場合は、
「必要原則」を遵守しなければならないと規定されていたが、「業務に関係のない情報を収集してはならない」
旨を明確に規定したのは、初めてである。
4. 初めて「消費者の同意を得たことを証明できる資料を少なくとも 5 年間保存しなければならない」旨を明確
化
意見募集稿の第 22 条において、「事業者は、個人情報を収集・使用する場合に、明示義務を履行し、かつ消
費者の同意を得たことを証明できる資料を少なくとも 5 年間保存しれければならない」と明確に規定した。
5. 事業者は「匿名加工した上、特定の消費者を識別できず、かつ復原できない」情報を他人に提供できる
旨を明確化
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意見募集稿の第 22 条において、「事業者は、消費者個人情報の安全性を確保するため、健全な情報秘密保
持及び管理制度を確立しなければならない。事業者及びその従業員は、収集した個人情報を漏えい、改ざ
ん、毀損してはならない。消費者の同意を経ずに、消費者の個人情報を他者に提供してはならない。但し、
匿名加工した上、特定の消費者を識別できず、かつ復原できない情報はその限りではない。」と明確に規定
した。事業者は、本条に基づき第三者に対し匿名加工情報を提供することができるようになる。一方で、匿名
加工情報については、「特定の消費者を識別できない」、かつ「復原できない」という二つの基準を明確化し
た。
6. 「消保法」第 56 条に記載されている「消費者個人情報が法に従い保護を受けることができる権利を侵害」
に該当する行為について明確化
意見募集稿の第 57 条において、「(事業者が)消費者をして消費に関係のない情報を提供させ、消費者の同
意を経ずに消費者の個人情報を第三者に開示すること」、「消費者の同意若しくは請求を経ずに消費者に対
し商業的な情報を発信し、又は商業的なセールス電話をかけること」は、「消保法」第 56 条の違反行為に該当
し、同条に基づき処罰すると規定している。なお、「消保法」第 56 条では違法所得の没収、罰金、情状が重大
な場合には営業許可証の取り消し等につき規定している。
Ⅱ.消費者権益保護の仕組みを明確化
1. 行政上の保護につき具体的に規定
各級の人民政府に対し、消費者権益保護に関する部門間の協調メカニズムを確立し、消費者権益保護にお
ける各部門の職責を明確化し、各行政部門間の協力を強化するよう求めている。また、各級の人民政府及び
行政機関が事業者の消費者権益侵害行為に対する行政処罰情報を信用情報記録ファイルに記入し、「信用
中国」(http://www.creditchina.gov.cn)及び国家企業信用情報公示システムを通じて社会に開示しなけ
ればならないと規定している。
2. 社会保護を強化
消費者協会の法的地位及び職責が明確化され、消費者協会により大きな権限が与えられた。意見募集稿に
基づき、消費者協会は、商品又はサービス等に関する公聴会を招集、若しくは公聴会に参加し、公聴会にお
いて独自の意見を発表することでき、かつ事業者に調査協力を求め、事業者に対して事情聴取を行うことが
できる。これに加えて、消費者協会は、事業者又は業界協会に消費者の権益問題に関する回答を書面にて
提出させることができ、20 営業日以内に提出されなかった場合には、消費者協会がこれを開示する権利を有
すると規定している。
Ⅲ.まとめ
意見募集稿は、個人情報保護に関する規定を更に明確化していることから、有意義な試みであると考えられ
る。これは、消費者権益保護についてより明確な法的根拠を提供しただけでなく、事業者に対してより実効性
のある行動指針を示したとも言えるであろう。特に消費者を直接顧客とする日系企業は、「消費者権益保護法
実施条例」の今後の立法動向を見守っていく必要があると考える。
馬軍 君合律師事務所パートナー
君合律師事務所は中国、海外に事務所を持つ中国最大級の事務所で、国際法律連盟
(ILASA)より 6 年連続で中国のベスト弁護士事務所金賞に選ばれている。馬軍弁護士は、早稲
田大学法学研究院にて法学修士を取得後、日本の法律事務所勤務を経て 2015 年 4 月から君合
律師事務所パートナーに就任。外商投資、M&A、再編撤退、労務管理の分野に強い。
当資料は情報提供のみを目的として、君合律師事務所によって作成されたものであり、当行はその正確性を保証するも
のではありません。また当該機関との取引等、何らかの行動を当行が勧誘するものではありません。
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BTMU の中国調査レポート(2016 年 8~9 月)
ニュースフォーカス第 9 号
広東省 マクロプルーデンス管理方式によるクロスボーダー資金調達を積極推進
https://Reports.btmuc.com/File/pdf_file/info005/info005_20160902_001.pdf
業務開発室
経済見通し(2016 年 8 月)
http://www.bk.mufg.jp/report/ecolook2016/index.htm
経済調査室
BTMU CHINA WEEKLY
2016/8/31
https://count.bk.mufg.jp/c/Ccl0isl13a0k9tH85b7504bIid0isl15a9kow
国際業務部
BTMU 中国月報 第 127 号(2016 年 8 月)
https://count.bk.mufg.jp/c/Ccl0is018b64bfH783e7dd8Iid0is01avq9n9
国際業務部
以上
当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、何らかの行動を勧誘するものではありません。ご利用に関しては全て顧客御自身でご判
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