Economic Indicators 定例経済指標レポート

EU Indicators
欧州経済指標コメント:8月ユーロ圏消費者物価(速報)
発表日:2016年8月31日(水)
~低空飛行が継続中~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
・ 8月のユーロ圏の消費者物価の速報値は前年比+0.2%と前月から不変(四捨五入前は前月:同+
0.16%→今月:同+0.23%)。速報段階で公表される内訳は、エネルギー価格(同▲6.7%→同▲
5.7%)の下落率が前月対比で縮小したものの、コア物価(同+0.9%→同+0.8%)と食料・アルコー
ル・たばこ価格(同+1.4%→同+1.3%)の上昇率が鈍化した。国別の消費者物価(ベルギーを除い
てEU統一基準)は、スペイン(同▲0.7%→同▲0.3%)の下落率が縮小し、イタリア(同▲0.2%→
同横這い)の下落に歯止めが掛かり、フランス(同+0.4%→同+0.4%)が前月並みの上昇率となる
なか、ドイツ(同+0.4%→同+0.3%)とベルギー(同+2.3%→同+2.2%)の上昇率が鈍化した。
・ 原油先物価格の推移から判断して来月以降のエネルギー価格の下落率は一段と縮小する公算が大きい。
食料品価格の最近の上昇加速は、フランスの調査手法の変更も影響しており、しばらく上押しが続く
可能性がある。他方、コア物価は引き続き緩慢な推移にとどまり、ディスインフレが定着化している。
詳細の内訳は速報段階では不明だが、夏季セール時期のズレや振れの大きいパッケージ旅行などが影
響した可能性もある。英国民投票後のユーロ圏の景気指標は予想以上に底堅く、9月8日のECB理
事会で追加緩和を決定する切迫度は低下している。ただ、投票後に中期的な期待インフレ率が一段と
下方屈折するなど、物価の下振れリスクに警戒が必要な状況。物価の低迷長期化や、来年3月に量的
緩和の終了期限を迎えることもあり、量的緩和の延長に向けた布石が打たれる可能性が高い。
■ユーロ圏:消費者物価(前年比)
■ユーロ圏:期待インフレ率と原油先物価格
エネルギー(右)
消費者物価(左)
コア消費者物価(左)
(%)
5
4
(%)
(%)
25
2.4
20
3
15
2
10
1
5
0
0
-1
2.2
09
10
11
12
13
14
15
20
1.2
0
16
注:コア物価は食料・タバコ・アルコール・エネルギー除く
出所:Eurostat
40
1.4
2014/1
2014/3
2014/5
2014/7
2014/9
2014/11
2015/1
2015/3
2015/5
2015/7
2015/9
2015/11
2016/1
2016/3
2016/5
2016/7
2016/9
08
60
1.6
-15
07
80
1.8
-10
-3
100
2.0
-5
-2
($/b)
中期的な期待インフレ率(左)
140
北海ブレント原油先物価格(右)
120
注:期待インフレ率は5年先5年物スワップ金利より計算
出所:Bloomberg資料より第一生命経済研究所が作成
■ユーロ圏の消費者物価(%)
2015
2016
2015
2016
3Q
4Q
1Q
2Q
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
消費者物価
(前期比)
-0.0
-0.1
-0.3
0.4
-0.2
-0.2
-0.1
0.2
0.0
0.3
0.3
0.0
-
(前年比)
0.1
0.2
0.0
-0.1
0.2
0.3
-0.2
-0.0
-0.2
-0.1
0.1
0.2
0.2
コア消費者物価 (前年比)
0.9
1.0
1.0
0.8
0.9
1.0
0.8
1.0
0.7
0.8
0.9
0.9
0.8
食料/アルコール/たばこ(前年比) 1.2
1.4
0.8
0.9
1.2
1.0
0.6
0.8
0.8
0.9
0.9
1.4
1.3
食料
(前年比)
0.9
1.3
0.6
0.6
1.0
0.7
0.3
0.6
0.6
0.6
0.6
1.3
-
アルコール
(前年比)
0.7
0.7
0.9
0.9
0.8
1.0
1.0
0.6
1.0
0.9
0.9
0.8
-
たばこ
(前年比)
3.4
3.0
2.2
2.5
2.9
2.7
1.9
1.9
2.0
2.7
2.7
2.4
-
エネルギー
(前年比)
-7.2
-7.2
-7.4
-7.7
-5.8
-5.4
-8.1
-8.7
-8.7
-8.1
-6.4
-6.7
-5.7
注:消費者物価の前期比は季節調整後。コア消費者物価は食料・アルコール・たばこ・エネルギーを除く。出所:Eurostat
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1