AR(Augmented Reality:拡張現実)

AR(Augmented Reality:拡張現実)
Q:AR(Augmented Reality:
拡張現実)とは何ですか
A:AR とは、現実世界に文字や画
像、音声などの人工的な情報を重
ね合わせ、人間から見た現実世界
を拡張させる技術を指します。
活用例としては視覚に訴える
サービスが中心です。例えば、現
実の建物にスマートフォン(スマ
ホ)をかざし、スマホ画面上に建
物名などの付加情報を重ね合わ
せて表示させたり、ゴーグル型端
末越しに見える風景にデジタル
なキャラクターを重ねたりなど
があります。
似 た 言 葉 と し て V R( V i r t u a l
Reality:仮想現実)がありますが、
VR では仮想世界に利用者自身が
入り込むのに対し、AR では現実
世界に人工的な情報を付加する
という違いがあります。
Q:なぜ注目されているのですか
A:実は AR の歴史は古く、初めて
登場したのは 1960 年代といわれ
ています。実用化が始まった90年
代 以 降 も 、し ば ら く は 、コ ン
ピューターの処理能力の問題や、
高価なゴーグル型の専用端末が
必要であるなどの理由により、利
用場面は、軍事産業や自動車・航
空機製造業など限定的でした。
しかし、近年のスマホの普及に
伴い、一般消費者向けサービスへ
の応用が進められ、徐々に利用者
が 拡 大 し て い ま す 。さ ら に 、
「Pokémon GO(ポケモンGO)」な
ど、AR を活用したゲームが人気
を博したことをきっかけに、急速
に注目を集めています。
Q:AR の活用範囲はどのよう
に広がっているのですか
A:AR を活用すると、利用者の位
置情報や看板などの画像情報に
応じた、様々な情報を現実世界に
加えることが可能です。例えば観
光地の案内や標識を多言語で表
示したり、工場の機械上に操作手
順を表示したりなど、幅広い分野
への応用が進められています(図
表)。また、カタログと動画を連動
させたり、服の試着や家具レイア
ウトのシミュレーションが簡単
● AR を活用した主なサービス事例
サービス名
概要
危機災害情報 AR カード
スマホ画面に映した現実風景に、災害情報や避難所情報を重ね
て表示できる災害情報アプリ
Google 翻訳(World lens)
標識などに書かれた文字にスマホをかざすと、文字を認識・翻
訳し、元の標識などに重ね合わせて表示されるアプリ
ATM・店舗検索
みずほ銀行の ATM・店舗の場所などを、スマホ画面に映した
現実風景に矢印などを重ね合わせることで案内するアプリ
妖怪カメラ
「百鬼夜行」の怪異伝説が残る大将軍商店街(京都)に現れる
妖怪の撮影ができるアプリ
とびだすカタログ
LEGO のカタログにスマホをかざすと、そのカタログに掲載さ
れた商品に関する立体動画が鑑賞できるアプリ
Doctor Cloud
目の前の機械の点検などの操作手順を、ゴーグル型端末に図や
文字で表示する、保守・点検作業支援システム
Pokémon GO
現実風景に重なるようにスマホ画面に表示されたキャラクター
(ポケモン)を捕獲するゲームアプリ
(資料)各社公表資料より、みずほ総合研究所作成
に行えるようになるなど、販売促
進手段としての活用も始まって
います。
Q:今後の注目点は何ですか
A:一つ目は、AR を表示させるデ
バイスです。近年、眼鏡型やコン
タクトレンズ型など、利用者の視
界全体を覆うタイプのデバイス
の開発が進められています。これ
らのデバイスは、利用者から見た
現実世界と仮想世界の継ぎ目を
なくし、より印象的な体験をもた
らすと言われています。
二つ目は、今後の AR 市場の成
長可能性です。ポケモン GO に対
する注目度の高まりは、AR が一
般消費者に広く知られるきっか
けとなりました。また、ポケモン
GO のようなスマホをかざすタイ
プの AR は、特別なデバイスの購
入が不要であるため、今後ますま
す普及が進むことが予想されま
す。
米国コンサルティング会社Digi
Capital によれば、2020 年におけ
る世界のARの市場規模は、約900
億ドル(約9兆円)に達するとされ
ています。わが国では 2020 年の
東京オリンピックを控え、訪日外
国人旅行者の増加が予想される
中、AR を活用した案内情報の提
供に向けた取り組みが進められ
ています。今後、さらなる技術の
発展とともに、企業や行政による
AR を活用した新しいサービスの
創出が期待されます。
みずほ総合研究所 金融調査部
主任研究員 中野悠理
[email protected]