2016 年 9 月 1 日 日本銀行福島支店 Bank of Japan Fukushima Branch 福島県金融経済概況 (2016 年 8 月分※) 【概 況】 県内景気は、一部に弱めの動きがみられるものの、基調としては緩やかに回復してい る。 最終需要の動向をみると、震災からの復旧・復興へ向けた取り組みが続く下で、公共 投資、住宅投資は高水準で推移している。個人消費は、良好な雇用・所得環境などを背 景に緩やかに持ち直しつつある。設備投資は、企業収益が高水準にある中、堅調に推移 している。 鉱工業生産は、米国等先進国向けが堅調に推移している一方、新興国向けや国内向け の一部に弱さがみられることから、全体としては横ばい圏内の動きとなっている。 雇用・所得環境をみると、強い人員不足感が続いている中、雇用者所得はほぼ前年並 みとなっている。 先行きについては、良好な雇用・所得環境が続く下で、個人消費や生産が改善するに つれて、県内景気も緩やかな回復を続けるものとみられる。もっとも、海外経済や為替 相場の動向、復旧・復興需要のピークアウトなどが県内景気に及ぼす影響については、 引き続き注意深くみていく必要がある。 ※ 直近までに入手可能な金融経済統計およびヒアリング情報をもとに、県内の金融経済動向を 取り纏め。 【前回からの基調の変化】 総括 個人消費 住宅投資 設備投資 公共投資 生産 雇用・所得 (注) :前回から改善度合いが強まっている、 もしくは悪化度合いが弱まっている。 :前回から変化なし。 :前回から改善度合いが弱まっている、 もしくは悪化度合いが強まっている。 【本件に関する問い合わせ先】 日本銀行 福島支店 総務課 TEL:024-521-6353 本資料は、ホームページ(http://www3.boj.or.jp/fukushima/)にも掲載しています。 1 1.需要項目別の動向 【個人消費】 個人消費は、良好な雇用・所得環境などを背景に緩やかに持ち直しつつある。 大型小売店売上高は、衣料品が低調なものの、食料品や住宅関連商品などの堅調を 主因に、全体としては緩やかに持ち直している。 乗用車新車登録台数は、新型車投入効果がみられるものの、基調としてはほぼ前年 並みとなっている。 家電販売は、総じてみれば緩やかに持ち直している。パソコンは低調なものの、ス マートフォン、タブレット端末は底堅く推移しているほか、テレビ、白物家電は堅調 である。 旅行取扱高は、海外旅行が政情不安の影響から低調なものの、ウエイトの高い国内 旅行は堅調を持続しており、全体としては底堅く推移している。 県内主要観光施設や宿泊施設への入込みは、緩やかに持ち直しつつある。 大型小売店売上高(既存店) (前年比、%) 35 福島県 25 全国 15 5 ▲5 ▲ 15 ▲ 25 ▲ 35 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ( 前 年 比900 県内主要観光 、 1… ▲% 100 施設の入込み └8 1┘ ) 客数(年) (出所)日本 銀行福島支 店 (注)10年ま では9先ベー ┘└ ス、11年以降 1 3 ┘└ 1 は12先ベー スで算出。 7月: 2.3% 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)経済産業省 乗用車新車登録台数(含む軽乗用車) (前年比、%) 200 福島県 150 全国 100 50 0 7月:0.5% ▲ 50 ▲ 100 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)福島運輸支局、全国軽自動車協会連合会、日本自動車販売協会連合会 県内主要観光施設の入込み客数 (前年比、%) 500 400 300 200 100 0 ▲ 100 6月: ▲1.9% └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 2 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)日本銀行福島支店 (注)10年までは9先ベース、11年以降は12先ベースで算出。 【住宅投資】 住宅投資は、高水準で推移している。 新設住宅着工戸数は、被災住宅の建て替えや避難者の移転需要などを背景に、極め て高い水準で推移している。この間、受注面は堅調な動きが続いているものの、人員 不足の影響などから、着工や工事の進捗が遅れ気味との指摘が引き続き聞かれている。 月平均でみた新設住宅着工戸数 (戸) (前年比、%) 新設住宅着工戸数(総戸数) 1,800 140 1,600 120 福島県 1,400 100 全国 1,200 80 1,000 60 800 40 20 600 7月:18.9% 0 400 ▲ 20 200 ▲ 40 0 10 11 12 13 14 15 ▲ 60 16 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 16 (年度) (注)16年度については、16/4月~直近までの月平均。 (年度) (出所)国土交通省 【設備投資】 設備投資は、企業収益が高水準にある中、堅調に推移している。 6月短観における県内企業の2016年度設備投資計画は、製造業、非製造業ともに前 年を上回る計画となっている。こうした下で、建築着工床面積(非居住用)は、月々 の振れを伴いながら、均してみれば、前年を下回る水準で推移している。 120 (千㎡) 月平均でみた建築着工床面積(非居住用) (前年比、%) 建築着工床面積(非居住用) 120 100 100 80 福島県 全国 60 80 40 60 20 0 40 ▲ 20 20 7月:▲26.6% ▲ 40 ▲ 60 0 10 11 12 13 14 15 ▲ 80 16 (年) └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年 ) (注)3か月後方移動平均 (出所)国土交通省 (注)16年については、16/1月~直近までの月平均。 3 【公共投資】 公共投資は、震災からの復旧・復興へ向けた取り組みが続く下で、高水準で推移し ている。 公共工事請負金額は、高水準ながらもこのところ減少している。この間、建設関連 の人員不足感は依然として強く、資材価格は高止まっている。 900 月平均でみた公共工事請負金額 (億円) 公共工事請負金額 (前年比、%) 400 800 350 福島県 700 300 全国 600 250 500 200 400 150 100 300 50 200 0 100 0 7月:▲ 22.2% ▲ 50 10 11 12 13 14 15 ▲ 100 16 (年度) (注)16年度については、16/4月~直近までの月平均。 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 16 (年度) (出所)東日本建設業保証㈱ほか 2.生産動向 鉱工業生産は、米国等先進国向けが堅調に推移している一方、新興国向けや国内向 けの一部に弱さがみられることから、全体としては横ばい圏内の動きとなっている。 業種別にみると、情報通信機械は、海外向け、国内向けともに横ばい圏内の動きと なっている。はん用・生産用・業務用機械は、米国等先進国向けが堅調な一方、新興 国向けに弱さがみられることから、横ばい圏内の動きとなっている。電子部品・デバ イスは、自動車向けの堅調などから、基調としては緩やかな持ち直しの動きが続いて いる。輸送機械は、国内商用車向けや米国等海外向けが堅調に推移しているものの、 国内乗用車向けや一部新興国向けが弱めの動きとなっており、全体としては横ばい圏 内の動きとなっている。この間、窯業・土石は、復旧・復興関連需要が続く下で、県 外の住宅向けに動意がみられることから、全体としては持ち直している。 鉱工業生産指数(季調済) 110 100 90 6月:84.9 80 70 福島県 60 全国 50 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)福島県、経済産業省 (注)2010年基準。 4 3.雇用・所得 雇用・所得環境をみると、強い人員不足感が続いている中、雇用者所得はほぼ前年 並みとなっている。 有効求人倍率が高水準を続けており、人員不足感が強い状態が続いている。この間、 大口人員整理や雇用保険受給者数は、極めて低い水準で推移している。 こうした中、常用労働者数が前年をやや下回って推移している一方、一人当たり現 金給与総額がほぼ前年並みで推移していることから、雇用者所得はほぼ前年並みと なっている。この間、所定外労働時間は前年を下回って推移している。 有効求人倍率(季調済) (倍) 1.7 福島県 1.5 7月: 1.40倍 全国 1.3 1.1 0.9 0.7 0.5 0.3 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)福島労働局、厚生労働省 4.物価 消費者物価指数(除く生鮮食品)は、食料や教養娯楽等が上昇しているものの、ガ ソリンなど交通・通信や光熱・水道の下落から、前年を下回っている。 消費者物価指数(除く生鮮食品) (前年比、%) 6.0 5.0 福島市 4.0 全国 3.0 2.0 1.0 0.0 7月:▲ 0.5% ▲ 1.0 ▲ 2.0 ▲ 3.0 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)総務省 (注)2010年までは2005年基準。2011年~2015年は2010年基準。2016年以降は2015年基準。 5 5.金融情勢 実質預金は、賠償金の流入等から、引き続き前年を上回っているものの、公金預金 の減少からこのところ前年比プラス幅は縮小している。 貸出は、住宅ローンが底堅く推移する中、事業性融資にも動意がみられていること から、全体としても前年を上回っている。 貸出約定平均金利は、低下基調にある。 企業倒産は、引き続き落ち着いた動きとなっている。 民間金融機関預金・貸出 (前年比、%) 25.0 20.0 実質預金 貸出 15.0 10.0 5.0 7月:3.9% 7月:2.4% 0.0 ▲ 5.0 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)日本銀行福島支店 管内11行庫 貸出約定平均金利 (%) 3.1 銀行 2.8 信金 2.5 2.2 1.9 7月:1.719% 1.6 1.3 1.0 7月:0.935% 0.7 └ 1 0 ┘└ 1 1 ┘└ 1 2 ┘└ 1 3 ┘└ 1 4 ┘└ 1 5 ┘└ 1 6 (年) (出所)日本銀行福島支店 以 6 上
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