国 際 協 力 事 業 安全 対 策 会 議 最終報告 平 成 28年 8月 30日 外務省 独 立 行 政 法 人 国際 協 力 機 構 外 務 省 及 び独 立 行 政 法 人 国 際 協 力 機 構 (JICA)は,7月 2日 のダッカ襲 撃 テ ロ事 件 を 契 機 と し て, 国 際 協 力 事 業 関 係 者 ( 以 下 「事 業 関 係 者 」と い う 。 ) (注 1)と日 本 の非 政 府 組 織 (NGO)(注 2)のための新 たな安 全 対 策 を策 定 す べく,岸 田 文 雄 外 務 大 臣 の下 ,7月 12日 に「国 際 協 力 事 業 安 全 対 策 会 議 」を 発 足 させた。同 会 議 において,外 務 省 及 びJICAは,関 係 省 庁 (別 紙 1)と共 に, かつ,政 府 関 係 機 関 (同 )の緊 密 な協 力 と民 間 の様 々な有 識 者 (別 紙 2)から の貢 献 を得 て,本 日 までに5回 の会 合 を重 ねてきた。その結 果 ,外 務 省 及 びJI CAは,8月 1日 に発 表 した「中 間 報 告 」で示 した考 え方 と基 本 的 な方 向 性 を踏 まえつつ,下 記の措 置 をとることとした。 政 府 は,今 後 とも開 発 途 上 国 を支 援 し続 けていくこととしており,その決 意 は 不 変 であるが,現 下 の国 際 情 勢を考 えれば,現 地 で国 際 協 力 に携 わる日 本 人 の安 全 を確 保 すべく,改 めて万 全 の態 勢 を構 築 することが不 可 欠 である。加 え て,7月 に南 スーダンで発 生 した衝 突 事 案 により,事 業 関 係 者 やNGO の職 員 が退 避 を余 儀 なくされたが,このようなテロ以 外 の事 案 における安 全 確 保 の方 途 についても,この機 会 に改 めて見 直 すことが必 要 である。「安 全 はタダである」 との認 識 は完 全 に過 去 のものであり,組 織 のトップ自 らが安 全 確 保 に関 する問 題 意 識を強く持 って,不 断に対 策を進 めることが不 可欠 になっている。 国 際 協 力 事 業 の現 場 においては,多 種 多 様 な事 業 関 係 者 とその職 員 がチ ームワークを発 揮 しながら活 躍 している。事 業 関 係 者 の中 には中 小 企 業 も多 く, 事 業 は時 に大 都 市 から遠 く離 れた場 所 で実 施 され,加 えて,これとは別 途 ,N GOがその専 門 性 を活 かして地 元 密 着 型 の活 動 を行 っている。このように官 民 の様 々な人 々が途 上 国 の開 発 等 のために現 場 で共 に汗 を流 している姿 は,日 本 の国 際 協 力 の極 めて重 要 なひとつの側 面 であり,外 務 省 及 びJICAとしては, 多 種 多 様 な事 業 関 係 者 やNGOの職 員 等 の安 全 をあまねく確 保 することを目 指 して可 能 な限 りの措 置 をとるべきものである。なお,事 業 関 係 者 やNGOの安 全 対 策 が重 要 である旨 は,開 発 協 力 大 綱 (平 成 27年 2月 10日 閣 議 決 定 )で も強 調されている。 本 最 終 報 告 は,このような認 識 に立 って,事 業 関 係 者 とNGOが安 全 確 保 の ための自 助 努 力 を行 っていることを大 前 提 としつつ,その中 には態 勢 が必 ずし 1 も強 くない企 業 や組 織 が含 まれることも念 頭 に置いて,安 全 対 策 に関 する外 務 省 及 びJICAの強い意 志 を具 体 化するものである。 (注 1)ここでは,国 際 協 力 事 業 を実 施 する政 府 関 係 機 関 ,JICAが派 遣 する専 門 家 及 びボランティア,JICAが契 約 するコンサルタント等 の企 業 ,我 が国 の資 金 協 力 を受 けた現 地 政 府 の事 業 を受 注 した企 業 (受 注 企 業 のサブコントラクタ ー,調 達 代 理 機 関 を含 む。),草 の根 ・人 間 の安 全 保 障 無 償 資 金 協 力 に従 事 する日 本 企 業 ・地 方 公 共 団 体 の職 員 及 び外 部 委 嘱 員 ,いまだ政 府 の資 金 協 力 事 業 に結 実 していない案 件 の発 掘 調 査 等 を実 施 している日 本 企 業 ,これら の企 業 の協 力 企 業 ,地 方 公 共 団 体 関 係 者 ,大 学 関 係 者 などを広 く包 含 する 概 念 である。JICAとの間 で契 約 関 係にあるNGOも含む。 (注 2)JICAとの間 で契 約 関 係 にはないものの,政 府 のODA予 算 から資 金 を 受 けて活 動 する日 本 のNGOを指 す。ただし,外 務 省 及 びJICAからの情 報 提 供 等 の対 象 には,政 府 のODA予 算 から資 金 を受 けていない日 本 のNGO ,市 民 社 会 組 織 等 も可 能 な限り含める。 記 1.脅 威 情報 の収 集・分 析・共 有 の強 化 刻 一 刻 と変 わりゆく国 際 情 勢 の中 ,国 際 協 力 事 業 の安 全 対 策 のために必 要 な脅 威 情 報 の収 集 ・分 析 ・共 有 の在 り方 については,安 全 対 策 の実 効 性 を 高めるために不 断の改 善を要する。具 体 的 な措 置は,次のとおりである。 (1)情 報 収集 ・分 析 態 勢の強 化 外 務 省 の海 外 安 全 情 報 等 は,「国 際 テロ情 報 収 集 ユニット」を始 め,本 省 ・在 外 公 館 で秘 匿 性 の高 いインテリジェンス情 報 を含 む脅 威 情 報 を収 集 し,国 際 情 報 統 括 官 組 織 等で分 析を行い,このようにして収 集 ・分 析された情 報 等に基 づき,領 事 局 が作 成 ・発 信 している。JICAは,外 務 省 が発 信 する海 外 安 全 情 報 等 や内 外 の報 道 はもとより,契 約 委 託 先 の危 機 コンサルタント,国 連 を始 め とする他 援 助 機 関 ,現 地 の安 全 対 策 専 門 家 を含 む多 岐 にわたる情 報 源 から 情 報を得 て,事 業を実 施する国 における地 方 ごとの脅 威 度を評 価 している。 これらの組 織 を強 化 し,情 報 の質 を一 段 と向 上 させ,事 業 関 係 者 やNGOに とってこれらの情 報をより利 用しやすいものとするため,次 の措 置 をとる。 ① 国 際 テロ情 報 収 集 ユニットを強 化 するとともに,外 務 本 省 及 び在 外 公 館 の 地 域 ・語 学 専 門 家 を増 強 するため,研 修 の充 実 及 び増 員 を含 む必 要 な措 2 置 をとる。 ② JICAにおいても,安 全 対 策 及 び地 域 の専 門 家 ,地 域 情 勢 や危 機 管 理 の 外 部 専 門 家 ・アドバイザーを増 強 する等 して,情 報 収 集 ・分 析 のための態 勢を強 化 するとともに,情 報を的 確 に活 用 できるようにするための能 力を強 化 する。また,政 府 との円 滑 な情 報 共 有 のために必 要 な情 報 管 理 の態 勢 を整 備する。 ③ 外 務 省 及 びJICAは,現 場 で活 動 する事 業 関 係 者 等 との意 見 交 換 や情 報 交 換 の場 において安 全 に関 する有 益 な情 報 を得 た場 合 には,安 全 対 策 の 強 化 のために,これを政 府 内 で有 効 に活 用 する。外 務 省 及 びJICAは,事 業 関 係 者 等 が外 務 省 及 びJICAに対 して情 報 提 供 を躊 躇 なく行 えるよう, あらかじめ連 絡 先 ・連 絡 方 法 を決 めておくとともに,噂 など事 実 確 認 ができ ていない情 報 であっても,その提 供を歓 迎する。 ④ 外 務 省 及 びJICAは,関 係 省 庁 と連 携 しつつ,現 地 の関 係 当 局 (警 察 ,入 国 管 理 ,税 関 等 )と の関 係 強 化 に特 に注 力 し ,こ れらの 当 局 と の情 報 交 換 ・連 携 を強 化 する。その際 ,下 記 3.(1)②で述 べる治 安 分 野 の能 力 構 築 支 援 も活 用する。 ⑤ 外 務 省 は,関 係 省 庁 と連 携 しつつ,同 盟 国 ,友 好 国 ,国 連 安 全 保 安 局 (U NDSS)等との情 報 交 換 を更に活 発 化させる。 (2)情 報 共有 の徹 底 (イ)在 留 届 の提 出 及 び「たびレジ」への登 録 は,事 業 関 係 者 や NGOが外 務 省 の海 外 安 全 情 報 を始 めとする邦 人 保 護 のための情 報 を確 実 に受 け取 る上 で 最 重 要 の基 礎 となるので,その徹 底 を期 すことが 安 全 対 策 における全 ての基 本 となる。ついては,次 の措 置 をとる。この項 を含 む本 最 終 報 告 の全 ての項 で 共 通 した考 え方 は,事 業 関 係 者 と外 務 省 及 びJICAとの間 の契 約 関 係 の有 無 に関 わりなく,外 務 省 及 びJICAとして,法 的 に差 し障 りがない限 り, 契 約 関 係 にある事 業 関 係 者 とそうでない事 業 関 係 者 とを区 別 せず,できる限 り広 範 囲 の 事 業 関 係 者 ,更 にはNGOに対 して情 報 と危 機 感 を共 有 する努 力 を払 うという ものである。 ① JICAとの間 で契 約 関 係 にある事 業 関 係 者 については,その職 員 等 が在 留 届 の提 出 ・「たびレジ」登 録 を行 うよう,契 約 文 書 等 に適 切 な内 容 の規 定 を 置く。 ② JICAとの間 で契 約 関 係 にない事 業 関 係 者 については,その職 員 等 が在 留 届 の提 出 ・「たびレジ」登 録 を行 うよう,外 務 省 及 びJICAと関 係 団 体 との 間 の協 議 を通 じて確 保 する。その際 ,外 務 省 は,必 要 に応 じ,関 係 省 庁 の 3 協 力を求める。 ③ 外 務 省 が直 接 実 施 する無 償 資 金 協 力 の関 係 者 (調 達 代 理 機 関 ,草 の根 ・ 人 間 の安 全 保 障 無 償 資 金 協 力 に従 事 する日 本 企 業 及 び地 方 公 共 団 体 , 外 部 委 嘱 員 等 )については,その職 員 等 が在 留 届 の提 出 ・「たびレジ」登 録 を行 うよう,外 務 省とこれらの関 係 者 との間 の協 議を通じて確 保 する。 ④ 政 府 のODA予 算 から資 金 を受 けるNGOについては,事 業 の関 連 文 書 等 において,在 留 届 の提 出 ・「たびレジ」登 録を行 うことが必 要 である旨を 外 務 省 とこれらのNGOとの間 で確 認し合 う。 ⑤ JICA職 員 に対 しては,JICAの内 規 等 により,在 留 届 の提 出 ・「たびレジ」 登 録を徹 底 する。 (ロ)これらに加 えて,次の措 置をとる。 ① 「国 際 協 力 事 業 安 全 対 策 会 議 」を常 設 化 する。同 会 議 は,外 務 省 とJICA との間 の脅 威 情 報 や危 機 意 識 の共 有 ,緊 急 連 絡 先 の共 有 ,行 動 規 範 の 共 有 を含 む,国 際 協 力 事 業 の安 全 対 策 に関 する事 項 全 般 を取 り扱 う。同 会 議 には,随 時 ,関 係 省 庁 ,JICA以 外 の政 府 関 係 機 関 ,事 業 関 係 者 ,N GO等 の参 加 を得 て,安 全 対 策 に係 る情 報 交 換 ,啓 発 等 を行 う。同 会 議 に おいて,事 業 関 係 者 やNGOとの間 で各 国 の治 安 情 勢 や安 全 対 策 に関 す る危 機 感 をトップレベル,実 務 レベルの双 方 で繰 り返 し共 有 するよう努 める。 常 設 化 後 初めての会 合は,本 年 9月 中をめどに開 催 する。 ② 在 外 公 館 で実 施 している「現 地 ODAタスクフォース」で安 全 対 策 を議 論 し, また,在 外 公 館 と在 留 邦 人 との意 見 交 換 の場 である「安 全 対 策 連 絡 協 議 会 」にJICA在 外 事 務 所 や事 業 関 係 者 ,JICA以 外 の政 府 関 係 機 関 ,NG Oが一 層 積 極 的 に参 加 するよう改 めて促 すとともに,これらの場 で在 外 公 館 及 びJICA在 外 事 務 所 が現 地 当 局 との間 で行 う安 全 対 策 に係 る協 議 の 結 果 などを共 有 するなどして,官 民 の連 携を強 化する。 ③ JICAから事 業 関 係 者 への情 報 提 供 がシステマティックに漏 れなく行 われる よう,事 業 関 係 者 の要 望 を踏 まえて連 絡 先 ・連 絡 方 法 を決 定 する(ユーザ ーフレンドリーな情 報 共 有 を行う。)。 2.事 業 関係 者 及 びNGOの行 動 規 範 (1)緊 急 連絡 網 の構 築 ,緊 急 連 絡訓 練 行 動 規 範 をより広 範 囲 の事 業 関 係 者 やNGOに周 知 し,また,脅 威 情 報 の共 有 や緊 急 時 の安 否 確 認 等 を行 う ためには,これらの職 員 等 の 緊 急 連 絡 先 を可 能 な限 り正 確 に把 握 しておくことが重 要 であるため,次 の措 置 をと 4 る。 ① JICAとの間 で契 約 関 係 にある事 業 関 係 者 については,その職 員 等 の緊 急 連 絡 先 がJ ICA に登 録 さ れるよう , 契 約 文 書 等 に適 切 な内 容 の 規 定 を 置 く。 ② JICAとの間 で契 約 関 係 にない事 業 関 係 者 については,その職 員 等 の緊 急 連 絡 先 が外 務 省 及 びJICAに登 録 されるよう,外 務 省 及 びJICAと関 係 団 体 との間 の協 議 を通 じて確 保 する。その際 ,外 務 省 は,必 要 に応 じ,関 係 省 庁の協 力を求 める。 ③ 外 務 省 が直 接 実 施 する無 償 資 金 協 力 の関 係 者 については,その 職 員 等 の緊 急 連 絡 先 が在 外 公 館 に登 録 されるよう,外 務 省 とこれらの関 係 者 との 間 の協 議を通じて確 保する。 ④ 政 府 のODA予 算 から資 金 を受 けるNGOについては,その緊 急 連 絡 先 が 外 務 省 に登 録 されるよう,外 務 省 とこれらのNGOとの間 の協 議 を通 じて確 保する。 ⑤ JICA在 外 事 務 所 は,作 成 した緊 急 連 絡 先 を在 外 公 館 にも共 有 する。両 者 は,緊 急 連 絡 先 に係 る情 報の管 理 に万全 を期 す。 ⑥ 在 外 公 館 及 びJICA在 外 事 務 所 は,定 期 的 に又 は事 前 予 告 なしに,緊 急 事 態 の発 生 を想 定 した連 絡 訓 練 (電 話 ,メール,SMS等 を活 用 )を実 施 す る。その際 ,事 業 関 係 者 やNGOにも参 加 を呼 びかけ,関 係 者 の危 機 意 識 の向 上 及 び連 絡 方 法 の改 善を不 断 に図 っていく。 (2)行 動 規範 の徹 底・より広 範 囲の事 業 関 係 者 への共 有 ① JICAは,行 動 規 範 を遵 守 すべき一 人 ひとりが必 ず これを遵 守 するよう周 知 徹 底 を行 う。JICAは,行 動 規 範 を随 時 改 訂 し,緊 急 連 絡 先 に対 して周 知 するとともに,安 全 対 策 上 問 題 ない限 り,関 係 省 庁 ,JICA以 外 の政 府 関 係 機 関 ,事 業 関 係 者 及 びNGOにも共 有 する(ただし,共 有 先 において 情 報 管 理が適 切 になされることが前 提 となる。)。 ② JICAとの間 で契 約 関 係 にある事 業 関 係 者 については,その職 員 等 がJIC Aの行 動 規 範 を確 実 に遵 守 して行 動 するよう,契 約 文 書 等 に適 切 な内 容 の規 定 を置 く。行 動 規 範 が変 更 された場 合 ,職 員 等 が変 更 内 容 を理 解 し たことを明 示 的に確 認 する仕 組 みを構 築する。 ③ JICAとの間 で契 約 関 係 にない事 業 関 係 者 については,その職 員 等 がJIC Aの行 動 規 範 をできるだけ踏 まえて行 動 するよう,外 務 省 及 びJICAは,こ れらの事 業 関 係 者 に情 報 提 供 を行 う。その際 ,外 務 省 及 びJICAは,必 要 に応じ,関 係 省 庁 や関 係 団 体の協 力を求 める。 5 ④ 事 業 関 係 者 の中 には,外 務 省 以 外 の省 庁 の所 掌 事 務 の下 で活 動 してい るものもあるので,外 務 省は,必 要 に応じ,関 係 省 庁の協 力を求 める。 (3)NGOに対 する情 報 提 供 NGOの活 動 の特 殊 性 や,NGOにより自 主 的 な安 全 対 策 が行 われているこ とに留 意しつつ,次の措 置をとる。 ① 外 務 省 及びJICAが発 信している情 報 をNGOに対 しても密 に共 有 する。 ② JICAの行 動 規 範 を,関 心を有するNGOに随 時 提 供する。 ③ 外 務 省 とNGOとの間 で安 全 対 策 に係 る意 見 交 換 を行 うため,「 NGO・外 務 省 定 期 協 議 会 連 携 推 進 委 員 会 」の枠 組 みにおいて安 全 対 策 に特 化 し た会 合 を年 に2回 程 度 開 催する。 3.ハード・ソフト両 面 の防 護 措 置 ,研 修・訓 練の強 化 (1)現 地 当局 による警 備 強 化 に向けた働 きかけ・治 安 能 力 構 築 支 援 ① 外 務 省 及 びJICAは,現 地 当 局 による警 備 の強 化 を得 るため,関 係 省 庁 と 連 携 して現 地 当 局 と緊 密 に協 議 を行 い,オールジャパンで関 係 を深 めるよ う努 める。 ② 外 務 省 及 びJICAは,その際 ,ODAを有 効 に活 用 し,活 力 に満 ち,安 定 し た社 会 の実 現 に向 けた支 援 等 に加 え,現 地 当 局 の具 体 的 なニーズを踏 ま えた治 安 能 力 構 築 支 援 を関 係 省 庁 と連 携 して積 極 的 に行 う。政 府 は,そ のために喫 緊 に必 要 な予 算 措 置 として,平 成 28年 度 2次 補 正 予 算 案 にお いて55億 円を計 上した。 ③ ハード・ソフト両 面 の防 護 措 置 の 強 化 のため,民 間 の警 備 会 社 の活 用 が 適 当 な場 合 は,それも活 用 する。また,危 険 度 が高 いにもかかわらず現 地 当 局 による警 備 ・警 護 が十 分 に得 られない国 においては,民 間 警 備 会 社 による武 装 を伴 う警 備 ・警 護 を活 用 することを検 討 し,その際 ,必 要 に応 じ, 現 地 当 局の側 面 支 援 を得 るべく同 当局 に働 きかける。 (2)研 修・訓 練の強 化 事 業 関 係 者 やNGOの中 には態 勢 が必 ずしも強 くない中 小 企 業 や組 織 が含 まれることを念 頭 に置 いて,より広 範 囲 の事 業 関 係 者 やNGOに研 修 ・訓 練 の 機 会を提 供し,併せてその質を向 上させるため,次 の措 置をとる。 ① JICAは,事 業 関 係 者 の安 全 対 策 担 当 者 向 けの研 修 ・訓 練 の機 会 を新 た に提 供 する。これには,外 務 省 と協 力 しつつ,海 外 安 全 情 報 等 の公 開 情 報を的 確に活 用 するために役 立つ内 容 を含める。 6 ② JICAは,研 修 ・訓 練 カリキュラムや啓 発 用 教 材 を充 実 させる。また,JICA は,研 修 ・訓 練 の機 会 をより広 範 囲 の事 業 関 係 者 に提 供 するための仕 組 みの構 築を開 始する。 ③ JICAは,JICAとの間 で契 約 関 係 にある事 業 関 係 者 の職 員 等 が研 修 ・訓 練 を受 講 することを改 めて徹 底 する。JICAとの間 で契 約 関 係 にない事 業 関 係 者 (外 務 省 が直 接 実 施 する無 償 資 金 協 力 の関 係 者 を含 む。)の職 員 等 及 び政 府 のODA予 算 から資 金 を受 けるNGOの職 員 等 に対 しても,JIC Aとの間 で契 約 関 係 にある事 業 関 係 者 の職 員 等 に対 するものと同 等 の内 容の研 修 ・訓 練の受 講を推 奨する(実 施の具 体 的 な要 領 は追 って検 討 )。 ④ JICA自 身 によるものに加 え,外 部 委 託 による実 践 的 な研 修 ・訓 練 も実 施 する。 ⑤ 外 務 省 及 びJICAは,外 務 省 が国 内 外 で開 催 している安 全 対 策 セミナーを 事 業 関 係 者やNGOが最 大 限 活 用するよう呼びかける。 (3)在 外 公館 ・JICA在 外 事 務 所の防 護 措 置 の増 強 等 ① 在 外 公 館 及 びJICA在 外 事 務 所 ,資 金 協 力 と技 術 協 力 のプロジェクトサイ ト・事 務 所 ・宿 舎 ,事 業 関 係 者 の職 員 等 の移 動 経 路 等 におけるハード面 で の防 護 態 勢 を可 能 な限 り確 かなものとすべく,脅 威 度 の高 い国 を中 心 に, 安 全 対 策の専 門 家 (外 部 専 門 家を含む。)による定 期 点 検を実 施 する。 ② 脅 威 度 の高 い地 域 においては,邦 人 保 護 のいわば「最 後 の砦 」となる在 外 公 館 及 びJICA在 外 事 務 所 が保 有 ・リースする通 信 機 器 ,防 弾 車 ,警 護 員 等 を増 強 する。政 府 は,そのために喫 緊 に必 要 な予 算 措 置 として,平 成 2 8年 度 2次 補 正 予 算 案 において約 10億 円 を計 上 した。在 外 公 館 及 びJIC A在 外 事 務 所 の警 備 強 化 のため,必 要 に応 じ,現 地 の関 係 当 局 にも協 力 を要 請する。 ③ 国 際 協 力 事 業 の広 報 には引 き続 き注 力 するが,仮 に治 安 に係 る懸 念 があ る場 合には,広報 の方 法を変 更するなど,臨 機 応 変に対 応 する。 (4)事 業 関係 者 の安 全 対 策 強 化 支 援 (イ)資 金 協 力を実施 する事 業 関 係 者 への支 援 ① 現 在 ,無 償 資 金 協 力 事 業 においては,受 注 する企 業 の安 全 対 策 経 費 を同 事 業 の経 費 として計 上 することが可 能 である。また,安 全 対 策 設 備 の調 達 , プロジェクトサイトからの退 避 ,事 業 中 断 に伴 う待 機 等 が理 由 でこれらの企 業 に追 加 出 費 が必 要 となった場 合 には,予 備 的 経 費 の活 用 が可 能 である。 外 務 省 及 びJICAは,事 業 関 係 者 に対 してこの点 を改 めて丁 寧 に説 明 し, 7 その一 層の活 用 を促 す。 ② なお,草 の根 ・人 間 の安 全 保 障 無 償 資 金 協 力 事 業 においては,現 地 にお いて日 本 企 業 ・地 方 公 共 団 体 の職 員 が研 修 や技 術 指 導 を行 う場 合 ,安 全 対 策 経 費 を同 事 業 の経 費として計 上 することが可 能 であるので,外 務 省 は, この点 を事 業 関 係 者 に対 して改 めて丁 寧 に説 明 する。また,外 務 省 は,安 全 対 策 経 費を計 上した事 業 関係 者 が価 格 比 較・見 積り合 わせの際 に不利 な扱 いを受 けないよう,価 格 比 較 ・見 積 り合 わせにおいて安 全 対 策 経 費 を 事 業 経 費 とは切 り離して扱 うよう,資 金 供 与 先 (現 地 NGO,現 地 地 方 公 共 団 体 等)に働 きかける。 ③ 円 借 款 事 業 においても,受 注 企 業 の一 般 的 な安 全 対 策 経 費 を借 款 額 に 計 上 することは可 能 である。一 方 で,現 地 政 府 は,安 全 対 策 の強 化 に伴 う 借 款 額 の増 大 を望 まない場 合 がある。外 務 省 及 びJICAは,安 全 対 策 経 費 の借 款 額 への計 上 が行 われるよう,現 地 政 府 に対 する働 きかけを強 化 するとともに,そのような案 件 においては安 全 対 策 経 費 を適 切 に含 んだ形 で入 札 評 価 がなされるよう現 地 政 府 に対 する働 きかけを 行 う。また,外 務 省 及 びJICAは,特 に円 借 款 事 業 に従 事 する中 小 企 業 について,平 素 から の安 全 対 策 経 費 を可 能 な範 囲 でJICAで手 当 てすべく,具 体 的 な支 援 の 在 り方 を検 討 する。さらに,治 安 情 勢 の悪 化 が原 因 で事 業 が遅 延 する場 合 に,受 注 企 業 が当 該 遅 延 の責 を負 うことのないよう,現 地 政 府 に対 する 働 きかけを強 化 する。 ④ 円 借 款 事 業 については,現 在 ,資 金 の貸 与 に係 る国 際 約 束 において,現 地 政 府 による当 該 事 業 の安 全 対 策 に係 る規 定 が含 まれているが,無 償 資 金 協 力 事 業 については,資 金 の提 供 に係 る国 際 約 束 にこのような規 定 は ない。外 務 省 は,現 地 政 府 が安 全 対 策 を行 う責 務 を担 うことを確 保 するた めに,当 該 国 際 約 束 を始 めとする関 連 の二 国 間 文 書 にその旨 を明 記 する ことを含 む何 らかの具 体 的 な措置をとる。 ⑤ 上 記 ①から④までで述 べた現 地 政 府 に対 する働 きかけのための協 議 は, 各 国において可 能 な限り速やかに開 始 する。 (ロ) 技術 協 力を実 施する事 業 関 係 者 への支 援 技 術 協 力 を実 施 する事 業 関 係 者 の安 全 対 策 については,原 則 として,各 国 との技 術 協 力 協 定 において,現 地 政 府 に義 務 付 けている。外 務 省 は,技 術 協 力 協 定の締 結 交 渉を更 に加 速させる。 (ハ) NGOに対 する協 力 8 政 府 のODA予 算 から資 金 を受 けるNGO も,日 本 NGO連 携 無 償 資 金 協 力 事 業 及 びジャパン・プラットフォーム事 業 において安 全 対 策 経 費 を計 上 すること が認 められており,外 務 省 は,NGOに対 してこの点 を改 めて丁 寧 に説 明 し,そ の一 層 の活 用 を促 すとともに,必 要 に応 じ,この取 組 を強 化 していくことを検 討 する。 4.危 機 発生 後 の対 応 ① JICAは,自 らの国 際 協 力 事 業 をめぐって事 件 ・事 故 が発 生 した場 合 には, 外 務 省 等 の協 力 を得 つつ,直 接 被 害 者 に対 する支 援 に全 力 をあげるととも に,直 接 被 害 者 はもとより間 接 被 害 者 (現 地 ・国 内 のプロジェクトメンバー, 同 伴 家 族 等 )のプライバシー等 に十 分 配 慮 しつつ,メンタルケア等 の支 援 を 行うための態 勢を充 実 化させる。 ② 外 務 省 及 びJICAは,①の点 を含 め,事 件 ・事 故 が発 生 した際 の官 民 の協 力の在り方 について,関 係 省 庁や関 係 団 体 との間 で対 話を行 っていく。 ③ JICAは,危 機 発 生 に備 え,事 業 関 係 者 による必 要 な保 険 への加 入 を確 保 することを含め,平 素 からの準 備を引 き続 き徹 底していく。 ④ 南 スーダンにおいて,JICA職 員 のみならず,多 くの事 業 関 係 者 ,一 部 のN GO,更 には当 該 事 業 関 係 者 の下 で労 務 を提 供 している外 国 人 も共 に退 避 の対 象 としたことを踏 まえ,外 務 省 及 びJICAは,内 閣 官 房 ,内 閣 府 ,防 衛 省 を含 む関 係 省 庁 との連 携 の在 り方 等 を検 討 するため,関 係 省 庁 と 共 に,特 定 のシナリオを対 象 にした机 上 演 習 を行 い,手 順 等 についてマニュア ルを整 備 する。この机 上 演 習は,原 則として本 年 中に実 施 することとする。 ⑤ 円 借 款 事 業 又 は無 償 資 金 協 力 事 業 の受 注 企 業 (サブコ ント ラクタ ーを 含 む。)を始 めとする事 業 関 係 者 の職 員 等 が緊 急 に退 避 することが必 要 にな ったときは,外 務 省 及 びJICAは,現 地 政 府 との調 整 も含 めて可 能 な限 りこ れを支 援 することとし,その支 援 内 容 を具 体 化 する。また, 外 務 省 及 びJIC Aは,特 に中 小 企 業 について,退 避 に係 る経 費 を可 能 な範 囲 でJICAで手 当 てすべく,具 体 的 な支 援の在り方を検 討 する。 5.外 務 省 及 びJICAの危 機 管 理 意 識 の向 上・態 勢 の在り方 ① 外 務 省 は,国 際 協 力 事 業 の安 全 対 策 について,担 当 する大 臣 官 房 審 議 官 又 は参 事 官 及 び国 際 協 力 局 の担 当 者 を指 名 し,態 勢 強 化 を図 る。併 せて,各 地 域 で拠 点 となる在 外 公 館 において,安 全 対 策 の抜 本 的 改 革 の ための態 勢強 化を図 る。 ② JICAは,理 事 長 主 導 で安 全 管 理 態 勢 の抜 本 的 な改 革 を行 い,その一 環 9 として,役 員 級 担 当 職 を中 心 とした安 全 対 策 態 勢 を強 化 し ,本 部 安 全 管 理 部 署 の増 員 ・格 上 げや脅 威 度 の高 い在 外 事 務 所 における安 全 対 策 専 任 スタッフの配 置 等を図 る。 6. ODA事 業 以 外の国 際 協 力 事 業との関 係 本 最 終 報 告 に盛 り込 まれた安 全 対 策 に関 する基 本 的 な考 え方 は,ODA事 業 以 外 の国 際 協 力 事 業 (インフラシステム輸 出 に関 するものを含 む。)にもその まま適 用 される。外 務 省 及 びJICAは,関 係 省 庁 やJICA以 外 の政 府 関 係 機 関 に対 して本 最 終 報 告 に基 づく措 置 の実 施 状 況 を紹 介 し,国 際 協 力 事 業 の安 全 対 策 の底 上 げがオールジャパンで実 現 するよう,呼 びかけを行 っていく。そ の際 ,外 務 省 は,自 らの所 掌 事 務 を越 える範 囲 の事 項 については,担 当 の省 庁 に対 して協 力を要 請する。 7. 最 後に ① 今 日 の国 際 情 勢 を考 えれば,もはや,日 本 人 であれば被 害 に遭 うことはな いと想 定 することはできない。本 最 終 報 告 に盛 り込 んだ安 全 対 策 が実 効 性 あるものとなるためには,日 本 国 内 において広 範 囲 の関 係 者 の安 全 に対 す る意 識 が根 本 的 に変 わっていくことが必 要 であり,外 務 省 及 びJICAは,こ の目 的 のために関係 省 庁と協 力していく。 ② 国 際 協 力 事 業 安 全 対 策 会 議 は,国 家 安 全 保 障 会 議 ,経 協 インフラ戦 略 会 議 及 び国 際 組 織 犯 罪 等 ・国 際 テロ対 策 推 進 本 部 とも連 携 し,オールジャパ ンの取 組を強 化していく。 ③ 本 最 終 報 告 で示 した具 体 的 な安 全 対 策 の的 確 な実 施 を確 保 するため,外 務 省 及 びJICAは,国 際 協 力 事 業 安 全 対 策 会 議 を活 用 し,しっかりとフォロ ーアップを行 っていくとともに,これらの安 全 対 策 の実 施 に必 要 なフォローア ップを行 っていくとともに,これらの安 全 対 策 の実 施 に必 要 な予 算 措 置 等 を 検 討 していく。また,外 務 省 及 びJICAは,同 会 議 の内 外 で事 業 関 係 者 やN GOと緊 密 に意 思 疎 通 していく。このように,本 最 終 報 告 は,今 後 の継 続 的 な取 組の出 発 点となるものである。 最 後 に,改 めて,ダッカ襲 撃 テロ事 件 で被 害 に遭 われた方 々の崇 高 な志 と 国 際 協 力 の現 場 におけるこれまでの御 貢 献 に敬 意 を表 したい。また,亡 くなら れた7名 の方 々に対 する心 からの哀 悼 の意 を表 するとともに,負 傷 された方 の 一 日 も早い御 快 復 を祈 念したい。 10 別紙1 1. 会 議 参 加 省 庁 内 閣 官 房 ,警察 庁 ,総 務 省 ,法 務省 ,財 務 省 ,厚 生 労働 省 , 農 林 水 産 省 ,経 済 産 業 省 ,国 土 交通 省 ,防 衛 省 2. 意 見 交 換を行 った政 府 関 係 機 関 株 式 会 社 海外 交 通 ・都 市 開 発 事 業 支援 機 構(JOIN) 株 式 会 社 海外 通 信 ・放 送・郵 便 事 業 支 援 機 構(JICT) 株 式 会 社 国際 協 力 銀 行(JBIC) 独立行政法人 国際交流基金 独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属鉱 物 資 源 機 構(JOGMEC) 独 立 行 政 法 人 日 本 貿 易 振 興 機 構(JETRO) 独 立 行 政 法 人 日 本 貿 易 保 険(NEXI) 11 別紙2 1.ダッカ襲 撃テロ事 件 で負 傷した方 2.国 際 協力 事 業 安 全 対 策 会 議 諮 問 委 員 会 (五 十 音 順 ) 板橋 功 大坪 正人 大西 健丞 奥田 恭弘 小島 俊郎 高梨 寿 公 益 財 団 法 人 公 共 政 策 調 査 会 研 究 センター長 武 蔵 野 大 学 客 員教 授 一 般 社 団 法 人 海 外 建 設 協 会(OCAJI)常 務 理 事 特 定 非 営 利 活 動法 人 ジャパン・プラットフォーム(JPF) 共同代表理事 日 揮 株 式 会 社 執 行 役 員 セキュリティ対 策 室 長 (一 般 社 団 法 人 日 本 経 済 団 体 連 合 会(経 団 連)) 株 式 会 社 共 同 通信 デジタル 執 行役 員 リスク対 策 総合 研 究 所 長 一 般 社 団 法 人 海外 コンサルタンツ協 会 (ECFA)専 務 理 事 3.意 見 聴取 (第 2回,第 3回)に参 加いただいた方々(五 十 音 順 ) <第 2回 会 合 (7月 19日)> (1)業 界 団体 ・奥 田 恭 弘 日 揮 株 式 会 社 執 行 役 員 セキュリティ対 策 室 長 (一 般 社 団 法 人 日 本 経 済 団 体 連 合 会(経 団 連)) ・高 梨 寿 一 般 社 団 法 人 海 外 コンサルタンツ協 会 (ECFA)専 務 理 事 ・松 井 波 夫 一 般 社 団 法 人 海 外 建 設 協 会(OCAJI)事 務 参 与 ・一 般 社 団 法 人 日 本 貿 易 会(三 菱 商 事)から1名 (2)NGO ・谷 山 博 史 ・橋 本 笙 子 特 定 非 営 利 活 動法 人 国 際 協 力 NGOセンター(JANIC) 理事長 特 定 非 営 利 活 動 法 人ジャパン・プラットフォーム(JPF)理 事 兼NGOユニット副 代 表 幹 事 <第 3回 会 合 (7月 25日)> ・赤 木 剛 日本商工会議所 国際部長 ・板 橋 功 公 益 財 団 法 人 公共 政 策 調 査 会 センター長 , 武 蔵 野 大 学 客 員教 授 ・小 島 俊 郎 (株 )共 同 通 信デジタル執 行 役 員 ,リスク対 策 総 合 研 究 所 長 ・保 坂 修 司 日 本 エネルギー経 済 研 究 所 中 東 研 究センター副センター長 ・本 名 純 立 命 館 大 学 国 際関 係 学 部 教 授 12
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