大阪Aグレードオフィス市場2016

大阪Aグレードオフィス市場
- Brexitの影響と可能性 2016 年 8 月
2 大阪 A グレードオフィス市場 目次
大阪経済への影響 3
大阪オフィスの賃貸市場
4
大阪と世界の投資市場
8
Brexit の影響と可能性 3
大阪経済への影響
中国経済の減速懸念やアメリカの利上げ等、世界的な経
済見通し不安により 2016 年年初から国内の株式市場は史
上初の 5 日続落を記録した。その後、6 月 23 日にはイギ
リスの欧州連合離脱を問う国民投票が行われ、いわゆる
Brexit が実現した事で世界経済の先行き不透明感は一気に
高まった。国内への影響としては Brexit によって円高が進
み、株式市場もさらなる調整局面を迎えた(図 1)。その 1
年前の 5 月 17 日に都構想を巡って住民投票が行われ、現
状維持を選択した大阪でも不動産市場にその余波は迫っ
ている。
図 1. 日経平均株価と為替の動き
22,000
140
20,000
130
18,000
120
110
14,000
100
12,000
90
10,000
80
8,000
70
6,000
4,000
US ドル
日経平均株価
16,000
07
20
08
20
09
20
10
20
11
20
12
20
日経平均株価
13
20
14
20
15
20
16
20
60
USドル
出所 : ©日本経済新聞社、東京証券取引所
日銀短観の 6 月調査では近畿の大企業製造業の景況感は年
初の落ち込みから回復傾向にあり、見通しも上昇してい
る。しかし Brexit の決定時には調査結果がほぼ回収されて
いた事から実際の企業の景況感はこれよりも悪化してい
る事が考えられる。さらに企業の 2016 年の想定為替レー
トは 113 円前後と、現状よりも大幅な円安を想定している
ため、現在の円高基調が継続すると大阪企業の景況感見
通しも悪化する懸念が残る(図 2)。
図 2. 日銀短観による近畿企業景況感
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
2007
2008
出所 : 日本銀行
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
4 大阪 A グレードオフィス市場 大阪オフィスの賃貸市場
大阪の A グレードオフィス *1 賃料は 2008 年の世界金融危
図 3. 2016 年上半期 A グレードオフィス賃料比較
機、2013 年の大量供給を経た後、世界の主要都市と比較
しても低位な水準に落ち込んでおり、国内比較でも東京
220
の賃料の半分以下である。比較がドル建てのため為替の
200
影響を受けるが、これまで世界で最も高額なオフィス賃
180
料を維持してきたロンドン(ウエストエンド)は Brexit
座を明け渡しており、今後は賃料自体も減少する事が予
想されている(図 3)。
USドル/㎡/月
によるポンド安によって今や香港(セントラル)にその
160
140
120
100
80
60
40
20
0
大阪
(都心2区)
東京
(都心5区)
シンガポール
香港
(ラッフルズプレイス) (セントラル)
ロンドン ニューヨーク
(ウエストランド)
(ミッドタウン)
出所 : JLL
JLL の定義する大阪 A グレードオフィスは中央区、北区に所在する、延床 15,000㎡以上、基準階 600㎡を満たすビル、東京 A グレードオフィスは千代田区、
中央区、港区、新宿区、渋谷区に所在する、延床 30,000㎡以上、基準階 1,000㎡、竣工 1990 年以降、20 階建て以上を満たすビルを指す。
*1
Brexit の影響と可能性 5
為替の影響を排除するため、各市場を自国通貨ベースでそれ
図 4. 2016 年上半期 主要都市の賃料インデックス
ぞれのピークを 100 としてインデックス化すると、大阪と東
京とも世界的な金融危機から回復していない事が分かる。香
港、ロンドンは前回ピークと同等もしくはそれ以上、ニュー
ヨークも 80% 以上に賃料が上昇している。世界の各都市が
104
100
96
2010-2011 年にかけて回復に向かったことに対し、東京は 2011
年の震災で回復期が遅れ、翌 2012 年にようやく賃料上昇が始
遅れ 2014 年にようやく回復期が訪れた。ロンドンは先述の通
り Brexit によるポンド安によってドル建てでは賃料が減少して
Peak = 100
まった。大阪は 2013 年に大量供給を経たため東京からさらに
83
80
69
68
60
いるが、ポンドベースでは実額賃料は横ばいで推移しており、
Brexit による賃貸市場への影響は今のところ顕在化していない
(図 4)。
40
2006
2007
大阪
出所 : JLL
2008
2009
東京
2010
2011
ロンドン
2012
2013
2014
ニューヨーク
2015
2016
香港
6 大阪 A グレードオフィス市場 大阪と東京の賃料を比較すると大阪の回復の遅れはさら
図 5. 2016 年上半期 東京と大阪の賃料比較
に明確となる。2003-2004 年にかけて前回のボトムが形成
された時点では東京の賃料は 28,915 円、大阪の賃料は月額
55,000
17,079 円と東京の 60% 前後の水準であったのに対し、その
後 2005 年からの賃料上昇局面では東京の 52,436 円に対し
45,000
て大阪 24,506 円の 45% と、現在に至るまで東京の賃料の
比べて大阪の上昇が遅れており、ボトムからピークの上昇
率でも東京が 1.8 倍まで上昇したのに対し、大阪は 1.4 倍
40,000
月 額 /坪 (円 )
半分以下で推移している。特に賃料の回復局面では東京に
35,777
35,000
30,000
と 40% の乖離が生じている。大阪と東京の市場において
28,826
25,000
大きな違いが、東京は前回のボトムである 28,826 円を下回
20,000
る事なく回復を迎えたのに対し、大阪は前回のボトムであ
15,000
る 17,079 円を割り込み、さらに回復を迎えた現在でも未だ
に前回のボトムを下回っている(図 5)。
52,436
50,000
24,506
17,079
2003
16,857
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
東京
出所 : JLL
2012
2013
2014
2015
2016
大阪
大阪の賃料水準が過度に下振れしている要因として、世界
金融危機による世界的な経済減速と共に供給にも一因が
あった。2011 年には東日本大震災の影響で一時的に東京か
図 6. 大阪 A グレードオフィス市場の需給バランス
上昇した(図 6)。2013 年は 170,000㎡という当時の大阪 A
グレードオフィスの総貸床面積の 12% にあたる供給によっ
て、大阪 A グレードオフィス市場の空室率は一気に上昇
した。本来これだけ急激に空室率が上昇すると賃料も大幅
な下落、調整局面が見られるが、実際には 2012-2014 年の
間の賃料水準はほぼ変化しておらず、2013 年の大量供給
180,000
120,000
8%
100,000
6%
80,000
60,000
4%
40,000
していた事が分かる。その後は空室率が改善するにつれ
2%
20,000
て回復に向かい、2014 年第 3 四半期には賃料も上昇へと
ているため、需給バランスは大きく改善し、JLL では今後
10%
140,000
を前に大阪の A グレードオフィスの賃料は既に下限に達
転じた。さらに今後の大型ビルの供給計画は限定的となっ
12%
160,000
需要&供給 ( ㎡ )
したが、2013 年の大量供給によって空室率は再び大きく
0
空室率 (%)
らのオフィス移転需要によって大阪の空室率は改善を示
'05
出所 : JLL
'06
'07
'08
'09
供給
'10
需要
'11
'12
'13
'14
'15
16予
0%
空室率
5 年間で 15% 程度の賃料上昇を予測している(図 7)。
各国の市場を時計に見立てて現在のマーケットサイクル
図 7. 大阪 A グレードオフィス市場の賃料と空室の推移
ぎた。現在は賃料上昇率が最も加速する 9 時に近づきつつ
2020 年のオリンピックに向けて大量供給が集中している
従って、現段階で賃貸市場では Brexit の影響は観測されて
おらず、ロンドン市場から他の市場へテナント需要が波及
するといった具体的な動きも顕在化していない。副次的な
効果として円高が進んだ事で日本では国内需要にマイナ
スの影響を与える事が懸念されるが、概して Brexit による
賃貸市場への影響は軽微であると言える。
8%
月 額/ 坪(円 )
おり、これから賃料が下落すると予想されている(図 8)。
10%
20,000
ため、一部のビルに既に影響が見られており賃料上昇は鈍
化している。また、ロンドンはちょうど 12 時に位置して
12%
25,000
あり、今後も賃料上昇の余地を残している。一方、東京は
15,000
6%
10,000
4%
5,000
0
2%
0%
'03 '04 '05 '06
出所 : JLL
'07 '08 '09 '10
'11 '12 '13 '14 '15 16予 17予 18予 19予 20予
賃料(共益費込)
空室率
空室率 (%)
を表すと、大阪は 2014 年に市場のボトムである 6 時を過
Brexit の影響と可能性 7
図 8. 2016 年 6 月末時点 プロパティクロック
出所 : JLL
ヨハネスブルグ、ロンドン
ソウル
フランクフルト、
トロント
北京
メキシコシティ
イスタンブール
ヒューストン
ダラス、 サンフランシスコ、上海
ロサンゼルス
東京
香港
ストックフォルム、
ニューヨーク
ベルリン
ボストン
シカゴ
大阪 マドリード、シドニー
シンガポール
賃料上昇の
減速
賃料下落の
加速
賃料上昇の
加速
賃料下落の
減速
アムステルダム
ミラノ、デリー
パリ
モスクワ
ブリュッセル、ムンバイ
ワルシャワ
サンパウロ
プラハ、ドバイ、
チューリッヒ、ワシントンDC
8 大阪 A グレードオフィス市場 大阪と世界の投資市場
それでは投資市場への影響を見てみると、世界でも 1,2 を争う規模を持つロンドンから投資資金が逃げる事で恩恵を受
ける市場が考えられる。これまでニューヨーク、ロンドン、東京が世界で 3 大投資市場でありトップ 3 を独占してきた。
ところが直近になってこのバランスに変化が見られている。2016 年上半期の投資額ではロンドンはニューヨークに大き
く投資額を引き離され、ロサンゼルスに追いつかれつつある。また東京はロサンゼルス、パリに抜かれ 5 位に転落して
いる。2016 年に入ってからのロンドンの投資額の減少は国民投票を控えて投資家が英国市場へのリスクを控えた事が原
因であるが、東京は別の要因が考えられる(図 9)。
図 9. 2016 年上半期 上位 20 カ国の不動産投資額
ニューヨーク
ロンドン
ロサンゼルス
パリ
東京
ソウル
ワシントンDC
シンガポール
シカゴ
ボストン
シリコンバレー
シアトル
トロント
シドニー
上海
フィラデルフィア
ダラス
アメリカ大陸
デンバー
ヨーロッパ・中東・アフリカ
マイアミ
アジア太平洋地域
ストックホルム
大阪
0
5
10
15
直接投資総額(10億USドル)
出所 : JLL
20
25
30
Brexit の影響と可能性 9
東 京 の 投 資 市 場 *2 の 推 移 を 見 て み る と、2007 年 に ピ ー ク を 迎 え た 後、 金 融 危 機 に よ る 海 外 投 資 家 の 撤 退 に よ っ
て 市 場 は 大 き く 減 少 し た。 そ の 後 2011 年 の 震 災 を 経 て 2012 年 か ら 第 2 次 安 倍 政 権 に よ る ア ベ ノ ミ ク ス へ の 期
待 に よ っ て 市 場 は 大 き く 回 復 し た。 と こ ろ が 2015 年 第 4 四 半 期 を 境 に 前 年 同 期 比 割 れ が 続 い て い る( 図 10)
。
これは投資市場の回復と共に投資利回りが低下してきた事が起因しており、
特に 2015 年には前回の投資市場のピークであっ
た 2007 年時の投資利回りを下回った事で市場に警戒感が漂い始めた。これまで 2013-2014 年に見られた 1,000 億円を超える
ような大型物件を積極的な利回りで取得する事例も見られなくなっている。まだまだ高値で売りたい売り手と、これまで
よりも慎重になった買い手の目線の乖離によって大型案件が成立しにくくなり、投資額全体も減少している(図 11)
。
図 10. 2016 年上半期 東京の不動産投資額の推移
6,000
6,000
5,000
4.0%
5,000
4Q
4,000
4,000
3.5%
3,000
2Q
2,000
1Q
1,000
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
1H16
利回り(%)
3Q
10億円
10億円
2016 年上半期 東京の不動産投資額と
A グレードオフィス利回り
図 11.
3,000
2,000
3.0%
1,000
0
2006
2007
2008
2009
2010
年間投資額
出所 : JLL
*2
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県を含む。
出所 : JLL
2011
2012
2013
利回り
2014
2015
1H16
2.5%
10 大阪 A グレードオフィス市場 それでは東京で取得機会を見出せない資金はどこへ向
かっているかを見てみると、その行き先は地方都市へ向
かっている。特に投資市場が過熱した 2006-2008 年にはそ
の傾向が顕著になっており、今回も 2013-2015 年にかけて
市場が回復を示すと共に東京以外の市場の取引も増加傾
向となっている(図 12)。
図 12. 2016 年上半期 日本の不動産投資額
8,000
7,000
6,000
10億円
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
その他の都市
2012
2013
2014
2015
1H16
東京
出所 : JLL
さらに大阪市場に目を向けると投資額の増加傾向がよく
分かる。日本全体の投資額が 2012 年の 2 倍以上となった
2013 年には地方の割合が増加しており、大阪市場も大き
く投資額が増加している。2014-2015 年もほぼ同水準を維
持した後、2016 年に入っても上半期の投資額は前年を上
回っており、図 10 で示した東京とは全く違うトレンドを
示している(図 13)。
図 13. 2016 年上半期 大阪の不動産投資額
1,000
900
4Q
800
10億円
700
600
3Q
500
400
2Q
300
200
1Q
100
0
2006
出所 : JLL
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
1H16
Brexit の影響と可能性 11
この背景として重要な指針となるのが東京、大阪のそれぞ
れの利回りであり、投資家がより高い利回りを追求して
きた経過が見て取れる。2007 年の投資市場のピーク時に
は東京、大阪ともに急速な利回りの低下が見られており、
その後の金融危機によって不動産リスクが高まった事で
それぞれ利回りも上昇、すなわち不動産価格は下落した。
よりリスクの高い東京 B グレードオフィス *3 の上昇が顕
著となっているが、その後の不動産市場の回復と、東京 A
グレードオフィスの取得機会の希少性によって東京 B グ
レードオフィスへの期待が高まり、2012 年から利回りは
急速に低下している。大阪 A グレードオフィスも 2014 年
には大量供給の一巡を受け、市場の落ち着きと共に利回り
は低下している。しかしながら未だに東京グレード B オ
フィスよりも高い利回りを保っており、まだまだ投資家
の参入余地は残されている(図 14)。
東京 A&B グレードオフィス、
大阪 A グレードオフィスの利回り
図 14.
7.0%
6.0%
5.0%
4.0%
3.0%
2.0%
1.0%
出所 : JLL
東京A
東京B
大阪A
1H16
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
-1.0%
2003
0.0%
10年国債
*3
JLL の定義する東京 B グレードオフィスは千代田区、中央区、港区、新宿
区、渋谷区に所在する、延床 5,000㎡以上、基準階 300㎡、竣工 1982 年以降、
8 階建て以上を満たすビルを指す。
12 大阪 A グレードオフィス市場 特にロンドン、ニューヨーク、パリといった不動産市場
の透明度が高く投資額も大きな市場と比べると、大阪は
不動産投資市場全体に占める海外投資家の購入割合が圧
倒的に低く、海外投資家の参入余地が大きい事が分かる。
今後も Brexit が及ぼす影響が不確実な状態のロンドンから
資金がリスク回避する可能性は十分に考えられ、必然的
に候補地は次に大きな市場であるニューヨーク、東京、パ
リが挙がってくるが、大阪がその受け皿となるには市場
の拡大が必要である(図 15)。
図 15.
不動産取引に占める海外投資家の購入割合
40
35
不動産市場 (10億 USドル)
30
25
20
15
10
5
0
ロンドン
ニューヨーク 東京
パリ
海外投資家
香港
上海
シンガポール
大阪
国内投資家
※過去5年平均の取引額
出所 : JLL
国内では先述の通り東京の市場には既に過熱感も漂って
おり、東京の次に候補地となるべくは大阪市場と考えら
れる。しかし、現状を見てみると、大阪はシンガポール
や香港と同等の経済規模を有しているにも関わらずその
不動産市場の規模は劣っており、むしろこれらアジアの
主要都市が代替投資先となる可能性の方が高い(図 16)。
図 16.
2015 年末時点 GDP に対する
不動産投資市場の規模
40
7.0%
35
6.0%
5.0%
25
4.0%
GDP 比率 (%)
不動産市場 (10億 USドル)
30
20
3.0%
15
2.0%
10
1.0%
5
0
大阪
シンガポール
香港
不動産市場規模
※過去5年平均の取引額
出所 : JLL
東京
ニューヨーク
GDP割合(右軸)
ロンドン
0.0%
Brexit の影響と可能性 13
その最も大きな要因となっているのが、不動産市場の透
明度であり、海外からの投資資金の流入、海外企業の進
出の妨げとなっている。JLL が 2 年に 1 度行っているグロー
バル不動産透明度調査では、日本は今回 19 位と前回調査
から大きく順位を上げた。しかしながら世界で投資資金
を独占している透明度の高い国と比べるとまだまだ改善
の余地は残っており、アジアにおいてもシンガポールや
香港よりも低い(図 17)。
図 17. JLL 2016 グローバル不動産透明度インデックス
透明度
総合ランキング
1
2
3
4
高
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
中高
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
中高
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
中
35
36
37
38
39
40
出所 : JLL
市場
英国
オーストラリア
カナダ
米国
総合スコア
1.24
1.27
1.28
1.29
フランス
1.34
オランダ
1.49
ニュージーランド
アイルランド
1.45
1.60
ドイツ
1.65
シンガポール
1.82
ポーランド
1.85
フィンランド
スウェーデン
スイス
香港
1.66
1.82
1.86
1.89
ベルギー
1.90
ノルウェー
2.00
デンマーク
1.92
日本
2.03
イタリア
2.10
台湾
2.14
南アフリカ
2.23
チェコ共和国
スペイン
オーストリア
ハンガリー
ポルトガル
2.10
2.11
2.18
2.26
2.26
マレーシア
2.35
ルーマニア
2.38
スロバキア
イスラエル
メキシコ
2.37
2.49
2.51
中国1級
2.52
ルクセンブルグ
2.58
ブラジル1級
インド1級
ギリシャ
タイ
インド2級
韓国
2.55
2.61
2.65
2.65
2.65
2.66
14 大阪 A グレードオフィス市場 また、本調査の項目の中で市場のデータ整備度を対象 137
都市において別途比較した事で、各都市別のデータ整備の
進み具合が浮き彫りとなった。その中で東京は 58 位、大
阪は 84 位となっている(図 18)。対象都市のデータ充実
度であるため比較的小さな都市が物理的なカバレッジが
行いやすく有利だが、その点を考慮してもニューヨークが
3 位、ロンドン 8 位となっており、大都市が必ずしも透明
度が低い訳ではない。本調査は、賃料、価格、キャップレー
ト、空室、需要、投資額といったマーケットデータから、
建物の個別情報、テナント情報、賃貸・売買取引の内容
といった個別のデータがどれだけ入手可能かを調べたも
のである。
従って大阪の不動産投資市場が今後拡大を続けていくた
めにはこうした妨げを取り除き、市場のデータを整備し、
情報開示を進める事で透明度を改善して海外資金を呼び
込む事が必須である。特に大阪市場の特性としてはオフィ
スセクターの投資割合が低く、リテールやホテルといった
インバウンド需要の恩恵を受けるセクターが強く、さら
に立地に左右されにくい物流セクターの割合が高い。こ
れも大阪が持つポテンシャルを生かせていない特徴であ
り、東京で見られるような 1,000 億円を超えるような取引
はオフィスを中心に行われている。Brexit によって行き先
を求める投資資金が大阪を選ぶかどうかは市場の透明度
改善が急務であり、大阪は十分にその受け皿となる競争力
を有している。また世界的な金融緩和によって不動産投
資資金は拡大を続けており、その投資先は透明度の高い
市場がほぼ独占している。大阪が取り組むべき課題は至っ
て明確なのである。
図 18.
JLL 2016 グローバル不動産透明度インデックス 市場ファンダメンタルズ透明度 – 都市別ランキング
順位
1
都市
トロント
2
オークランド
3
ニューヨーク
4
アムステルダム
5
シカゴ
6
シドニー
7
シアトル
8
ロンドン
9
ブリスベン
10
香港
12
パリ
23
上海
58
東京
84
大阪
出所 : JLL
Brexit の影響と可能性 15
著者
大東 雄人
リサーチ事業部
アソシエイトダイレクター
ボストン大学大学院卒業後、ボストン及びニュー
ヨークにて不動産賃貸仲介に従事。帰国後、国
内事業会社にて企業財務分析・株式市場調査及
びポートフォリオ・マネジメントを担当。現在
JLL で、不動産市場の調査・分析及び情報提供サー
ビスを行っている。
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