FX Weekly 臨時号 平成 28(2016)年 8 月 29 日 GLOBAL MARKETS RESEARCH チーフアナリスト 内田 稔 三菱東京 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group Table of contents 為替相場概況 為替相場概況 ドル円:米 FRB の正・副議長が 9 月利上げの地ならしへ チーフアナリスト 今週の相場見通し 内田 今週の相場見通し一覧<変更後> 対ドル ドル円 1 FX Weekly 臨時号 | 平成 28(2016)年 8 月 29 日 対円 100.75~103.25 ユーロ 1.11~1.14 112.00~116.00 豪ドル 0.74~0.78 75.00~79.00 人民元 6.66~6.71 15.05~15.45 稔 ドル円:米 FRB の正・副議長が 9 月利上げの地ならしへ 利上げに向けた地なら し進み、雇用統計まで ドル円底堅く推移か 注目を集めた 26 日の講演でイエレンFRB議長は、緩やかなペー スでの利上げが適当との考えを示した。明確な利上げ時期を示した わけではなく、利上げ判断も今後のデータ次第とするなど、従来か らの説明を繰り返したに過ぎない。ただ、講演の演題は、「The Federal Reserve’s Monetary Policy Toolkit:Past Present and Future」と、 やや中長期的な視点に立った米Fedの金融政策手段に関するものだ が、その本題に入る前に利上げの可能性に言及している。加えて、 イエレンFRB議長は、米国の金融緩和手段として、政策金利の引き 下げ、大規模な資産買い入れ、フォワードガイダンスが有効とも説 明。買い入れ資産の多様化や緩和の長期化を可能とするインフレ ターゲットの引き上げ、利上げの条件としてのGDPターゲット導入 などをいずれも今後の研究課題としつつ、現時点では不要との考え も示した。つまり、いずれかのタイミングで再び金融緩和を行う場 合の主要な手段として政策金利の引下げを想定している。利下げ余 地を確保する為、利上げによって発射台を高めておくとの意向は相 応にあるだろう。実際には、具体的な利上げ時期への言及がなかっ たため、イエレンFRB議長の講演を受けて、ドル円は一時 100.06 ま で下落している。しかし、その後、改めて 9 月の利上げの可能性に 言及したフィッシャーFRB副議長によるテレビインタビューでの発 言が、利上げ観測の台頭とドル円の上昇を招いた。ドル円は、26 日に 102 円目前まで迫った後、週明け 29 日の日本時間早朝に一時 102.16 まで上昇している(日本時間午前 10 時現在)。 第 1 図: ドル円相場 (円) 102.5 ↑円安 102.0 101.5 101.0 100.5 100.0 ↓円高 99.5 8/29 8/27 8/26 8/25 8/24 8/23 8/22 (月/日) (資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 今週の見通し 底堅さを増すも、トレ ンド転換への決定力を 欠く 2 こうした正・副両議長の発言を踏まえると、物価上昇圧力が鈍い にもかかわらず、8 月雇用統計の結果(9/2)次第では、最短で 9 月 の利上げも意識されよう。先週は、一時 100 円割れ目前に迫ったド ル円だが、今週はやや底堅く推移する公算が大きい。但し、年初来、 時期こそ見方が定まらないながらも、常に利上げ観測が燻り続ける 中で、ドル円が下落トレンドをたどってきたのも事実だ。実際、幅 広い通貨に対するドルの値動きをみると 2015 年第 1 四半期までの 利上げ観測を受けたドル高局面と、その後、ドル高が和らいだ局面 とに明確に分かれる(第 2 図)。 FX Weekly 臨時号 | 平成 28(2016)年 8 月 29 日 第 2 図: 米ドル指数 (6 通貨に対するドルの動き※) 104 (ドル高) 102 100 98 96 94 92 90 88 86 84 82 80 78 (ドル安) 76 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (月) 16/7 (資料) 米経済分析局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (※)対ユーロ 57.6%、円 13.6%、英ポンド 11.9%、加ドル 9.1%、スウェーデンクローナ 4.2%、スイスフラン 3.6%にて加重 平均したドルの名目実効相場 この両局面の違いは、まず米国の連続した利上げへの期待が大き く後退したことだ。米国では、顕著なドル高が進んだ結果、2014 年終盤から、ドル高による製造業への悪影響が警戒されるなど、ド ル高が米経済への下押し圧力として意識され始めた(第 3 図)。無 論、ドル高は輸入物価の低下を通じ、利上げの必要性をそもそも後 退させる。こうした動きから、「利上げはあっても緩やか」との見 方が浸透し始めた。 次に、金融緩和による円安、ユーロ安との見方が和らいだことも、 ドル高の勢いが鈍った要因だろう。2015 年 4 月、ドイツの長期金 利が跳ね上がる場面がみられ、マイナス金利政策が金利低下を通じ、 通貨安を促すとの市場の見方を強くけん制した(第 4 図)。実際、 昨年 12 月と今年 3 月、欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利幅を 拡大した後も、ユーロの対ドル相場は底堅い。また、今年 1 月末、 日銀がマイナス金利政策の導入を発表した後、かえってドル安円高 が進んだのはこれまで市場がみてきた通りだ。 第 3 図 :米 ISM 製造業景況指数 第 4 図 :ドイツ 10 年物国債利回り 60 (%) 2.0 58 1.5 56 1.0 54 52 0.5 50 0.0 48 46 -0.5 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (月) 16/7 (資料)米供給管理協会より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 3 FX Weekly 臨時号 | 平成 28(2016)年 8 月 29 日 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 (月) 16/7 (資料)Bloomberg より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 逆に言うと、米国の利上げ観測を背景に、ドル円が年初来の下落 トレンドを脱し、反転上昇していくために必要な条件は二つ。まず、 米国の利上げが連続したものになるとの見方が強まること。次に、 日本やユーロ圏の金融緩和が円安やユーロ安をもたらすとの期待が 再び高まることだ。しかし、前者について言えば、物価の伸びが鈍 く、少なくとも連続した利上げ局面に入るとは考えにくい(第 5 図)。また、後者の可能性も低いだろう。マイナス金利政策を導入 している日本やユーロ圏以外の国でも、やはり通貨安圧力は限定的 なものとなりつつある。 こうしてみると、今週のドル円は多少、底堅さを増すだろうが、 トレンド転換やドル高相場の再来とはまだ相当な距離を残している と言え、103 円前後では上値が重くなると予想する。 第 5 図: 米国の物価の動き(PCE デフレーターの前年比) (%) 5.0 PCEデフレーター 同、コア 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 -2.0 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (資料) 米経済分析局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 予想レンジ ドル円:100.75 ~ 103.25 チーフアナリスト 4 FX Weekly 臨時号 | 平成 28(2016)年 8 月 29 日 内田 稔 照会先:三菱東京UFJ銀行 グローバルマーケットリサーチ チーフアナリスト 内田 稔 当資料は一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定のお客様のニーズ、財務状況又は投資対象に対応することを意図しておりませ ん。また、当資料は、適用法令上許容される範囲内でのみ利用可能であり、当資料の頒布を制約する法令が存在する地域の方によって利用されることを意 図しておりません。当資料内のいかなる情報又は意見も、預金、有価証券、デリバティブ取引その他の金融商品の売買、投資、保有などを勧誘又は推奨す るものではありません。 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当行はその正確性、適時性、適切性又は完全性を表明又は保証するものではなく、 当行、その子会社又は関連会社は、お客様による当資料の利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。ご利用に関しては、すべて お客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。 また、過去の結果が必ずしも将来の結果を暗示するものではありません。 当行は、当資料において言及されている会社と関係を有し、又はかかる会社に対して金融サービスを提供している可能性があります。当行のグループ会 社は、当資料において言及されている証券又はこれに関連する証券について権利を有し、又はこれらの証券の引受けを行っている可能性があり、また、こ れらの証券又はそのポジションを保有している可能性があります。 当資料の内容は予告なしに変更することがあり、また、当行、その子会社又は関連会社は、当資料を更新する義務を負っておりません。また、当資料は 著作物であり、著作権法により保護されております。当行の書面による許可なく複製又は第三者、個人顧客もしくは一般投資家への配布をすることはでき ません。 (BTMUロンドン支店のみに適用される情報開示) 株式会社三菱東京UFJ銀行(以下「BTMU」)は、日本で設立され、東京法務局(会社法人等番号 0100-01-008846)において登記された有限責任の株式会 社です。 BTMUの本店は、東京都千代田区丸の内二丁目 7 番 1 号(郵便番号 100-8388)に所在しています。 BTMUロンドン支店は、英国会社登録所において、英国支店として登録されています(登録番号BR002013)。 BTMUは、日本の金融庁によって認可及び規制されています。BTMUロンドン支店は、英国プルーデンス規制機構より認可を受けており(FCA/PRA番号 139189)、英国金融行為監督機構の規制とプルーデンス規制機構の限定された規制の対象となっています。英国プルーデンス規制機構によるBTMUロンド ン支店の規制の範囲の詳細は、ご請求いただいた方にお渡ししております。 5 FX Weekly 臨時号 | 平成 28(2016)年 8 月 29 日
© Copyright 2025 ExpyDoc