米国における過去の利上げ局面と株価

ご参考資料(情報提供資料)
2016 年 8 月 30 日
アムンディ・マーケットレポート
アムンディ・ジャパン株式会社
米国における過去の利上げ局面と株価
① インフレ率が比較的安定している 90 年代以降において、利上げ局面はいずれも株価上昇局面です。
② 利上げが繰り返される過程で景気に対する信頼感が高まり、株価が上昇する傾向にあります。
③ 現在も、株価は利上げ開始後堅調ですが、2 度目の利上げがそれを後押しすると期待されます。
米国経済正常化が確認されれば利上げ→株高の公算
米国において、政策金利と株価は一定の関係が認められます。90 年代前半までは、インフレ率が
+2%を上回り、金融政策はインフレ抑制が優先されました(インフレ型金融政策 ※)。政策金利の
変更は機動的かつ大胆となり、利上げは株価を押し下げ、利下げは押し上げる傾向がありました。
ちなみに当時はまだ、インフレ目標は導入していませんでした(導入は 12 年 1 月)。
一方、90 年代半ば以降は、インフレ率がおおむね安定しているディスインフレ期に当たり、金融政
策の目標はインフレの安定に置かれました(ディスインフレ型金融政策※)。利上げは「好景気の証
し」と市場に捉えられて株価は上昇し、逆に利下げは「不況の証し」として株価は下落傾向となりま
した。また、リーマン・ショック(08 年 9 月)以降は、金融政策の目標はデフレの回避となり、量的金
融緩和の多寡が株価に影響を与えるようになりました(デフレ型金融政策※)。
現在、デフレから脱却し、再びディスインフレに戻ったという認識が定着すれば、利上げは好景気
の証しと市場が捉え、株価は利上げを継続すると共に上昇していくことが期待されます。以下、下
図のディスインフレ期の利上げ局面における政策金利と株価との関係を検証していきます。
(%)
(ドル)
FF金利、インフレ率、株価の推移
10
FF金利誘導水準(月末、左軸)
PCEデフレータ(前年同月比、左軸)
ダウ(月中平均、右軸)
8
ディスインフレ期?
6
4
2
0
-2
インフレ期
90
92
94
デフレ期
ディスインフレ期
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
24000
22000
20000
18000
16000
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
16 (年)
出所:Bloombergのデータよりアムンディ・ジャパン作成
※「○○型金融政策」は当レポートで便宜上用いられているものであり、一般化した用語ではありません。
最終ページの「当資料のご利用にあたっての注意事項等」をご覧ください。
-1-
①90 年代半ば・・・金融政策の透明性向上
94 年 2 月から 95 年 2 月にかけて、米国
の政策金利である FF 金利は 3.0%から
6.0%まで引き上げられました。当時は、
ようやくインフレ率が安定してきた時期で
あり、利上げに対する市場の警戒感はま
だ強い時期でもありました。
(%)
6.0
FF金利と米株価(94年1~12月)
FF金利(左軸)
5.5
(ドル)
4200
4100
ダウ(右軸)
3953.87(9/15)
5.0
4000
4.5
3900
4.0
3800
3.5
3700
+10.0%
3600
グリーンスパン FRB(米連邦準備理事会) 3.0
3593.35(4/4)
議長(当時)は、市場との対話を重視した 2.5
3500
最初の議長でもあり、FOMC(米連邦公開 2.0
3400
94/1
(年/月)
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
市場委員会)終了後の声明文発表が定着
出所:Bloombergのデータよりアムンディ・ジャパン作成
したのもこの時期です。その後、インフレ
率は安定し、利上げによる景気低迷にもならず、利上げ開始で一旦下落した株式市場は、2 度目
の利上げをした後に底打ちしました。株価上昇は上図の範囲にとどまらず、その後も上昇トレンド
は崩れず、00 年 1 月まで長期上昇トレンドを描くことになります。
②90 年代末・・・90 年代半ば以降の利上げの最終局面
99 年 6 月から 00 年 5 月にかけて、FF 金
利は 4.75%から 6.5%へ引き上げられま
した。この期間は「IT バブル」と呼ばれた
大きなブームの最終局面でもあり、90 年
代半ばの利上げ局面と連続して捉えるこ
ともできると思われます。
(%)
7.0
FF金利と米株価(99年6月~00年5月)
FF金利(左軸)
6.5
ダウ(右軸)
+17.0%
11722.98
(00/1/14)
(ドル)
12000
11500
6.0
11000
5.5
10500
5.0
10000
10019.72
ちなみに、90 年代半ば以降は、メキシコ
(99/10/15)
9500
通貨危機(94 年 12 月)、アジア通貨危機 4.5
(97 年 7 月~98 年 2 月)、ロシア財政危 4.0
9000
99/ 6
7 8 9 10 11 1200/1 2 3 4 5 (年/月)
機(98 年 8 月)が起こり、ロシア財政危機
出所:Bloombergのデータよりアムンディ・ジャパン作成
のあおりで LTCM(米大手ヘッジファンド、
Long Term Capital Management)が破たん(98 年 9 月)するなどしたため、一時的な利上げを挟
み、FF 金利は 95 年 7 月から 98 年 11 月までで 6.0%から 4.75%まで引き下げられていました。
99 年 10 月から 00 年 1 月にかけての株価上昇は、結果的には長期的な株価上昇トレンドの最終
局面となりましたが、当時はロシア財政危機と LTCM 破たんを乗り越えた米国経済の底堅さが好
感されました。
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③00 年代半ば・・・「市場との対話」をフルに活用
04 年 6 月から 06 年 6 月にかけて FF 金
利は 1.0%から 5.25%まで引き上げられ
ました。グリーンスパン議長(当時)は、90
年代半ばの利上げ局面と同様、市場の警
戒感を和らげる方策を打ち出しました。す
なわち「メジャード(慎重な)」ペースで、利
上げするとし、毎回の会合で 0.25%ずつ
引き上げていきました。
(%)
3.5
FF金利と米株価(04年6月~05年5月)
FF金利(左軸)
3.0
+12.2%
10940.55
(05/3/4)
ダウ(右軸)
(ドル)
11000
10800
2.5
10600
2.0
10400
1.5
10200
1.0
10000
0.5
9800
9749.99
(04/10/25)
市場は当初、政策スタンスをつかみきれ 0.0
9600
04/ 6
05/ 1
(年/月)
7
8
9
10
11
12
2
3
4
5
ず、株価は上げ下げを繰り返しましたが、
出所:Bloombergのデータよりアムンディ・ジャパン作成
3 度目の利上げを実施した後の 04 年 10
月に底打ちし、上昇局面に転じました。株価はその後、07 年 10 月にかけて長期上昇トレンドを描き
ました。後々、この慎重な利上げスタンスが、不動産価格の過剰な上昇や世界的な信用膨張を招
いたとの批判を浴びましたが、当時は「市場との対話」を重視し、金融政策に対する思惑を抑えて
市場を安定させたとの高い評価を得たと記憶しています。
④今後・・・2 度目の利上げが米株価を後押し?市場との対話が重要
15 年 12 月に 1 回目の利上げが実施され
ました。株価は原油価格急落と世界経済
への先行き不安から 2 月に年初来の安値
を付けた後は堅調に推移し、8 月には史
上最高値を更新しました。
(%)
0.7
0.6
FF金利と米株価(15年12月~)
+19.0%
18636.05
(16/8/15)
(ドル)
19000
18500
0.5
18000
0.4
17500
0.3
17000
13 年 12 月からの約 1 年間にわたる量的
16500
金融緩和の縮小を「事実上の金融引き締 0.2
16000
FF金利(左軸)
め開始」とすれば、利上げに踏み切った 0.1
15660.18
ダウ(右軸)
(16/2/11)
米国経済に対してデフレから脱却できた 0.0
15500
(年/月)
2
3
4
5
6
7
8
という認識が広まってもおかしくなく、外的 15/12 16/1
出所:Bloombergのデータよりアムンディ・ジャパン作成
なリスク要因が一段落した後に株価が上
昇に転じたことは、今になって考えれば自然の成り行きだったのかもしれません。上記の 3 局面で、
複数回利上げされる間に米国経済への信頼感が高まったことに照らすと、2 回目の利上げによっ
て「利上げできる米国経済」に対する好感度が高まり、株価上昇につながることが期待されます。
ジャクソン・ホールでのイエレン議長の講演(8 月 26 日)は、これまでの FOMC の声明を踏襲したも
ので、新味は特にありませんでしたが、市場の早期利上げ期待は高まっています。アムンディでは、
講演直前時点で 2 回目の利上げは 12 月としており、いずれにしても年内利上げの可能性大と見て
います。ただし、経済指標次第ということもあり、慎重に見極めていきます。また、市場の混乱を回
避するための FRB による「市場との対話」は引き続き重要です。
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