異世界コンシェルジュ - タテ書き小説ネット

異世界コンシェルジュ
天那
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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︻小説タイトル︼
異世界コンシェルジュ
︻Nコード︼
N4543CA
︻作者名︼
天那
︻あらすじ︼
田舎の村に暮らすアルトは、一大都市であるエルダニアの宿屋の
仕事を兄から紹介してもらう。なにもかもが驚きに満ちた都会の街
に降り立ったアルトが紹介された場所に行ってみると、そこは世界
でも有数の高級ホテル、グランドシャロンだった。狼耳のメイドに、
悪魔のメイド長、そして国が誇る四大貴族のお嬢様。そんな彼女に
囲まれたアルトの都会生活が、今始まる︱︱。
※当作品は私作である﹃異世界コンシェルジュ∼ねこのしっぽ亭営
1
業日誌∼﹄の番外編に当たります。本編は規約変更に従い削除済み
です。本編を読まずとも当作品だけでも楽しめるようになっており
ますので、安心してお読みください。
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第01話 ホテル・グランドシャロンにようこそ︵1︶
その日、一人の少年が唖然とした表情で駅に降り立っていた。
地方都市エルダニア
オスーディア王国の中でも有数の人口と領土を持つ、夢と希望に
溢れる街。
豊かな自然、肥沃な大地。農業と畜産で栄華を極めたその都市は、
ここ数年で更に目まぐるしい発展を遂げることになる。
魔力発電による電灯の整備と、魔導鉄道による列車の運行。
魔法を動力にするそれらの技術は、地方都市のひとつに過ぎなか
ったエルダニアの価値を飛躍的に上昇させた。
王都をも越えるのではないかとすら噂される、凄まじい発展。そ
んな、この国に暮らす誰もが憧れる街の一角で、少年はただただ前
を見つめていた。
︵ひ、人がいっぱいいる⋮⋮ッ!?︶
生まれて初めての魔導鉄道。人でぎゅうぎゅう詰めの車内に息を
詰まらせること3日、少年は駅前の様子に落とすべき言葉を失って
いた。
目の前に広がる、道を行き交う人々。
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人、人、人、人、人だ。
鉄道が込むのは仕方ないと、高をくくっていた。降りれば人は疎
らだろうと、勝手に思いこんでいた。
とんでもない。鉄道の車内にいた人たちすら、目の前を流れてい
く人混みに比べればほんの一部だ。
﹁う、嘘だろ⋮⋮﹂
少年の身体を焦りが流れる。
それもそのはず。なにを隠そうこの少年、田舎も田舎、ど田舎の
生まれである。
村の人口は64人。村全体がひとつの家族のような、そんな場所
からやってきた。
﹁こ、こんな街で働くのか⋮⋮働けるのか?﹂
きっかけは、村から出て各地を放浪している7つ上の兄。その兄
が、エルダニアで仕事のツテを見つけてきてくれたという。
自分と違い、真面目な弟がいると紹介し、わざわざ兄が持って帰
ってくれた土産話。半信半疑、断られるならそれでもいいと、物見
遊山で終わる覚悟で村を出てきた。
だがどうだ。想像の数倍どころか、想像の遙か彼方の都会具合。
だ、大丈夫だよな?﹂
働くどころか、まともに呼吸をすることすら難しい。
﹁ホテル⋮⋮宿屋の仕事だよな?
兄から渡された書状を今一度確認し、少年は汗を垂らす。
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ホテル・グランドシャロン 見るからにハイカラな名前だ。兄は少し大きな宿屋だと言ってい
たが、少年の心に一抹どころか百末くらいの不安が灯る。
頑張るぞと気合いを入れ直し、少年は書かれた住所を探そうと、
とりあえず足を前に動かし始めるのだった。
◆ ◆ ◆
少年⋮⋮アルトは今度こそ開いた口を閉めるのも忘れて目の前の
光景を呆然と見上げていた。
そう、見上げるほどの巨大な建物。
石造りで積み上げられた、この世界における建築技術の粋を集め
た高層建築。
七階建てという階層の記録は、未だ王都のオスーディア城を除け
ば越えられてはいない。
アルトは恐怖すら覚えていた。人は未知のものに出くわすと恐怖
を覚えるものだ。
七階どころか、二階建てすら村にはない。エルダニアに来る途中
の宿場町で見かけた三階建ての物見塔ですら、アルトは腰が抜ける
くらいたまげたものだ。
﹁宿⋮⋮屋?﹂
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断じて違う。いや、人が宿泊する施設ではあるのかもしれないが、
少し大きな宿屋なんぞでは決してない。
︵兄貴の、ば、馬鹿野郎ッ!︶
恨み節も出るというもの。ここに来る途中、なにやら行き交う人
の身なりが良くなっていて、おかしいなとは思っていた。
分かっていれば、それなりに準備も出来たというのに。
︵や、やばい⋮⋮せ、せめて着るものくらいは︶
これでも一張羅で都会に臨んだつもりだったが、そんなレベルで
はない。仕事を貰うどころか、下手に粗相でもすればなにを請求さ
れるか分かったものではない。
引き返そう。そう思いアルトが一歩後ずさったその瞬間、彼へと
なにかご用ですかぁ?﹂
通りのよい声がかけられた。
﹁あれ?
アルトの肩が跳ね上がる。振り返れば、箒を持った少女が首を傾
げながらこちらを見てきていた。
業者さんですかぁ?﹂
銀色の髪の毛に、狼の耳と尻尾。銀狼の亜人であろう少女は、慌
てるアルトに言葉を続ける。
﹁お客さま⋮⋮じゃ、ないですよね?
﹁え、えっと、その﹂
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アルトの身なりに目をやって、少女は訝しげにアルトを見つめた。
こ、これ
少女が着ているフリフリとした服に目が奪われつつも、アルトは覚
雇っていただけると伺いましてっ!
悟を決めて事情を説明する。
﹁し、仕事をっ!
を﹂
兄から貰った書状。それをひとまず少女に手渡す。
少女は目を細めて割れた蝋印を見つめた後、くるりとホテルへ振
り返った。
﹁こっちですぅ。付いてきてくださいー﹂
ふりふりと少女の尻尾が左右に揺れる。
先を行く少女の背中を見やって、アルトは慌てて駆けだした。
◆ ◆ ◆
ホテルの中はもはや別世界だった。
﹁う、お⋮⋮﹂
思わず出てきた小さな唸りに、アルトは無意識に声量を落とす。
豪華なんて言葉では言い尽くせないほどの絢爛さ。
田舎育ちのアルトにも分かる。この場所は、自分の村とはなにも
かもが違う。
磨かれた床石を踏みしめながら、アルトは柱に刻まれた彫刻の縁
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を指でなぞった。
﹁あの、ところで何処へ⋮⋮﹂
不安が襲いかかり、前を行く少女へと声をかけてしまう。目に映
るものの中で、少女の気軽さだけが唯一気持ちを落ち着けてくれた。
﹁んー、そうですねぇ。シャンシャンもよく分かんないんですけど
ー。お手紙持ってるなら、オーナーさんのとこ行かなきゃですかね
ー?﹂
首を傾げて聞いてくる。そんなこと、こっちが聞きたい。
出てきたオーナーという単語に不吉なものを感じつつ、アルトは
泣きそうな気持ちを奮い立たせて前へと進むのだった。
◆ ◆ ◆
泣きたいを遙か彼方に通り越し、アルトは鳴り響く鼓動と冷や汗
と共に声にならない悲鳴を上げていた。
﹁ロプス家当主、シャロン・エルダニア・ロプスです。初めまして、
アルトさん﹂
アルトは目の前の女性が発っした言葉の意味を、必死になって理
解しようとしていた。
分かる。分かるはずだ。言葉としては、なにも難しいことは言っ
ていない。
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自己紹介と、初めまして。アルトは、持てる力を振り絞って彼女
の前にひざを突いた。
﹁あ、アルトです。は、初めまして﹂
奥歯がかち合って鳴り響く。止めようとするがいうことを聞いて
くれない顎関節を見やって、シャロンは小さく微笑んだ。
﹁あまり固くならないでくださいまし。こうして正式な書状もある
わけですから﹂
部屋の奥。机の向こうに座るシャロンの声を、アルトは遠い世界
の話のように聞いていた。
アルトが住むオスーディア王国は、名前の通り王国だ。
世界でも最古の血筋を持つと言われるオスーディア王家は、その
名声を世界中に轟かせている。
けれど、この国に生きる者は知っている。
雲の、天の上の存在である王家の人々とも違う、真に地上を支配
している者たちのことを。
四大貴族。この国の人を、土地を、金を動かす、頂点に君臨する
者たち。
国を実質的に動かしているのは貴族たちであり、その全ての貴族
たちの中でも規格外の権力を握る、現世の怪物。
そんな化け物の当主が、自分の目の前に座っている。
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﹁えっと⋮⋮ああ、ソプラさんの。そういえば、弟さんがいらっし
ゃると伺っていました﹂
書状を広げて眺めるシャロンの声に、アルトの顔がびくりと上が
る。
青い肌に、額の一本角。そしてなによりも特徴的な、大きな単眼。
まだ10代だろうか。立場を考えれば若すぎるように思えるが、
目の前の彼女自身が常識を越えた存在だというのが素人のアルトに
も嫌と言うほど伝わってくる。
希代の政治家だと噂されるロプス家の女傑の長の声を、アルトは
信じられないと聞いていた。
﹁あ、兄を、知ってるんですか?﹂
微かな声で、それだけを絞り出す。村でも評判の悪い、放浪癖の
耐えない兄だ。そんな兄の名がロプス家の当主の口から出ているこ
とが、アルトには信じられなかった。
そんなアルトの疑問に、シャロンはあっけらかんと答えてみせた。
あそこに飾られている絵画の数々は、ソプラ
﹁それはもう。貴方のお兄さまは王都でも高名な画家ですから。ロ
ビーは見ましたか?
さんから寄贈されたものです﹂
﹁へっ?﹂
シャロンの説明に、思わず間抜けな声を出してしまった。
なにを言ってるんだという表情のアルトを見て、シャロンは﹁知
らなかったのですか?﹂と眉を寄せた。
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﹁た、確かに兄は放浪しつつ、趣味の絵を描いてると言ってました
が⋮⋮えっ?﹂
慌てるアルト。それもそのはずで、いきなりあのズボラな兄を高
名な画家だと言われても信じられない。
そんな唖然としているアルトの顔を見て、シャロンはくすりと笑
ってみせた。
﹁ふふふ、お兄さまは面白いお方ですから。貴方を驚かせようとし
たのでしょう。⋮⋮と、まぁそれはさておき。雇いの件ですが﹂
シャロンの目が値踏みをするようにアルトを見つめる。どこまで
も透き通るようなひとつ目に見つめられ、アルトはぞくりと背中を
震わせた。
なにもかもが見透かされている。そんな感覚だ。
﹁⋮⋮いいでしょう。お兄さまには無償で絵を譲っていただいてお
りますし、なにより貴方は誠実そうです﹂
見窄らしいアルトの格好に目を下ろし、ふむとシャロンは足を組
む。
ちょうど、産休でメイドが一人抜けたところだ。男手が増えるの
も悪くないだろう。
﹁よろしくお願いしますわ、アルトさん﹂
にこりと微笑むシャロンのひとつ目に、アルトは全身全霊で頭を
下げるのだった。
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第02話 ホテル・グランドシャロンにようこそ︵2︶
目の前の光景にアルトは完全に固まっていた。
﹁ほら、あんたら。黙れって言ってるだろ。ちゅうもーく﹂
アルトの横で、長身の女性の凛とした声が部屋に響いた。
そこの男の子は誰ですかー!﹂
黒髪に頭から生える角。悪魔族の女性は、眼前で目を向けてくる
メイド長!
一同を一別する。
﹁はーい!
﹁メイド長の男ですかー!?﹂
キラキラと光る好奇心。矢継ぎ早に飛んでくる質問に、メイド長
と呼ばれた女性は気だるそうにアルトの背中を叩いた。
﹁馬鹿たれ、私に男はおらん。先週振られた。次言ったらぶち殺す
ぞ﹂
面倒くさそうに睨むメイド長の声を聞き、質問したメイドが愉快
そうにケタケタと笑った。彼女の横に座っていたメイドが興味深そ
うにアルトを見つめてくる。
メイド。
貴族の屋敷に仕える、家事と給仕のプロ。ここ高級ホテルではさ
ながら、お客様にサーブする女だらけの傭兵集団。
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そんなメイドが、アルトの前に集まっていた。
﹁あ、アルトです⋮⋮よ、よろしくお願いします﹂
なんとかそれだけを、アルトは絞り出して頭を下げた。アルトの
発言の意図が読めず、メイドたちの頭の上に疑問符が浮かぶ。
﹁は? どういうことですメイド長?﹂
狐耳のメイドが、わけが分からないとメイド長に首をひねった。
それを聞き、メイド長は面倒そうに息を吐く。
相変わらず、自分たちのオーナーはなにを考えているか分からな
い。
ただ、自分たちはメイドのプロ。上の決定には従うだけ。
﹁紹介しよう。今日から我々と一緒にメイドとして働くことになっ
た、アルト少年だ﹂
メイド長の口から落ちた言葉が、メイドたちの間に広がっていく。
口火を切ったのは、最初に手を挙げたネコ耳のメイドだった。
﹁えぇええええええええええッッッッ!?﹂
控え室に響く声を聞きながら、アルトは愛想笑いを浮かべるしか
できない。
◆ ◆ ◆
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初めて見た。
初めてというのは、女の子の集団をだ。
自分が育ってきたリコーダ村の人口は64人。その中で同年代の
女の子は、たったの7人。しかもその7人が揃うところなど、見た
ことはない。
アルトくんは絵描かないの?﹂
君、メイドになるのー?﹂
今、その3倍以上の人数の女の子が、目を輝かせてアルトに詰め
寄っていた。
﹁なになに!?
﹁ソプラ様の弟くんなんだって?
﹁ちょっと、ちょっと、結構可愛いじゃん。メイド長、この子好き
にしていいんですか?﹂
同年代だけじゃない。年下、大人のお姉さん。目の前の光景に、
アルトの処理能力は限界に達しようとしていた。
﹁あらら、緊張してる緊張してる。いいですなー、私は賛成ですよ
メイド長、アタシが教育係やります!﹂
男の子の新人﹂
﹁アタシ!
﹁あ、抜け駆けすんなよエリィ。メイド長、私の班ひとり空いてま
すっ!﹂
マジマジと見られ、べたべたと触られる。なにやらいい匂いの漂
う黄色い空間に、アルトは緊張を通り越して固まっていた。
そんな乱雑な空気を切り裂いたのは、アルトの横に立っていたメ
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イド長だった。
﹁静まらんかボケ共ぉおおおおッッ!!﹂
一喝。腕を組んだメイド長の一言で、口々に発言していたメイド
たちの声が一瞬で静まる。
全員が注目を向けていることを確認して、メイド長は淡々と話し
始めた。
﹁アルト少年の処遇は既にオーナーが決定されている。我々に彼の
人事に関する決定権はない﹂
そう言いながら、メイド長は一度目を瞑った。頭を抱えると言い
換えてもいい彼女の表情に、メイドたちが不思議そうに目を向ける。
正直、本当にあのお嬢様はなにを考えているかわからない。
﹁⋮⋮シャンシャン、あんたがアルト少年の教育係だ﹂
その瞬間、一同の目が驚愕に大きく見開かれた。
がばりと全員の首と視線が動き、視線の先の少女に集中する。
﹁ほえ?﹂
間抜けな声が部屋に落ちる。
部屋の中で唯一、ぼへっと尻尾の毛繕いに興じていた少女が、き
ょとんとした瞳で呼ばれた自分の名前に反応していた。
﹁あ、すみません。聞いてませんでした。シャンシャンがなんです
か?﹂
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メイド長に睨まれ、慌ててシャンシャンと呼ばれた少女が返事を
する。アルトへの興味もそこそこに、自慢の毛並みを整えた彼女に
は今の状況が理解できない。
反対ですっ!
なんでよりによってシャンシ
そんなシャンシャンの様子に、メイドの一人が勢いよく声と手を
挙げた。
﹁ちょっ、反対っ!
ャン!﹂
竜の角を生やした彼女に、横に座っていたエルフのメイドも賛同
した。
﹁ていうかシャンシャン班長じゃありませんし、私たち班長を差し
シャンシャン教育係になるんですかっ!?﹂
置いてなんでいきなり教育係⋮⋮﹂
﹁えっ!?
そこで初めて知った驚愕の事実だというように、シャンシャンは
びくりと身を竦ませた。それを見て、エルフの班長は訴えるように
メイド長を見つめる。
﹁ほら、こんな子ですよ。無理ですよ。ただでさえ男の子のメイド
なんて初めてなのに﹂
もっともなエルフの班長の訴えに、メイド長も眉を寄せる。
けれど、現場はどうあれ上の決定は絶対。メイド長は致し方なし
と、アルトの頭の上にぽんと手を乗せた。
そこでようやく、固まっていたアルトの意識が戻ってくる。
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やれやれとこれからの苦労を忍びつつ、メイド長は命令した。
﹁あのオーナーの決定だ。ならば我々は、それを見事完遂するのみ。
女だろうが男だろうが関係ない、我々はロプスが誇るメイドの牙。
今日もお客様がお見えする。さぁ、仕事だ取りかかろう﹂
ぱんぱんと手を叩き、メイド長が朝会の終わりを皆に告げる。
ここまでくれば、仕方がない。次々と、持ち場に付くためにメイ
ドたちが立ち上がる。
﹁アルトくん、なにか分かんないことあったら言ってねー﹂
﹁仕事終わったらお姉さんが街案内したげる﹂
﹁あ、ずるっ。メイド長、ローリエが夜の教育係になろうとしてま
す﹂
軽口を言いながら部屋を出ていくメイドたちに、メイド長は疲れ
たように息を吐く。
だが一度部屋を一歩出れば、柔和で清廉な笑顔を身につけるメイ
ドたちを、アルトは驚愕の瞳で見送った。
そう、彼女たちはプロ。
ここはホテル・グランドシャロン。四大貴族がひとつ、ロプス家
が誇る世界有数の高級ホテル。
﹁さて、アルト少年。さっそくだが最初の仕事だ﹂
にたりと笑うメイド長の言葉に、アルトは気合いを入れ直した。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n4543ca/
異世界コンシェルジュ
2016年9月1日00時05分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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