International Negotiation Competition 2016 参加体験記 東北大学英語チーム 菅原健佑 本体験記の目的: 本体験記を読むことで、半年後の本大会へ向けどのような準備を行っていけば良いか具 体的なイメージが持てていない状態から、大会まで行うべき準備について時系列で具体 的なイメージを持てている状態になる。 メインターゲットとしている読者:INC 出場が決定した英語チームの学生 読んで欲しい時期:INC 出場決定時点(例年 12 月初旬〜中旬) 読了までの時間:10 分 《目次》 1. はじめに 2. 準備段階における国内大会と International Negotiation Competition の違い 3. 時系列でみる INC までの準備と改善点 4. おわりに 1. はじめに 2015 年 12 月、東北大学英語チームは、2016 年度 International Negotiation Competition (以下、INC)への出場が決定しました。東北大学として過去に INC へ出場したことがなく、 また過去の INC 参加者がどのような準備を行ってきたのか参考にできるものが限られてい たことから、INC 本番までの半年間手探りの中で準備を進めてきました。今回、体験記執筆 というまたとないチャンスをいただいたので、大会期間中の熱戦の様子は山村の体験記に 任せるとして、私は半年に渡る準備の様子を、反省も踏まえて書き記したいと思っており ます。そして、来年以降 INC に挑戦する方々に使っていただける参考資料として、上位入 賞を目指す際の一助になれればと思います。 2. 準備段階における国内大会と International Negotiation Competition の違い INC までの準備を振り返るにあたって、まずは INC がどれほど国内大会と異なっていたのか 分析してみました。国内大会と INC の違いを挙げれば切りが無いですが、準備段階に大き く影響を与えるものに絞ってみると、大きな違いとして以下の 3 つが挙げられます。 ① 問題発表のタイミング International Negotiation Competition 2016 参加体験記 東北大学英語チーム 菅原健佑 国内大会では例年、大会の 2 ヶ月前に問題が発表されます。しかし、INC では大 会の 2〜3 週間前に問題が発表されるため、国内大会ほどの時間的余裕を持って 準備を行うことはできません。 ② 大会期間中のラウンド数 INC では 5 日間で合計3ラウンドもの交渉に臨みます。上記の問題が発表されて から大会までの時間がさほどないという状況も相俟って、各ラウンドの準備にか けることができる時間はさらに少なくなります。 ③ 提出書面/交渉中の参考資料 国内大会とは異なり、ジャッジに対する交渉準備メモの提出はありません。その ため、書面作成に多くの時間を割く必要はありません。しかし、国内大会のよう に交渉相手に対する資料配布や PowerPoint 等のプレゼンテーションソフトを持 ち込んだ提案などは認められていないため、交渉相手と対話ベースの的確なコミ ュニケーションを行い、かつコミュニケーションが有効であることをジャッジに 対してアピールする能力が国内大会以上に求められます。 上記 3 つの点から、 INC に向けた事前準備における考察として次のことが言えると思います。 A) 時間的余裕がない中で複数のラウンドについて準備する必要があるため、問題発 表前の時点で明確な準備方針が確立されており、問題発表以降はそれに従って効 率的に準備をしていくことが求められる。 B) 紙面によるアウトプットができないため、戦略におけるクオリティよりもむしろ、 実際のプレイングによるアウトプットに重きを置いた準備が大切である。 ここで述べた INC に向けた事前準備における考察は、2016 年度 INC を終えた段階で言語化 したものです。A)については、 2016 年度の準備段階ですでにその重要性を認識していまし たが、B)については INC 期間中に実際のラウンド内でその重要性に気付かされました。次 章では、これらの考察をもとに、私たちが半年間どのような準備を行ってきたか時系列で 説明し、回顧した時に「こうしておけばよかった」と思う点を改善点としてさらに補足し ていきます。 International Negotiation Competition 2016 参加体験記 東北大学英語チーム 菅原健佑 3. 時系列でみる INC までの準備と改善点 東北大学英語チームは、大会出場メンバー2 名とサポーター1名の3名が中心となって INC に向けて準備を行ってきました。いずれも INC 出場決定時点で学部 4 年生であり、卒業後 は民間企業で働くことが決定していたため、引越や大会参加に関わる諸々の調整作業に追 われ、3 月から本腰を入れて準備を開始しました。以下 3 月以降に行った具体的な準備の内 容です。 【3 月】 大会に出場するメンバーが確定し、過去問題文・ジャッジパック・大会規則などの資料 を分析して 7 月までの大まかな計画を立てました。また、抜粋した過去問題文を使って 戦略策定、模擬交渉を実際に行ってみたのもこの時期です。 【4 月〜5 月】 6 月からの準備方針を確立するべく、4 月と 5 月に 1 回ずつ、問題発表から INC 当日まで の 2〜3 週間にわたる直前準備を過去の問題文を用いて実際に体感してみるという模擬準 備を行いました。具体的には、①担当者を決めて問題文を分析→②担当者が戦略を策定 する→③ピアレビューを行い戦略ブラッシュアップ→④サポーターを交渉相手として模 擬交渉→⑤フィードバックをもらって戦略ブラッシュアップ、という①〜⑤のサイクル を 1 週間で 1 回ずつ回していく方法を試行していました。 【6 月】 4〜5 月で試行してきた、サイクルを回しながら戦略をブラッシュアップさせていく方法 で 6 月も準備を行いました。6 月は森下先生をはじめとする国内 INC 運営委員の先生方や OBOG の方々と練習試合や戦略検討会を行う機会を毎週末設けていただいたこともあり、 週末の指導会をペースメーカーとして設定し準備を進めていきました。 上述した通りの準備を INC 当日まで行っていました。INC を終えた現時点で振り返ってみて も、6 月の大会準備前に、実際の準備を想定して準備の予行演習を行うのは妥当だったと思 います。しかし、 「こうしておくべきだった」という反省点・改善点はもちろんあるので、 以下に挙げておこうと思います。 戦略のクオリティアップは程々に、プレイングのアウトプット練習にもっと時間を! 私たちが行っていた準備は戦略のクオリティを高めることに主眼を置いていました。 しかし、INC では戦略を紙面でアウトプットする機会は与えられていません。つまり、 プレイングによるアウトプットができなければ、どれだけ戦略が優れていても高得点 International Negotiation Competition 2016 参加体験記 東北大学英語チーム 菅原健佑 は期待できないのです。私たちの場合、実際に交渉を行う機会が週末だけとなってし まい、プレイングの面において練習量が足りていなかったのは反省すべき点です。改 善するとすれば、担当者が 1 人で行っていた戦略策定にかける時間を短くし、チーム 内での簡易模擬交渉をベースに戦略を練り上げるなどプレイングの要素を普段の準備 から取り入れていくことが肝要だと思います。 チームとして戦うための準備を忘れない! 戦略策定をスムーズに行うために、私たちは各ラウンドの担当者を決めて戦略策定お よびブラッシュアップを行っていました。しかし、やはり担当者とそうでないメンバ ー間の戦略理解度には差が生まれてしまい、 「チームワーク」は審査項目の 1 つである にもかかわらず、実際の交渉の場面でうまくチームワークを活かせない場面が多くあ りました。改善するとすれば、ピアレビューを書面のやり取りで終わらせない・アウ トプットの練習量を日頃増やしていくなど、戦略理解の機会をチーム内で多く設ける ことが重要だと思っています。 (参考:INC 出場決定から 2016 年度 INC までの準備内容) International Negotiation Competition 2016 参加体験記 東北大学英語チーム 菅原健佑 4. おわりに INC 本番までの準備について、 「これが正解」というものはもちろんありません。むしろ、 チーム事情に応じて準備の仕方も変えていかなければならないことを、私たちは身をもっ て体感しました。私たちの場合、チームメンバー全員が社会人 1 年目で、かつそれぞれの 拠点が仙台、東京、長崎と離れていたため、大会直前まで遠隔のコミュニケーションを余 儀なくされていました。 しかし、実際に INC での全ラウンドを終えた今思うのは、そういった環境的な制約があっ ても、準備の仕方次第ではどんな国とも対等に戦えますし、なんとでもなるということで す。むしろ、そんな逆境をはねのけるために思いっきり準備して臨んだ本番だからこそ、 挑む価値があり、経験が財産になると私は信じています。 なので、これから INC に挑戦する方には、せっかく手にした機会ですから綿密な準備をし て臨んでいただければと思っています。この体験記が、これから世界に打って出ようとす るそんな皆さんにとって少しでも参考になれば幸いです。 〜追記〜 この度の International Negotiation Competition 参加に際して、たくさんの方々から多 大なご支援をいただきました。 特に、大学対抗交渉コンペティション運営委員である森下先生、柏木先生、そして、東京 大学 OB 小沢様をはじめとする大学対抗交渉コンペティション OBOG の方々にはお忙しいと ころご指導ご鞭撻を賜り、国際大会に大きな弾みをつけて臨むことができました。 略儀ではございますが、深く御礼申し上げます。 2016 年度東北大学英語チーム 菅原、山村、大崎
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