Economic Monitor

Sep 1, 2016
No.2016-040
伊藤忠経済研究所
Economic Monitor
主席研究員 武田 淳
主任研究員 石川 誠
03-3497-3676 [email protected]
03-3497-3616 [email protected]
日本経済:2016 年 4~6 月期 2 次 QE は小幅下方修正の見込み
2016 年 4~6 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.0%(年率+0.0%)へ小幅ながら下方修正さ
れると予想。公共投資が上方修正される一方、設備投資や在庫投資が下方修正される見込み。日
本経済は、民間需要が低迷する中で政策頼みの状況にあるという見方は変わらない。
9 月 8 日発表予定の 2016 年 4~6 月期 GDP2 次速報は、1 次速報値の前期比+0.0%(年率+0.2%)から
前期比+0.0%(年率+0.0%)へ小幅ながら下方修正される見込み。6 月の建設総合統計を反映して公的
固定資本形成(1 次速報前期比+2.3%→2 次速報+2.6%)が上方修正される一方で、本日発表された 4
~6 月期の法人企業統計季報を受けて民間企業設備投資(前期比▲0.4%→▲0.8%)
、民間在庫投資(前期
比寄与度▲0.0%Pt→▲0.1%Pt)がそれぞれ下方修正されると予想する。
小幅な修正につき、日本経済に対する評価は変わらない。すなわち、成長率は一進一退の概ね横這い推移
が続いており、4~6 月期について言えば、民間需要の弱さを公共投資の拡大と低金利による主に住宅投
資の拡大によって補う、政策頼みの状況ということになる。
実質GDP成長率の推移(QE予測)
(前期比・%)
2015
1~ 3
実質GDP
(年率換算)
(前年同期比)
国内需要
民間需要
2016
4~ 6
7~ 9
10~ 12
1~ 3
1次 速 報
4~ 6
2次 予 測
4~ 6
0.0
1.2
▲ 0.4
0.5
▲ 0.4
0.5
0.0
4.9
▲ 1.7
2.0
▲ 1.7
2.0
0.2
0.0
▲ 1.0
0.7
1.8
0.7
0.2
0.6
0.5
1.1
▲ 0.0
0.3
▲ 0.5
0.4
0.3
0.3
1.5
▲ 0.2
0.4
▲ 0.6
0.2
0.2
0.1
民間最終消費支出
0.1
▲ 0.7
0.5
▲ 0.8
0.7
0.2
0.2
民間住宅投資
2.6
1.7
1.1
▲ 0.5
▲ 0.1
5.0
5.0
民間企業設備投資
3.0
▲ 0.9
0.7
1.2
▲ 0.7
▲ 0.4
▲ 0.8
民間在庫品増加
(0.5)
(0.3)
(▲0.1)
(▲0.1)
(▲0.1)
(▲0.0)
(▲0.1)
▲ 0.1
0.5
▲ 0.1
0.1
0.8
0.6
0.6
政府最終消費支出
0.3
0.3
0.2
0.8
0.9
0.2
0.2
公的固定資本形成
▲ 1.5
1.2
▲ 1.9
▲ 3.3
0.1
2.3
2.6
(0.1) (▲ 0.4)
公的需要
財貨・サービスの純輸出
(0.1)
(0.1)
財貨・サービスの輸出
1.7
▲ 4.2
2.6
▲ 0.9
(0.2) (▲ 0.3) (▲ 0.3)
0.1
▲ 1.5
▲ 1.5
財貨・サービスの輸入
1.1
▲ 1.8
1.2
▲ 1.1
▲ 0.5
▲ 0.1
▲ 0.1
(出所)内閣府、予測は当社による
さらに、4~6 月期の法人企業統計では、
製造業の経常利益が 1~3 月期の前年同期比▲20.4%から▲22.4%
へ減益幅が拡大、非製造業(1~3 月期▲4.5%→4~6 月期▲3.1%)はやや改善するも依然として前年同
期比マイナスとなり、製造業を中心に企業業績の悪化が続いていることが確認された。製造業のうち、業
績の悪化が目立つ業種は、化学(経常利益:1~3 月期前年同期比+10.3%→4~6 月期▲6.4%)
、金属製
品(+34.6%→▲22.6%)、はん用機械(▲14.8%→▲31.2%)、情報通信機械(▲45.5%→▲58.5%)で
あり、背景には市況の悪化や需要の低迷が挙げられるが、円高の影響も少なからずあろう。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠経済研
究所が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告
なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。
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そのうえ、利益が減少する下で労働分配率が全産業で 1~3 月期の 62.5%から 4~6 月期は 61.6%へ低下
(当研究所試算、季節調整値)したことが示す通り、人件費は企業業績の悪化以上に抑制されている。つ
まり、デフレ脱却に向けた「所得から支出への前向きの循環メカニズム」は既に逆回転し始めており、現
時点では景気の自律的な回復を見通し難い。海外景気の好転や円高圧力の緩和といった外部環境の改善が
なければ、先般、閣議決定された経済対策の実行が本格化するまでの間、景気の底割れリスクを意識せざ
るを得ない状況が続くこととなろう。
企業の経常利益の推移(前年同期比、%)
労働分配率の推移(季節調整値、%)
60
74
製造業
50
72
非製造業
40
※当社による季節調整値
70
30
68
20
66
10
64
0
62
▲ 10
60
▲ 20
▲ 30
2011
2012
2013
2014
2015
58
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
2016
( 出所) 財務省
( 出所) 財務省
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