2016/ グローバル・マクロ・ トピックス 9/1 投資情報部 シニアエコノミスト 折原 豊水 ブラジルは大統領を罷免、財政改革が進むか注目 ブラジルの上院本会議は8/31、ルセフ大統領の罷免(ひめん)を決定、テメル新大統領が誕生 今後の最大の注目点は財政改革法案の審議に移る。前提としての州財政問題や年金改革等を 行ったうえで10月以降、採決を目指すが、視界良好ではない レアルは米利上げ観測の再燃や為替介入で反落、今後は財政改革が進展することや景気回復 期待により底堅い展開を見込む。ただ、米利上げ観測の再燃や介入により上値は限られよう 上院でルセフ大統領 の罷免が成立、テメ ル 氏が 大統領に 就 任 ブラジルの上院本会議は8/31、ルセフ大統領の弾劾裁判において投票を行い、 罷免に賛成が61票、反対が20票となり、罷免に必要な総議席81の3分の2である54 票を得たことで罷免が成立した。罷免の理由としては、2014年予算において財政収 支の数字を良くみせるため公的機関や公的銀行に財政負担を一部肩代わりさせる といった不正会計操作を行ったことが財政責任法に違反しているとされた。過去に はコロール大統領(90~92年)が汚職疑惑で弾劾審議が行われ、罷免の可能性が 高まるなか、直前に自ら辞任して以来となる。同日、テメル大統領代行が正式に大 統領に就任した。 弾劾裁判の大統領罷免に関する投票(8/31) ルセフ大統領 の罷免反対, 20 ルセフ大統領 の罷免賛成, 61 (注)上院総議席81、罷免成立には上院総議席81の3分の2である54票が必要 出所:エスタード紙よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/9/1 グローバル・マクロ・トピックス 今後の 注目点は 財 政改革審議、法案が 成立す れ ば 財政責 任法導入以来の 画 期的な出来事 ルセフ大統領の罷免が成立し、テメル氏が正式に大統領となったことで、罷免支 持のための議会工作の必要性がなくなった。今後は財政改革等の審議に集中でき ることから、政治的な混乱が収束する方向に動き出したとみている。市場の最大の 注目点は政府が6月に発表した歳出の伸びをインフレ率以下に抑制するという財政 改革法案の審議に移る。これが成立すれば2000年に導入された財政責任法以来 の画期的な出来事になろう。財政責任法は予算上の各種指標に目標を定め、それ を政府が守らなかった場合には厳しいペナルティが課されるもの。導入以降、毎年 基礎的財政収支は+3%前後の黒字が維持され財政状況の改善に寄与した。ただ、 14年以降は政府と議会が目標を修正することで合意し3年連続で基礎的財政収支 が赤字となった。今回の財政改革法案が成立し、景気が回復に向かえば財政状況 の改善に向けた動きがスタートするとみられる。 ブラジルの財政収支GDP比率 (%) (年次:1998~2017) 利払い プライマリーバランス 財政収支 4 2 0 ▲2 ▲4 ▲6 ルセフ ▲8 ▲ 10 ↓財政赤字拡大 (11~16年) カルドーゾ (95~02年) ルーラ (03~10年) ▲ 12 ▲ 8.2 ▲ 10.4 ▲ 9.8 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (注)地方政府、公営企業含む一般政府ベース、16年以降はみず ほ証券予想 (年) 出所:ブラジル中銀資料よりみずほ証券作成 政府が財政改革法を成立するためには、①州政府の連邦債務の返済を一時繰 り延べる代わりに、州政府の歳出の伸びに上限を設ける、②一部の公務員給与の 引き上げを決定したがこれを見直す、③年金財政の悪化による財政負担を抑制す るため、年金改革を行う、等が必要になるとみられる。政府は①や②について9月中 にも結論を出したい意向のようだ。③の年金改革については弾劾審議が終了したこ とで法案を9月にも提出する見込みだが、審議は難航しそうだ。10月初めに大規模 な地方選挙の投票を控えており、財政改革法案の下院での投票は10月以降にな り、上院での審議・投票はその後になるとみられる。9月中に①や②について早急に 議会の合意を得ることができるかが、③の年金改革や財政改革法案が成立するか どうかを占ううえで注目される。また、財政赤字の拡大に歯止めがかかっていないこ とから歳入面では公的資産の売却に加えて、増税を行う必要もあるだろう。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/9/1 グローバル・マクロ・トピックス リスクとしては財政 改革審議の 遅れ や 連立パートナーとの 関係 今後のブラジル政治をみるうえでのリスクとしては、第1に、前述のように現時点で は財政改革の審議が視界良好とは言えないことが挙げられる。 第2に、ブラジルの大統領は犯罪により罷免となった場合は8年間の公職追放とな るが、今回はルセフ氏の罷免に関する投票と公職追放とするかどうかの投票の2つ に分けられた。その結果、ルセフ氏の公職就任を認めないが42票、認めるが36票と なり、3分の2の54票に達しなかったため、今後もルセフ氏は各種の選挙に出馬でき る。与党の民主運動党(PMDB)の一部が公職を認める側に回ったためで、これに 対して連立パートナーで市場寄りの政党である社会民主党(PSDB)はルセフ氏が 公職追放とならなかったことに反発している。同党は財政改革法案の審議が進んで いないことにも不満を示している。連立離脱となれば政権の求心力が低下するおそ れがある。 第3に、2014年の大統領選挙時にルセフ氏とテメル氏は不正献金疑惑等により高 等選挙裁判所に訴えられているが、長らく結果が出ていない。選挙が無効となれば 大統領選挙がやり直しとなる可能性がある。ただ、テメル氏が大統領に就任する 等、政治情勢が進展していることから、選挙裁判所が選挙を無効と判断する可能性 は高くないとみられる。さらに、選挙裁判所が無効と判断しても、最高裁が選挙裁判 所の決定を認めない可能性もある。こうした不透明要因に留意したい。 ブラジルの2016年の主要スケジュール 日付 4月17日 5月12日 5月25日 6月15日 7月7日 7月20日 8月 8月16日 8月31日 8月31日 9月~ 10月2日 10月~ 10月19日 11月30日 内 容 下院でルセフ大統領の弾劾審議継続を決定 上院で弾劾裁判を設置、テメル副大統領が大統領代行に 16年基礎的財政収支目標を黒字から▲2.7%に修正 歳出の伸びを実質でゼロとする財政改革案発表 17年基礎的財政収支目標を▲2.0%に、公的資産売却表明 ブラジル中銀会合 リオデジャネイロオリンピック(5~21日) 大型地方選挙キャンペーン開始 ブラジル中銀会合 ルセフ大統領の罷免、テメル新大統領就任 財政改革審議(年金改革や州財政問題) 大型地方選挙(市町村、決選投票となった場合は10/30) 財政改革法案の投票 ブラジル中銀会合 ブラジル中銀会合 (注)9月以降は予定 出所:各種資料よりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/9/1 グローバル・マクロ・トピックス レアルは米利上げ観 測の再燃等により反 落 ブラジルレアルは8/10に1ドル=3.11レアルと年初来高値を更新したものの、その 後は米国景気の回復を受けた米利上げ観測の再燃や、ブラジル中央銀行によるレ アル売りドル買い介入に相当するリバーススワップ入札が続いていることで8/29に かけて3.29レアルまでレアル安となった。8/31はルセフ大統領の罷免成立を受け て、1ドル=3.22レアルと前日の3.24レアルから小幅レアル高にとどまった。事前に罷 免が織り込まれていたことから反応は限定的だったようだ。 今後は 財政改革の 進展や 景気回復期 待がレアルを下支え 今後については、①財政改革法案の成立に向けて9月以降、公務員給与の引き 上げ見直しや、州財政問題、年金改革法案等において審議が進む、②インフレ圧 力の緩和や政治的な混乱の収束期待により、消費マインドや企業マインドが改善し ており、今後は景気悪化ペースが和らぐ、等からレアルは底堅く推移しよう。ただ一 方で、米利上げ観測の再燃や、中銀による為替介入が続いていることから対ドルで 上値は限られよう。 米ドル・ブラジルレアルの推移 (日次:2014/1/1~2016/8/31) (1ドル=レアル) ドルレアル(逆目盛) 1.5 200日移動平均 +10%かい離 ▲10%かい離 15年夏場 米利上げ観測、人民元ショック 2.0 15/9格付け ジャンク級に 政権交代期待 原油価格上昇 2.5 ↑レアル高 14年半ば~ 3.0 原油価格下落 3.5 14年秋~ ペトロブラス 汚職疑惑 4.0 4.5 14 15 16 (年) 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 ブラジルレアルと中銀の為替介入額 (日次:2016/1/1~2016/8/31) リバーススワップ入札額(右目盛) 3.00 テメル暫定 政権発足 ↑レアル高 3.20 3.40 ドル・レアル(左逆目盛) (10億ドル) 政権交代期待 原油価格上昇 3.60 Brexit 米利上 げ観測 3.80 米利上げ先 送り観測 4.00 4.20 16/1 16/2 16/3 16/4 16/5 16/6 (注)リバーススワップはレアル売りドル買いに相当 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 16/7 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 16/8 (年/月) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2016/9/1 金融商品取引法に係る重要事項 グローバル・マクロ・トピックス ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料を ご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込 み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160901-22 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5
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