PF2 と第三セクター問題

PPPニュース 2016 No.10 (2016 年8月 25 日)
PF2 と第三セクター問題
英国等 PPP に取り組む先進国では、
「ポスト PFI」の検討が進んでいる。英国においては、メージ
ャー政権の下で 1990 年代初頭以降、PPP のひとつの手法として導入された PFI 方式の見直しが始ま
り、2012 年 12 月には PPP の新たな手法として従来の PFI の内容を見直したガイドラインである
「PF2(Private Finance 2)
」を公表し実践段階に入っている。PF2 では、行政関係機関の対応体制
の強化、入札手続期間の短縮、プロセス書類の標準化等を一層進めることで①契約過程のスピード化、
②投資と直接関係しない一定のソフトサービスの除外、③公共部門への契約変更権限の付与等契約内
容の柔軟化、④民間部門の株主利益の公表、⑤公的部門における事業年次報告の公表等経営実態の透
明化、⑥法的リスクたる法改正等があった場合の公的部門の責任の明確化、⑦事業実施中の保証に係
るリスク規定の見直し等リスク配分の多様化、そして⑧競争的資金調達制度の導入、⑨多様な債券の
活用等調達資金の多様化など、広範多岐な見直しが盛り込まれている。具体的には、達成したい効果
を定めたアウトプット仕様書を国や地方自治体が作成し、この仕様書に基づいて民間事業者は具体的
な事業提案を行い、設計建設だけでなく維持管理や運営まで委ね、あくまでも民間投資として推進す
る点では PFI と同様の位置づけにある。また、アウトプット仕様書の要求水準に照らして、提供する
公共サービスの質が低下、あるいは施設機能が適切に維持されていないなどの場合は、公的部門から
民間へのサービス購入対価支払いが減額される一方で、民間事業者は、仕様書の要求に対応している
限り契約期間にわたって独占領域を形成し、長期的な収益を確保することが可能なモデルとなってい
る。
しかし、PF2 と PFI の大きな違いは、PFI では 100%民間企業が投資することが原則であった構造
が、PF2 の場合、国や地方自治体の公共部門の投資を直接認める点にある。注意すべき点は、事業を
担う SPC(特別目的会社)への民間投資分を公共部門の投資分が一定の範囲で肩代わりするだけでな
く、公共の投資分を純増することを可能し民間側の資金調達リスクを軽減することである。同時に、
SPC に公共部門から役員としての人材が送り込まれることから、公共部門との情報共有や監査を実施
し易い構図としている。加えて、公共部門も出資分に見合った利益確保が可能なこと、リスク配分に
ついて法律変更リスク等は民間負担リスクから公的部門に移転すること、民間活用の重点を投資活動
におくことから、投資活動を直接必要としないサービスは民間事業対象から除外することを可能にす
る、などがポイントとなっている。
ただし、日本での PF2 活用は利点と同時に、過去において第三セクター等が抱えた問題点も十分
に認識する必要がある。英国の場合は、①プロジェクト領域ごとの仕様書や契約書の標準化が日本に
比べて大きく進んでおり、②優先交渉権者選定から 18 ヶ月以内に契約を締結する原則があること、
③日本に比べてモニタリング機能やリスク分担の契約が明確であり、契約書に記載する事後協議に先
送りすることが少ないことなどが指摘できる。このため、官民の役割分担が不明確なまま、様々な破
綻等の原因を形成した日本の第三セクターと類似の構図としない仕組みづくりが必要となる。1980
年代の中曽根内閣時代に取り組まれた官民連携の代表格である「第三セクター」もパートナーシップ
のひとつである。しかし、必ずしも良好な結果をばかりを生み出したとは言えない。原因としては、
第三セクターの事業が観光や住宅事業などの領域で設定されたため、事業展開の必然性や責任に対し
て必ずしも明確且つ十分な体制が形成できず、事業展開において官と民の課題点が結合する結果とな
ったこと、現実の事業経営において二元論による官民の縦割り・上下関係を前提として展開されたこ
と、などが指摘できる。加えて、官と民の協働において、明確に「官」と「民」を区別し相互の「共
通の言葉」や「評価軸・責任分担の共有」など十分なガバナンスを形成しないまま展開したため運営
面でも多くの問題を発生させてきた。この意味から PF2 についても単純に英国の形態を模倣するの
ではなく、第三セクターを含めた日本の官民関係の実態とその改善を含めた取り組みが必要となる。
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