発表資料

天然ゼオライトを利用した二酸化炭素濃縮装置と
ハウス栽培への応用
島根県産業技術センター
環境技術科
共同開発
科長
田島 政弘
大福工業(株)、早稲田大学
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二酸化炭素利用の問題点
・ハウスが密閉される冬季は、ハウス内の二酸化炭素が不足
植物の育成が悪くなる
・二酸化炭素供給は、灯油等の燃焼器からの供給が主流
また、二酸化炭素ガスをボンベから供給する方法もある
燃料は、高騰により収益が減少する
重いボンベは、山間地のハウスには配達が困難
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新規な二酸化炭素供給方法
新装置の開発コンセプト
大気中から二酸化炭素を回収し、
ハウスへ供給する
エネルギーは、電気だけ
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新開発の二酸化炭素濃縮装置
簡単な装置構成
天然ゼオライト(フェリエライト型)を利用した圧力ス
イング(PSA)型吸着装置
本装置の効果
大気中の低濃度二酸化炭素を10~20倍に濃縮
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天然フェリエライトについて
天然フェリエライトを工業利用規模で採掘できるのは、島
根県だけ
高強度(天然ゼオライトで最高水準)
岩石を粉砕するだけで使用可能
(合成ゼオライトのように、造粒する必要がない)
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島根県産天然フェリエライト採掘場所
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天然フェリエライト岩石
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天然ゼオライトの比較
ゼオライト種類
フェリエライト
モルデナイト
クリノプチロライト
細孔径(nm)
0.43×0.55
0.34×0.48
0.67×0.70
0.29×0.57
0.44×0.72
0.40×0.55
Si/Al比
5
5
5
耐酸性
強い
強い
弱い
硬さ
(圧壊強度)
非常に硬い
(16kg以上)
硬い
(約12kg)
柔らかい
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二酸化炭素濃縮装置について
圧力スイング方式
天然ゼオライトを吸着材に使用
大気中から二酸化炭素を濃縮回収する
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園芸施設における二酸化炭素の役割
植物の成長には、光合成のために二酸化炭素が必要
ハウスでは、日中に二酸化炭素が不足する
二酸化炭素を供給することにより、収穫量が増加する
茨城県農業総合センター園芸研究所データ
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今までの二酸化炭素供給方法
1.燃料の燃焼により、二酸化炭素を発生させる(日中)
暖房以外に、余分に燃料が必要であるため、燃料の高騰により、
収益が低下。
2.夜間の暖房に使用する暖房器の排ガスを一部利用する
午前中は二酸化炭素濃度が高いが、午後は二酸化炭素が足りなくなる
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栽培用二酸化炭素供給装置の問題点
燃 料 燃 焼 法
:燃料の高騰により、収益を圧迫
炭酸ガスをボンベで供給 :ガス供給設備が高価
山間部では、ガスの配達が困難
暖房器の燃焼ガスから二酸化炭素を回収
:水分除去,NOx,SOx除去が必要であり、大掛かりな装置となる
大気から二酸化炭素を回収できないか??
天然フェリエライトを使用した濃縮装置を開発!!
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二酸化炭素濃縮基礎実験
圧力スイング吸着(PSA)法
二酸化炭素の濃縮試験は、水分を除去した空気をポンプで供給し、加圧下
で二酸化炭素を吸着後、減圧しながら二酸化炭素を脱着させる。
前 処 理
400℃で吸着水の除去
↓
室温で二酸化炭素を飽和
吸着
↓
乾燥空気を流して、脱離す
る
二酸化炭素を除去
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二酸化炭濃縮試験結果(2Lカラム)
排気時間
実験条件
空気流量: 20L/min
吸着圧 : 2kg/cm2
吸着時間: 20分
排気圧 : 0.2kPa
排気時間: 10,15,20分
回収量 : 10L
(大気圧の戻してから採取)
二酸化炭素を10倍以上濃縮できることを確認した。
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二酸化炭素の回収量
CO2を10L中に4000ppm回収すると、CO2量は
10L×0.004/22.4L*44=0.078g
ゼオライト2L(2kg)に対して0.0039%となる。
これは、二酸化炭素濃度が400ppmと非常に低く、脱着圧力が
0.2kPaと低真空であるためである。
100%二酸化炭素では、最大7%吸着する
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開発装置外観(10アール以下用)
装置仕様
ゼオライト
: 2kg/塔 2塔式
二酸化炭素濃度
: 8,000ppm以上
二酸化炭素濃縮ガス供給量: 1 ~ 1.5L/min
吸着・脱着サイクル
: 10分
電 源 : 100V 15A
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小型ハウスでの実証試験(冬季)
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二酸化炭素の効果
二酸化炭素供給の苗の方が、イチゴの実が早く赤くなった。
成長速度が速いことを示す。
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二酸化炭素施用の効果
CO2施用あり CO2施用なし
開花時期
42日後
57日後
収穫量
13.7kg
10.1kg
糖度
10.7度
9.3度
二酸化炭素の効果で、開花時期が早くなり、収穫量の増加、糖度の増加が
認められた。
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二酸化炭素の効果(夏季)
トマトの栽培においても二酸化炭素供給の苗の方が、成長が速くなった。
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大型ハウス用装置
装置仕様
ゼオライト
二酸化炭素濃度
: 8kg/塔
2塔式
: 4000ppm以上
二酸化炭素濃縮ガス供給量: 7L/min
吸着・脱着サイクル
: 3分
対象面積
: 10アール以上
電 源 : 200V 1.85A
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大型ハウスでの実証試験
(30アールのハウスで実施)
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大型ハウスの二酸化炭素濃度の推移
晴天の日
雨天の日
装置稼働時間
装置稼働時間
晴天もで二酸化炭素濃度を400ppm以上に維持できた。
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従来技術とその問題点
燃料燃焼法: 灯油等を完全燃焼して二酸化炭素を供給
装置は安いが、一酸化炭素のモニターは必須
燃料が高騰すると、収益を圧迫する
炭酸ガスをボンベで供給
供給用の装置だけで良く、燃料が不要
山間部では、ボンベの配達が敬遠されやすい
ハウスまで運ぶのも、敬遠されやすい
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新技術の特徴・従来技術との比較
天然ゼオライトを使用し、大気中から二酸化炭素を
回収する装置を開発した
大気中の二酸化炭素を10~20倍に濃縮可能
電気だけで稼働する
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想定される用途
中・小型植物工場用への二酸化炭素供給
ハウス栽培への二酸化炭素供給
冬だけでなく、葉への供給により、一年中使用可能
他のガスの濃縮回収に利用可能
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実用化に向けた課題
大気中の二酸化炭素濃度が400pp以下と低い
濃縮しても、4000ppm~8000ppmまでしか濃縮できない
そのため、ハウス全体への二酸化炭素供給は困難
葉部分への効果的な供給が必要
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企業への期待
ビニールハウスメーカー・植物工場メーカー
(装置設置等は、共同研究企業が実施)
農業分野への展開を考えている企業
本技術の導入により、収量増加が見込まれる
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本技術に関する知的財産権
知財
出願番号 :特願2015-517104
出願人
発明者
:島根県、大福工業(株)、
早稲田大学
:田島 政弘等
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お問い合わせ先
島根県産業技術センター
○総務調整課
青戸 崇年
TEL 0852-60-5141
FAX 0852-60-5144
E-mail [email protected]
○環境技術科 田島 政弘
TEL 0852-60-5125
FAX 0852-60-5135
E-mail
[email protected]
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