国内ストレッチャブルデバイス市場に関する調査を実施

2016 年 8 月 29 日
プレスリリース
国内ストレッチャブルデバイス市場に関する調査を実施(2016 年)
-「ストレッチャブル」(伸縮性)が、ウェアラブルデバイスの普及促進の鍵へ-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内のストレッチャブルデバイス・部材市場の調査を実施した。
1.調査期間:2016 年 4 月~7 月
2.調査対象:導電性ペーストメーカー、導電性繊維メーカー、回路基板メーカー、機能性素材・ウェアメーカー等
3.調査方法:当社専門調査員による直接面談取材をベースに、文献調査を併用
<ストレッチャブルデバイスとは>
本調査におけるストレッチャブルデバイスとは、ウェア(衣服)型やテープ・パッチ型、リストバンド型、バストバンド型
などのウェアラブルデバイスのうち、伸縮性を付与されたものを指す。既存のウェアラブルデバイスとの違いは、デバ
イスの基材に繊維や樹脂、ゴム・エラストマーなどを用い、ストレッチャブル(伸縮性)を実現している点である。
【調査結果サマリー】
‹ 伸縮性を付与したウェアラブルデバイスであるストレッチャブルデバイスの開発が活発化
さまざまな物がインターネットにつながる IoT(Internet of Things)が注目を浴びるなか、新たなトレン
ドの一つとして様々なタイプのウェアラブルデバイスが製品化されている。これらは、腕時計型やリスト
バンド型、眼鏡型、その他に大別され、現在も小型化・軽量化やフレキシブル化(折り曲げられる)の
要求に対応しながら進化を続けている。
ここ数年は、とくに伸縮性を付与したウェアラブルデバイスであるストレッチャブルデバイスの開発が
活発化する傾向にあり、2014 年には着用するだけで心拍数を計測できるスポーツウェアが発売され
た。ウェアの電極には、ナノファイバー間の空隙に導電性高分子を高含浸させた機能性素材が用い
られており、ストレッチャブルデバイスのための電極・配線材料や導電材料等の開発も進んでいる。
‹ 2025 年の国内ストレッチャブルデバイス市場規模は 595 億 9,400 万円を予測
ストレッチャブルデバイスは従来のウェアラブルデバイスに比べ、激しい運動時や就寝時などでも
装着者の快適性を損なうことなく、生体情報を正確に取得できる。実用化が始まったスポーツ分野の
ほか、企業等における従業員の安全管理に対する意識の高まり、医療費の負担軽減ニーズなどを背
景に建設・運輸分野で先行して需要が立ち上がると考える。更には医療や介護、ヘルスケア、エンタ
ーテインメントの分野でも需要が拡大し、国内のストレッチャブルデバイス市場規模(メーカー出荷金
額ベース)は 2020 年に 211 億円、2025 年には 595 億 9,400 万円になると予測する。
◆ 資料体裁
資料名:「2016 年版 ストレッチャブルデバイス・部材市場の現状と将来展望」
発刊日:2016 年 7 月 29 日
体 裁:A4 判 129 頁
定 価:180,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
2016 年 8 月 29 日
プレスリリース
【 調査結果の概要 】
1. 市場背景
本調査におけるストレッチャブルデバイスとは、ウェア型やテープ・パッチ型、リストバンド型、バストバ
※
ンド型などのウェアラブルデバイス のうち、伸縮性を付与されたものの総称である。既存のウェアラブル
デバイスとの違いは、デバイスの基材に繊維や樹脂、ゴム・エラストマーなどを用い、ストレッチャブル(伸
縮性)を実現している点であり、繊維基材のデバイスはスマートテキスタイルとも呼ばれている。
また、ストレッチャブルデバイスの機能や部材、利用方法については、以下の二つに大別される。
① 導電性素材の電極を用いて、人体表面の電位差等から生体情報を取得する
心電・心拍、加速度、体表温度を取得するデバイスが中心となるが、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和
度)や血圧、さらには環境温度、大気圧力、相対湿度などをセンシング対象に加えた製品の開発も
進んでいる。腕時計型やリストバンド型など従来のウェアラブルデバイスと比べると、例えばウェア型
のストレッチャブルデバイスであれば「衣類を着る」という日常的な行為により、24 時間・長期間にわ
たり正確な生体情報を取得できる。伸縮性を付与することで激しい運動時や就寝時にも装着者の快
適性を損なうことがないため、利用しやすいデバイスである。2014 年には着用するだけで心拍数を
計測できるコンプレッション系スポーツウェアが発売された。ウェアの電極には、ナノファイバー間の
空隙に導電性高分子を高含浸させた機能性素材が用いられている。
② センサ部が伸縮する際の電気抵抗値の変化により、測定物の変位を検知する
変位センサの抵抗体に用いられる金属や半導体は、可逆的に伸縮可能となる変形量が小さいため、
これまでは用途等に制限があった。代わりに、センサ部の抵抗体にカーボンナノチューブ等を用いる
ことで小さな歪から大きな歪まで対応できる応答性の速い高感度なセンサを得られる。また、広い電
気抵抗領域で大きく抵抗変化するため配線のノイズが気にならず、使い勝手が良好である。
その他には、肌着インナーに導電性繊維を編み加工した製品などもある。多くは現段階で未だ実用化
はされていないものの、肘や肩、膝などの動きや呼吸、姿勢などを計測するためのデバイスとしてスポー
ツ(フォームの改善等)や、ヘルスケア(姿勢の改善等)、医療・介護(リハビリテーション等)、エンターテ
インメント(ゲーム機などのコントローラー、モーションキャプチャー等)など幅広い分野で適用し得るポテ
ンシャルを有すると考える。
※参考資料.ウェアラブルデバイス世界市場に関する調査を実施(2016 年)(2016 年 5 月 16 日発表)
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001535
図 1.ストレッチャブルデバイスの位置づけ
ウェアラブルデバイス(広義)
ウェアラブル
デバイス(狭義)
腕時計型、リストバンド型
眼鏡型
(金属・樹脂基材)
スマートテキ
スタイル
その他
デバイス
ウェア(衣服)型、リストバ
ンド型、バストバンド型
(繊維基材)
テープ・パッチ型
(樹脂・ゴム・TPE基材)
ストレッチャブル
デバイス
矢野経済研究所作成
Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
2016 年 8 月 29 日
プレスリリース
2. 市場予測
さまざまな物がインターネットにつながる IoT(Internet of Things)が注目を浴びるなか、新たなトレンド
の一つとして様々なタイプのウェアラブルデバイスが製品化されている。これらは、腕時計型やリストバン
ド型、眼鏡型、その他に大別され、現在も小型化・軽量化やフレキシブル化(折り曲げられる)の要求に
対応しながら進化を続けている。
ここ数年は、とくに伸縮性を付与したウェアラブルデバイスであるストレッチャブルデバイスの開発が活
発化する傾向にあり、従来のウェアラブルデバイスに比べ、激しい運動時や就寝時などでも装着者の快
適性を損なうことなく生体情報を正確に取得できる。ストレッチャブルデバイスは、実用化が始まったスポ
ーツ分野のほか、建設・運輸分野で先行して需要が立ち上がると考える。更には医療や介護、ヘルスケ
ア、エンターテインメントの分野でも需要が拡大し、国内のストレッチャブルデバイス市場規模(メーカー
出荷金額ベース)は 2020 年に 211 億円、2025 年には 595 億 9,400 万円になると予測する。
図 2.国内ストレッチャブルデバイス市場規模予測
(単位:百万円)
70,000
59,594
60,000
50,000
40,000
30,000
21,100
20,000
13,084
10,000
4,887
80
1,041
2016年
見込
2017年
予測
0
2018年
予測
2019年
予測
2020年
予測
2025年
予測
矢野経済研究所推計
注 1. メーカー出荷金額ベース
注 2. 2016 年は見込値、2017 年以降は予測値
3. 需要分野別の動向、将来
国内のストレッチャブルデバイス市場を需要分野別にみると、以下の通りとなる。(図 3 参照)
3-1.建設・運輸分野
2020 年の東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、建設投資が大きく膨らむと予測される反面、
建設業界の人手不足が指摘されているほか、作業員の事故等による工期の遅れ防止も重要となる。運
輸業では少子高齢化に伴うドライバー不足が懸念されているが、物流量の増加などによってドライバー
の負担が増す傾向にある。そのため、建設・運輸分野では作業員やドライバーの安全管理を目的にスト
レッチャブルデバイスの導入が進む見通しであり、建設・運輸分野の国内ストレッチャブルデバイス市場
規模(メーカー出荷金額ベース)は、2025 年には 180 億 3,600 万円(構成比 30.3%)になると予測する。
3-2.介護分野
介護分野では見守りサービスが普及しつつあるが、ストレッチャブルデバイスを用いて心拍などの生
体情報を常時取得することにより、体調や睡眠の質、ストレスチェックなどが可能となる。従来の見守りサ
ービスをより確実で安全なものとする可能性を秘めているといえる。また、変位センサを関節サポーター
Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
2016 年 8 月 29 日
プレスリリース
などに組み込むことで、要介護になるリスクが高まるロコモティブシンドロームを予防するためのトレーニ
ング支援用具、骨折後などのリハビリ用品としても利用できると考える。介護分野の同市場(同ベース)は、
2025 年には 138 億 1,800 万円(同 23.2%)になると予測する。
3-3.医療分野
遠隔医療がどの程度の広がりをみせるかにもよるが、遠隔での健康管理サービス向けの需要が高ま
っていくと考える。心拍データを活用することにより、見つけにくい不整脈を日常生活中に継続して記録
することができ、心疾患の早期発見や退院後の患者の容態確認などにも活用できる。また、心拍変動の
ゆらぎを解析することでストレスチェックにも応用できるなど、ストレッチャブルデバイスを利用することのメ
リットは大きく、医療分野の同市場(同ベース)は、2025 年には 129 億 6,000 万円(同 21.7%)になると予
測する。
3-4.エンターテインメント分野
2016 年は「VR(Virtual Reality)元年」と言われており、端末やソフトウェアの開発が活発化する傾向に
ある。VR 端末は専用コントローラーを用いるタイプが多いため、何かを持ったり操作したりという動作をリ
アルに再現するためにはコントローラーへのストレッチャブル機能の付与が重要な要素の一つになる。
そのため、VR 端末の普及に伴いストレッチャブルデバイスの需要も拡大し、エンターテインメント分野の
同市場(同ベース)は、2025 年には 78 億円(同 13.1%)になると予測する。
3-5.ヘルスケア分野
ヘルスケア分野ではフィットネスウェアとしての需要が期待できる。その他、ジョギングやウォーキング、
あるいは日常生活における体調チェックといった利用シーンも想定できるが、既存のリストバンド型との
競合も激しくなると考える。ヘルスケア分野の同市場(同ベース)は、2025 年には 53 億 4,000 万円(同
9.0%)になると予測する。
3-6.スポーツ分野
トレーニング管理、体調管理、競技時のフォーム可視化といった利用シーンが想定され、なかでもトレ
ーニング管理としての利用が中心になると考える。既に第一線で活躍するトップランナーのウェア向けに
実績が出ているほか、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ラグビーなどの様々なスポーツ
でストレッチャブルデバイスの導入が期待でき、スポーツ分野の同市場(同ベース)は、2025 年には 16
億 4,000 万円(同 2.8%)になると予測する。
図 3.2025 年の国内ストレッチャブルデバイス市場の需要分野別構成比予測
スポーツ
2.8%
ヘルスケ
ア
9.0%
エンターテ
インメント
13.1%
建設・運輸
30.3%
2025 年
市場規模(予測)
595 億 9,400 万円
医療
21.7%
介護
23.2%
矢野経済研究所推計
注 3.メーカー出荷金額ベース
注 4.四捨五入のため、図内の比率合計が一部異なる
Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.