時間反転する超音波技術と その応用 関西大学システム理工学部物理・応用物理学科 専任講師 山本健 研究背景1 • 現在,超音波を用いた画像装置は様々な分 野で活躍 • 集束超音波を走査して対象からの反射又は 透過波の強度を画像化する装置 – 超音波診断装置(医療分野) • 甲状腺,乳線や胎児等の形状情報 – 非破壊検査(工業分野) • プラントやビル等の傷や劣化状況を把握 – 超音波顕微鏡(生命科学・工業分野) • 微小部分の物性と欠陥を高分解能で画像化 研究背景2 • いくつかの共通の問題点を有する – 検査対象の表面が平坦でない場合 • 目的部位と表面像の重畳による画像歪 – 未研磨材料(非破壊検査),凹凸生体組織(顕微鏡等) – 超音波伝搬経路における不均一性 • 超音波波面の歪みによる画像歪 – 脂肪・筋組織(医療診断),結晶粒界(非破壊検査) • 画像・信号処理技術(outputの処理)ではなく, inputである超音波の新たな現象を用いて解 決したい→位相共役波を用いる 位相共役波の性質1 • 平面波(光,音)が鏡にある角度で入射すると 通常の鏡 位相共役鏡 • 入射波と同一の経路を忠実にさかのぼる – ビデオの逆回し,時間が反転したように 位相共役波の性質2 • 発散する波が鏡に入射すると 通常の鏡 位相共役鏡 • 入射波と同一の経路を忠実にさかのぼる – 入射波と同じ振幅分布で 位相共役波発生方法 • 水槽の底に非線形圧電体(PZTセラミックス) を配置 – 周波数10MHzの超音波→入射波 – 非線形圧電体に20MHzの電場を印加→位相共 役鏡 位相共役波 入射波 10MHz 電場 20MHz 位相共役波の可視化結果 • 位相共役波の水中での振る舞い – 音波周波数10MHz – 電場周波数20MHz – 超音波振動子の径8mm 超音波映像系の問題点 • 超音波顕微鏡の問題点(透過型) – 集束型の超音波振動子を2次元スキャンして受 信超音波の強度をグレースケールで画像化 – 表面形状による音波波面の歪 波面歪補正能力 • 超音波映像系の問題点(透過型) – 不均一媒質による音波波面の歪 – 位相共役波の適用 波面補正 不均一 通常の鏡 位相共役鏡 超音波画像化実験1 • 既存の手法(反射板からの透過波) • 位相共役法(位相共役鏡からの位相共役波 – 透過型→場所ごとの減衰率を映像化 不均一 金属反射板 試料 位相共役鏡 透過型画像化結果1 • NaCl入りゲル(2×2cm)を10MHzで画像化 – 水(1500m/s),ゲル(1650m/s)→不均一 – ゲルと水の減衰率はほぼ同じ→均一な像 水中のゲル (不均一) 通常の手法 XY scan 位相共役法 透過型画像化結果2 • ステンレス板(2×2cm)を 10MHzで画像化 – 文字(白:減衰小),板(黒:透過小) XY scan 通常の手法 +ゲル(不均一) 位相共役法 透過型画像化結果3 • 加熱部位のある豚肉(厚さ7mm)を画像化 – 加熱部(黒:透過小),その他(白:減衰小) 上面 通常の手法 下面 @10MHz 位相共役法 非破壊検査実験 • 製鋼現場における材料の非破壊検査 • 圧延前のバルクの段階で欠陥検出 – 表面を平坦にしてから検査を行っている 圧延 研磨 検査 非破壊検査結果 • 表面が凸凹のアルミ材(穴あり)を画像化 – 穴(黒:散乱大),その他(白:減衰小) アルミ(2×2cm) @10MHz 穴 ( φ1,d10mm) 通常の手法 位相共役法 従来技術とその問題点 • 既存の超音波映像系の歪を解決する手法 – 信号及び画像処理技術 • ノイズの除去(信号処理),S/N比改善等(画像処理) • 表面像との差を画像化 – ハーモニックイメージング • 高調波を利用した高分解能な技術 – 処理能力の限界・膨大な計算 – 超音波の波面歪みや伝搬経路は補正できず – 受信できない場合は対応できない 新技術の特徴・従来技術との比較 • 映像系の根本的な画像歪の原因である波面 歪を補正できる • 伝搬経路が乱されるような不均一にも対処で きる • 従来の技術(ハーモニックイメージングや信 号処理技術)+位相共役技術による高性能化 想定される用途 • 超音波顕微鏡(生命医工学分野) – 生体組織をスライスせずに観察 – 表面凹凸のあるサンプルの画像化 • 超音波診断装置(医療分野) – 表面形状や内部不均一による波面歪み補正 – 既存の優れた手法とのハイブリッド • 非破壊検査(非破壊検査) – 研磨処理を行わずに探傷 – 内部散乱にも適用の可能性 実用化に向けた課題 • 位相共役鏡(PCM)の最適化 – 大面積化,アレイ – 境界でのロスの低減,ARコーティング等 • 位相共役波の高い発生効率が必要 – 発生に寄与する非線形性の向上 – 発生材料の研究 – 高電界印加に関する問題の解決 • 連続動作を可能にしてエネルギーを利用 • 理論的発生効率は検討済み 企業への期待 • 高効率の位相共役波発生に関しては,非線 形圧電体や磁歪材料の開発と,高電界印加 技術による実現できると考えている • 高周波増幅器開発技術を持つ企業や,画像 処理技術・走査型映像系技術を有する企業と の共同研究を希望している • 位相共役現象の新たな使い道を探る基礎研 究も重要と考えている お問い合わせ先 関西大学 産学官連携センター 産学官連携コーディネーター 柴山 耕三郎 TEL 06-6368-1306 FAX 06-6368-1247 e-mail [email protected]
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