機関誌「電機」 No.785号 5.3MB

2016
Vol.785
電機
,
THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION
(8 月 23 日発行)
<表紙の言葉>
誌名のローマ字表記である “DENKI” をメインビジ
ュアルとすることで、電機産業の発展が社会や人々
に貢献し続けた歴史を振り返るとともに、より安心
で便利な未来のために、これからもますます進化し
続けたい、
という想いを表現しています。
特集
最近のエネルギー政策とその動向
経済産業省 資源エネルギー庁
エネルギー革新戦略の概要
4
電力小売全面自由化の現状と今後の展望
9
トピックス
14
スマートマニュファクチャリング関連技術動向の調査
一般社団法人 日本電機工業会 高橋 一郎
18
一般社団法人 日本電機工業会 大黒 靖之
2015 年度「サーボの使用状況に関する調査」紹介
2015 年度 定置用燃料電池発電システム
出荷量統計調査報告
21
23
36
IEC/SC17C/MT19
(高圧スイッチギヤの過酷な条件における階級)
フランクフルト
(ドイツ)
会議
37
IEC/SC17C/MT19 桑水流 宝
IEC/SC23E/WG1, WG2(小形配線用遮断器、漏電遮断器)
ミラノ
(イタリア)
会議
SC23E国内対応委員会 山口 健二
39
IEC/TC61
(家庭用電気機器の安全性)
メキシコシティー(メキシコ)会議
第59/61/116小委員会WG1 氏田 良太
42
IEC/TC72/WG(自動制御装置)
コペンハーゲン
(デンマーク)会議
ハノーバーメッセ 2016 報告
CIRED(配電に関する国際会議)
2016 workshop への出席報告
IEC/TC2/MT10(回転機巻線の絶縁評価試験規格の改訂)
グルノーブル
(フランス)会議
電動機の絶縁に関する検討WG 木村 健
第72小委員会 田伏 弘幸
43
IEC/TC82
(太陽光発電システム)/WG2(非集光型モジュール)
台北
(台湾)会議
太陽光発電セル・モジュール分科会 石原 隆、
田中 和文
45
IEC/TC82
(太陽光発電システム)/WG3(システム),
WG6(周辺機器)
およびJWG1(村落電化)
フェニックス
(米国)会議
IEC/TC82/WG3, WG6 出口 洋平
47
CPV-12(集光型太陽光発電システム国際会議)
およびIEC/TC82
(太陽光発電システム)/WG7(集光型太陽光発電システム)
フライブルク
(ドイツ)会議
集光型太陽光発電分科会 西岡 賢祐
48
一般社団法人 日本電機工業会
燃料電池発電システム技術専門委員会
ISO/TC86/SC6
(エアコンの性能)
および
WG1(エアコンの性能規格作業会)
アトランタ
(米国)会議
ISO/TC86/SC6対応WG 出石 峰敏
50
第 86 回新エネルギー講演会/
第 4 回風力発電関連産業セミナー(合同開催)開催報告 26
IEC/TC88
(風力発電システム)
プレナリ
済州
(韓国)会議
一般社団法人 日本電機工業会 松下 崇俊、
竹本 亮一
51
IEC/TC105/WG3(定置用燃料電池システムの安全要件)
ワシントンD.C.
(米国)会議
JWG3 新井 康弘
53
IEC/TC105/WG11(燃料電池用単セル試験法)
ワシントンD.C.
(米国)会議
IEC/TC105/WG11 木下 伸二
54
一般社団法人 日本電機工業会 松下 崇俊
家庭用 SOFC(固体酸化物形燃料電池)
コージェネの普及に向けた取組み
28
アイシン精機株式会社 桑葉 孝一、布谷 誠二
フラッシュニュース
業界報告
高電圧・大電流測定の
JCSS 校正サービス確立に向けての取組み
株式会社 日立製作所 木田 順三
新会員紹介(正会員)
56
57
株式会社 タムラ製作所
31
標準化活動紹介
メトロ電気工業株式会社
新会員紹介(賛助会員)
ソーラーエッジテクノロジージャパン株式会社
IEC/TC2/ WG12
(回転機の定格および性能)
アーリントン
(米国)会議
誘導機技術専門委員会 藤延 博幸
34
IEC/TC2/WG28, WG31
(可変速駆動モータの効率)
アーリントン
(米国)会議
可変速駆動システムIEC対応分科会 佐藤以久也
34
58
平成28年 IEC活動推進会議 議長賞の受賞について 59
統計
編集後記
60
62
3
特集
最近のエネルギー政策とその動向
2015 年 7 月、2030 年度の長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)が策定され、
東日本大震災以降のわが国における適切な電源構成が提示されました。
今回の特集では、その後の状況の変化を踏まえ、「最近のエネルギー政策とその動向」という
テーマで、「エネルギー革新戦略の概要」と「電力小売全面自由化の現状と今後の展望」を紹
介することといたしました。
エネルギー革新戦略の概要
経済産業省 資源エネルギー庁
長官官房 総合政策課 戦略企画室
省エネルギー・新エネルギー部 政策課
1.はじめに
資源に乏しいわが国は、安全性の確保を大前提に、経
済性、気候変動の問題に配慮しつつ、エネルギー供給の
本稿では、この戦略を実行するための具体的な施策と
これによる新たな展開について説明したい。
2.徹底した省エネルギーの推進
安定性を確保しなければならない。こうしたエネルギー
基本計画の考え方を踏まえ、2015 年 7 月、将来のエネル
エネルギーミックスにおける2030 年度の最終エネル
ギー需給構造の見通しであり、あるべき姿である長期エ
ギー消費量は、対策前と比べ約 5,030 万 kl(原油換算)
ネルギー需給見通し(エネルギーミックス)を策定した。
の省エネを実施することにより、326 百万 kl 程度と見込ん
エネルギーミックスにおいては、省エネは石油危機後並
でいる。一方、足下を見るとわが国における最終エネル
みの効率改善(エネルギー効率を35%程度改善)を実現
ギー消費量は、2013 年度で 367 百万 klとなっており、第
し、再エネは現状の水準から2 倍程度(22〜24%)の導
1 次石油危機が起こった1973 年と比較して、産業部門以
入拡大を見込むなど、野心的な目標を設定した。
外は増加傾向にある(図1)
。このため、エネルギーミッ
これを実現するためには、電力小売全面自由化により
クス実現のためには、産業部門の取組みを深化させつつ、
競争が進む中でも事業者任せではなく、政府としても総
業務部門、家庭部門、運輸部門の省エネに対する取組み
合的な政策措置をバランス良く講じていくことが不可欠
を強化していく必要がある。
であると考える。この考え方を踏まえ、省エネ、再エネを
まず、産業部門においては、事業者の省エネへの取組
はじめとする関連制度を一体的に整備する「エネルギー
みをきめ細かく評価し、優良事業者へのインセンティブ
革新戦略」を2016 年 4 月に策定した。本戦略は、エネル
付けや取組みが十分でない事業者への調査を強化するた
ギー投資を促し、エネルギー効率を大きく改善させ、
「強
め、事業者クラス分け評価制度を創設し、2016 年 5 月末
い経済」と「CO 2 抑制」の両立を狙いとしている。また、
に当省ホームページで省エネの取組みが優良な事業者を
本戦略の実行により、2030 年度には、省エネや再エネな
業種別に公表した。また、未利用熱の活用を促進するた
どのエネルギー関連投資 28 兆円、うち水素関連 1 兆円の
め、他工場の廃熱を使用した事業者が、
「エネルギーの使
効果が期待されるところである。
用の合理化等に関する法律」
(省エネ法)上のエネルギー
4 電 機 2016・August
エネルギー革新戦略の概要
消費原単位の改善量に、購入した未利用熱を算入できる
ZEHのブランド化、自立的普及を促し、2020 年までに注
よう2015 年度に制度を改正したところである。また、省
文戸建住宅の過半数のZEH 化を目指す。ZEBについて
エネ法の規制の対象となるところが少なく、省エネの取
は、低コスト化の技術開発、ガイドラインの作成を通じて、
組みが進んでいない中小企業における省エネの取組みを
2020 年までにZEBの実現を目指す。さらに、2015 年 7
支援するため、省エネ相談にきめ細かく対応する支援窓
月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」
口を2017 年度までに全国に設置する。
が公布され、2020 年までに新築住宅・建築物について段
次に、業務部門の改善策として、製造業などエネル
階的に省エネ基準への適合を義務化していく。これらの
ギー多消費産業向けに設定しているベンチマーク制度を
取組みのほか、今年度中に照明のトップランナー基準の
流通・サービス業に拡大する。すでに2015 年度に、コン
対象に白熱灯等を含め、対象を拡大するなどの取組みを
ビニエンスストアに導入しており、今後、ホテル等の業
推進する。
最後に、運輸部門においては、従来車の燃費基準の向
種にも導入し、2018 年度までに全産業のエネルギー消費
上、燃料電池自動車や電気自動車といった省エネに資す
の7 割をカバーすることを目指し、取組みを進める。
家庭部門においては、これまで取組みが十分でなかっ
たことから、トップランナー制度の対象設備の拡充や基
る次世代自動車の導入拡大および自動走行の実現のため、
導入支援やインフラ整備、研究開発・実証事業を行う。
今後は、前述の部門ごとの取組みだけでなく、経済成
準の見直し、省エネ効率の良い機器の導入を促進する。
具体的には、全国に約 5,000 万戸存在する住宅ストック
長を実現しつつ、省エネも同時に達成する新たな省エネ
については、コストが高いため、断熱化等の省エネが進
政策を進めていくため、総量ベースに限らず、原単位ベー
んでいないことから、高性能な窓、サッシ、断熱材等に
スでの省エネや企業間の相互連関が深まっている現在の
よる省エネ改修を支援し、2020 年までに省エネリフォー
産業構造を踏まえ、事業者単位の省エネではなく、業界
ムを倍増させる。また、年間の1 次エネルギー消費量が
単位やサプライチェーン単位での省エネの取組みを強化
ネットでゼロとなる住宅/建築物(ZEH/ZEB)の普及
することも重要となることから、これらの具体策を検討し
を推進するため、ZEHにおいては、普及支援を通じて
ていく。
(原油換算百万k
l)
(兆円、
2005 年価格)
実質 GDP
最終エネルギー消費量
1973→2013
2.5 倍
運輸部門
16.4%
業務部門
9.2%
家庭部門
22.5%
(82 百万 kL)
20.6%
(76 百万 kL)
14.0%
(51 百万 kL)
8.9%
65.5%
産業部門
43.0%
(158 百万 kL)
1973→2013
2012→2013
1.3 倍
▲0.9%
1973→2013
2012→2013
1.8 倍
▲3.7%
1973→2013
2012→2013
2.9 倍
+1.9%
1973→2013
2012→2013
2.0 倍
▲3.0%
1973→2013
2012→2013
0.8 倍
+0.1%
(注1)部門別最終エネルギー消費のうち、
業務部門および産業部門の一部(非製造業、食料品製造業、
他業種・中小製造業)
については、
産業連関表
(2005 年実績が最新)
および国民経済計算等から推
計した推計値を用いており、
統計の技術的な要因から、
業務部門における震災以降の短期的な消費の減少は十分に反映されていない。
(注2)
「総合エネルギー統計」
は、
2015 年の改訂前のデータを使用。
(2013 年は速報値)
【出所】
「総合エネルギー統計」
「国民経済計算年報」
「EDMC エネルギー・経済統計要覧」
より作成。
図 1 わが国の最終エネルギー消費量の推移
特集:最近のエネルギー政策とその動向 5
改正法案を2016 年の通常国会に提出し、5 月に成立した。
3.再生可能エネルギーの導入拡大
また、再生可能エネルギーの導入拡大のためには、系
統制約の解消についても取組みを進めていく必要がある。
再生可能エネルギーの導入拡大は、自給エネルギーの
確保、低炭素社会の実現等の観点から重要であるが、わ
再生可能エネルギー発電設備により発生した電気の受入
が国の発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は
れ余地のある他地域への送電を行うことを原則とするよ
12.8%(水力を除くと4.4%)に留まっており、諸外国の
う系統運用ルールを見直し、2016 年 4 月から運用を開始
中でも低い水準にある(図2)
。
した。さらに、電力広域的運営推進機関において、将来
2030 年度のエネルギーミックスで示された再生可能エ
の広域連系系統の設備および更新に関する方向性を整理
ネルギーの導入水準(22 ~ 24%)を達成するには、電
した「広域系統長期方針」の策定や地域間連系線の運用
源の特性や導入実態を踏まえ、国民負担を低減しつつ、
ルールの見直し等を進めていく。
併せて、再生可能エネルギーの自立化・安定化のため、
さらなる導入拡大をしていくための取組みが必要となる。
固定価格買取制度の開始後、すでに買取費用は約 2.3
基盤となる発電システムや蓄電池システムの低コスト化、
兆円(賦課金は約 1.8 兆円、平均的な家庭で毎月675円)
系統制約の克服のため、自然変動する太陽光発電や風力
(図3)に達しており、これを抑制するためのコスト効率
発電の予測・制御技術や系統運用技術の高度化の技術開
的な導入拡大が求められるとともに、事業実施の確度が
発を着実に進めていく必要がある。こうした取組みを通
低い初期段階の認定により生じている未稼働案件への対
じ、わが国が強みを持つ再生可能エネルギー関連技術の
応に加え、長期安定的な発電を促す仕組みの構築、リード
開発を進め、エネルギー関連産業のさらなる競争力強化
タイムの長い電源の導入拡大のため、
「電気事業者による
を図るとともに、再生可能エネルギーの導入拡大に向け
再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」の
た取組みを進めていく。
0
原子力
天然ガス
石油その他
16.0
20.9
19.2
19.3
10.1
42.9
2.5
17.2
26.8
30.4
78.3
5.4
石炭
45.2
再エネ
26.2%
水力
14.3
29.6
再エネ
19.4%
3.2
25.9
23.0
ドイツ
スペイン
17.6
イギリス
再エネ
16.1%
39.8
31.7
再エネ
12.9%
再エネ
12.8%
10.9
6.1
8.4
5.1
6.9
4.4
フランス
アメリカ
日本
2.5
2.2
0.9
出典:【日本】「電力調査統計」
「総合エネルギー統計」等より資源エネルギー庁作成(2014 年度実績値)
【日本以外】2014 年推計値データ、IEA Energy Balance of OECD Countries (2015 edition)
図 2 発電電力量に占める再生可能エネルギー比率の国際比較
6 電 機 2016・August
12.6
再エネ
40.1%
1.8
再エネ
(水力除く)
1.2
1.4
16.3
エネルギー革新戦略の概要
ネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス・フォー
4.新たなエネルギーシステムの構築
ラムと、官主体の実務的検討の場であるエネルギー・リ
ソース・アグリゲーション・ビジネス検討会を2016 年に
4.1 再エネ・省エネ融合型エネルギーシステムの
立ち上げ
設置し、検討を進めていく。
固定価格買取制度等の政策的支援を通じ、住宅用太陽
光発電など需要家側にも創エネルギー機器の導入が進ん
だことにより、これまでの大規模発電所から需要家に一
4.2 地域に密着した地産地消型エネルギー
システムの構築
方向であった電気の流れが、需要家からも系統に流れる
地産地消型のエネルギーシステムは省エネの推進や再
双方向になった。情報通信技術の発達により、あらゆる
エネの普及拡大に加え、まちづくりと一体的にその導入
需要家側のエネルギーリソースの遠隔制御を通じた、き
が進められることで、地域の活性化にも貢献する。今般
め細やかな需要マネジメントが可能となりつつあり、需要
の電力小売全面自由化をはじめとした一連のエネルギー
家側のエネルギーリソースをIoT 技術により統合制御し、
システム改革により、エネルギーの地産地消をコンセプト
小売や送配電事業者の需給調整に活用されるような新た
とした分散型エネルギーを地域に供給する地域密着型の
なビジネスチャンスにつなげる。
小売電気事業者も複数現れはじめている。このため、こ
このため、需要家側のエネルギーリソースをIoTによ
うした新たなプレイヤーを巻き込みつつ、特に自治体が
り統合的に管理・制御するアグリゲーションビジネスが
計画段階から参画するような、より地域性の高い取組み
本格的に立ち上がるまで、官民で同じビジョンを共有し、
に重点的な支援を行うなど、地域の特性を引き出す仕組
検討課題の全体像を整理しつつ、課題解決に持続的に取
みづくりを構築していくことが重要となる。
り組むため、産学のトップマネジメント層で構成されるエ
賦課金単価
エネルギーミックス
における
FIT買取費用
3.7兆円~4.0兆円
2.25円/kWh
買取費用
約2兆3000億円
1.58円/kWh
約1兆8400億円
(賦課金)
0.75円/kWh
0.35円/kWh
0.22円/kWh
(約3300億円)
(約1300億円)
2012年度
(約1兆3200億円)
約4800億円
約2500億円
2013年度
(約1兆8000億円)
約9000億円
(約6500億円)
2014年度
2015年度
2016年度
2030年度
図 3 固定価格買取制度導入後の賦課金等の推移
特集:最近のエネルギー政策とその動向 7
イチェーンの構築や水素発電の導入、再エネ導入拡大の
5.水素社会の実現に向けて
ためのPower to Gasの技術の活用について、研究開発
多様な一次エネルギーからの製造、あらゆる形態での
や実証を進める。また、ポスト2030 年を見据えて、例え
輸送・貯蔵が可能な水素は、従来の二次エネルギー構造
ば、水素ステーションについては、FCV(燃料電池自動
を大きく変革するポテンシャルを有するため、多岐にわた
車)の本格普及を前提に、あるべき規制の絵姿を検討し、
る分野において水素の利活用を抜本的に拡大することで、
市場化を先取りして規制整備の取組みを進めていくなど、
①大幅な省エネルギー、②エネルギーセキュリティの向
規制の必要性およびその内容について検討していく。
上、③環境負荷低減に大きく貢献できる可能性がある。
6.おわりに
この水素エネルギーの意義を踏まえた上で、さらなる
利活用に向けて、
「時間軸」を明確にしつつ、水素の「製
造」
「貯蔵・輸送」
「利用」まで 一気通貫して、官民の役
エネルギーミックスの策定や、電力小売全面自由化な
割分担を明示し、事業者間でも共通認識を持てるような、
どのエネルギー政策を巡る新たな動きがある中で、本戦
2030 年ごろまでを見据えた具体的な取組みに関するロー
略を策定した。本稿においては、その中でも省エネ・再
ドマップを策定するため、2013 年 12 月に産学官からなる
エネ政策等について取り上げた。
「水素・燃料電池戦略協議会」を設置し、2014 年 6 月に
今後、政府を挙げて、本戦略に記載されている方針に
「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定した。さらに、
2016 年 3 月に改訂を行ったところである(図4)
。
に謙虚に向かい合い、わが国の国民生活と経済・産業を
水素利用の飛躍的拡大を進めるだけでなく、ロード
マップにおけるフェーズ 2・3の実現に向け、水素サプラ
2020 年
東 京オリンピック
で水素の可能性を
世界に発信
基づき施策を着実に実行し、国民一人一人の意見や不安
守るための責任あるエネルギー政策を立案・実行すべく、
全力で取り組んでまいりたい。
フェーズ1
フェーズ 2
フェーズ 3
水素利用の飛躍的拡大
水素発電の本格導入/
大規模な水素供給システムの確立
トータルでの CO2 フリー
水素供給システムの確立
(燃料電池の社会への本格的実装)
09 年 家庭用燃料電池
14 年 FCV 市場投入
2017 年 業務・産業用燃料電池:市場投入
2020 年頃
・エネファーム自立化
(PEFC80 万円/ SOFC100 万円)
・ハイブリッド車の燃料代と同等以下の
水素価格の実現
開発・実証の加速化
水素供給国との
戦略的協力関係の構築
需要拡大を見据えた
安価な水素価格の実現
計画的な開発・実証
・FCV4 万台程度:水素ステーション 160 箇所程度
2030 年
2025 年頃
2020 年代後半
・ボリュームゾーン向けの FCV の投入、および同車
格のハイブリッド車同等の価格競争力を有する車
両価格の実現
・海外からの水素価格(プラント引渡価格)
・FCV20 万台程度:水素ステーション 320 箇所程度
→2020 年代後半に水素ステーション自立化
2030 年頃
2040 年
30 円 /Nm3
2030 年頃
・海外での未利用エネ由来水素の製造、輸
送・貯蔵の本格化
・FCV80 万台程度
水素供給体制の
構築見通しを踏まえた
・発電事業用水素発電:本格導入
2040 年頃
CCS や国内外の再エネの活用との組み
合わせによる CO2 フリー水素の製造、輸
送・貯蔵の本格化
[出典]資源エネルギー庁作成
図 4 水素・燃料電池戦略ロードマップ(2016 年 3 月改訂)
8 電 機 2016・August
電力小売全面自由化の現状と今後の展望
経済産業省 資源エネルギー庁 電力市場整備室
中には国策会社による発電・送電の1 社体制となり
(配電に
1.はじめに
ついては地域ごとに9 社)
、戦後は民営10電力会社による地
2016 年 4 月から電力の小売が全面自由化された。これ
域独占体制と、時代に応じて大きく変化してきた。現在多く
により、これまで東京であれば東京電力など、各地域の
の人が所与のものと考えている電気事業の体制は、1951年
旧一般電気事業者(10 電力会社)からしか電気を買う
に9電力会社が発足したことに始まる。そして、垂直一貫体
ことのできなかった一般家庭等を含むすべての需要家が、
制による地域独占と、総括原価方式により投資回収を保証
他事業者からも電力供給を受けることができるようになり、 する電気事業制度の下、大規模電源の確保と地域への供
給保証を実現し、国民生活の発展や経済成長を支えてきた。
電気の小売事業における競争が始まっている。
まずは、この小売全面自由化を柱とする「電力システ
しかしながら、1990 年代に入ると、垂直一貫体制によ
ム改革」の背景について説明した後、具体的な小売全面
る地域独占や、諸外国と比べて割高な電気料金など、高
自由化の動きについてご紹介する。
コスト構造が指摘されるようになった。また、発電につ
いては、既存電力会社以外にも資本力を持つ事業者が大
2.電力システム改革
規模な発電所を建設するようになったことや、中小規模
でも効率の良い電源の登場により、発電分野での競争を
通じて効率的な電力供給を目指すことが可能となるなど、
2.1 電力システム改革の背景
状況が大きく変化した。
(1)これまでの電気事業制度
わが国の電気事業は、東京電燈の開業(明治 19 年〔1886
こうした状況変化を背景に、1995 年には発電部門にお
年〕
)に端を発するが、戦前においては民営電力会社による
いて競争が導入され、また、2000 年以降、電気の小売事
活発な競争や離合集散が行われており、例えば 1932 年に
業への参入が段階的に自由化され、全需要の約 6 割を占
おいては約 850 社の事業者が存在していた。その後、戦時
めるまでに自由化範囲が拡大された(図1)
。
対象需要家
(イメージ)
【契約 kW】
中規模工場
【500kW】
【50kW】
小規模工場
スーパー
中小ビル
コンビニ
町工場
家庭
自由化部門
(電力量26%)
2004年4月~
自由化部門
(電力量40%)
2005年4月~
2016年4月~
自由化部門
(電力量62%)
規制部門
全面自由化
【2,000kW】
大規模工場
2000年3月~
※電力量は13年度
(電力量74%)
規制部門
(電力量60%)
規制部門
(電力量38%)
※電力量は13年度
(注)
(注)
需要家保護のため、経過措置として料金規制を残す
(需要家は、当面、規制料金も選択できる)
。
図 1 電力小売自由化の流れ
特集:最近のエネルギー政策とその動向 9
2.2 電力システム改革の 3 つの目的・柱
(2)震災後の状況変化
そして、2011 年に発生した東日本大震災や原子力事故
を契機に、従来の電力システムの抱えるさまざまな限界
(1)電力システム改革の 3 つの目的
前述の背景を踏まえて、今般の電力システム改革では、
が明らかになり、具体的には以下のような課題が認識さ
①安定供給を確保すること、②電気料金を最大限抑制す
れるようになった。
ること、③需要家の選択肢や企業の事業機会を拡大する
① 原子力への依存度が低下する中で、分散型電源や再生
こと、の3つを主要な目的に据えた。
可能エネルギーをはじめ、多様な電源の活用が不可避
より具体的には、①安定供給については、電気が足りな
い地域に柔軟に供給できるよう、広域的な電力融通を促進
となった。
② 電気料金の上昇圧力の中で、競争の促進などにより電
するとともに、ディマンドレスポンス等スマートに節電できる
気料金を最大限抑制することが一層重要になった。
仕組みも取り入れることとした。②電気料金については、発
③ 地域ごとに供給力を確保する仕組みではなく、広域的
電のための燃料コストの増加などが電気料金の上昇圧力と
な系統運用を拡大して、発電所を全国レベルで活用す
なっていることを踏まえ、競争を促進し、電気の生産や販
ることが必要となった。
売を行う企業の創意工夫や経営努力を引き出すことで、最
④ 事業者や料金メニュー、発電の種類を選びたいという
大限抑制することとした。③選択肢・事業機会については、
需要家のニーズに、多様な選択肢で応えることが求め
一般家庭や企業を含めすべての電気の利用者がどの事業
られるようになった。
者からどのような電気を買うのかを自由に選択できるように
⑤ 需要に応じて供給を積み上げるこれまでの仕組みだけ
ではなく、需給の状況に応じて、ピークとピーク以外
するとともに、これを企業のビジネスチャンス、イノベーショ
ンにもつなげることとした。
の料金に差を付ける等の創意工夫を通じた、需要抑制
を行うことが必要になった。
(2)電力システム改革の 3 つの柱
そのため、このような課題に対応し、これまでの、地
上記の3つの目的を達成するため、電力システム改革
域ごとに独占的事業者が供給する仕組みを見直すととも
は、広域的系統運用の拡大、小売および発電の全面自由
に、さまざまな事業者の参入や競争、全国レベルでの供
化、法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の
給力の活用、需要家の選択を通じたスマートな消費等を
確保、の3つを段階的に行うこととしており、各段階にお
促進するような、より柔軟なシステムを構築することによ
いて、具体的には以下のような取組みを実施することとし
り、電力の低廉かつ安定的な供給を一層進めることへの
ている(図2)
。
社会的要請が高まった。これが、電力システム改革が求
① 広域的系統運用の拡大(2015 年 4 月)
地域を越えた電気のやりとりを容易にし、災害時等
められる背景である。
平成27年
(2015年)
4月1日
(
第1段階
広域的運営推
進機関設立
)
平成28年
(2016年)
4月1日
(
第2段階
電気の小売
全面自由化
)
平成29年
(2017年)
平成32年
平成34年
(2020年) (2022年)
4月1日
4月1日
(
第3段階
送配電部門
の法的分離
(料金の経過措置期間)
図 2 電力システム改革の全体像
10 電 機 2016・August
)
事業者ごとに競争
状態を見極め解除
電力小売全面自由化の現状と今後の展望
に停電を起こりにくくすると同時に、全国大での需給調
選択できるようにするため、2016 年 4 月から電力の小
整機能の強化等により、出力変動の大きい電源の導入
売全面自由化を開始した。これを実現するため、まず
拡大等に対応するため、以下の業務を担う「広域的運
旧一般電気事業者や旧特定規模電気事業といった類型
営推進機関(以下、広域機関)
」を2015 年 4 月に設立
に代わる区分として、小売電気事業(登録制)
、送配
した。広域的運営推進機関は大きく分けて、以下のよ
電事業(許可制)
、発電事業(届出制)という事業ごと
うな業務を行う。
の類型を設け、それぞれ必要な規制を課すこととした
(図4)
。具体的には、自由化後も電力の安定供給を確
<広域的運用推進機関の業務内容>
a )災害等による需給ひっ迫時において、電源のたき増
しや電力融通を指示することで、需給調整を行うこと
保し、需要家保護を図るため、いたずらに規制を撤廃す
るだけでなく、以下のようなさまざまな措置を講じている。
a )電気の安定供給を確保するための措置
(図3)
b)全国大の電力供給計画の取りまとめ。送電網の増強や
一般送配電事業者に対しては、需給バランス維持、
エリアを越えた全国大での系統運用等を進めること
送 配 電 網 の建設・保守、最終保障サービス、離島の
c )平常時において広域的な運用の調整を行うこと(た
ユニバーサルサービスを義務付けるとともに、これら
だし、周波数調整は各エリアの送配電事業者が実施)
d )新規電源の接続の受付や系統情報の公開に係る業
務や発電と送配電の協調に係るルール整備を行うこと
を着実に実施できるよう、地域独占と総括原価方式の
託送料金規制(認可制)を措置することとした。
また、小売電気事業者に対しては、需要を賄うため
に必要な供給力を確保することを義務付けることとし、
将来的な供給力不足が見込まれる場合に備えたセーフ
広域的運営推進機関
電気が余っている地域
電気が不
足しそう
さい
Bに くだ
地域給して
供
ティネットとして、広域的運営推進機関が発電所の建
地
供給域Bに
して
くだ
さい
設者を公募する仕組みを創設することとした。
電気の供給
電気が余っている地域
電気の供給
電気が「不足」
している地域B
b)需要家保護を図るための措置
旧一般電気事業者に対し、当分の間(少なくとも
2020 年 4 月まで)
、経過措置として料金規制を継続す
図 3 広域的運用推進機関によるエリアを越えた供給指示
ることとし、小売電気事業者に対し、需要家保護のた
めの規制(契約条件の説明義務等)を課すこととした。
② 小売および発電の全面自由化(2016 年 4 月)
家庭を含めたすべての電気の利用者が電力供給者を
また、発電事業については、現行の一般電気事業者
への卸売に関する規制(事業許可制や料金規制)は撤
小売参入全面自由化後
現行制度
(部分自由化)
●「一般の需要」
への供給を行う。
既存電力会社
(一般電気事業者) ● 家庭等の規制部門への供給は、供給義
務・地域独占・料金規制(総括原価方
式による認可制)
新電力
(特定規模電気事
業者)
電源開発、
日本原
電、製鉄・製紙メ
ーカー等
3事業を兼業
(現行の体制と同様)
発電事業
● 自由化された大口需要(
「特定規模需
発電事業
● 一般電気事業者・特定規模電気事業者
発電事業
要」
)への供給を行う。
への供給を行う。
送配電事業
小売電気事業
小売電気事業
【届出制】
【許可制】
【登録制】
● イコールフッティング
● 公的インフラたる
●「一般の需要」
(全需
● 地域独占・料金規
● 供給力確保義務
(公平な競争条件の
確 保)の た め 一 律
の規制
送配電網を運営
制(総括原価方式
による認可制)
要家)
に自由に供給
● イコールフッティング
のため一律規制
図 4 小売全面自由化に伴う電気事業類型の見直し
特集:最近のエネルギー政策とその動向 11
廃し、一律に届出制とした。
数は約 8,500 万)が開放され、既に自由化されている市
さらに、発電分野や小売分野の自由化に伴い卸電力
場と合わせ、約 18 兆円にも及ぶ電力市場が開放されたこ
取引所での取引の重要性が増すため、現在、私設・任意
とになる。このような巨大市場が誕生したことにより、よ
で運営されている卸電力取引所を法定化した上で、不正
り多様な事業者の新規参入を促し、事業者間での競争が
取引(相場操縦等)の防止、国による市場監視、取引所の
これまで以上に促進されることが期待されている。
運営の適切性確保を可能とする規制措置を講じている。
(2)小売電気事業の登録状況
③ 法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の
確保(2020 年 4 月)
発電事業者や小売電気事業者が公平に送配電網を
小売電気事業の登録件数は、事前登録の申請受付を開
始した2015 年 8 月から堅調な伸びを示していたが、4 月以
降やや緩やかになり、7 月4日時点で 313 件となっている。
利用できるよう、送配電部門の中立性の一層の確保を
登録事業者の内訳は、新電力事業者に加えて、LPガ
図る。具体的には、現在認められている発電・小売事
スおよび都市ガス関係、石油関係、通信・放送・鉄道関
業と送配電事業の兼業を原則禁止する「法的分離」を
係等、非常に多岐に渡る分野の事業者が登録を受けてい
2020 年 4 月に実施する。
る。また、本社所在地についても、3 割弱が三大都市圏
さらに、送配電会社がグループ内の小売会社を優遇
して、小売競争の中立性・公平性を損なうことのない
以外に本社を置く事業者であるなど、各地域に根差した
事業者も足下で出現している(図5)
。
よう、人事や会計などについて適切な「行為規制」を
また、各小売電気事業者は、従来の従量料金体系と
講じ、電力取引監視等委員会が履行状況を監視する。
は異なる段階別料金や既存事業とのセット割、時間帯に
応じて料金差を付ける時間帯別料金等の創意工夫を凝ら
2.3 電力・ガス取引等監視委員会の設立
電力システム改革の実施に当たり、電気事業者間で健
したメニューを、新規参入者、既存事業者問わず発表し、
顧客獲得を目指している。
全な競争が促されるよう、市場の監視機能等を抜本的に
強化するため、2015 年 9月、経済産業大臣直属の組織と
して、
「電力取引監視等委員会」が設立された。同委員
会は、監視・規制の対象者である電気事業者等から「独
立」し、電気事業者等と伍することができる「高度の専
門性(
『規制の虜』とならないようにする)
」を有する組織
<本社所在地>
三大都市圏
以外の事業者
(27%)
北海道14社(5%)
東北11社(4%)
四国4社
(1%)
北陸1社
(0%)
中国
17社(6%)
九州
32社
(11%)
とし、①市場で適正な取引が行われているか厳正な「監
視」を行うほか、②必要なルールづくりなどに関して経
近畿41社
(14%)
済産業大臣へ「意見・建議」を行う。
なお、2016 年 4 月1日に平成 27 年通常国会で成立した
「電気事業法等の一部を改正する等の法律」が施行され
たことに伴い、電力取引監視等委員会の所掌事務にガス
中部16社
(5%)
関東
(東京都以外)
41社(13%)
事業法および熱供給事業法に関する事務が追加され、名
称が「電力・ガス取引監視等委員会」に変更された。
3.電力の小売全面自由化の現状
東京都123社
(41%)
(2016年6月16日現在)
図 5 登録小売電気事業者の本社所在地の内訳
(3)スイッチングの申込状況
広域機関は小売全面自由化開始前の3 月1日から「ス
(1)小売全面自由化により開放される市場
イッチング支援システム」の運用を開始し、小売電気事
小売全面自由化によって、これまで旧一般電気事業者
業者と一般送配電事業者との託送契約切り替えを一元的
が独占的に電気を供給していた約 8 兆円の市場(需要家
に処理している。広域機関によると、スイッチング支援シ
12 電 機 2016・August
電力小売全面自由化の現状と今後の展望
ステムを通じた6 月30日時点での契約先の切替の申込件
を創設することについて、総理から発言がなされたところ
数は、約 126 万件となっている。これは、一般家庭等の
である。
通常の契約口数の2%程度である。地域別でみると、旧
そのためネガワット取引については、過去 2 年間の実証
東京電力管内が最も高く、次いで旧関西電力管内、北海
事業等により、電力小売全面自由化を中心とした電力制
道電力となっている。なお、当該件数には、旧一般電気
度の動向を踏まえた活用領域の見極めを行うとともに、こ
事業者の自社内における契約切替(規制料金から自由料
うした状況を踏まえ、実際に事業者が活用するための本
金への切替)の件数は含んでいない。
格的な技術検証や取引のルール等について検討を行って
4.電力小売全面自由化の今後の展望
きた。
こうした一連のルール整備を通じて、小売電気事業者
等が活用する供給力としての取引や、kWhだけでなく、
4.1 新たな周辺サービスの活性化
既に小売電気事業者間の競争が始まっているが、新規
参入者や需要家のニーズに対応した周辺サービスを提供
する事業者の動きも活発化しつつある。
例えば、自らのライフスタイルに適したプランを選択し
kW 価値も評価されるため、ネガワットがより強みが発揮
され、一般送配電事業者等が活用する調整力としての活
用も含めて、新たなビジネスの創出を促していく。
5.おわりに
たいという需要家に対する、公平性・中立性を掲げる比
較サイトの出現や、自ら選択したプランの効用を最大化
小売全面自由化により、前提となる環境には大幅な変
したいというニーズに対応した電力制御関連機器(EMS
化が生じることになるが、依然として電力システム改革の
や蓄電池等)の導入といった、需要家ニーズに対する事
途上であり、これまでの議論を踏まえ着実にそれを前進
業者の動きがみられる。
させていく必要がある。他方で、この戦後最大の電力シ
他方、小売電気事業を始めるための必要なインフラを
ステム改革を進めるに当たっては、適切な時期に必要な
整えたいという新規参入者に対して、電力需給や顧客管
検証が行われ、検証の結果に応じて必要な措置が取られ
理システム等の導入を図ったり、競合他社とサービスの
る必要があると考えられる。
差別化を図りたいという事業者ニーズに対して、ビッグ
そのため、電気事業法改正法の附則にも記載があるよ
データなどを活用して需要家に合わせた個別提案システ
うに、今後第 3 段階(発送電分離)の施行前、第 3 段階
ム等を導入する等、電気事業者ニーズに対する事業者の
の施行後のタイミングにおいて、法施行の状況やエネル
動きもみられる。
ギー基本計画の実施状況、電力需給状況等について検証
今後、このような周辺サービスを提供する者も含めた
を行い、その検証結果を踏まえ、競争条件や資金調達等
事業者の意欲的な取組みによって、より競争的な市場環
の観点から必要な措置を講じ、電力システム改革の3つ
境が整備されていくものと期待できる。
の目的である、電気の安定供給確保、電気料金の最大限
抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会拡大が図られ
4.2 ネガワット市場の創設
需要側からの需給調整については、これまでも大口需
るように、政府として努めて参りたいと考えている。
また、需要家にとってエネルギーは一体のものである
要家による節電等を中心に一定の役割を果たしてきたと
が、これまでわが国のエネルギー市場は、電力、ガス、
ころであるが、EMS や蓄電池等の製品に加え、自動制御
熱等の業態ごとに制度的な「市場の垣根」が存在してき
およびデータ解析技術等が普及した結果、需要制御の高
た。このため、電力だけでなく、これらも含めた一体的な
速化・高精度化だけでなく、多くの需要家を束ねることで、 改革を実施することでその垣根を撤廃し、エネルギー企
小口需要家も、電力需給の安定に貢献できるようになり
業の相互参入や異業種からの新規参入をさらに促進して
つつある。そのため、このようにして節電した電力量を取
いく。これにより、さらに一体的な市場を創出し、競争の
引する市場として、2015 年 11 月の「未来投資に向けた官
促進を通じた、コスト低廉化や多様なサービスの提供を
民対話」においても、2017 年までにネガワット取引市場
図ることで、需要家への利便性を向上させたい。
特集:最近のエネルギー政策とその動向 13
TO P IC S トピックス
ハノーバーメッセ 2016 報告
スマートマニュファクチャリング関連技術動向の調査
一般社団法人 日本電機工業会
技術部 次長 高
2016 年 4 月 25 日から 29 日まで、ドイツ・ハノーバー
橋 一郎
なお、昨年のテーマである、⑥モーション・ドライブ
国際見本市会場で開催されたハノーバーメッセ 2016 に
オートメーション、⑦風力、⑧電動自動車、⑨空圧機器、
出張し、スマートマニュファクチャリングに関連する技術
⑩表面加工技術については展示がなかった。
動向を調査した。以下にその内容を報告する。
表 1 2015 年と 2016 年のハノーバーメッセ運営の比較
1.展示会の概要
比較項目
世界 75 カ国から企業約 5,200 社の出展があった。今
年は 2 年に 1 度の小規模展示の年のため展示テーマが少
ない年であったが、入場者総数は昨年並みの 21.6 万人
だった。日本からは、58 社の出展があり、今年パートナー
国となった米国から 465 社の出展があった。会期前日の
24 日には、3,000 人が出席した前夜祭があり、オバマ大
2015 年
(大規模展示の年)
2016 年
(小規模展示の年)
10 分野の展示
5 分野の展示
①オートメーション
①オートメーション
②デジタル・ファクトリー
②デジタル・ファクトリー
③エネルギー
③エネルギー
④サプライ
(材料・工具など) ④サプライ
(材料・工具など)
展示テーマ
⑤研究・開発
⑤研究・開発
⑥モーション・ドライブ
統領とドイツのメルケル首相が出席した(図 1)
。
⑦風力
⑧移動技術(自動車など)
⑨圧縮機・真空技術
⑩表面技術
27 館
18 館
(18号館~26号館、
未使用)
参加国
70 カ国
75 カ国
来場者
22 万人
21.6 万人
インド
米国
展示館数
パートナー国
図 1 オバマ大統領とメルケル首相の入場(筆者撮影)
今年は昨年の 10 テーマから縮小され、次の 5 テーマ
(①産業オートメーション、②デジタル・ファクトリー、
③エネルギー、④産業用サプライ〔工場内で使用する原
2.スマートマニュファクチャリング
関連の展示
2.1 2015 年と 2016 年の Industrie 4.0 展示
内容の比較
今年も昨年に続き、Industrie 4.0 がメインのテーマだっ
料、消耗品など〕
、⑤研究・開発)が展示された(表 1)
。
た。表 2 に昨年と今年の展示内容の比較をまとめた。昨
昨年に続き、今年も Industrie 4.0 がハノーバーメッセ全
年の展示は、Industrie 4.0 の概念を中心に展示する内容
体のテーマだった。
が多かったが、今年は、この 1 年間にソフトウェアの開
14 電 機 2016・August
発が進行した状況とともに、生産現場での実用例も展示
した。
SAP のブースでは、生産現場の物理データを扱うソフ
トウェアの展示があった。摩擦溶接工程の作業データを
表 2 に示すように、昨年の展示では、クラウドの構
築に関して具体的なソフトウェア名の展示はなかったが、
今 年の展 示では、ABB、ifm、Siemens などにおいて、
ビッグデータとして保存する例、空気圧縮機の保守に利
用したデータベースの例などを展示していた。
ロボットの分野では、多くのメーカが人と共存するロ
SAP のクラウド用のソフトウェアに接続するという内容を
ボットを展示していた。従来ロボットのように安全柵内に
展示していた(図 2、3)
。
設置して、人がロボットに近づけないようにするシステム
ではなく、人とロボットが近づけるようなシステムの展示
表 2 2015 年と 2016 年の Industrie 4.0 展示内容の比較
No.
項目
ハノーバーメッセ
2015 年
ハノーバーメッセ
2016 年
「クラウド」の部分に「SAP」の
ソフトを利用
1
クラウドの
具体的
実現方法
「クラウド」の
部分の具体的な
構築が未完
・ABB の展示
・ifm の展示
・Siemens のクラウド
など
実用性を感じさせる展示
・摩擦熱溶接のデータ記録
(SAP)
が多かった。
2.2 その他の特徴のある展示
Microsoft のブースでは、クラウドとパソコンで動作す
る OPC-UA を利用して、製品の動作 ON、OFF をデモ
ンストレーションしていた(図 4)
。これも昨年には見ら
れなかった展示だった。ABB では、モータの保守・管理
を目指し、無線を利用した温度、振動センサを展示して
いた(図 5)
。センサの寸法、仕様とも実用化に近づいて
いることを示した。
・圧縮機の保守データ記録
(SAP)
2
実用性の高い 展示会向けのデモ
アプリケーション (実用から遠いデモ) ・GM 車向けエンジン設計用
CAD(Siemens)
・センサデータを上位に上げる
ハードウェアの展示(ifm)
・ドリンクの種類・数を組み合
わせたパレット(KHS)
人と共存するロボット
3
人と共存する
ABB の力制御
ロボット
ロボットが初登場
・ABB のロボット
・Universal Robot のロボット
・KUKA のロボット
・FUNUC のロボット
図 2 ifm の展示(上位は
SAP という図)
図 3 ABB の展示(上位は
SAP という図)
図 4 Microsoft(OPC UA 対応コントローラ)
図 5 ABB(モータ保守用通信 + 温度 + 振動)
[トピックス]
15
TO P IC S トピックス
2.3 ソフトウェアのラインアップの展示
Siemens は自動車の設計、シミュレーション、製造ラ
イン管理を目的としたソフトウェアのラインアップを展示
した(図 6、
7)
。これらのソフトウェアを自動車メーカで
一貫して使用すれば、自動車を設計したときの CAD デー
タが生産ラインにも利用できるようになる。しかしながら、
会場での説明によれば、これらのソフトウェアラインアッ
プを一貫して利用する自動車メーカは、まだないとのこと
だった。
図 8 LNI4.0 ブース(プラットフォーム Industrie 4.0 と RRI の
連携を展示)
2.5 海外団体(IIC、ハノーバーメッセ、ZVEI)
との交流
ハノーバーメッセには関連団体の主要な役員や委員が
集合した。一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は
IIC(Industrial Internet Consortium)のソレイ会長、メ
ラー技術責任者(図 9)や、ハノーバーメッセのジーマ
リング副社長(図 10)
、ZVEI(ドイツ電気・電子工業連
盟)のコズニック技術責任者と面会して情報交換するこ
とができた。
図 6 Siemens(GM 用エンジン設計 CAD)
図 9 IIC ソレイ会長
(右)
、メラー技術責任者
(中央)
との面会
図 7 Siemens(エンジニアリングチェーンに必要なソフトのラ
インアップのプレゼンテーション)
2.4 日独の政府間の連携
ハノーバーメッセ開催期間中に、日独の政府間の協定
が締結された。会場には、図 8 に示すように、日独の
IoT 関連団体が連携した展示があった。
16 電 機 2016・August
図 10 ハノーバーメッセのジーマリンク副社長
(左から 2 番目)との面会
IIC との面談は、IIC とドイツの Platform Industrie 4.0
た、アプリケーションの事例においても Industrie 4.0 の
とのモデルの整合性に関する交流について、また、IIC と
考え方を示すだけのものから、実際の生産現場で利用可
JEMA の今後の交流について意見交換した。ハノーバー
能なレベルのものが見られるようになった。Industrie 4.0
メッセとは、その運営の工夫点について質疑し、日本で
の完全な実現のためには、今後 20 年以上の時間が必要
の SCF(システムコントロールフェア)などの運営方法
と言われ、膨大な開発と作業が必要になるが、少なくと
について参考になる情報を得た。ZVEI からは、スマート
もこの 1 年間で実現に向けて具体的な進展があったこと
マニュファクチャリングに関して ZVEI がどのような活動
が感じられた。
をしているか教示してもらい、今後の JEMA 活動の参考
とした(図 11)
。
3.ハノーバーメッセで感じた
IoT の推進状況について
infrastructure TRADE
resources
2015 年と 2016 年のハノーバーメッセに連続して参加
変化を見ることができた。特に現場のセンサデータを収
集し、分析するためのソフトウェアの開発がこの 1 年で
BUSINESS
GLOBAL
WORLD STANDARD
することができ、ドイツの Industrie 4.0 の開発と発展の
o r ga ni za t i o n
進んでいることを感じた。その内容を表 2 に示した。ま
ELECTRIC POWER
GNP
図 11 ZVEI(ドイツ電気・電子工業連盟の IoT 教育システム)
resources
WORLD
GLOBAL
infrastructure
[トピックス]
17
TO P IC S トピックス
CIRED(配電に関する国際会議)
2016 workshop への出席報告
一般社団法人 日本電機工業会
重電部 重電企画業務課 主任
兼 スマートグリッド統括室 主任
大黒 靖之
1.はじめに
ている。CIRED では、年に 1 度の国際会議にて各国の
配電分野の研究成果や実務的な内容を中心に 200 件から
CIRED は、Congrès International des Réseaux
800 件の論文が発表され、多くの情報を得ることができ
Electriques de Distribution の略称で、2004 年 10 月に
る。また、国内外の幅広い議論を踏まえた IEC などの標
ベルギーに設置された「配電に関する国際会議」である。
準化への貢献も期待されている。
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は、CIRED
の国内窓口である関西電力の要請により、2015 年より協
2.2 CIRED の運営
賛団体として本会議の開催情報を会員企業と共有してい
CIRED は、ベルギーに本部を設置し、大会等に参加
る。今回、ヘルシンキで開催された CIRED ワークショッ
する個人および企業負担費用にて運営している(図 2)
。
プに出席したので、その概要を報告する。
日本は、これまで CIRED 活動に関心のある個人や企業
がおのおので参加していたが、2014 年に CIRED から、
開催会議 CIRED 2016 workshop
Liaison Committee(LC)設置による組織的な参画の要
会 期 2016 年 6 月 14 日~ 15 日
請があり、国内調整を重ねて、2016 年 2 月に早稲田大学
開催場所 Marine Congress Center:ヘルシンキ
の林泰弘教授が代表を務め、関西電力が事務局となって、
日本 LC を設立した。JEMA は、日本 LC 事務局からの
(フィンランド)
要請を受けて、情報共有と会員企業への情報展開などの
2.CIRED の概要
支援を実施している。国内団体では、CIGRE 国内委員
2.1 CIRED の役割
様の協賛活動を展開している。
会、電気事業連合会、電気学会、電気設備学会などが同
CIRED は、配電分野(配電および受電設備)に特化
した国際会議である。
「発電」
「送電」
「変電」および「配
電」に関する国際学会である CIGRE(国際大電力シス
テム会議)と重複した活動を避けるために必要な連携が
取られており、CIGRE とは異なる形での貢献が期待され
CIRED 運営組織
CIRED 支援組織
事務局 Michele Delville(ベルギー)
DC
(Directing Committee) 議長:Theodor Connor(ドイツ)
CIRED の全般的な管理。
AC
(AdvisoryCommittee)
DC の運営を行い、DC によって委任された諸課題の実行を担う。
TC(TechnicalCommittee)
議論内容
議長:EmmanuelDe Jaeger
(ベルギー)
IEEE
JEC
IEC
アルゼンチン、オーストラリア、ブラジ
ル、カナダ、エジプト、ギリシャ、ハンガ
リー、インド、インドネシア、イラン、イ
スラエル、日本、韓国、マレーシア、モン
テネグロ、ポーランド、ルーマニア、ロ
シア、
セルビア
SAG(Session Advisory Groups)
Sessin1 系統の構成要素
Sessin2 電力品質と EMC
(電磁両立性)
研究・実務的
国内
電気学会
電気設備学会
分野
CIGRE
発電
送電
CIRED
変電
配電
受電設備
WG(Working Groups)
Sessin3 運用、
制御、
保護
Sessin4 分散型電源と動的な需要側の統合
国際
Sessin5 配電システムの計画
Sessin6 DSO の規制と競争市場に関する課題
オーストリア、ベルギー、中国、クロア
チア、チェコ、デンマーク、フィンランド、
フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、
ノルウェー、ポルトガル、スロベニア、
スペイン、スウェーデン、スイス、英国、
米国
Liaison Committee(19 カ国)
技術的活動の全般を管理運営し、本大会への技術的議題の
構成と付議を担う。
標準化
National Committee(19 カ国)
--Smart Grids on the Distribution Level
‒Hype or Vision?
活動支援
--Smart secondary substations
--Technical and non-technical losses
--TSO/DSO interface
--CIGRE-CIRED Joint Working Groups
適用範囲
図 1 CIRED の位置付け
18 電 機 2016・August
図 2 CIRED の運営体制
会を与えられ、さらにテーマごとに選定された 6 件のオー
2.3 学会活動
CIRED の会議は 1999 年より開催され、西暦奇数年に
“本大会”、西暦偶数年にテーマを絞った “ワークショッ
ラルセッションでの報告があった他、基調講演やパネル
ディスカッションが行われた。
プ” を開催している(表 1)
。大会では、TC の査読によ
り約半分に絞られた投稿論文について、オーラル、パネ
3.2 発表で得られた情報
ルディスカッション、フォーラム、ポスター、ポスターツ
テーマ 1:スマートシティを支える配電事業者(DSOs)
パネルディスカッション「DSO と TSO との相互連携」
アーなどの形式で発表される。
では、配電の現状および将来のスマートシティ構築に向
表 1 直近の CIRED の開催状況
年
会 議
けた課題、DSO と TSO が連携した統合的な運用、連
開催地
採択論文数
2013 本大会
スウェーデン、ストックホルム
850
2014 ワークショップ
イタリア、ローマ
222
2015 本大会
フランス、リヨン
832
2016 ワークショップ
フィンランド、ヘルシンキ
229
キーワードとして、配電への ICT 導入、スマートメータ
2017 本大会
英国、グラスゴー
−
での需要家側情報取得、シミュレーション予測などがあ
携事例(図 3)などが紹介され意見が交わされた。オー
ラル発表全体では、配電管理の高度化、コストダウンの
り、リアルタイム監視による停電検出、電気自動車の推
3.CIRED Workshop 2016 への
出席報告
3.1 CIRED Workshop 2016 の開催概要
進動向、街灯のエネルギー効率化、スマート配電システム
導入時の公的インセンティブメカニズムなどが報告された。
テーマ 2:信頼性の高い配電系統計画および運用
今回は、表 2 に示す 3 つのテーマに基づき、474 件の
風力、太陽光のような変動する分散型電源、需要家か
アブストラクトが査読を受けて 229 件の論文が発表され
らの逆潮流を含めた需給バランスの高度化に対して、シ
た。これらのすべての論文はポスターセッションの発表機
ミュレーションや予測技術、常時監視システム、電気自
メイン会場風景
ポスターセッションの会場風景
表 2 CIRED Workshop 2016 発表概要
参加者
376 名(32 カ国)。※ 詳細は表 3 参照
テーマ 1『スマートシティを支える配電事業者(DSOs)』 [発表論文数:33 件]
【基調講演】デジタル配電事業者:将来の都市へのスマート化への成功要因
【パネルディスカッション 1】配電事業者(DSO)と送電系統運用者(TSO)との相互連携
オーラル発表
テーマ 2『信頼性の高い配電系統計画および運用』
[発表論文数:123 件]
【基調講演】信頼性の高い配電系統計画および運用に資する配電機器
テーマ 3『顧客も交えた効率的なエネルギー利用』
[発表論文数:73 件]
【基調講演】配電事業者の需要家へのサービス
【パネルディスカッション 2】スマートグリッドの規制および送電事業者ビジネスへの影響
発表論文数
主な電機メーカ
による論文数
229 件(出典:CIRED Workshop 2016 プログラム)
各国の発表数の内訳を表 3 に示す。産学の分野別の発表数は、産業 139 件、産学 53 件、学 37 件。
産業分野の発表では特に配電事業者、送電系統運営者などの現場に近い報告が多い。
【日本】東芝[2 件]、
【海外】Siemens(オーストラリア/カナダ/ドイツ/ポルトガル/英国)[12 件]、
ABB(フィンランド/イタリア/ドイツ/スイス)[6 件]、Schneider Electric(セルビア)[1 件]。
[トピックス]
19
TO P IC S トピックス
動車を含めた蓄電池の活用、ドローン等を活用した配電
現場からのデータの統合・解析(図 4)などが報告された。
表 3 CIRED2016 の発表論文数および出席者
アジア
複数発表
出席者
16
1
25
日 本
7
0
18
韓 国
5
0
6
28
1
49
小計
中東・ヨーロッパ
図 3 市場の柔軟性に向けた取組み例(GE 資料より)
単独発表
中 国
単独発表
複数発表
出席者
ドイツ
21
12
43
フィンランド
21
1
77
英 国
18
6
28
イラン
18
1
5
フランス
17
5
27
ポルトガル
15
8
26
スイス
9
3
14
イタリア
9
3
12
オランダ
9
2
10
スウェーデン
6
1
12
オーストリア
5
2
9
ベルギー
4
4
9
スペイン
4
9
7
ノルウェー
3
2
5
ルーマニア
2
0
2
ロシア
1
1
2
ギリシャ
1
1
1
スロベニア
1
0
4
セルビア
1
0
1
デンマーク
0
2
1
アイルランド
0
1
3
チェコ
0
0
12
エストニア
0
0
3
ブルガリア
0
0
2
トシティへの取組みの方向性は日本と同じであるとの印象
スロバキア
0
0
2
を受けたが、日本では既に実証済みもしくは実現できて
エルサルバドル
0
0
1
いることが多くあると思われる。このような機会に日本の
小計
165
64
318
図 4 配電現場からのデータの統合・解析(EPRI *資料より)
* Electric Power Research Institute
4.おわりに
CIRED Workshop 2016 に出席して、各国の系統には
違いがあるにせよ、欧州を中心とした配電の状況やスマー
配電機器の技術や運用状況など質の高いインフラの一つ
としてアピールができるとともに、スマートメータを用い
北米・南米
た需要家側の監視など、日本の課題となる分野の最新情
米 国
4
2
6
カナダ
1
2
2
ブラジル
1
0
1
アルゼンチン
1
0
0
小計
7
4
9
合計
200
69
376
報も幅広く入手できると期待が持てた。また今回は、東
南アジア諸国からの参加はなかったが、隔年大会には参
加しており、それらの国々の TSO、DSO との交流ができ
る貴重な機会となると思われる。
引き続き、当会としては、日本 LC 事務局からの情報
を会員に展開していく所存である。
20 電 機 2016・August
単独発表
複数発表
出席者
※ 複数発表は共著発表の参加国数を表し、共著の論文数は合計 29件である。
2015 年度
「サーボの使用状況に関する調査」紹介
1.発行年月:2016 年(平成 28 年)3 月
2.報告書概要:
2.1 調査目的
本調査は、
「サーボ等のアクチュエータを使用する機
械」を生産しているメーカにアンケート調査を行い、その
結果をまとめた報告書である。主要機械(相手機械)を
18 品目に分類し、それぞれの機械の生産動向とサーボの
使用動向を把握することによって、現状におけるサーボ
(平成 25 年度)に引き続き、2014 年度(平成 26 年度)
:
2014 年 4 月~ 2015 年 3 月を本調査の基準年度として実
施したものである(隔年実施)
。
なお、調査の実施期間は、2015 年 8 月中旬~ 2015 年
9 月末である。
アンケート調査結果を一部のみ抜粋して以下に紹介す
る。
(1)サーボモータ・サーボアンプの選定条件
●
サーボモータ・サーボアンプの選定条件を 1 位と
の需要構造を明らかにし、今後の製品開発に役立てるこ
回答している項目で、最も多いのは「機能・性
とを目的として調査を実施した。
能」で 32.4%となり、選定基準としての重要な
なお、本調査は、隔年で実施している。
要素となっている。次いで、
「信頼性」
(12.7%)
、
「価格」
(9.8%)と続く。
2.2 調査対象
「2 ~ 3 位計」では、
「信頼性」
(31.2%)が重要
●
(1)
「サーボ等のアクチュエータを使用する機械」を生
産している事業所(事業所単位)
。
(2)対象事業所は、
「全国機械工場名簿」をフレームと
して、その中から対象品目に相当する機械を製造
しているサーボユーザ(2,395 事業所)を抽出した。
な要素となり、
「4 ~ 5 位計」をみると「価格」
(16.8%)が重要な要素となっている。
(2)サーボモータ・サーボアンプの満足・不満足度
●
(34.1%)の 2 要素が 3 割を超え、以下、
「高精
(3)サーボの定義
度」
(28.9%)
、
「メーカ(ブランド)
」
(24.3%)
当調査で取り上げるサーボの定義は、以下に示
す通りである。
物体の方向、位置、トルク、速度等を制御量と
し、目標値の任意の変化に追従するよう構成され
た制御系を有する、検出器付のモータとその専用
アンプをいう。
と続いている。
●
OA 用・事務機器用、AV 機器用、家電機器用、
情報機器用
不満足度は「納期」
(26.6%)
、
「価格」
(22.5%)
、
「互換性」
(21.4%)の 3 要素が高い。
(3)サーボモータ・サーボアンプに期待する機能
●
サーボモータ・サーボアンプに期待する機能は、
「小形・軽量」
(40.6%)が最も多く、次いで、
「バッ
ただし、以下については除外する。
●
満 足 度は「 信 頼 性 」
(35.8 %)
、
「 機 能・性 能 」
テリレス」
(32.0%)
、
「寿命診断」
(27.3%)
と続く。
(4)リニアモータの使用状況
●
リニアモータを「 使 用している」事 業 所は
●
カメラ・時計用
13.3%である。機械区分別(5 事業所以上)で
●
自動車電装機器用
は「産業用ロボット」
(40.0%)の使用率が高い。
●
2.3 調査の内容
この調査で把握する内容は、後述の「報告書目次」に
記載のとおりである。なお、今回の調査は、2013 年度
リニアモータを「使用している」17 事業所の
「ガイド一体型での購入」は 41.2%となっており、
5 割に満たない。リニアモータの種類は「コア付
形」が 64.7%と高い。
[トピックス]
21
TO P IC S トピックス
3.担当委員会:
サーボ技術専門委員会/サーボ業務専門委員会
4.問い合わせ先:
重電部 産業機器企画業務課
TEL 03-3556-5885 FAX 03-3556-5890
[報告書目次]
10.サーボモータ・サーボアンプの選定条件と満足度
(設問 3-6、7)
まえがき
Ⅰ.調査計画の概要
(1)サーボモータ・サーボアンプの選定条件
Ⅱ.調査結果
1.機械の生産・輸出の見通し(設問 1-1)
(1)国内機械生産実績台数(2014 年度)と
生産台数の見通し
(2)サーボモータ・サーボアンプの満足・不満足度
11.サーボモータ・サーボアンプに期待する機能(設問 5)
12.機械の海外生産とサーボモータ(設問 6)
(2)機械の輸出見通し
(1)対象事業所が所管する機械の海外生産の有無
(3)機械の地域別輸出台数構成比
(2)海外での機械生産のウエイト
2.アクチュエータ使用状況と台数(設問 1-2)
(3)海外生産している機械のサーボモータ装着状況
3.サーボモータの使用台数と見通し(設問 3-1)
(4)海外生産をしていない事業所の今後の海外進出計画
(1)サーボモータの使用実績台数(2014 年度)と
使用台数の見通し
(2)サーボモータの容量別構成比
4.サーボモータ・サーボアンプ・コントローラの調達方法
(設問 3-2)
5.コントローラの種類別構成比(設問 3-3)
6.サーボモータ・サーボアンプの使用用途(設問 3-4)
7.サーボモータ・サーボアンプの装着台数の増減傾向
(設問 3-5)
8.アクチュエータにサーボを使用する目的(設問 2)
9.アクチュエータにサーボを使用しない理由(設問 4)
本調査報告書は、JEMA オンライン
ストアより入手することができます。
www.jema-net.or.jp/cgi-bin/
user/index.cgi
22 電 機 2016・August
13.海外規格への対応(設問 7)
14.ネットワーク化の状況(設問 8)
15.リニアモータの使用状況(設問 9-1、2、3)
16.リニアモータの採用予定(設問 9-4、5)
17.リニアモータの採用(予定)理由/要望(設問 9-7、8)
18.DD モータの使用状況(設問 10-1、2、3)
19.DD モータの採用(予定)理由/要望(設問 10-5、6)
付.調査票
2015 年度 定置用燃料電池発電システム
出荷量統計調査報告
一般社団法人 日本電機工業会
燃料電池発電システム技術専門委員会
1.調査の目的
本統計は、燃料電池発電システムの出荷量を継続して
調査・把握することにより、会員各社へタイムリーな市場
情報を提供するとともに、経済産業省等関連外部機関や
ユーザへ普及状況の実態について公表することを目的と
2.2 調査内容
下表記載の項目に分けて、調査を実施した。
機種別容量別出荷量
明 細
機種、容量(定格出力)
区分、出荷台数、出荷設
備総容量
機種、単機定格出力、台数、製造業者、用
途、設置場所、発生電力の用途、燃料種別、
熱供給の有無、排熱形態、熱の用途、補助
金制度適用有無、導入支援補助金の対象/
非対象、実証研究の対象/非対象
している。一般社団法人日本電機工業会(JEMA)の自
主統計として、1998 年度の出荷量実績から調査を開始し、
現在に至っている。
2.3 回答
全 15 社からご回答をいただいた。
本年度も引き続いて、JEMA 会員の燃料電池メーカに
加えて、JEMA 会員以外の燃料電池取扱い各社のご協力
を得て、定置用燃料電池発電システムの出荷量統計調査
をまとめることができた。
3.調査結果
3.1 出荷量
2015 年度の出荷量(台数・定格容量)を表 1 に示す。
2.調査の概要
2.1 調査対象
(1)対象機種
2015 年度の合計台数は 55,942 台(2014 年度:41,359
台)
、容量は 40,098kW(2013 年度:33,177kW)となっ
た。2014 年度に対して、台数で 135%、容量で 120%と
順調に導入が進んでいる。内訳を見ると、台数で 99.9%
固体高分子形燃料電池(PEFC)
、固体酸化物形燃
以上のエネファームが容量でも 97.6%を占めた。種類別
料電池(SOFC)
、りん酸形燃料電池(PAFC)
、溶
では、PEFC と SOFC が定置用小形、PAFC が業務用大
融炭酸塩形燃料電池(MCFC)
以上 4 機種
形として製品化されているが、MCFC の出荷量はゼロで
(2)対象用途
定置用燃料電池発電システム
(3)調査対象会社
あった。
表 1 2015 年度燃料電池発電システム出荷量
内 訳
アイシン精機株式会社、京セラ株式会社、JX 日鉱日
エネファーム
石エネルギー株式会社、住友精密工業株式会社、東
エネファーム以外
芝燃料電池システム株式会社、TOTO 株式会社、日
合 計
台 数
容 量(kW)
55,912
39,138
30
959
55,942
40,098
本ガイシ株式会社、日本特殊陶業株式会社、パナ
ソニック株式会社、富士電機株式会社、三菱日立パ
図 1 に 17 年間(1999 年度~ 2015 年度)の定置用
ワーシステムズ株式会社、三菱電機株式会社、三浦
燃料電池の出荷容量の推移を示す。2009 年以降着実に
工業株式会社、東京貿易株式会社、三菱ガス化学株
増加し、2011 年度には初めて単年度の出荷量が 10MW
式会社 以上 15 社(順不同)
を 超 えた。さらに 2015 年 度 は 40MW を 超 え、 累 計
(4)対象期間
2015 年度(2015 年 4 月~ 2016 年 3 月)出荷分
は 160MW を超えた。2009 年度からの増加は急激で、
2009 年度から市場導入された家庭用燃料電池発電シス
[トピックス]
23
TO P IC S トピックス
テム「エネファーム」が全体を牽引している。この背景と
源対応機種も発売されている。蓄電システムと組み合わ
して、東日本大震災の影響による自家発電設備および地
せることで、運転停止時でも、起動可能となるシステム
球温暖化対応機器としてのニーズの高まりが、燃料電池
も開発された。さらに、一つの PCS(パワーコンディショ
発電システムの出荷量を増加させていると考えられる。
ナ)に燃料電池と蓄電池の直流出力を並列に入力できる
定置用小形燃料電池システムについては、そのほとん
複数直流入力のシステムの開発も進められている。また、
どがエネファームであり、発生電力を自家で消費し逆潮
欧州仕様に対応した機種を開発し、欧州への出荷を開始
流なしの契約をしている。また、SOFC、PEFC にかかわ
したメーカもある。
らず、すべての機種で温水(低温)の給湯(コージェネ
レーション)を行っている。
エネファーム以外の定置用小形は、DMFC 等の非常用
電源用、コンビニエンスストア等を対象とした小形業務
図 2 に「エネファーム」として商用化された 2009 年度
用の機種が出荷されている。また、業務用大形では、バ
からの出荷量推移を示した。図から、累積台数が 18 万
イオマスを燃料とするものが FIT(Feed-in Tariff)の対
台を超え、家庭用燃料電池発電システム全体が大きく伸
象となることから、下水処理場向けに出荷されている。
長していることがわかる。PEFC/SOFC 比率は、PEFC
が比率、伸び率とも SOFC を上回る状況が続いている。
また、燃料種別では、都市ガス/ LP ガス比率は、おお
むね 88/12 であり、都市ガスを燃料とする機種が多い。
4.導入目標とそれに向けた環境整備
4.1 導入目標
一方、業務用大形燃料電池システムの出荷量は増減を
2013 年 6 月に開催された安倍内閣の閣議において「日
繰り返しており、2015 年度は PAFC のみの機種となって
本再興戦略」が決定された。その中でエネファームの政
いる。
策導入目標を 2020 年 140 万台、2030 年 530 万台とし、
国策として普及を進めることが公に提示された。2014 年
4 月に閣議決定された「エネルギー基本計画」にも同様
3.2 用途
燃料電池発電システムは、コージェネレーションとして
の数字が提示され、エネファームの位置付けが明確になっ
の特長を生かした上で、さまざまな用途に適用できるよう
た。今回の出荷量調査の結果では、エネファームの累積
開発が進められている。
導入量は 18 万台を超え引き続き加速傾向にはあるが、国
エネファームでは、コンパクト化の開発が進められ、
による目標の達成にはさらに大幅な導入加速が必要な状
戸建住宅用だけでなく集合住宅のパイプシャフトに設置
況にある。そのために取組むべき最大の課題が低コスト
可能な機種が発売された。また、停電時には自立運転に
化である。これに関して、2016 年 3 月に改訂された「水
切り替わり、非常時にも電気と熱を供給できる非常用電
素・燃料電池戦略ロードマップ」では、エネファームの
図 1 出荷容量推移(1999 年度から)
24 電 機 2016・August
将来的な価格目標について、PEFC 型については 2019
格を元に燃料電池発電システムの安全認証の基礎となる
年までに 80 万円、SOFC 型については 2021 年までに
「定置用小形燃料電池の技術上の基準及び検査の方法」
100 万円として、2020 年にはエンドユーザーが 7 ~ 8 年
を作成した。また、ワンストップ認証が可能なように、一
で投資回収可能な水準となるよう、市場の自立化を目指
般財団法人 電気安全環境研究所で策定している系統連
す方針が示されている。
系にかかわる認証基準と併せて、定置用小形燃料電池シ
ステムの共通認証基準を 2004 年 12 月に発行した。その
4.2 導入支援
後、改訂を繰り返し 2015 年 9 月に第 9 版を発行するに
政府による家庭用燃料電池発電システムの導入補助金
至っている。第 9 版では、水素を燃料とする機種を対象
は、2009 年度 140 万円/台であったが、2015 年度には、
に加え、都市ガス機との構造上の差異を明確化した上で
PEFC:30 万円/台、SOFC:35 万円/台と 1/4 まで減
技術上の基準や検査の方法に反映した。この共通認証基
額された。補助金導入当初は 2015 年度を最終年度とし
準をクリアしないと「エネファーム」として扱われないこ
て以降は自立することが想定されていたが、価格低減が
とになっており、認証基準があることで、一般消費者も
十分とは言えない状況でさらなる導入加速を図るため、
安心して購入できる環境を提供している。また、認証基
2016 年度から新たなスキームで補助金が継続されること
準ではカバーできない運用面については、日本電機工業
になった。新スキームでは、経済産業省が設定した基準
会技術資料 JEM-TR244「小形燃料電池システムの設置・
価格を上回ると補助金が減額され、さらに、別途設定さ
引渡し及び保守・点検ガイドライン」
、同 JEM-TR250
れた裾切価格を上回る場合には補助金が支給されない仕
「小形燃料電池システムのリサイクル設計ガイドライン」
組みとなっている。基準価格 / 裾切価格は、PEFC 型で
等を制定し、安全を担保している。
127 万円/ 142 万円、SOFC 型で 157 万円/ 169 万円
であり、新築戸建の基本補助額は PEFC:15 万円/台、
SOFC:19 万円/台である。
5.新たな展開に向けて
近年、経済産業省では HEMS(Home Energy Man-
4.3 基準・認証制度の整備
agement System)と家庭内の需要機器やエネルギー機
定置用小形燃料電池発電システムには、2009 年から
器との相互接続性強化を進めており、燃料電池について
の市場導入に際して、安全性確保の前提として認証制度
も、その対象となる重点 8 機器の一つとして、HEMS と
の導入が求められたことから、JEMA 内に認証基準を検
の通信プロトコルである ECHONET Lite の規格整備や
討する「定置用小形燃料電池認証システム検討委員会」
アプリケーションインターフェースの第三者認証制度の立
を設置して認証の仕組みづくりや国内法令、JIS 等の規
ち上げが行われている。2016 年 1 月に発足したエネル
ギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会では、
FIT 電源と併設した燃料電池や蓄電池からの逆潮流を可
能とするための計量方法の検討も進められており、燃料
電池を通信で制御することによって実現される新たな活
用法やビジネスモデルの検討が加速している。JEMA も、
2016 年度から経済産業省による事業として開始された
「エネファームのリモート運転に関する国際標準化」事業
を受託して、燃料電池の新たな展開に向けた検討を開始
した。
当委員会では、今後とも信頼性の高い出荷量調査報告
を継続して公表していく計画である。最後に、今回の出
荷量調査にご協力いただいた各社に厚く御礼申し上げる。
図 2 家庭用燃料電池発電システムの出荷台数推移
[トピックス] 25
TO P IC S トピックス
第86回 新エネルギー講演会/
第 4 回 風力発電関連産業セミナー(合同開催)
開催報告
一般社団法人 日本電機工業会
新エネルギー部 技術課 課長
松下 崇俊
2016 年 6 月 6 日に『2030 年風力発電グリッドパリティ
上に増加したが、依然その発電比率は水力を除いて 3.2%
を目指して』というテーマで、一般社団法人 日本電機工
と足踏みしており、かつ太陽光がほとんどの割合を占め
業会(JEMA)の風力発電システム技術専門委員会主催に
ている電源間のアンバランスが顕在化している現状につ
よる「第 86 回新エネルギー講演会」と、一般社団法人
いて報告があった。よって今後の再エネ導入拡大に向け
日本産業機械工業会(JSIM)
、一般社団法人 日本風力発
ては「①電源特性や実態を踏まえたバランスのとれた導
電協会(JWPA)および JEMA の主催による「第 4 回風
入」
「②最大限の導入と国民負担抑制の両立」
「③長期安
力発電関連産業セミナー」との合同講演会を開催したの
定的電源供給の確保」
「④広域的な系統利用システムルー
でその概要を報告する。講演プログラムを表に示す。
ル構築といった諸課題解決に向けた制度見直し」が必要
講演会にあたり、はじめに経済産業省 製造産業局 産
であることが示されると同時に、風力発電について本来
業機械課の潮﨑雄治課長補佐より来賓のご挨拶をいただ
低コスト電源である特長をより生かすために、大規模案
いた。風力発電には 2 つの大きな意義があり、エネルギー
件を着実に運転開始させていくことの重要性について言
政策上の意義では東日本大震災後、省エネと並んで再生
及があった。
可能エネルギー(再エネ)の導入促進の重要性がますま
風力発電関連機器産業に関する調査研究委員会の「風
す高まっている旨、産業政策上の意義では風車は多くの
力発電関連機器産業の動向」では、三重大学・前田太
部品、技術、関連製品より成り立っており経済波及効果
佳夫教授より、2009 年度から 6 年度分の風力関連企業
が高く、雇用が期待できる将来有望分野の 1 つである旨、
統計調査について未参入企業を含む 243 社にアンケート
説明があった。今後はこの風車の持つポテンシャルをい
(回答率 47.3%)を実施した結果、2014 年度は調査開始
かに産業振興に結び付けられるかが課題であるとの言及
以来減少傾向であった売上高が前年度を上回り、市場が
があった。
回復基調であることをうかがわせる結果となったことが報
基調講演では、経済産業省 資源エネルギー庁 省エネ
告された。これは軸受等の基幹部品の堅調な需要と、大
ルギー・新エネルギー部 再生可能エネルギー推進室 渡
型風車の売上げ増加が寄与したものと考えられるとのこ
部伸仁室長から、風力発電を包含した再エネをめぐる最
とであった。2020 年、2030 年の国内市場もそれぞれ現
近の動向について講演いただいた。2012 年 7 月の固定価
在の 1.6 倍、2.6 倍に拡大するとの企業見通しが示され、
格買取制度(FIT)開始後 3 年で再エネ導入量が 2 倍以
行政・業界団体へは例年同様に政策上の支援と技術開発
来賓挨拶(経済産業省 潮﨑雄治課長補佐)
講演会場の様子
26 電 機 2016・August
の支援が要望されていることが確認された。
「風力発電の大量導入に向けた系統運用と市場設計」
JWPA の高本学代表理事からは、風力発電の導入拡大
の発表では、関西大学・安田陽准教授より、わが国にお
に向けて同協会が策定した JWPA Wind Vision(2030
ける再エネ導入拡大のための課題の 1 つに系統連系問題
年に 36.2GW 導入、火力発電コストに匹敵するグリッド
が挙げられているが、問題の本質は技術ではなくマイン
パリティ達成)を実現するための課題とその解決策が紹
ド(制度)にあるとの指摘がなされた。わが国では再エ
介された。初期コスト低減策としては、規模の経済性を
ネ導入のための課題解決が原因者負担に委ねられ、連系
生かす開発の大規模化、風車の大型化、シリーズ化が挙
線の容量限界にて喫緊の導入量が決定される等の固定観
げられ、技術開発の事例としては、受風面積の拡大、ナ
念がまかり通ってしまっている現状がある。これらを打破
セル軽量化、スマートメンテナンスによる稼働率向上・
しわが国の国際競争力強化そしてグリッドパリティを実現
保守費の低減が挙げられた。その際 FIT の恩恵を最大限
するためには第一に制度改革が必要であり、社会コスト
に生かすためサプライチェーンの国内構築や関連産業の
最適化を考慮するならば再エネ導入に際する系統連系問
育成を考慮することが重要との指摘がなされた。さらに、
題は第一に既存設備での運用制度改革と既存の電力シス
風力発電産業の継続的発展のために長期的計画に基づく
テムが持ち得るすべての手段を考慮して対策を図るべき
人材育成が不可欠であることが示された。
との提言があった。
日本海事協会(ClassNK)による風力発電設備に関す
今回の講演会は 110 名の参加があり、さまざまな分野
る認証の動向では、高野裕文本部長より、近年における
の方にご聴講いただいた。風力発電の世界市場は今後も
風車の導入拡大、プロジェクトの大規模化、安全性・信
拡大を続けることが予想されるが、国内市場について自
頼性要求の高まりによって高度なリスクマネジメントの重
立的に拡大していくためには、できるだけ早期のグリッド
要性が増加、これにより第三者認証制度の必要性が増し
パリティの実現と、国内特有の事情を把握しての制度面・
てきている旨、報告があった。国際的には IEC の認証ス
技術面・認証制度のあり方について産官学の連携にて進
キームである IEC 再生可能エネルギー機器規格試験認証
化させていく必要がある。
制度(IECRE)が国際交易促進を目的に単一のグローバ
ルな認証制度を確立し、一部認証機関による寡占状態の
末筆ながら、ご多忙の中、ご講演いただいた皆さまに
心より御礼申し上げる。
解消に向け活動しており、まもなく当該制度が運用開始
される旨報告があった。一方、国内では事故等を契機に
一元的な事前審査および継続的なチェックの重要性がク
ローズアップされ、厳しい環境特性を有するわが国の状
況に即した新たな認証制度の構築が進められていること
が紹介された。
東京大学・飯田誠特任准教授からは、グリッドパリティ
を実現するためのスマートメンテナンス技術の開発と活
用事例が紹介された。スマートメンテナンス開発では部
品の調達費用、故障率を下げることと、どれだけ効率的
に短期間で保守ができるかを考えていること、活用事例
ではメンテナンス作業において地元の果たす役割は大き
く、保守作業者の経験値(早期不適合部位特定、補修作
業時間削減等)を補足できること、部品の現地調達等を
可能にできること等が紹介された。このようにスマートメ
ンテナンス技術は事業リスクを減らし、風車の健全性を
維持する仕組みであると同時に、部品産業育成・支援、
人材育成に貢献する仕組みであるとの内容であった。
表 講演プログラム(敬称略)
【来賓挨拶】経済産業省 製造産業局 産業機械課 課長補佐 潮﨑 雄治
【1.基調講演】
再生可能エネルギーを巡る最近の動向 ~風力発電導入拡大に向けて~
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部
再生可能エネルギー推進室長
渡部 伸仁
【2.一般講演/調査報告】
(1)風力発電関連機器産業の動向
国立大学法人 三重大学 教授
前田 太佳夫
(2)風力発電の導入拡大に向けて~ JWPA Wind Vision Report ~
一般社団法人 日本風力発電協会(JWPA)代表理事
株式会社 日立製作所 新エネルギーソリューション事業部長
高本 学
(3)風力発電設備に関する認証の動向
一般財団法人 日本海事協会(ClassNK)
新事業開発本部 本部長
再生可能エネルギー部 部長
高野 裕文
(4)スマートメンテナンス技術の開発と活用
−国内部品産業の育成を目指し−
国立大学法人 東京大学 先端科学技術センター
産学連携新エネルギー研究施設 特任准教授
飯田 誠
(5)風力発電の大量導入に向けた系統運用と市場設計
関西大学 システム理工学部電気電子情報工学科 准教授 安田 陽
[トピックス]
27
TO P IC S トピックス
家庭用 SOFC(固体酸化物形燃料電池)
コージェネの普及に向けた取組み
アイシン精機株式会社
エネルギー技術部
桑葉 孝一
布谷 誠二
1.はじめに
2.エネファーム普及の現状と課題
地球規模でのエネルギー消費量増加や CO 2 排出量増
エネファームは、各メーカーの開発推進や部品仕入先の
加に伴う環境問題が深刻になる中、国内においても民生
努力により、機器の性能向上、信頼性向上、コストダウン
分野での CO 2 排出量抑制が課題となっている。国内の一
などが図られ年々その商品価値が高まっている。また、災
般家庭から排出される CO 2 の発生要因のうち、家電と給
害時の非常用電源として使えるよう停電時自立発電機能の
湯が占める割合は高く、これらの排出量を効率よく削減
追加や、スマートフォンから遠隔操作や機器の状態を監視
することが望まれている。さらに、2011 年の東日本大震
できるようリモコンに無線 LAN 機能を搭載するなど、
付加
災以降、エネルギーセキュリティに対する考え方が浸透
価値の向上も進めてきた。さらに、国の補助金による販売
し、分散発電の需要が高まっている。このような状況を
の後押し、ガス事業者の販売促進、国民の省エネ意識の
背景に、電気と熱を高効率で供給できる家庭用燃料電池
高まりとともに販売台数を順調に伸ばし、2015 年までに累
コージェネシステムへの期待が高まり、2009 年よりエネ
計 15 万台を超え市場に浸透しつつある。普及台数推移を
ファームが市場投入された。
図 1 に示す。
現在市販されているエネファームの方式は、搭載して
一方、経済産業省が発表しているエネルギー基本計
いる燃料電池の電解質・運転温度により 2 種類に大別さ
画(2014 年 4 月閣議決定)や水素・燃料電池ロードマッ
れ、高分子膜を電解質として 70 ~ 80℃で運転する「固
プ(2016 年 3 月改訂)では、エネファーム累積販売台数
体高分子形燃料電池(PEFC)
」と、セラミックを電解
を 2020 年に 140 万台、2030 年に 530 万台を目標として
質として 700℃程度で運転する「固体酸化物形燃料電
いる。併せて、事業自立化のためエンドユーザーの負担額
池(SOFC)
」がある。当社では、SOFC を搭載したコー
の目標値も定め、2020 年ごろに PEFC 型では 80 万円、
ジェネシステムを開発し、2012 年 4 月からエネファーム
SOFC 型では 100 万円としている。しかし、図 1 に示す普
typeS を製造・販売している。
及ペースでは目標達成が容易ではないことは明らかで、以
台数
150,047
150,000
〈単年度台数〉
※ 2015 年度は、2015 年 12 月 18
日時点での補助金交付決定ベー
ス(一般社団法人 燃料電池普及
促進協会集計)
。
115,455
累積台数
100,000
71,805
50,000
9,998
0
2,550 〈7,448〉
2009
2010
19,282
〈9,284〉
2011
37,525
〈34,280〉
〈43,650〉
〈34,592〉
〈18,243〉
2012
2013
年度
2014
2015
(12 月)
出典:
「エネファーム パートナーズ」ホームページより
図 1 エネファームの普及台数推移
28 電 機 2016・August
※ 2009 〜 2014 年度は、補助金交
付決定ベース(資源エネルギー
庁作成データ)
。
に伴い電気抵抗が低下し、スタック電圧および発電効率
下に現状の課題を示す。
1 つ目はエンドユーザーの経済メリットが低いことが挙げ
られる。機器のイニシャルコストだけでなく、施工費やメン
が向上する。一方で構成部材の酸化が進行しやすくなり、
酸化層が電気抵抗となるため耐久性が低下する。
テナンス費用などの付随費用の高さに対し、機器のランニ
2 つ目は設置先が限定されることにある。例えば、エネ
ファームの発電ユニットは比較的コンパクトであっても、お
湯を貯める貯湯ユニットが大きいため狭小住宅に設置でき
スタック温度分布
46.5%以上
10年以上
耐久性
エンドユーザーの購買意欲が上がらないと考えられる。
発電効率(スタック電圧)
ングメリットによる光熱費回収に要する年数が長いため、
ない、集合住宅ではエネファームを設置できるスペースが
ない、既築住宅で使用中の給湯器が壊れていないのにエネ
SOFCスタック温度
ファームに買い替えるのはもったいない、などが挙げられる。
図 3 SOFC スタック温度と効率・耐久性との関係
3.課題解決に向けた当社の取組み
耐久性を損なうことなく発電効率を向上させるために
は、スタック温度分布を小さくし、低温部を少なくする設
前述の 1 つ目の課題に対し、まずは機器のランニング
計と適切な温度範囲で制御することが必要となる。実際
メリットを改善する方策について検討した。SOFC システ
には、SOFC スタック自身およびそれを収容するホットモ
ムでは、燃料改質ユニットと燃料電池ユニットの使用温
ジュールの設計がポイントになる。ホットモジュール構造
度範囲が近いため、熱の有効利用が可能で発電効率を高
を図 4 に、具体的な効率向上手段を表 1 に示す。
くできるという特長がある。一方、一般財団法人 新エネ
ルギー財団(NEF)が実施した大規模実証試験では、関
東から関西エリアにおいて、電力需要が給湯需要より多
い家庭の割合が高いという結果も得られている(図 2)
。
給湯需要(kWh/日)
熱電比=1.4
(PEFC)
SOFCで効果が
大きいデマンド
熱電比=0.9
(SOFC)
熱電比
=1.0
図 4 ホットモジュール構造
表 1 発電効率向上のための方策
狙 い
スタック温度分布を小さくする
電力需要
(kWh/日)
出典:NEF「H20 年度定置用燃料電池大規模実証事業報告会」資料より
図 2 電力需要と給湯需要分布
スタック低温部を少なくする
適切な温度で制御する
スタック性能を上げる
具体的方策
エアの流し方を改善
断熱材の配置を改善
断熱を強化
燃焼部形状を改善
流量制御精度を改善
集電材料の改善
セル性能の改善
以上より、SOFC の特長を活かし、より多くの家庭でラン
2012 年以降販売していた従来機種では定格 700W 発
ニングメリットを大きくするためには、発電効率の向上が効果
電時の発電効率が 46.5% LHV であったのに対し、2016
的であると考えられる。
年 4 月より販売開始した最新機種では、同条件で 52%
ここで、発電効率向上の取組みの前に SOFC の温度
特性について図 3 を使って説明する。SOFC は温度上昇
LHV まで大幅に向上した。
次に、前項 2 つ目の課題の解決方策が具体的になって
[トピックス]
29
TO P IC S トピックス
くる。発電効率向上に伴い、熱回収量が減少するため貯
後検討していく必要があると考える。また、新たな市場
湯タンクを小型化できる。小型の貯湯タンクを発電ユニッ
開拓という点も重要で、さらなる軽量・小型化により購買
トに一体化することで貯湯ユニットを廃止し、エネファー
可能層を厚くする活動も不可欠になる。
ム全体をコンパクトにするとともに、給湯器使用中の既築
『新たな技術開発→新製品投入によるマーケット拡大
住宅へ発電ユニットを後付けできるようになった。2016
→販売台数増加によるコストダウン→新たな開発投資に
年販売開始の最新機種の仕様を表 2 に示す。
よる技術開発』という普及拡大に向けたサイクル(図 5)
話を前項 1 つ目の課題に戻すが、機器のイニシャルコ
ストも重要課題と認識しており、2016 年モデルではその
を描き、目標達成に少しでも貢献できるよう取組みを加
速していく。
対策にも取り組んでいる。具体的には、スタックのセル
技術開発
数低減(140 → 94 セル)
、ホットモジュール構造の簡素
化、脱硫方式の変更、センサ・ヒーター数の削減、貯湯
新製品投入
商品開発投資
ユニットの廃止など大幅に設計を見直している。
また、2014 年モデルではガスセンサを 5.5 年でメンテ
マーケット
拡大
ナンスしていたが、2016 年モデルではセンサの使い方改
善により 10 年メンテナンスフリーとして、メンテナンス
販売台数増加
費用削減によりエンドユーザー負担を軽減している。
4.今後の普及に向けた取組み
コストダウン
図 5 普及拡大に向けたサイクル
謝辞
前述の通り、経済産業省の指針にある目標達成に向け
本製品の開発に当たり、国立研究開発法人 新エネル
てはまだ課題が多く、特にエンドユーザーの負担軽減が
ギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
、NEF の『固体
最重要課題となる。そのためには機器のイニシャルコスト
酸化物形燃料電池システム実証研究』により得られた成
低減だけでなく、施工など設置にかかる費用の低減も今
果を活用しています。関係各位に深く感謝申し上げます。
表 2 エネファーム typeS 2016 年モデルの仕様
主な仕様
2016 年モデル
2014 年モデル
2016 年 4 月販売開始
給湯器
給湯器
発電ユニット
貯湯タンク
対応ガス種
都市ガス(13A)、LP ガス
都市ガス(13A)、LP ガス
発電出力
通常時:700W、停電時:700W
通常時:700W、停電時:350W
定格発電効率
52%(LHV)世界最高 ※
46.5%(LHV)
定格総合効率
87%(LHV)
90%(LHV)
タンク容量
28ℓ
90ℓ
設置面積
1.4m2 世界最小 ※
1.9m2
定期点検
10 年間メンテフリー
5.5 年毎
設計寿命
10 年
10 年
設置先
新築戸建、既築戸建、新築集合
新築戸建、(新築集合)
※ 家庭用固体酸化物形燃料電池コージェネレーションシステムにおいて、2016 年 4 月当社調べ
30 電 機 2016・August
貯湯タンク
発電ユニット
貯湯ユニット
業界報告
高電圧・大電流測定の
JCSS 校正サービス確立に向けての取組み
株式会社 日立製作所 電力ビジネスユニット
日立事業所 高電圧大電力試験所長
木田 順三
1.JCSS 校正の必要性
日々の生活に必要不可欠な電力は、各所の発電設備か
インパルス電圧測定については国家標準までトレースで
きる校正が確立できていなかったために、海外の校正事
業者に校正を依頼する必要があった。
ら電力系統ネットワークを経由して需要家に届けられてい
このような状況を解決するためには、日本国内でも高
る。この電力系統は、変圧器、開閉器等をはじめとする
電圧・大電流測定の校正試験ができるようにする必要が
さまざまな高電圧送変電機器で構成されている。特に基
あり、グローバル化が進む昨今の状況に鑑み、JCSS 校
幹の電力系統で使用される各種高電圧機器は、平常時で
正サービスが受けられる環境を構築することが重要であ
も数十 kV 以上の送電電圧において、数百 A 以上の電流
る。高電圧、大電流測定の国際規格である IEC 60060
を通電しており、特に襲雷や短絡事故等の異常発生時に
シリーズや IEC 62475 においても、国家標準とトレーサ
は、数百~千数百 kV もの過電圧や数十 kA 以上の過電
ブルな校正の実施がより明確に要求されており、これら
流に耐える必要がある。その性能、品質を確かなものに
を準用している IEC の各種機器規格はもとより、関連す
するために、高電圧、大電流試験は重要な性能評価試験
る国内規格にも順次適用が拡大されていくと考えられる。
の一つとなっている。妥当な試験を実施するためには試
このように JCSS 校正の必要性がますます高まっているこ
験電圧、電流の値や条件が各機器の仕様に合致している
とから、高電圧・大電流測定分野での体制整備の取組み
ことが重要であり、そのためには確かな高電圧、大電流
を開始しているので、その概要を紹介する。
測定が求められる。
各種測定の確からしさを担保するためには測定器の
校正が必須である。わが国には計量法校正事業者登録
制 度 JCSS(Japan Calibration Service System) に 基
2.取組みの概要
2.1 体制
づいて認証を受けた校正事業者による校正サービス(以
高電圧・大電流測定における JCSS 校正サービスの
下、JCSS 校正サービス)がある* 1。JCSS 校正サービス
利用を確立するために、一般社団法人 日本電機工業会
を 利 用すると、ILAC/MRA(International Laboratory
(JEMA)傘下の日本高電圧・インパルス試験所委員会
Accreditation Cooperation / Mutual Recognition
(JHILL)と日本短絡試験委員会(JSTC)にて 2013 年
Arrangement)準拠の校正証明書が発行されるので、国
4 月より具体的な検討を開始した。高電圧・大電流測定
内の各社試験設備や試験所で実施した試験の測定データ
や試験に関する有識者や試験所に加え、国立研究開発法
がグローバル市場に通用する利点がある。
人 産業技術総合研究所(AIST)と日本電気計器検定所
しかしながら、前述の高電圧機器の試験で必要となる
(JEMIC)にも参加していただくことで、国家標準からト
電圧、電流の値が大きく、また電圧、電流発生に必要と
レーサブルな校正体系を構築するための具体的な議論と
なる試験設備も大規模になるため、校正試験の実施に困
作業ができるようにした* 2。さらに 2016 年 4 月からは、
難が伴うことが多い。このような事情もあり、高電圧機
JHILL、JSTC 傘下の作業会(WG)として活動体制を
器の試験で必要となる電圧・電流範囲において、これま
強化し、高電圧・大電流測定の JCSS 校正サービス確立
では利用できる校正手段が限られ、また JCSS 校正サー
に取り組んでいる。
ビスの供給範囲も十分ではなかった。特に日本国内では、
[トピックス]/[業界報告] 31
業界報告
正では、JCSS の現地出張校正サービスがなかったため
2.2 課題
本取組みを開始した時点での、高電圧・大電流測定の
に、校正依頼者が輸送に不向きな大型の分圧器などを校
校正における課題を図に示す。メーカ、研究機関、試験
正業者に輸送するか、あるいは校正依頼者が準備した可
所などの一般産業界で使用している校正された標準器、
搬型の分圧器を依頼者の参照標準として校正してもらっ
測定器は、図のトレーサビリティ体系のように、その測定
た後、その分圧器を標準器として校正依頼者が自家校正
値が特定標準器(国家標準)から関連付け(トレース)
するか、といった合理的とはいえない手段によらざるを得
されて値付けされている。しかしながら、送変電機器な
なかった。インパルス電圧測定の校正は、国内では校正
どを対象とした高電圧・大電流測定分野においては次の
サービスを提供している校正事業者がなく、校正証明書
ような課題があった。
を入手するには海外の校正事業者を利用する必要があっ
た。海外に校正を依頼すると、所要日数が長くなる、輸
(1)一般産業界で必要な校正範囲に対して、国家標準
の供給範囲が不足している部分があった。
(2)一般産業界において必要となる校正種類、範囲な
送事故のリスクが大きくなる、輸送等含めて費用が高く
なる、等の短所があり、必要なときに手軽に校正ができ
ない問題があった。国内での校正試験としては、唯一、
どのニーズが校正事業者に伝わっておらず、国家
JHILL で実施されてきた比較試験プログラムに参加する
標準からの校正の拡張、トレーサビリティ体系の整
方法があるが* 3、実施者が校正機関でないために校正証
備がなされていなかった。
明書の発行ができなかった。
(3)インパルス電圧測定など、校正事業としての実施
実績がない範囲があった。
このように、高電圧・大電流測定の校正において、技
術的には諸外国と遜色はないが、制度として整備されて
(4)校正事業者が校正依頼者の現場で校正ができるよ
うな、現地出張校正で使用可能な標準器が準備で
いない状況であったため、国内でも国際認証がなされた
校正サービスの実施が要望されていた。
きていなかった。
2.3 工程
このような状況であったため、従来から校正可能な測
関係者と議論を重ね、高電圧機器の試験において必要
定範囲であっても JCSS 校正ではなく、ほとんどの校正
となる校正の種類と範囲を整理し、現状利用可能な設備、
範囲が第三者による認証のない一般校正であり、国際相
標準器として使用可能な器物、国家標準からのトレーサ
互認証がないために特に海外市場向けの機器の試験で
ビリティ体系を構築するための技術的な課題を考慮して、
は効力が弱かった。また、交流、直流高電圧測定の校
表に示す工程にて検討を進めることとした。校正範囲の
詳細は文献* 2 の S13-4 に記載されている。この工程で
トレーサビリティ体系
課題
特定・特定副標準器
国立研究所
AIST
指定校正機関
JEMIC 他
特定二次標準器
登録校正事業者
JEMIC 他各所
常用参照標準器
登録校正事業者
JEMIC 他各所
実用標準器・測定器
一般産業界
ユーザ、メーカ、研究機関、試験所、
JHILL/JSTC
国家標準の供給範囲
が不足
校正の拡張、トレーサ
ビリティ体系が未整備
困難な大型の試験設備を校正するための現地出張校正を
可能にすることを目標としている。特に、限られた資源の
中でも最短で必要となる校正サービスを実現し、海外の
校正事業者と同等レベルの校正が国内でも実施できるよ
インパルス測定校正
事業の実績が無い
う、優先順位を考えて段階的に各課題に取り組むことと
現地出張校正で使用
可能な標準器が不在
を拡充するための取組みも進めている* 4。表に示す仕様
海外校正機関に
校正依頼が必要
図 高電圧・大電流測定の校正における課題
32 電 機 2016・August
は、関連 IEC 規格の要求仕様を満足することと、運搬が
している。その中で、不足している国家標準の供給範囲
範囲で JCSS 校正が可能になると、IEC60060-2 および
IEC62475 の規定(電圧測定では最高測定電圧の 20%以
上の電圧で、電流測定では最高測定電流の 5%以上の電
流で校正すること)を適用することで、電力系統用の高
電圧機器で必要となる基本的な校正範囲を網羅できる。
3.今後の予定と課題
現状の IEC 規格では直線性試験で外挿するなどの対応
方法が規定されているが、標準器の定格範囲はより広い
表に示すように、2015 年度には大電流測定用分流器
の商用周波抵抗値の JCSS 校正を開始しており 、2016
*5
方が望ましい。校正の不確かさが確保できる、合理的で
実用的な構成方法の開発が重要である。
年度中には、交流および直流高電圧測定の JCSS 現地
以上、高電圧・大電流測定の JCSS 校正サービス確
校正サービスを開始予定である。インパルス電圧測定の
立に向けての取組みの概要を紹介した。現時点ではこの
JCSS 校正は 2017 年度に開始予定であるが、現時点で
JCSS 校正サービスの利用者は、主に JHILL、JSTC に
は現地校正用標準器を準備するめどが立っていないため、
参画している試験所となっているが、送変電分野をはじ
校正依頼者が校正対象器物を校正試験所に持ち込む必
めとする各種業界における、高電圧・大電流測定が必要
要がある。また、高周波大電流測定用分流器の JCSS 校
なユーザ、メーカ、研究機関、試験所等に広く利用して
正は、国家標準の供給が可能となる時期に合わせて 2017
いただけるようになることを期待する。
年度中に実施可能とする予定である。さらなる取組みと
して、商用周波分流器の校正における不確かさの向上を
予定している。
今後の課題として、表には記載していないが、技術的
にはインパルス電流測定用分流器の校正、インパルス電
圧測定の現地出張校正、各校正対象における校正範囲の
拡大と不確かさの向上、高電圧・大電流測定システムと
しての校正の検討などがある。例えば、高電圧測定の校
正可能範囲の電圧は、IEC 等関連製品規格で記載されて
いる最高試験電圧の 20%以下程度であり、校正対象器
物の定格電圧によっては、直接的な比較試験ができない。
<参考文献>
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校正事業者登録制度(JCSS)
:http://www.nite.go.jp/iajapan/jcss/index.
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* 2 平成 28 年電気学会全国大会シンポジウム S13、グローバル化を目指す大
電力・高電圧試験の取組み~国際的に通用する試験成績書の発行を目指
して~
* 3 S. Miyazaki, H. Goshima, T. Shindo, E. Hino, T. Banno, J. Kida, H.
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流比較ブリッジ回路の誤差解析、電気学会論文誌 A、Vol. 136、No. 4、
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http://www.jemic.go.jp/kousei/hvlc.html#hvlc04(2016 年 7 月現在)
表 高電圧・大電流測定の JCSS 校正サービス確立の取組み工程
2016/7 現在
項目
年度
2013
2014
2015
2016
2017
調査・計画
実施済:
検討会
検討会
商用周波
大電流
[50/60Hz]
測定
・
分流器
高周波
(抵抗値)
計画:
JCSS 校正 WG
技術的検討
認定申請
校正の不確かさ向上
校正開始
国家標準の開発
技術的検討 認定申請
[10kHz]
交流
校正開始
出張校正用標準器の準備
技術的検討 認定申請
[~190kV]
高電圧
測定
・
分圧器
直流
現地出張校正開始
出張校正用標準器の準備
技術的検討 認定申請
[~180kV]
インパルス
[~500kV]
2018
現地出張校正開始
技術的検討
認定申請
校正開始
[業界報告] 33
業界報告
標準化活動紹介
容を把握していることを背景に議論に加わり「IVIC の取
IEC/TC2/ WG12(回転機の定格
および性能)アーリントン(米国)会議
得(assign)は任意である」ことを確認した上で、
「IVIC
誘導機技術専門委員会
電動機の絶縁に関する検討 WG 委員
藤延 博幸
◇
【概 要】
開催会議 IEC/TC2/ WG12
(Rating, performance and general support)
の対象機種は IEC 60034-18-41 と同一とする」
「IVIC を
取得した場合には文書に記載する(銘板にも記載するこ
とが望ましい)
」と記述することを決定し、参加目的を達
成した。
【今後の展開】
IEC 60034-1 については、Ed.13 成立後、ただちに次
開催日
2016 年 5 月 19 日
の改正作業に入ることが決定しており、その動向を注視
開催地
アーリントン(米国)
するとともに日本意見を的確に反映できるよう、絶縁関連
出席者
11 カ国(+IEC 事務局)
、21 名
メンバーも継続して審議に参加することが望ましい。
【背景・目的】
一般社団法人 日本電機工業会 誘導機技術専門委員
会 電動機の絶縁に関する検討 WG では、IEC 60034-18-
IEC/TC2/WG28, WG31
(可変速駆動モータの効率)
アーリントン(米国)会議
41 等インバータ駆動機の絶縁に関連する IEC 規格を審議
してきた。一方、IEC/TC2/WG12 では回転機の通則規
可変速駆動システム IEC 対応分科会 主査
格である IEC 60034-1 のメンテナンスを行っている(現在
佐 藤 以久也
◇
は Ed.13 に向け、CDV 成立段階)
。IEC 60034-1 Ed.13
では従来(Ed.12 まで)言及のなかった IVIC(Impulse
Voltage Insulation Class:インバータ駆動機におけるイン
【概 要】
バータサージ耐性、詳細は IEC 60034-18-41 参照)に関
開催会議 IEC/TC2/WG28, WG31
する記述が盛り込まれようとしている。
開催期間 2016 年 5 月 16 日~ 17 日
ただし、CDV の段階でも IVIC 対象機種や IVIC 取得
開催地
アーリントン(米国)
が義務か任意か、さらには銘板等で IVIC の記載が省略さ
出席者
12 カ国 26 名
れている場合の解釈等が不明確な記述になっており、この
まま成立すると国内メーカのみならず、ユーザにも混乱を与
える恐れが高いことから、IVIC 関連の記述を明確にするこ
とを目的に WG12 に参加した。
【背景・目的】
IEC/TC2/WG28 および WG31 は、インバータで駆動
する可変速駆動モータの効率算定方法(IEC 60034-2-3)
【成 果】
IVIC に関する記述の明確化:IEC 60034-18-41 の内
◇株式会社 安川電機 品質保証部 信頼性技術センタ
34 電 機 2016・August
および 効 率クラス
(IEC/TS 60034-30-2)を 審 議してい
る。一定速度で駆動する誘導電動機と異なり、可変速駆
動モータの算定方法および効率クラスは、インバータの
◇ 富士電機株式会社 技術開発本部 パワエレ技術開発センター
SiC 応用プロジェクト部
PWM(パルス幅変調)の矩形波電圧を考慮した算定方
合し、4kHz(90kW 超は 2kHz)とすることを提案
法、矩形波電圧により発生する高調波損失を考慮した効
し受け入れられた。インバータとモータのそれぞれ
率クラスとなるため、各国からモータのみならずインバー
の効率算定を同じ試験で実施でき、試験工数低減が
タに関係するエキスパートが多く参加し、活発な審議が
可能になった。
行われている。一般社団法人 日本電機工業会では、イン
バータ単体、およびインバータとモータを組み合わせた
PDS(可変速駆動システム)の効率規格の策定に参加し
ており、海外に対して簡便な効率算定方法を提案し、国
3.2 IEC 60034-30-2 から除外されるモータの効率
算定
上記 IEC 規格から除外されるサーボモータ等は、
内メーカ合同で実施した試験結果を示すことにより各国
インバータとモータを組み合わせて IEC 61800-9-2
からの理解を得てきた。今回は、モータに関しても日本
に基づいて評価できるという補足説明を追加するこ
提案方式の継続的な理解を得ること、審議文書に対して
とを提案し受け入れられた。規格の対象範囲があい
提出した日本コメントの反映を目的として出席した。また、
まいなところを明確にし補足説明しており、日本メー
会議直前にドイツから効率クラスの大幅な変更が提案さ
カにとって規格の理解が深まり、規格対応が容易に
れており、日本にとっては混乱を招く恐れがあるとして、
なるメリットがある。
各国と連携してドイツ提案を却下することも目指した。
3.3 ケーブルの要件
【成 果】
1.ドイツ提案に対する取組み
モータ効率算定に用いるケーブルについて IEC
61800-9-2 と整合し、15m 以上の長さとすることを
提案したが、各国からケーブル長については従来通
ドイツ工業会を中心に、従来議論されていた IE1 ~
り 100m 以内として自由度を持たせたいという意見
IE5 のクラス分けを変更し、PDS の IES1 ~ 2 を基本と
があり、反映はされなかった。ただし、15m での試
して、モータのクラス分けを行う案が会議直前に提案さ
験も可能であり、当初の目的であるインバータとモー
れた。日本としては、正式に審議文書に対するコメント
タのそれぞれの効率算定を同じ試験で実施できるこ
ではなく IEC の手順に従っていないこと、5 つのクラスが
とは確認できた。
2 つのクラスに減少するため影響が大きく、精査が必要
であることなどから反対を表明した。各国のエキスパート
からも同様の意見があり、ドイツ提案は却下された。
【今後の展開】
IEC 60034-2-3 および IEC 60034-30-2 は、今回の審
2.日本の効率算定方法
議を踏まえてそれぞれ、CD(委員会原案)
、DTS(技術
日本から提案している効率算定方法については、今回
仕様書原案)を作成し、2017 年の正式発行を目指して
特に各国から反対はなく、継続的に審議文書に反映され
いる。今後とも各国と協調しながら日本意見の反映を行
ることになった。ただし、今後反対の意見も出る可能性
い、日本メーカの国際競争力の強化を実現するため継続
があり、継続的な取組みが必要である。
的な会議参加が必要である。
3.日本コメントの反映
日本から 9 件のコメントを提出し、ほぼ受け入れられ
た。主な内容を以下に示す。
3.1 スイッチング周波数
モータの効率算定に用いるインバータのスイッチ
ング周波数を PDS の効率規格 IEC 61800-9-2 と整
会議風景
[業界報告] 35
業界報告
IEC/TC2/MT10
吉満氏(東芝三菱電機産業システム)が説明した。
グルノーブル(フランス)会議
放電評価法」IEC60034-27-5 の規格化を日本から提案し
(回転機巻線の絶縁評価試験規格の改訂)
-41、-42 に対応する「繰り返しインパルス電圧の部分
賛成多数となったので、1 回目の会議を木村(筆者)の
電動機の絶縁に関する検討 WG 特別委員
木村 健
司会で開催した。
◇
【概 要】
開催会議 IEC/TC2/MT10
開催期間 2016 年 5 月 25 日~ 27 日
【成果および課題】
1.IEC 60034-27-1(オフライン部分放電測定)
および 4(絶縁抵抗測定)を審議した。
2.IEC 60034-27-5(インパルス電圧下の回転機の部
開催地
グルノーブル(フランス)
分放電計測法)の新規規格提案(NP)の投票結
出席者
11 カ国、約 30 名(日本より 4 名)
果を報告し、作成方針の概念について全員で審議
し、次の方針を決めた。
【背景・目的】
モータの高効率運用のためインバータ駆動システム
(1)IEC 60034-18-41 および 42 における実質的な
部分放電試験法に限定して記述する。
(2)独立した規格(stand alone)の提案があったが、
(PDS)が普及している。インバータ電源からサージ電
-41、-42 との重複が多過ぎるため、コンパクト
圧がモータに侵入すると、モータの絶縁システムの信頼
な内容とする。IEC 61934 と重複する箇所は回
性に支障をきたす可能性がある。これに対し IEC/TC2/
転機対応に限定して作成するとともに、回転機
MT10 ではインバータ駆動モータ絶縁の性能に認証評
特有の試験手順や結果の解釈などを新たに作成
価(qualification)として、部分放電の許容の有無で絶
する。
縁タイプを 2 つに分類し、それぞれの性能評価規格案
IEC60034-18-41 および IEC 60034-18-42 を審議してき
た(以下では -41、-42 と略す)
。
(3)次回米国会議までに、関連情報の収集と委員会
原案のアウトラインを作成する。
3.IEC 60034-18-41 追補
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)では TC2 国内
-41 に新たな耐電圧試験の電圧値表を入れる修正
委員会から審議協力依頼を受け、誘導機技術専門委員会
案に対し、日本から数値を修正するよう提案し技術
傘下の「電動機の絶縁に関する検討 WG」において、モー
的説得を行った。直前の JEMA 会員各社間の調整
タ絶縁の国内専門家で上記規格案を審議してきた。今回
を経て臨んだが、主査・プロジェクトリーダーとの議
の MT10 会議のインバータ駆動モータ関連審議には WG
論が平行線をたどり、結論は会議後も継続する形と
メンバーの中から 4 名が参加し、以下の活動を分担した。
なった。
-41 は既に 2014 年に発行済であるが、IVIC に基づく
4.IEC 60034-18-42(耐部分放電絶縁)CDV へのコメ
耐電圧試験の電圧値表を追加する追補(Amendment)
ント審議
が本年正式に提案された。IS(国際規格)に従来以上の
日本コメントの大半は受け入れられ、今後 FDIS 化
試験電圧値が明記されると、特に小形量産モータでは試
の予定である。
験コスト等に不利益が予想されるため、各社間で意見調
整してきた。最終的に武藤氏と岡田氏(共に三菱電機)
が出席し、日本意見を主張することになった。
-42 の CDV は 2015 年に回覧されており、国内意見を
【今後の予定】
今回の審議の結果、年内には -41 追補 . と -42 の FDIS
化・27-1 の CDV 化・27-4 の CDV/FDIS 化・27-5 の
◇奈良工業高等専門学校
36 電 機 2016・August
CD 化が進む見込みで、新たな MT10 の審議規格案とし
て 27-2(オンライン交流 PD 測定)や IEC 60034-18-32
般社団法人 日本電機工業会は、IEC/SC17C TF を設置
の見直し、27-6(オンラインサージ PD 測定)の新規作
しており、筆者は MT19 のエキスパートメンバーである
成などが候補に挙がった。
ことから、2015 年 10 月 29 日に開催されたエルランゲン
次回は、2016 年 10 月 24 日から 26 日に米国・ワシン
(ドイツ)での審議に引き続き出席した。今回の MT19 は
トン D.C. で開催予定、2017 年は 6 月欧州、秋は中国・
初回 CD(Committee Draft、委員会原案)作成のため、
上海が候補である。
審議が行われた。
最後に今回の出張に対し、多大なご配慮とご指導をい
ただきました JEMA および電動機の絶縁に関する検討
WG に関係する皆さま方に深く感謝申し上げます。
【目 的】
本会議では、IEC/TS 62271-304 * 1 初回 CD に伴い、
以下主要な議題について議論することとなった。
1.湿度および汚損に関する階級の具体化
(TF1 Service Condition ※ 筆者担当グループ)
2.試験要領書の作成(TF2 Test Procedure)
本会議の場で各国意見を収集し、各エキスパートメン
バーが賛成であれば規格に反映されるため、規格として
会議風景
の完成度を高めると同時に日本側に有利な記述と必要性
を主張する。また他国の意見を情報収集し、国内盤メー
IEC/SC17C/MT19
(高圧スイッチギヤの過酷な条件におけ
る階級)フランクフルト(ドイツ)会議
IEC/SC17C TF 委員
IEC/SC17C/MT19 エキスパート
桑水流
宝
◇
カのグローバル市場での競争力の向上につなげる。
* 1 High-voltage switchgear and controlgear - Part 304: Design classes for
indoor enclosed switchgear and controlgear for rated voltages above 1
kV up to and includuing 52 kV to be used in severe climatic conditions.
【成 果】
会議の場で湿度と汚損に対する階級を明確化するため
【概 要】
に IEC/TS 60815-1*2 、IEC 60721-3-3 * 3 を呼び合うこと
で定義することができた。これにより、がいしなどの他の
開催会議 IEC/SC17C/MT19
機器・規格と整合の取れた階級となるため、非常に意義
開催期間 2016 年 6 月 14 日~ 16 日
があった。また各国意見で規格内のあいまいな表現は各
開催地
フランクフルト(ドイツ)
メーカのとらえ方に差異が生じるため、具体化することに
出席者
5 カ国 9 名
より完成度の高い規格作成に貢献した。審議の中心になっ
た内容は以下の通り。
【背 景】
IEC/SC17C/MT19 は、1kV-52kV スイッチギヤの過酷
な条件における階級の IEC 規格開発を担当している。一
◇三菱電機株式会社 受配電システム製作所
海外エンジニアリングセンター 海外受配電システム 技術課
* 2 Selection and dimensioning of high-voltage insulators intended for use
in polluted conditions - Part 1: Definitions、information and general
principles
* 3 Classification of environmental conditions Part 3: Classification of
groups of environmental parameters and their severities Section 3:
Stationary use at weatherprotected locations
[業界報告] 37
業界報告
わせて定義する。今回の改正内容を次に示す。
〈湿度および汚損の定量的な明確化〉
湿度:機器に関する言及をしているため、試験室の結露
の頻度について C O、C L および C H と定義し、各
改正前 Class 0:C O P L ⇒
改正後 Class 0:C O P O
C に対する階級を以下のとおり記述することとした。
改正前 Class 1:C L P L or C O P H ⇒
C O Condensation does not normally occur
改正後 Class 1:C L P O
C L Non-frequent condensation
C H Frequent condensation
改正前 Class 2:C L P H or C H P L or C H P H ⇒
改定後 Class 2:C H P O
汚損:P L および P H のみ言及されていたため、P O、P L お
よび P H と区別し、各 P に対する階級を以下に記
ここで汚損に関して試験室内の汚損度が P L、P H の場
述し、表 1 に基づいて定義した(IEC 62271-304
合、メンテナンスする作業者がマスクや保護メガネを身
1st CD より抜粋)
。また IEC 60721-3-3 で主な汚
に付ける必要があるため、試験室内の汚損度が P L、P H
損物質の程度を示すことで各階級を区別すること
になった場合は P O まで下げることで一致した。表 2 に
とした。
試験室内の汚損度を下げる対策の各チェック項目を示す
(IEC/TS 62271-304 1st CD 案より抜粋)
。
P O Very light pollution
表 2 Precautions for operating room
P L Light pollution
PO
PL
PH
Without significant
pollution or with pollution control which
may be switched off for
periods. The building or
other housing construction provides adapted
protection from outside
pollution
Pollution not controlled
and the building or other
housing construction is
exposed to ambient air
in rural and some urban
areas with industrial
activities or with moderate traffic.
Rooms without pollution
control. The building
or other housing
construction is exposed
to polluted ambient air.
IEC 60721-3-3
Chemically active
classification
Air filtering
x
“Very light”
3C1L
Sealing of entrances
(Cellar, cable vault...)
x
x
Thermal insulation
Avoid the air flow through the
switchgear
3C1
3C2
Heavy
3C3
Very heavy
3C4
スイッチギヤ筐体の階級:
スイッチギヤの環境の階級は、湿度と汚損とを組み合
x
x
x
x
x
Transformer installed in
dedicated compartment
x
Avoid fans
x
Canopy or double roof
(ceiling + roof)
Medium
x
x
x
Clearance between switchgear
and walls
“Light”
x
x
Air conditioning
(moisture & temperature)
* 4 site pollution severity
38 電 機 2016・August
Draining system
Humidity
IEC 60815-1
SPS * 4
severity classes
Temperature
variation
Pollution Building or other houslevel
ing exposed to pollution
Precautions for operating room
Pollution
表 1 Example of typical environment
Condensation
To reduce
P H Heavy pollution
x
x
Adapt the opening area to the
power losses
x
Adapt the opening area to the
application(wind farm...)
x
Improve the degree of protection at least IP34
x
Avoid ventilation orientated to
the pollution source
x
x
x
Maintain a minimal air flow
x
Heating to maintain a stable
temperature
x
x
x
【今後のアクション】
current operated protective device
IEC61008-1: Residual current operated circuitbreakers without integral overcurrent
次回審議は 2016 年 11 月にスペインのビルバオにて開
催予定。初回 CD を発行し、各国よりコメント受領した
protection for household and similar
後に招集し、各国意見に対して審議する。
uses(RCCBs)- Part 1:General
rules
【所 感】
IEC61009-1: Residual current operated circuitbreakers with integral overcurrent
protection for household and similar
本審議会に参画することで、研究所の考え方と客先仕
様を対応しているエンジニアとの間で意見の食い違いが
uses(RCBOs)- Part 1:General
あることがわかった。また海外盤メーカとの友好関係を深
rules
めることで日本側の悩み等を真摯に受け入れて、規格に
IEC62020:
Residual current monitors for
household and similar uses(RCMs)
反映しようとする姿勢もみられた。今後も本審議だけで
IEC62606:
なく他の WG への積極的な参加に努めていく。
General requirements for arc fault
detection devices
対応 JIS:
IEC/SC23E/WG1, WG2
(小形配線用遮断器、漏電遮断器)
ミラノ(イタリア)会議
JISC8211:住宅及び類似設備用配線用遮断器
JISC8221:住宅及び類似設備用漏電遮断器―過電流
SC23E 国内対応委員会
山口 健二
◇
【概 要】
他
保護装置なし(RCCBs)
JISC8222:住宅及び類似設備用漏電遮断器―過電流
保護装置付き(RCBOs)
背景(全般)
:
輸出品は IEC 規格適合、国内品は JIS 規格適合。
開催会議 IEC/SC23E/WG1, WG2
IEC 規格の変更は、JIS の規定・製品設計に影響する。
開催期間 2016 年 5 月 10 日~ 12 日(WG2)
IEC 規格の動向把握と、IEC 規格への一般社団法人
5 月 12 日~ 13 日(WG1)
開催地
ミラノ(イタリア)
出席者
15 カ国 25 名
日本電機工業会の意見に対するフォローを行う。
審議アイテム:
〈WG1〉
1.直流専用遮断器関連(直流専用配線用遮断器)
【背景など】
〈WG2〉
1.漏電保護装置の Group Safety Publication、2.直
製品:‌小形配線用遮断器、漏電遮断器
流漏電保護装置、3.その他(アーク故障検出装置
〈AFDD〉
、定常過電圧保護装置〈POP〉
、漏電モニター
IEC 規格:
〈RCM〉
、自動再投入漏電遮断器〈ARD〉
、自己診断機
〈WG1〉
IEC60898 シリーズ:‌Circuit breakers and similar
能)
equipment for household use
〈WG2〉
IEC/TR60755:General requirements for residual
【成 果】
今回、次の通り、関連規格の改正審議に参加するとと
◇パナソニック株式会社 エコソリューションズ社
もに、意見提出、情報入手を行った。
[業界報告] 39
業界報告
〈WG1〉
1.直流専用遮断器関連(直流専用配線用遮断器)
載があることで、現状のままとなった。
(3)日本提案として、改正案では、4 極の RCD に対し
委員会規格原案(23E/927/CD)として発行されて
中性極と電圧極のみに電圧を印加しての漏電動作
いる IEC60898-3(家庭用及び類似用途の直流専用配
試験が要求されていたが、これは 2 つの故障が同
線用遮断器)に対して提出された各国コメントに関して
時に発生している状態であることを申し入れ、単
議論された。
一故障での試験への修正提案が認められた。
(1)電圧相の極性の明確化(正極/負極の別)
、中間
極の仕様が議論された。
(2)今回の直流遮断器の瞬時引き外し電流領域の電流
これらを含むコメントへの検討内容を盛り込んだ上
で、CDV(投票用委員会原案)ステージに移行するこ
ととした。
に関して、交流用配線用遮断器の IEC60898-1 に
合わせ、タイプ B は定格電流の 3 ~ 5 倍、タイプ
2.直流漏電保護装置の検討
C の 5 ~ 10 倍としている。これに対し交流 / 直流
直流配電用の DC-RCD(漏電遮断器)の技術仕様
両用の IEC60898-2 の直流定格がタイプ B は 4 ~
書(TS: Technical Specification)が、新規検討提案
7 倍、タイプ C は 7 ~ 15 倍となっていることによ
(NP)として発行され、これに対する各国コメントを逐
る不整合に関する検討があったが、現行製品のこ
条検討した。要点を以下のとおり抜粋する。
とを考慮して、現状維持となった。
(3) 試 験 条 件 とし て の 時 定 数 は、 先 行 し て い る
(1)Type B(IΔn =30mA)とDC-RCD(IΔn =
85mA)の定格感度電流と動作時間の違いをなく
IEC60947-2(産業用遮断器)との整合も踏まえて、
し、DC-RCD のタイプ DC に合わせるべきでは、
次ステップでも検討することとなった。
と日本から提案した。
今回すべての技術課題が解決できなかったことを踏
まえ、今回の検討内容を盛り込んだ改正案を再度 CD
(委員会原案)として発行することとなった。
〈WG2〉
0.3 s
0.15s
0.04s
B
(IΔn = 30mA)
2IΔn
(60mA)
4IΔn
(120mA)
10IΔn
(300mA)
DC
(IΔn = 85mA)
IΔn
(85mA)
2IΔn
(170mA)
3IΔn
(255mA)
1.漏電保護装置の Group Safety Publication
現在の IEC/TR60755 を漏電保護装置のグループ・
タイプ B の直流漏電の値はタイプ A や AC の特
セーフティ・パブリケーション(略称 GSP:共通安全要
性を引用して決定されたものであり、時延動作の
求規格)として規格化するにあたり、委員会規格原案
倍率(2 倍、5 倍)から算出されたもの、一方タ
(23E/928/CD)が発行された。これに対する各国意見
イプ DC は心室細動電流から規定された値になっ
を検討した。要点は以下のとおりである。
ている。日本提案に対し、タイプ DC は感度電流
(1)
「Standard Value(標準値=必須)
」と「Preferred
85mA を前提にした上で、安全領域に入るための
value(推奨値=参照)
」の使い分けが不適切であ
倍数として 3 倍が決められているが、タイプ B の
るとの指摘に対し、GSP という位置付けと、製品
製品は既に市場にあることを考慮して、変更は困
規格や漏電保護機能を内蔵した他製品への引用を
難との観点から否決された。
考慮して、全体的に表現を再考することとなった。
(2)本来 DC-RCD は純直流電路での使用を意図して
(2)日本提案として、漏電動作試験の CO 試験(漏電
いるので、純直流漏電のみカバーし、他の電流波
状態を設定した状態で遮断器を投入し、動作時間
形が重畳した漏電に対する特性は記載しないこと
を測る)が AC タイプ漏電保護装置のみに適用さ
となった。
れているように読める表現を修正するように求めた
(3)
「Breaking time が 0.04s で Overall disconnection
が、すべての漏電保護装置は、前提として AC タ
time(arc extinction を 含 む ) が 0.4s を 超 えな
イプの要求は満足していることとなっているとの記
い高 電 流(1A ~ 100A)の直 流 漏 電 動 作 電 流
40 電 機 2016・August
での遮断時間(break time)と非投入時間(non-
の各国コメントに対しての逐条検討が行われた。
actuating time)
」を記述することとなった。日本
この規格は欧州で発行されているEN50557 がベー
としては Breaking time と Overall disconnection
スになっている。今回の検討結果を含めて、CDV
time の定義の差を明確にする必要があると考える。
を発行することとなった。
(4)DC-RCD の最低動作電圧である「60V」という値
3.5 RCD の信頼性に関する試験
に対し、その根拠についての検討があった。IEC
長期使用された漏電遮断器における検出回路の
61140 の「5.2.6 Limitation of voltage」 に あ る
故障の危険に対して北米規格の UL934 にある自
「25 V a.c. r.m.s. or 60 V ripple-free d.c. 以下」か
己診断機能(Self-Testing End-of-Life(STEOL)
らきているということに対し、再度国内委員会に検
function)を規格化する提案が米国から出された。
討を求めることとなった。
今回の検討を含めて CD を発行することとなったが、
欧州各国は実フィールドでの劣化していく条件
を定義することが困難なことと、UL 規格の内容は
最低動作電圧を含めて、一部メンバーで検討したもの
電磁式の漏電遮断器には対応不可能なことと等を
を各国内委員会に意見照会することとした。
理由に反対していたが、試験条件の定義や信頼性
に対する別の手段がないかを含めて、次回以降も
3.その他
検討することとなった。
3.1 アーク故 障 検出 装 置(Arc-fault Detection
Device:AFDD)
現 在 制 定 さ れ て い る AFDD の 規 格 で あ る
IEC62606 が単相配線用であるのに対し、3 極と 4
極のものを追加する改正提案(23E/915/CDV)に
対する各国コメントを検討した。その内容を含め
て最終国際規格案
(FDIS)
を発行することとなった。
3.2 定常過電圧保護装置(Permanent Overvoltage Protective Device:POP)
三相 4 線式の回路において、中性相の欠相時の
負荷のアンバランス、誤結線等による定常的な過
【今後のアクション】
〈WG1〉
・直流専用遮断器の規格化
規格発行まで審議参加し、フォローを行う。IEC
化に際しては、JIS 化を図る。
〈WG2〉
・漏電保護装置の Group Safety Publication、直流漏
電保護装置およびその他
引き続きフォローする。JIS 化の際には検討する。
電圧を検出し保護する装置(POP)の新規規格提
案(23E/924/NP)への各国コメントが検討され
日本では、成熟製品であることもあり、なかなか新しい
た。この規格は欧州で発行されている EN50550
標準化アイテムとして取り上げられることが少ない分野で
がベースになっている。この内容を含めて、CD を
あるが、欧米では活発な新規標準化が進められ、積極的
発行することとなった。
に IEC 提案されてきている。今後も直流給電や自己診断
3.3 漏電モニター(Residual Current Monitor:
機能等に注視しておく必要がある。
RCM)
現 在 制 定 さ れ て い る RCM の 規 格 で あ る
IEC62020 に対し、タイプ F(高周波漏電検出機
能付)とタイプ B(直流漏電検出機能付)の特性
を追加する追補版の主査案の提示があり、Ad-hoc
グループを作って検討して、委員会原案(CD)
を発行することとなった。
3.4 自動再投入漏電遮断器(ARD)
先に発行されている委員会原案(23E/929/CD)
会議風景
[業界報告] 41
業界報告
IEC/TC61(家庭用電気機器の安全性)
メキシコシティー(メキシコ)会議
第 59/61/116 小委員会 WG1
氏田 良太
◇
FDIS(最終国際規格案)に追加されたが、接続
手段がフレキシブルコードに限定されていた。しか
し、電源ユニット上の接点を介して充電するヘアカッ
ターや、無接点充電式の電動歯ブラシ等の構造も存
在する。充電池で駆動する機器の解釈に影響するの
で、日本は、これらの構造も定義に反映すべき旨の
意見を付けて FDIS に反対投票した。通則第 5.2 版
【概 要】
開催会議 IEC/TC61
開催期間 2016 年 5 月 16 日~ 20 日
開催地
メキシコシティー(メキシコ)
出席者
22 カ国、67 名
は 5 月 10 日に正式発行されたが、メキシコシティー
会議では、正誤表を発行することになり、日本の意
見を反映した注記(NOTE)を追加することになった。
1.2 遠隔通信に関する提案(61/5073/DC)
TC61 傘下の MT23
(Maintenance Team 23)
は1
月に、遠隔通信の要求を追加する提案書を TC61 に
提出した。この提案は、悪意を持つハッキング、サ
【背景・目的】
IEC/TC61 は、主に家電機器(いわゆる白物)の安
イバー攻撃を想定するもので、機器の遠隔操作だけ
ではなく、機器との通信全般を対象としており、通
信の信頼性だけではなく、暗号化の要求、機器のソ
全規格である IEC 60335-1(通則)
、IEC 60335-2-2- ~
フトウェアのダウンロードに関する要求が含まれている。
111(個別規格)
、IEC 61770(主給水管に接続する電気
日本はこれに対し主に次の意見を提出した。①サ
機器)
、IEC 62115(電気おもちゃ)を担当する(一部規
イバー攻撃は国家の関連法令で規制すべきである、
格は SC が担当、TC61 は 60 余りの規格を担当)
。会議
②一般機能にかかわる通信全般ではなく安全にかか
は年 2 回開催されている。
わる遠隔操作の通信に限定する、③現行どおり、危
IEC 60335 シリーズは、各国で強制の国家規格として
採用されている。日本ではこの規格をベースにした JIS
を整備し、電気用品安全法の整合規格に採用する活動が
進められている。
なお、今回の会議から、イタリアのガルガンティーニ
氏が新議長として議事を進行した。
【主な審議内容】
ここでは、特に日本メーカに関連する内容を抜粋して
紹介する。
険を生ぜずに連続的、自動的または遠隔的に操作可
能な機器は除外する。
各国から約 130 の意見が提出された。メキシコシ
ティー会議ではこの提案はまだ完成度が低いと判断
され、MT23 が再検討を行い、修正提案を 1 年後の
TC61 の会議で審議することになった。
2.IEC 60335-2-7(洗濯機)
2.1 洗濯機の転倒性に関する提案(61/5088/DC)
開いたドアに対し下方に 150N の荷重を加えたと
きに、機器が転倒せず、破損しないことを要求する
提案である(使用者がドアに手を掛けて寄りかかる
1.IEC 60335-1(通則)
1.1 FDIS(61/5116A/FDIS)の正誤表(Corrigendum)に関する審議
場合を想定していると推察)
。
日本は次の意見を提出した。①要求事項を 22 項
(構造一般)から 20 項(安定性と機械的危険)に移
出力がクラスⅢ構造に接続される “着脱可能な
す、②横置きドラムの洗濯機に限定する、③荷重を
電源ユニット” を定義する項が、事務局の判断で
加える時間の条件を削除する、④判定基準を転倒性
に限定する。審議の結果、これらの日本意見は受け
◇パナソニック株式会社 品質・環境本部
42 電 機 2016・August
入れられた。
3.IEC 60335-2-6(設置形調理器)
3.1 ランプ の 光 生 物 学 的 安 全 性 に 関 する 提 案
(61/5076/DC)
調理器のランプに対し、IEC 62471 に基づき、目
TC61 に提出される意見・提案の多くは欧州からのもの
であり、アジアの国々の活動が、以前より低調になって
いるように見受けられる。今後、アジア諸国と連携する
活動の強化が課題である。
や皮膚の障害防止のため、紫外線、近紫外線、網膜
の熱傷害、赤外線および青色光に対して限度値を設
ける提案である。
日本は次を含む 6 件の意見を提出した。①赤外線
を放射するヒータランプはリスクが低いので除外す
る(ヒータランプが広く使用されていることを説明す
る文書を追加で提出)
、②一般の白熱ランプ、蛍光ラ
ンプは適合しているとみなし、測定試験を不要とする。
集合写真
審議の結果、この提案は否決されたが、WG を設
置して、設置形調理器とレンジフードの LED ランプ
のみを対象とする提案書を作成することになった。
4.WG31 からの報告
メキシコシティー会議では TC61 傘下の各 WG から活
IEC/TC72/WG(自動制御装置)
コペンハーゲン(デンマーク)会議
動報告があった。その中で、電池を担当する WG31 から、
第 72 小委員会委員長
電池駆動機器および電池パックに関する要求を一つの附
田伏 弘幸
◇
属書に集約した提案書を作成したことが報告された。す
でに、その DC(コメント用審議文書)が回状されてお
り、今後、詳細に検討し日本の意見を反映することが必
要である。
【概 要】
開催会議 IEC/TC72/WG1, WG6, WG8, WG9, WG12
5.定格入力・定格電流に関するガイダンス文書
近年、電子制御により入力や電流が変動する機器が増
開催日
開催場所 デンマーク規格協会
加しているが、製品に表示する定格入力・定格電流の値
を算出する方法が明確でなかった。そのためガイダンス
2016 年 4 月 4 日~ 8 日
(コペンハーゲン、デンマーク)
出席者
9 力国(米国、英国、イタリア、オランダ、
文書を発行することになり、各国内委員会は IECEE の
カナダ、スイス、デンマーク、ドイツ、日本)
、
試験所委員会(CTL)の TC61 リエゾンである佐藤氏
22 名
(IECEE/CTL/ETF1 主査)に意見を提出することになっ
た。今後、CTL が文書を CTL Decision(規格の解釈集)
の形で作成し、TC61 で審議する予定である。
【背景・目的】
IEC/TC72(以下、TC72)は、通常、年 2 回、春に
【今後の課題】
従来、アジアからは、日本、中国(毎回ではないが)
、
タイ、インドネシア、マレーシア、韓国、インドが TC61
WG(作業部会)
、秋に総会と WG が開催されている。
今回は、コペンハーゲンで WG のみが開催された。
IEC/TC72 は審議対象品目が、電気自動制御装置で
ある。家庭用、業務用、工業用の制御装置の安全につい
の会議に出席していたが、今回のメキシコシティー会議
では日本と中国だけが出席した。
◇一般財団法人 日本ガス機器検査協会 検査認証事業部技術グループ
[業界報告] 43
業界報告
て、規格を開発している。そのため、製品規格、例えば、
直切り接点をどれと認定するか明確にすべきとの
IEC 規格分野の電気製品、燃料電池にとどまらず、ISO
提案もあった。
規格分野の、特に湯沸器や暖房装置、ボイラーや工業用
燃焼炉などの燃焼装置の安全装置を有する機器などの多
方面から安全に関連する要求事項が引用されている。特
2.WG6(温度および圧力検出制御装置)
2.1 IEC 60730-2-11(エネルギレギュレータ)
に、ハードウェアおよびソフトウェアおよびその組み合わ
シュベンデマン議長から、ISO/TC161(ガス・油
せにより、故障したり、誤動作したときでも、どういう要
燃焼装置用安全および防護器)や IEC/TC105(燃
件を満たせば、安全設計を行っていると受け入れられる
料電池)で活用されている地域附属書を IEC/TC72
かを明確に規定している規格群を開発していることに特
でも採用したらどうかとの提案があり、全員一致で
徴がある。
賛成となり、FDIS 直前の WG6 の規格案に対し、各
地域、各国から提案するよう要請があった。
【主な成果および審議結果】
1.WG1(バーナ制御装置)
2.2 有電圧過熱遮断器
主査からコンセプト提案があり、メカ式制御装置
についてもタイプ 2 防護器であり、クラス B 制御機
IEC 60730-2-5(バーナ制御システム)
:IEC60730-1
能と位置付けてよいかとの照会があった。アプリケー
第 5 版に整合するための改訂第 4.2 版追補 1 を検討した。
ションにより、確保すべき安全レベルが異なるはず
FDIS は 2016 年秋の会議後とされた。
との指摘があり、製品規格でリスクアセスメントが重
(1)遠隔リセットの要求事項について検討を開始する
要であると指摘があり、応答時間が長いため問題と
とした。遠隔リセット装置は、すでに市場に存在
なる事例もあったとの報告があった。具体的提案は、
するが、制御機能クラス B を満足しないという課
主査が検討することとなった。
題が、主査より紹介された。日本からは、厚生労
働省管轄のボイラーにおいては、所定の条件をク
リアしない限り禁止されていると説明した。
(2)米国から、
「de-energize」の定義を明確にするべ
2.3 IEC 60730-2-9(温度検知制御装置)の附属書
EE(72/1027/DC)
英国から、IEC 60335 の電気製品用の制御器の参
考とするための提案であると説明された。
きとの提案があった。工業用まで適用範囲が広が
り、2 カ所の接点で電源を遮断するのが基本であ
るが、風圧 SW のように、時間遅れがある接点も
あり、物理的に電源を直切りできない場合もあると
課題が提起された。
3.WG8(一般要求事項)
WG8 は WG10 を吸 収して IEC 60730-1 Ed. 5.2 の
追補版の検討を行った。
(1)IEC 60730-1(自動制御装置の安全性)の附属
また 、工業用では制御装置を個別に組み合わ
書 H(電子制御装置の要求事項)で、IEC 61508
せるが、バーナ制御システムの範囲を、プログラ
(機能安全)の概念を取り入れ、全般的に見直す
マのみでなく、システムとしてより広くとらえて、
ことが決定しているが、複雑になったという附属書
開催場所のデンマーク規格協会
44 電 機 2016・August
会議風景
H を本文に移動するか、一つの規格にするかなど
2.TC72 規格群は、日本国内でも電気用品安全法の改正
の検討が行われる。
に伴い、性能規定化が進むことで IEC 規格の改正が
(2)ヒューズ溶断試験(H.27.1.1.2、H.27.1.1.3 項)
国内規格にも直接影響を与えるため、重要性がますま
米国から、本試験を実施する際の、電源の違い
す増している。日本に不利にならない規定の提案を行
により試験結果が異なるという課題を解決すべき
うように努めたい。
との提案があった。電子電源や、電源容量の小さ
い電源を使用すると、試験結果が異なるとのこと。
(3)プリント基板のコーティング(109/138e/CDV:
IEC/TC82(太陽光発電システム)
/
WG2(非集光型モジュール)
台北(台湾)会議
IEC 60664-3 Ed.3)
多層基板のコーティングに関するものでタイプ 1
と 2 のコーティングがある。秋の会議で審議する
が、各国の試験機関の意見を歓迎するとされた。
太陽光発電セル・モジュール分科会 委員
石原
4.WG9(電気式アクチュエータ)
隆
◇1
田中 和文
◇2
(1)IEC 60730-2-17(ガス弁)
、IEC 60730-2-19(油
弁)に関連する ISO/TC161 規格
ISO 規格で、IEC の CB スキームの制度を使用
する形で、CB スキームを活用できる仕組みづくり
【概 要】
を行いたい旨を TC72 事務局から、IEC 中央事務
開催会議 IEC/TC82/WG2
局に打診した結果について報告があった。
開催期間 2016 年 5 月 16 日~ 20 日
(2)シュベンデマン議長は、ISO/TC161/WG3(制御
開催地
台北(台湾)
器)にも参加して、ISO と IEC の枠組みを超えて
14 カ国・地域より約 100 名が参加
協力すると約束した。TC72 は、燃焼機器のみの
出席者
石原隆(三菱電機)
、田中和文(京セラ)
、
規格ではないが、ISO/TC161 から要請があれば
内田泰 徳(電気安全 環 境研究所〈JET〉
)
、
燃焼機器専用の要求事項を作成するとした。
内田聡(東京大学)
、他 日本から 22 名
5.WG12(新設のセンサ)
第 1 回の WG12 が開催され、今後の進め方について、
米国のドラキュラ主査が、ブレーンストーミングで運営
【背景・目的】
IEC(国際電気標準会議)の TC82 は、太陽光発電の
方法に関する議論を行った。WG6 は検知制御装置だが、
国際標準化を審議する最上位の委員会であり、ここで審
規格の重複を避けることを確認した。
議される太陽光発電システムにかかわる国際標準は、日
本の国内規格の基準になるとともに、日本メーカにとって
6.今後の会議開催予定
2016 年 10 月 10 日~ 13 日に、WG および総会がフラ
ンクフルト(ドイツ)で開催される。
もその競争力強化や事業拡大に向けたビジネスプラン構
築の重要なツールとなる。特に、非集光型モジュールは
太陽光発電システムの基本として現在の市場の大多数を
占めており、一般社団法人 日本電機工業会は TC82 委員
【今後の課題】
会の日本 NC の立場から太陽光発電に関する国際標準の
審議の場で日本側の規格提案や意見反映を行うとともに、
1.IEC 60730-1 の附属書 H の再構成が今後始まるが、
IEC 61508 の機能安全の導入を含め、他の TC から
も使える規格にしたいとの議長発言があった。
◇ 1 三菱電機株式会社 中津川製作所 太陽光発電システム部
京都品質管理課
◇ 2 京セラ株式会社 三重伊勢工場 ソーラーエネルギー品質保証部
[業界報告] 45
業界報告
標準化に関する最新情報を入手することは、国内規格立
イスの IV 測定、ソーラシミュレータ要求事項の審議
案の円滑化とともに国内の普及拡大に資する標準化戦略
を進めた。
の立案のためにも極めて重要である。
今回は、以下 6 項目を中心に審議・提案することを目
3.IEC62892 シリーズ、IEC62788 シリーズ
従来議論されてきた 6-Box やシーケンスは削除し
的に会議に出席した。
て各気候対応でサブ規格を作っていく方針を確認し、
1.IEC62979(バイパスダイオードの熱暴走試験)制定
根拠となる実験データの蓄積を継続して行うことと
の進捗報告と審議
2.IEC61215 シリーズ(モジュール試験)への修正提
案、および IEC60904 シリーズ(セル 特 性 評 価 )
、
IEC61730 シリーズ(安全性)への日本意見提案
3.IEC62892 シ リー ズ( モ ジ ュ ー ル 耐 候 性 試 験 )
、
IEC62788 シリーズ(樹脂系材料の信頼性試験)への
日本意見提案
なった。
4.IEC61853 シリーズ、高温域でのモジュール評価に対
する日本意見提案
温度試験で得られた最高温度を用いて試験条件を
設定すること、定格出力測定に高温ポイントを追加す
ること等を今後議論することとなった。
5.有機太陽電池に関する新規提案
4.IEC61853 シリーズ(発電量評価)
、高温域でのモ
内田氏(東京大学)が有機太陽電池デバイスの測
ジュール評価(新規提案)等 IECRE の視点から活用
定方法の TR 化を提案し、WG2 において、測定専門
が見込まれる規格への日本意見提案
家を入れたプロジェクトチームで議論を進めることと
5.日本から有機太陽電池の標準化に関する新規提案
6.TC82 の次期議長選出および次回 Plenary 会議の日本
開催に関する提案と事務局等との調整
なった。
6.日本から 2017 年春の TC82/Plenary および各 WG
会議の日本開催を提案し、今後調整を進めることと
なった。
【成果および課題】
1.IEC62979 の進捗報告と審議
内田氏(JET)がプロジェクトリーダ(以下、PL)
として主導している IEC62979 の審議では、実験結果
に基づく試験温度(オープンラック 75℃、屋根置き
7.その他のトピックス
・高温地域対応の TS「Guidelines for Qualifying PV
Modules, Components and Materials for Operation
at Higher Temperatures」制定が進む見通しである。
・BIPV 関連については、ISO、EN、IEC 規格(案含
む)などが協力した開発が必要になる。
90℃)
、スイッチング時間(10 msec)等の提案・内
容を議論し、CDV 作成(6 月中)に移行させることと
した。
2.IEC61215 シリーズ、IEC60904 シリーズ、IEC61730
シリーズ
IEC61215 の Amendment 対象項目として、動的
【今後のアクション】
高温/寒冷地域用や水上設置用、砂塵テスト等これま
でその設置場所として想定しきれていない地域への設置、
他の機能付加に対応する新規規格の提案が活発化してい
荷重試験、PID、PERC 安定化等が抽出され、今後、
る。このような中で、
日本提案の IEC61215-1-3 修正(ホットスポット試験
1.日本がPLを務める IEC62979
(バイパスダイオードの熱
に関する修正)も含めて日本のエキスパートを含むプ
暴走試験)
の審議を引き続き主導し、
早期 IS 化を図る
ロジェクトチームで議論を進める。なお、日本提案の
2.IEC61215Amendment に対し、Project 内検 討の段
IEC61215-1-4 修正(CIGS 高温高湿試験条件)は承
階から複数のエキスパートを参加させ、日本意見を効
認され、FDIS に反映させることとなった。IEC61730
果的に反映させる
の Amendment では、絶縁層厚さの測定方法、樹脂
3.太陽光発電設置環境の多様化に対し、信頼性強化に
の環境ストレスの具体的記載が提案され、今後議論
つながる実験データをベースに、日本意見、新規規格
が進められる。また、IEC60904 では、両面受光デバ
を提案する
46 電 機 2016・August
を進め、太陽光発電の世界的な普及(市場拡大)と日本
企業の競争力強化につながる活動を展開する。
1.日本がプロジェクトリーダ(以下、PL)を務める、
IEC62920(太陽光発電用 PCS〈パワーコンディショナ〉
の EMC 規格)および IEC62093(PCS の耐環境性試
験)の進捗報告
2.日本から提出する “太陽光発電システム用 PCS の試
IEC/TC82(太陽光発電システム)
/
WG3(システム)
, WG6(周辺機器)
およびJWG1(村落電化)
フェニックス(米国)会議
験に用いる DC 電源および AC 電源仕様” の TS(標
準仕様書)提案
3.IEC62109(PCS の安全性規格)
、IEC62548(アレイ
の設置安全性)
、IEC62446(竣工時検査、メンテナ
IEC/TC82/WG3, WG6 エキスパート
出口 洋平
ンス)などの重要規格の進捗状況調査
◇
【概 要】
開催会議 IEC/TC82/WG3,WG6 および JWG1
【成果および課題】
1.IEC62920 制定進捗
(1)本規格は公式には CD(委員会原案)段階にあるが、
開催期間 2016 年 5 月 22 日~ 27 日
PT(プロジェクトチーム)において、CD で指摘
開催地
フェニックス(米国)
された各国コメントに対応した文書の作成を完了
16 カ国、約 59 名
し、CDV(投票用委員会原案)として IEC 中央事
出席者
津田泉(産業技術総合研究所)
、五十嵐広宣
務局に提出している。2016 年 6 月に正式 CDV を
(テュフ ラインランド ジャパン)金丸誠(三
発行し、10 月に投票を締め切る形で回付する予定
菱電機)
、吉岡康哉(富士電機)
、出口洋平
(JEMA、筆者)
、他日本から 3 名
である。
(2)CDV 段階に入るところではあるが、複数台接続す
るマイクロインバータの試験方法について追加要
【背景・目的】
望があったため、改めて検討を行うこととなった。
2.IEC62093 改正進捗
IEC(国際電気標準会議)の TC82 は、太陽光発電の国
(1)太陽光発電システムの不具合は多くの場合 PCS に
際標準化を審議する最上位の委員会である。ここで審議
起因することを説明し、改正にあたって適用範囲
される太陽光発電システムの構成や品質評価、安全性評
を“周辺機器”から“PCS”に絞り込むこととなった。
価にかかわる国際標準は、日本における国内規格の基準に
(2)“寿命評価” としてしまうと議論が長引くため、“品
なるとともに、日本メーカにとって市場拡大に向けたビジ
質評価” の規定になるよう、加速劣化試験などを
ネスプランや安全性、信頼性設計方針の構築のために極
検討することが確認された。
めて重要なファクターとなる。このため、一般社団法人 日
(3)その他、低温試験(25 ~ 40℃)は、
「PCS を動作
本電機工業会(JEMA)として TC82 委員会に出席し、太
させた時点でこれらの温度を超えてしまうことから
陽光発電に関する国際標準の審議の場で日本側の規格提
実施不可能なのではないか」といった意見を受け
案や意見反映を行うとともに標準化に関する最新情報を
たため、再検討することとなった。
入手することは、国内規格立案の円滑化とともに国内の
普及拡大に資する標準化戦略の立案のためにも極めて重
要である。
今回は、以下 3 点を目的に会議に出席した。
(4)2016 年夏に CD を発行して進めることが合意され
た。
3.DC 電源および AC 電源の仕様に関する規格化進捗
(1)日本から、既に準備しているNP案の項目を抜粋し
て説明し、DCおよびAC電源の両文書共にTS(技
◇一般社団法人 日本電機工業会 新エネルギー部 技術課
術仕様書)で審議を行う旨を提案し、了承を得た。
[業界報告] 47
業界報告
(2)本会議後 1 カ月の意見照会の期間を設け、そこで
CPV-12(集光型太陽光発電システム
国際会議)および
IEC/TC82(太陽光発電システム)
/
WG7(集光型太陽光発電システム)
フライブルク(ドイツ)会議
出されたコメントに対応した時点で NP(新業務
項目提案)を発行することとなった。
4.その他規格の進捗
(1)IEC62109 シリーズの改正は、TC22(パワーエレ
クトロニクス)で作成した IEC 62477-1(パワエ
レ機器の安全性)および追補への整合が必要であ
集光型太陽光発電分科会 主査
ることから協議したが、継続検討となった。
西岡 賢祐
◇
(2)IEC 62548
( 現在は TS)のIS化は、TC82としては
FDIS
(最終国際規格案)
を提出するに至り、順調に
進んでいる。しかし、ほぼ同じ内容を規定している
TC64 の IEC60364-7-712 の動向が不明であること
【概 要】
から、IEC規格の動向とともにCENELEC
(欧州電気
開催会議 CPV-12 および IEC / TC82 / WG7
標準化委員会)
での検討状況を確認することとした。
開催期間 2016 年 4 月 25 日~ 29 日
(3)IEC62446 シリーズの改正および制定は、-1(竣
開催地
フライブルク(ドイツ)
工時検査)が FDIS となり、-2(メンテナンス)が
CPV-12:25 カ国から 151 人が出席
NP として発行され、投票の結果承認された。
IEC/TC82/WG7:6 カ国より約 20 名が出席
出席者
西岡賢祐(宮崎大学、筆者)
、荒木建次(豊
【今後のアクション】
田工業大学)
、笠井秀人(クラレ)
、岩崎孝
(住友電気工業)
1.日本主導で進めている IEC62920、IEC62093 および
新規提案の DC および AC 電源の仕様に関する規格
化は順調に進んでいる。特に IEC62920 については、
今年度中に IS(国際規格)を正式発行できるよう、
引き続き各国コメント対応などを進めていく。
【背景・目的】
IEC(国際電気標準会議)の TC82 は、太陽光発電の
国際標準化を審議する最上位の委員会であり、ここで審
2.日本が主導して進めている上記の規格はすべてコン
議される太陽光発電システムにかかわる国際標準は、日
ポーネントに対する試験や要求であるが、IEC/TC82
本の国内規格の基準になるとともに、日本メーカにとって
では、IECRE(IEC 再生可能エネルギー機器規格試
もその競争力強化や事業拡大に向けたビジネスプラン構
験認証制度)に関連してシステムへの要求事項を規
築の重要なツールとなる。特に、集光型太陽光発電シス
定する規格が多く検討される傾向にある。これに対応
テム(CPV)は、集光用光学技術や太陽追尾(Tracker)
するため、JEMA においても IECRE に対応する国内
技術など他の太陽光発電技術に比べシステム的な要素を
委員会を置いて対応を検討しているが、検討スピード
多く含んでおり、その中でも、Tracker 技術は日本企業が
が非常に速いため、適切なタイミングで意見が提出で
保有する精度の高い技術の優位性が発揮される重要技術
きるよう、コメントの承認プロセスを省略するなどの
である。今回、標準化にかかわる最新技術動向の調査と、
対応を順次とっていく必要がある。
国際標準の審議の場で日本の規格提案や意見反映を目的
3.太陽光発電システムをはじめとする分散型電源にか
かわる要求は、TC82 だけに留まらず、系統連系・
に集光型太陽光発電システム国際会議(CPV-12)と標
準化会議 IEC/TC82/WG7 に出席した。
EMC・通信など、他の TC でも活発に提案・審議さ
れている。これらの TC の動きをまとめ、重み付けを
行うべく、本年度から順次対応する委員会の立ち上げ
と審議体制の構築を行っていく。
48 電 機 2016・August
◇宮崎大学 工学教育研究部 電子物理工学科
【成果および課題】
1.技術動向調査:12 Concentrator Photovoltaic
th
Systems 国際会議(CPV-12)
(4 月 25 日~ 27 日)
42 件の口頭発表および 51 件のポスター発表がおこ
なわれた。以下に会議のトピックスを示す。
2.2 Tracker の安全性に関する審議
安全性については、最低限のスペックに絞った新
規提案として審議を進めることが合意され、日本か
ら荒木氏(豊田工業大学)がワーキンググループに
参加することとした。
2.3 Tracker の設計に関する標準(IEC62817)
(1)モジュー ル 効 率として、Fraunhofer が 46 % 効
追尾架台について現規格を補完する観点から、部
率の 4 接合セルと色収差の小さいガラスレンズ
品の水、粉塵テストが実効的と議論があった。これ
(96%効率)の組み合わせで、CPV 標準試験条件
に対して、日本から宮崎大学での風洞実験も加える
(CSTC)で 43.4%のモジュール効率を達成した。
実効的な見直しを提案し、具体的な検討を開始する
また、技術的には 6 接合まで応用可能な 1 Buffer
Process を紹介した(NREL)
。
こととした。
2.4 住友電工製モジュールの国際標準モジュール化
(2)光学系技術では、オタワ大学(カナダ)がレンズ
「住友電工製のモジュールを世界中の評価機関で
温度変化によるパフォーマンスの検討を進めると
評価して、標準サンプルとして活用できないか?」と
ともに、UPM 社は異種材料の組み合わせによる
の Sarah 氏(NREL)からの提案を受け、住友電工
色収差の小さいレンズを提案した。
製のモジュールを基準サンプルとして世界中の評価
(3)システムとして、IBM 社が 1,500 倍集光システム
で発電と熱を組み合わせ、エネルギー効率 72.5%
サイトに設置し、IEC 標準を作成することとなった。
2.5 出力定格測定(IEC62670-3)
を達成した。今後は効率向上、セルコスト(⇔集
レンズ温度変化による IV カーブ測定(55℃→室
光倍率アップ)およびトラッカーコスト低減の必要
温は必須、0℃→室温は任意)方法の現実性につい
性を確認した。
ては、記述内容があくまで “ガイドライン” の位置付
(4)日本からは、住友電気工業(以下、住友電工)が
招待講演を受け、モロッコに設置した 20kW シス
けであることから、今後、より現実的で実効的な測
定方法について議論を継続する。
テムの実証実験やレドックスフローバッテリーの開
発状況、東京大学と宮崎大学の共同研究において
CPV で発電した電気を用いた水分解により水素回
収効率 24.4%(世界最高効率)が達成されたこと
を報告した。
(5)豊田工業大学から自動車への CPV モジュール搭
【今後のアクション】
CPV-12 では、学会への出席者、システムメーカや部
材メーカからの発表が減少したものの、着実な変換効率
向上、熱利用との組み合わせや水素発生への応用など、
載、EV 用 Solar Station への CPV 応用など、今
CPV 産業再生へ向けた取組みが示された。これまで世
後の CPV 市場拡大に対するアイデアを提唱した。
界をリードしてきた Amonix 社(米国)や Soitec 社(フ
ランス)に代わり、日本の住友電工が世界で最も活発な
2.規格化提案:IEC/TC82/WG7 会議
CPV 企業となり、変換効率だけでなく、世界中のサイト
(4 月 28 日~ 29 日)
へのインストールで注目されている。今後、日本企業が
2.1 日本からの新規提案
保有する優れた技術を背景に、①既設の CPV サイトの
IEC62688(モジュールとアセンブルの安全性規格)
フィールドデータの有効利用・共有化による CPV 技術の
に対して実用的かつ簡便な V-t 試験方法を提案、今
信頼性獲得、②実験データに基づく CPV の安全性・高
後技術資料を準備して一般社団法人 日本電機工業
信頼性に関する新規規格の提案と審議、を日本が主導的
会から正式提案することとなった。日本は、今後、住
に進めていく。
友電工製モジュールを使って Burning Brand 試験に
ついても模擬テストを実施することとした。
[業界報告] 49
業界報告
ISO/TC86/SC6(エアコンの性能)
およびWG1
(エアコンの性能規格作業会)
アトランタ(米国)会議
10、インド 41、中国 2)のコメントを審議して、3 規格
を FDIS(最終国際規格案)に仕上げることが会議の主
目的である。なお、インドはこれまでの改定審議には一
度も参加したことがなく、今回多くのコメントが提出され
ISO/TC86/SC6 対応 WG
出石 峰敏
◇
【概 要】
たのは意外であった。
日本からは、前回会議での高地性能補正提案が、カロ
リーメータ試験のみ注記で許容され、空気エンタルピー
試験では試験で調整可能として注記に含められなかった
ことから、試験時に質量風量を補正してもよいことを明確
1.SC6/WG1(空気熱源空調機およびヒートポンプの試
験と評価作業会)
化する注記の追加を提案しており、これを通すことが今
回会議の主目的であった。
開催会議 ISO/TC86/SC6/WG1
開催日
2016 年 5 月 18 日
開催地
アトランタ(米国)
出席者
5 カ国 15 名
【成果および審議の概要】
1.SC6/WG1(空気熱源空調機およびヒートポンプの
試験と評価作業会)
2.SC6(空調機およびヒートポンプの試験と評価会議)
開催会議 ISO/TC86/SC6
1.1 3 規格 DIS へのコメント審議
今回コメントのあった 53 項目の審議を完了し、3
開催日
2016 年 5 月 25 日
規格を FDIS として SC6 へ提案することに決まった。
開催地
アトランタ(米国)
これらのコメントには editorial(編集)と technical
出席者
5 カ国 16 名
(技術)の 2 種類があるが、規格発行を早める観点
より、採用したコメントはすべて editorial の分類に
【背景・目的】
ISO/TC86/SC6 では、空調機およびヒートポンプの
試験と評価に関する規格の制定・改定作業を行ってお
り、現在は WG1(空気熱源空調機およびヒートポンプ)
、
WG3(水熱源ヒートポンプ)
、WG10(全熱交)
、WG12
(ヒートポンプ給湯機)が活動中である。
入れることになった。これにより、SC6 は自動承認と
なり、すぐに FDIS の投票にかけることができるため、
今年後半には 3 規格の改定版が発行される見込みと
なった。
日本が主目的としていた、ノンダクトおよびマルチ
製品の空気エンタルピー試験時、
「ファンスピードを
調整可能な製品は、標準大気圧空気に質量風量を合
家庭用ルームエアコンと業務用パッケージエアコンを
わせるようファンスピードを調整する」という注記の
カバーする WG1 については、従来から日本は中心メン
追加提案は、米国委員よりダクト製品ではすでに行っ
バーとして積極的に意見出しを行っている。現在は 2013
ている方法というコメントがあり、そのまま採用され
年より、性能試験基本 3 規格 ISO 5151(ノンダクト製
た。また、日本からのこれ以外のコメントは誤記訂正
品)
、ISO 13253(ダクト製品)
、ISO 15042(マルチ製
に関するもので、いずれもそのまま採用された。
品)の改定作業を行っており、今回は 2015 年 7 月のワ
シントン会議以来の開催となる。
インドは今回も不参加で、多くの提案は不採用と
なったが、いくつかの提案が採用された。このうち、
前回会議の後、3 規格の DIS(国際規格案)が投票に
実際の試験に影響を与えるものに、冷房(1 分)と
かけられ、1 月末に締め切られたが、いずれも賛成 100%
暖房(30 秒)のデータ採取間隔を統一するというも
で通過した。今回は投票時に提案された 53 項目(日本
のがあり、元々の提案はどちらに統一するか記載さ
れていなかったが、Tharp 主査と米国委員が現在の
◇日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社 R&D 本部
50 電 機 2016・August
技術なら 30 秒に統一できると主張して、30 秒が採
用された。本件、日本空調冷凍研究所の設備では問
題ないことを確認済である。
【今後の課題】
1.冷房期間効率規格の附属書審議
新作業アイテムの冷房期間効率への高外気附属書追加
1.2 冷房期間効率規格への高外気附属書追加
前回会議で冷房期間効率規格 ISO 16358-1 への
については、元の規格を作成し、ASEAN 各国への普及
高外気温地域用温度分布追加を提案したベルギーよ
を進めている日本としては、議論が元の規格の修正に波
り、追加する附属書のドラフトが提案された。計算
及しないよう監視していく必要がある。今回の測定点の
式は元の規格の 35℃基準を 46℃基準に変更してい
考え方は元の規格と同じで、外気 46℃の中間能力測定が
るが、基本的な考え方は同じである。また、46℃か
必要となる。高外気のみを考えると既存の外気 35℃デー
ら他の温度を推定する係数については、現在の 35℃
タから中間能力を計算する方が楽であるが、これを許容
基準の係数で 46℃を計算した値の逆数としている。
すると現規格でも外気 29℃での中間能力測定を許容する
温度分布はサウジアラビアと UAE の平均的な値とし
議論につながり、カロリーメータ試験では条件設定に時
たとのことである。本件は、まだ正式な作業アイテム
間がかかるとして強く反対してきた日本としては、これま
として登録されていないため、今回 SC6 へ提案する
での説明と矛盾することになる。
ことになった。
2.新ビジネスプラン
機器特性をモデル化する新しい SC の立ち上げ状況を
2.SC6(空調機およびヒートポンプの試験と評価会議)
2.1 新ビジネスプラン
注視しておく必要がある。モデル化が単純すぎれば機器
前回会議と同じく、TC86 の Erbe 主査より欧州標
のタイプや効率の違いが出ない懸念があり、一方細かく
準化委員会 CEN に協力する形で EU ビル省エネ指
特性の違いを出そうとすれば、試験点がこれまでよりも大
令をサポート予定であり、機器の特性モデル化を新
きく増加する懸念もある。
しい SC で進める方針が説明された。これを受けて
SC6 の Lindahl 主査より、新しい SC の機器特性モ
デル化をサポートするとの提案があり、当日参加メン
IEC/TC88(風力発電システム)
プレナリ 済州(韓国)会議
バー 5 カ国すべてが賛成した。ただし、新しい SC
がいつできるのかは未定であり、どのようにモデル化
が進められるのかも不明である。
一般社団法人 日本電機工業会
新エネルギー部 技術課
2.2 他 WG 状況
WG3 では水冷チラーの期間効率規格制定を進め
ているが、今回主要メンバーが欠席で大きな進展が
なかったため、10 月に中間会議を行う予定である。
WG10 は新作業アイテムの不確かさガイドおよびエ
課長 松
下 崇俊
主任 竹
本 亮一
【概 要】
ネルギー回収部材を審議、WG12 は新作業アイテム
開催会議 IEC/TC88
のスペースヒーティング用を審議するため、どちらも
開催期間 2016 年 4 月 21 日~ 22 日
WG3 と同じ時期に中間会議を行う予定である。前
開催地
済州(韓国)
回会議でベルギーより新作業アイテムとして提案が
14 カ国 43 名
あった空冷チラー規格は、事務局より前回 WG が廃
出席者
山口敦(東京大学)
、鈴木章弘(風力エネル
止された経過説明があったが、ベルギーから再度の
ギー研究所)
、石山卓弘(三菱重工業)
、松
WG 立ち上げ要請は出なかった。
下崇俊(JEMA)
、竹本亮一(JEMA)
[業界報告] 51
業界報告
【背景・目的】
(5)IEC 61400-101(再構築)にて、TC88 の規格全
体を再構築する計画があり、検討が始まった旨説
風力発電の国際規格(IEC61400 シリーズ)は、1988
明があった。この目的は、IEC 61400-22(適合性
年より IEC/TC88(風力発電システム)で審議されてお
評価および認証)の IECRE(IEC 再生可能エネ
り、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は、TC88
ルギー機器規格試験認証制度)への移管を含め、
の国内審議団体として国際会議の対応を行ってきた。風
TC88 の規格を整理し重複を解消するものであり、
力発電は、欧州を中心に普及が進んだことから欧州での
今後の検討は時間を要するものとなる。
設置環境を基礎として規格化が進み、これら国際規格に
準拠した製品が設計・製造されている。近年は、北米や
2.日本提案事項
アジアへの市場拡大および洋上風力発電の開発、系統連
日本で提案準備を行っている「数値シミュレーション
系など市場動向を踏まえた規格化が行われている。今回
による風速推定法(PT61400-12-4)
」について、コンビ
の会議は、年 1 回開催される TC88 のプレナリ会議であ
ナを務める東京大学の山口氏より、6 月 16 日~ 17 日、
り、各作業部会の活動進捗の確認、新規提案の審議に対
キックオフ会議をデンマークのオーフスにて開催する旨周
する日本意見の反映を目的として出席した。
知があり、併せて、多くのエキスパートの出席および各国
のプレゼンテーションを歓迎する旨説明を行った。
【成果および課題】
1.報告事項
本推定法の開発は、既存の手法では日本に代表される
山岳等の複雑地形環境に設置される風力発電機において
期待された発電性能がしばしば達成されない課題がある
(1)TC88 の適用範囲が風車本体のみならず、風力発
ことから、複雑地形環境を含む風車への流入風速を数値
電システム全体に拡大していることを受け、TC88
シミュレーションする手法の標準化を行うことで、事業へ
のタイトルを変更することとしており、今般、正式に
の貢献と風車の安全性の向上に資することを目的とする
SMB(標準管理評議会)にて承認された旨、報告が
ものである。
あった。
〈TC88 タイトル変更〉
風 車(Wind turbines) → 風 力 発 電 シ ステム
(Wind energy generation system)
【今後のアクション】
1.引き続き、日本の設置環境(風、地震、落雷、海象)
、
安全性の向上、産業競争力の向上を考慮した基準お
(2)IEC 61400-26(稼働率)シリーズについて、新規
よび評価方法の提案を推進する。
格となる IEC 61400-26-4(Reliability・信頼性)
」
の提案があり、承認された。
2.日本提案の「数値シミュレーションによる風速推定法」
について、6 月 16 日~ 17 日、デンマークのキックオ
(3)IEC 61400-12(性能計測方法)シリーズについ
フ会議を皮切りに日本主導で鋭意進めていく。
て、近年の内容拡充による複雑な規格体系の改善
と、新技術のタイムリーな規格標準化等を目的に
3.TC88 では、風車のさらなる安全性・信頼性の向上を
IEC 61400-12 シリーズの再構築を実施する旨提
目指し、部品の規格化、機能安全、系統連系など標
案があり、承認された。
準化の範囲が拡大しており、専門範囲も多岐にわたっ
ている。わが国として標準化メリットを明確にして対
(4)ドイツより GSP 規格(風車の運転、保守に用いられ
応していく。
ているデータフォーマットの標準化)の紹介があり、今
後、IEC 規格への適用を検討したい旨、説明があっ
た。
52 電 機 2016・August
4.IECRE で進められる風力発電の国際認証制度の動向
を把握し、国内企業・機関に課題を作らないように意
見反映に努めるとともに、国内での制度活用のための
tergy systems, 米国)
、Greg Chirdon(CSA
基盤整備を引き続き検討する。
international, 米国)
【背景・目的】
5.今後の会議予定(TC88 プレナリ会議)
・2017 年 4 月 6 日~ 7 日 米国
・2018 年 4 月 12 日~ 13 日 英国
2015 年 9 月の北 京 会 議より開 始した IEC 62282-3100 Edition 1.0(定置用燃料電池システム-安全要件;
Stationary fuel cell power systems - Safety)の改訂版
作成作業のための WG3 第 2 回国際会議が、6 月 14 日~
16 日に米国、ワシントン D.C. で開催された。
今回は、各国コメント(105/558/DC)に対する審議を
行うとともに、日本から提案を行った小形定置用燃料電
池システム-安全要件の附属書追加内容についての審議
を行う目的で出席した。
会議風景
IEC/TC105/WG3
(定置用燃料電池システムの安全要件)
ワシントンD.C.(米国)会議
【成果および課題】
1.審 議 の 主な 焦 点は、IEC 62282-3-100 Ed.1.0 の 本
体内容の改訂および小形 FC システム用に追加する
Annex の各内容についてであった。本体内容の改訂
JWG3(定置用燃料電池システムの安全要件分科会)主査
新井 康弘
◇
【概 要】
に関しては、北京会議で米国 3 件およびドイツから 1
件の改正提案のあった、各国コメントに対する DC 内
容、62 件の審議を行ったが、多くは編集上のコメン
トであり、技術コメント 24 件に対してもすべて初日に
審議を完了した。
開催会議 IEC/TC105/WG3
開催期間 2016 年 6 月 14 日~ 16 日
開催地
2.技術コメントでの大きな変更点は、安全要件の IEC
ワシントン D.C.(米国)
62282-3-400 の反映であり、十分なリークタイト性が
【FCHEA Headquarters】
保証できる機器の採用に関しては、必ずしも換気安全
出席者
3 カ国、12 名
コンビナ:Kelvin Hecht( 米国)
、セクレタリ:
の考え方を採用しなくても良くなった。
Scott Lindsay(CSA international, 米 国 )
、
3.一方、小形 FC システムの附属書追加の日本提案内容
新井康弘(東芝燃料電池システム,筆者)
、
に対して、2 日および 3 日目に審議を行ったが、事前
橋本 登(パナソニック)
、田島 収(山梨大学)
、
の Hecht 氏との打ち合わせで理解を求めていたにも
安 武 優 子(A&E Communications)
、Eck-
かかわらず、内容は日本特有の specific な内容にすべ
hard Schwendemann(ES-TMC, ド イツ )
、
きでなく、各国が受け入れやすい generic な内容にす
Sondra T. Ullman(GE, 米国)
、Steve Mau-
べきとのコメントがあり、詳細審議されることもなく提
rer(Fuel Cell Energy, 米国)
、Kirsten Bur-
案内容の多くが拒否される状況となった。
pee(Bloomenergy, 米国)
、David Milas(Al4.日本としては、IEC 62282-3-400 が IS 発行後に国際
◇東芝燃料電池システム株式会社 設計部
認証スキームに移行することを恐れており、改めて理
[業界報告] 53
業界報告
解を求めたところ、まずは、現状の IEC 62282-3-100
IEC/TC105/WG11
(燃料電池用単セル試験法)
ワシントンD.C.(米国)会議
で認証スキームが可能か、Hecht 氏が直接 IEC 事務
局に問い合わせることとなった。
5.日本側が最も注力していた小形 FC システムの附属書
IEC/TC105/WG11
追加内容に関しては、Hecht 氏の前記国際規格に対
◇
する基本的な考え方で会議が主導され、かつ 3 日目
に Schwendemann 氏が出席できなかったこともあり、
木下 伸二
【概 要】
深く審議できたのは、電気出力や使用圧力等に関する
開催会議 IEC/TC105/WG11
スコープの変更程度であった。
開催期間 2016 年 6 月 20 日~ 21 日
開催地
6.このままでは、附属書内容がほとんど記載されなくなる
ワシントン D.C.(米国)
【FCHEA Headquarters】
可能性が残ったため、帰国後に Hecht 氏にメールベー
出席者
4 カ国、6 名
スにて、小形燃料電池システムの規格作成が必要な理
小関和雄(FCDIC)
、木下伸二(旭硝子、筆
由を改めて示し理解を求めたところ、日本側として最低
者)
、 安 武 優 子(A&E Communications)
、
限の附属書内容を新たに準備することで合意した。
Andrea Casalengo(Politecnico di Milano,
イタリア)
、Tommy Rockward(LANL, 米
7.Hecht 氏は、将来的に附属書を本体と分離し、IEC
国)
、Gareth HINDS(NPL, 英国)
62282-3-101 になる可能性も示唆した。
【今後のアクション】
【背景・目的】
IEC/TC105/WG11(燃料電池用単セル試験法)は、日
1.Hecht 氏との合意により、日本側としては遅くとも 8
本よりNP(新業務項目提案)提案し、コンビナが小関氏
月末までに新しい附属書内容を準備する必要がある。
となり2007年に発足、2010 年 6 月10日に TS 62282-7-1
Ed.1 が発行された。
2.ワシントン会議で提案した内容に対して、最低限必要
その後 2013年8月に Ed.1 の改訂が日本より提案され、同
な重要項目を国内委員会で審議する必要があり、この
年11月に承認された。そして主に燃料電池自動車を対象と
ための活動を当面注力して行う。
した試験を加えた改訂版 TS 62282-7-1 Ed.2 の Working
Draft 1(WD1)を日本が作成し、その審議のために 4 回
3.今後の協議においては Schwendemann 氏の賛同も必
の国際会議を実施した 。 会議を通して多数の試験を基礎
要となってくるため、メールベースにて同氏の意見も
試験と応用試験とし、体系的に分類 、2016年2月に Draft
求めて、原案の取りまとめを行う。
Technical Specification(DTS)を発行。DTS は各国に回
覧され、投票したPメンバー 11カ国すべての賛成で承認さ
れた。今回の第5回会議は DTS に対して寄せられたコメン
トについて審議し、TSを作成することを目的として出席した。
【成果および課題】
1.DTS に対し提出されていた 306 件のコメント(IEC
会議出席者
54 電 機 2016・August
◇旭硝子株式会社 事業開拓部 新事業推進グループ
事務局の編集担当者の指摘も含む)すべての審議を
能な電圧低下の切り分けについて説明するために
終了した。TS 案を作成するために必要ないくつかの
は、新たな章を設けて記載する必要がある内容と
対応事項については、参加メンバーの宿題事項として
判断し、今回の改定に盛り込むことはできないと
割り振られ 、 持ち帰り対応することとした。今後、予
考え、この切り分けには言及しない方が良いとい
定通り 9 月に TS 案を TC105 事務局へ提出する予定
う意見が主であった。しかし、イタリアの出席者か
を立てて会議は終了した。
ら、EU においては、耐久性を可逆的な電圧低下
と、回復不能な電圧低下に切り分けて考えること
2.本 会 議のホストを LANL の Tommy ROCKWARD
に注目が集まっており、言及しないことには合意で
氏に務めていただく中、小関コンビナの開会宣言で会
きないと主張。さらに議論を続け、本文中に 2 つ
議は開催された。前回議事録と本会議のアジェンダの
の電圧低下があることを記す記載を残すことで合
確認・承認を行ったのち、DTS 投票結果の説明がコ
意した。
ンビナより行われた。提出されていたコメントについ
(5)審議を通じた感想として 、 イタリアの出席者の主
ては、基本的に Editorial なものが中心であるが、内
張や説明から、EU 内で燃料電池開発が盛んな
容的に Technical なものがあったため、それらを先に
国々においては、研究者間で相互に深く連携して
審議することが提案され、その提案に従って審議が進
いることが伺えた。
められた。 以下に、審議したコメントの内のいくつか
について紹介する。
(1)Scope に お い て、PEFC は 複 数 形 の “s” が 必
【今後のアクション】
要というコメントであるが、PEFC は「polymer
1.TS の発行:8 月までに TS 最終案を作成し WG の
electrolyte fuel cell」の略字であり、複数も示すこ
expert に回付 、editorial なミスをチェック。9 月まで
とが業界内で共通理解であると判断し、“s” の追
に TS(発行用原稿)を TC105 事務局に送付。
加は必要ないとした。
(2)NOTE(注釈)に参考以上の重要な内容が含まれ
ているので本文に移すべきという IEC 編集担当者
の指摘した NOTE のすべてについて、そのコメン
トに従い本文に移すこととした。
2.次期改訂:小関コンビナより、次期改訂について以下
の提案があった 。
Joint Research Center の Tsotridis 氏 よ り 、2015
年に EU 内でまとめられた「燃料電池自動車の運転条
(3)出力電流密度と電圧の関係を示す “Polarization
件を考慮した PEFC 単セル試験法」と本国際規格と
curve tests” は “i-V curve tests” が適切とのコメ
の Harmonization の提案があったが、本規格はすで
ントであるが、この議論は以前も行っており、やは
に TS 案完了段階にあるため 、Harmonization は 3 年
り “Polarization curve tests” が一般的であると全
後の改訂時(2020 年)に考慮する 。
参加メンバーが判断した。なお、NOTE には “i-V
curves ” や “V-i curves” という表現もあることを
記すこととした。
(4)11.4.2 Long term durability の NOTE において、
耐久試験でみられる電圧低下には、一時的で可逆
的な電圧低下と、回復不能な電圧低下があること
について触れているが、その内容がわかりにくく変
更が必要であるという趣旨のコメントがあった。こ
の部分については、多くの時間を費やして議論を
行った。議論では、可逆的な電圧低下と、回復不
会議出席者
[業界報告] 55
ュ
フラッシス
ニュー
新会員紹介(正会員)
株式会社 タムラ製作所
代表取締役社長 田村 直樹
(2016 年 5 月入会)
日本でラジオ本放送が始まる 1 年前の 1924 年(大正 13
年)
、創業者の田村得松が、単身渡米して最先端の技術を学
【会社概要】
会 社 名
株式会社 タムラ製作所
んだ後に、ラジオを輸入販売する店を東京・新宿で開いたの
が当社のはじまりです。いつしかラジオを製作するようになり、
代 表 者
代表取締役社長 田村 直樹
設 立
1939 年 11 月(創業 1924 年 5 月)
資 本 金
118 億 2,965 万円
を開始。それが現在の電子部品事業につながっています。終
従 業 員
5,634 名(2016 年 3 月 31 日現在)
戦後は、ラジオ・テレビなどの民生機器向けトランスの開発・
本 社
〒 178-8511
生産で、業容を拡大しました。
東京都練馬区東大泉一丁目 19 番 43 号
拠 点
坂戸事業所、入間事業所、狭山事業所、児玉工場、
が、現在の電子化学実装事業のオリジンとなっています。さ
大阪営業所、名古屋営業所等
らに「良い音」への追求は、放送局用の音声調整卓、ワイヤ
株式会社 光波、株式会社 若柳タムラ製作所、
レスマイクロホンシステムなどを扱う情報機器事業に展開。
株式会社 会津タムラ製作所、田村香港有限公司、
音声調整卓は国内キー局のシェアナンバー 1 として、オリン
田村電子(深圳)有限公司、タムラ ヨーロッパ
ピック放送などの重要イベントで活躍しています。
関係会社
「良い音」への探求から、その鍵になるトランスの開発・生産
また、電子部品の品質向上のために研究していた化学材料
最近の取組みとしては、これまでの国立研究開発法人 宇
リミテッドなど 46 社
U R L
宙航空研究開発機構(JAXA)指定の宇宙用トランス・コイ
http://www.tamura-ss.co.jp/
ルの開発・製造実績が評価され、2009 年に車載用リアクタ
の量産を開始。将来の成長が期待されるハイブリッドカーや
【事業内容】
電子部品、電子化学材料、はんだ付装置、情報機器など
電気自動車関連分野に参入しました。
2010 年には英国のロマーシュ社を買収して、インフラ向け
の製造販売
の大型トランス・リアクタを製品ラインアップに加えました。
送電時の電力ロスが少ない高圧直流送電
(HVDC)
で用いられ
【事業概要】
タムラ製作所は、電気エネルギーの変換に用いられるトラ
る水冷式の大型リアクタなど、新たな事業を展開しています。
ンス(変圧器)やリアクタ(リアクトル)などを扱う電子部品
タムラ製作所は 2014 年に創業から 90 周年の節目を迎える
事業、工業用のソルダーペースト(クリームはんだ)
・はんだ
とともに、100 周年に向けた新たな歩みを始めています。創
付装置などを手掛ける電子化学実装事業、放送局等で使用さ
業者の「良い製品でエレクトロニクス産業の発展に寄与した
れる音声調整卓(ミキサー)やワイヤレスマイクロホンシス
い」という想いを受け継ぎ、お客さまにとって唯一無二の「オ
テムを提供する情報機器事業という 3 つの分野で事業展開を
ンリーワンカンパニー」になることを目指して、これからも市
行っています。
場のニーズに応える製品の開発、供給に努めてまいります。
音声調整卓
56 電 機 2016・August
車載用リアクタ
HVDC(高圧直流送電)可飽和水冷リアクタ
新会員紹介(正会員)
メトロ電気工業株式会社
代表取締役社長 川合 誠治
(2016 年 5 月入会)
でした。その後、関東大震災や戦災により幾多の試練を
【会社概要】
経験しましたが、今なおエジソンが発明した白熱電球の
会 社 名 メトロ電気工業株式会社
DNA と独自技術を活かした熱源の開発およびその応用商
代 表 者 代表取締役社長 川合 誠治
品を製造・販売しております。昭和 30 年代から大ヒット
設 立 1951 年 6 月 21 日(創業 1913 年 5 月)
した「赤外線やぐらこたつ」の熱源(レモン球)を管球
資 本 金 6,000 万円
事業部のない大手家電メーカーに納入したことから、家
従 業 員 84 名
具調こたつブーム到来の 1981 年(昭和 56 年)に「電気
本 社 〒 446-0045
こたつ用ヒーターユニット」の製造を始め、主に家具メー
カーに販売してきました。現在ではおよそ 80%の国内シェ
愛知県安城市横山町寺田 11 番地 1
工 場 本社・愛知工場(愛知県安城市)
アを獲得しております。その他、堀こたつや足温器など
暖房用電気製品も製造・販売しております。
島根工場(島根県雲南市)
また、当社で開発した高出力カーボンヒーター管を利
営 業 所 東京・名古屋・大阪・広島・福岡
用した金型加熱器は、平成 27 年度省エネ大賞(省エネ
海外工場 マレーシア(ジョホールバル)
事例部門)受賞に大きく貢献しました。これはスズキ、
中国(浙江省徳清県)
中部電力、当社の 3 社共同で「鋳造工場における赤外線
U R L http://www.metro-co.com
ヒーター式金型加熱器の導入による省エネ・省力化」を
テーマに、従来のガス燃焼方式を電気加熱方式で取組み、
【事業内容】
暖房器具(こたつ用ヒーターユニット他)
、高出力ヒー
安全性強化、省エネ・省力化、CO 2 削減など多くの成果
ター管類、各種加熱器/制御装置、業務用調理器および
が実証されました。電気加熱ではパワー不足でやむを得
管球類の製造・販売
ずガス燃焼方式を採っているさまざまな産業分野で高出
力カーボンヒーター管の応用が可能であり、オーダーメ
イドのヒーター管や加熱器および焼く蒸すなどの小型調
【事業概要】
メトロ電気工業は白熱電球製造のため、1913 年(大正
理器の開発にも熱源メーカーの強みを活かし取り組んで
2 年)5 月、米国人等によって横浜市に横浜電気工業株式
います。中国工場では管球類を、マレーシア工場ではこ
会社として創業し、当時から商標は「METRO(メトロ)
」
たつ用ヒーターユニットを製造しております。
社屋外観
電気こたつ用ヒーターユニット
HIGH POWER 金型加熱器
[フラッシュニュース] 57
新会員紹介(賛助会員)
ソーラーエッジテクノロジージャパン株式会社
ジェネラルマネージャー 深柄 知信
(2016 年 5 月入会)
にとってソーラーエッジ製品を利用する上での戦略的なメ
【会社概要】
リットは、モジュールレベルの最大電力点追従(MPPT:
会 社 名 ソーラーエッジテクノロジージャパン株式会社
Maximum Power Point Tracking)による発 電 量 の 最
代 表 者 ジェネラルマネージャー 深柄 知信
大化、より柔軟な設計を可能にする最適な屋根利用、モ
設
ジュールレベルのモニタリングによる先進的なメンテナン
立 2015 年 2 月 16 日(本社 2006 年)
資 本 金 50 万円(SolarEdge Technologies 100%
子会社/ SolarEdge Technologies Inc.
れます。さらに、SafeDC™機能により直流電圧を自動で
NASDAQ 上場、銘柄コード SEDG)
シャットダウンできるので、設置業者、保守担当者およ
従 業 員 8 名(全社 550 名)
本
スと正確なトラブルシューティングの実現などが挙げら
社 〒 102-0073 東京都千代田区九段北 4-3-26
政文堂ビル 6 階
び消防士の安全性も確保できます。
2010 年に製品の出荷を始めて以来、ソーラーエッジ
は約 2.9GW 分に相当する直流用に最適化されたパワー
サービス拠点 東京、神戸
コンディショナシステムを出荷し、ソーラーエッジ製品は
U
90 カ国以上の太陽光発電システムに設置されています。
R
L http://www.solaredge.com/ja
日本市場では最近、DC 最適化パワーコンディショナ
【事業概要】
(33.3kw と 24.75kw)の販売を開始いたしました。ソー
ソーラーエッジは、太陽光発電(PV)システムにおけ
ラーエッジの技術は日本市場へも利益をもたらすと信じて
る発電方法と管理方法を変革するインテリジェントなパ
います。例えば、太陽光発電に向いている広大な平地は
ワーコンディショナソリューションを開発しています。 ソー
日本では限られており、斜面、木々や家に囲まれた小さ
ラーエッジの直流(DC)用に最適化されたパワーコンディ
なスペースや屋根の有効活用が求められています。ソー
ショナシステムは、太陽電池の発電量をモジュールレベル
ラーエッジは従来のパワーコンディショナと比較し、同規
で最大化し、PV システムの発電コストを低減します。
模のスペースでも柔軟なデザインとパネルをより多く搭載
住宅用から産業用に至る PV システムの設置や小規模
することで、そのような場所への設置を可能にしています。
なユーティリティスケール用など、広範な太陽光市場に
対応するソーラーエッジシステムは、パワーオプティマイ
ザ、パワーコンディショナおよびクラウドベースのモニタ
リングプラットフォームで構成されています。
ソーラーエッジシステムは、個々の太陽電池モジュールに
パワーオプティマイザを設置することで優れた発電性能とモ
ジュール管理を実現し、シンプルな DC-AC コンバータを
利用して交流(AC)への変換と系統との給配電を行うこと
でシステムコストの価格競争力維持に貢献します。
モジュールメーカー、設置業者およびシステム所有者
58 電 機 2016・August
ソーラーエッジシステム製品
ュ
フラッシ
ニュース
平成 28 年
IEC 活動推進会議 議長賞の受賞について
IEC 分野の標準化活動において顕著な貢献が認めら
れ、笹子雅純 担当課長(一般社団法人 日本電機工業会
= JEMA)が IEC 活動推進会議 議長賞を受賞した。
《笹子担当課長のIEC分野における標準化活動の主な功績》
平成 15 年から 13 年間、IEC/TC59(家電機器の性
能)
、61(家電機器の安全)の国内委員会、IEC/TC72
(自動制御装置)の国内委員会/第 72 小委員会幹事とし
IEC へのわが国の貢献と産業界の意見の反映を目的
て、国内委員会の運営、審議、IEC への日本意見の提出、
に平成 3 年に設立された「IEC 活動推進会議(APC)
」
SMB 対応委員会での審議対応など IEC/TC59、61、72
は、APC 運営への貢献・国際標準化活動の一環である
の国内委員会の活動に貢献した。
日本工業規格(JIS)整備協力・IEC 活動への対応など、
特に TC61 で検討している IEC 60335 シリーズは、世
IEC 分野における標準化活動に対して顕著な貢献を行っ
界各国で電気安全規格として採用されており、その要求
た個人またはグループを毎年表彰している。
内容は、家電機器の事業に大きく影響するものである。
現在、国内の電気用品安全法技術基準において、将来の
本年は平成 28 年 6 月 1 日に、星野岳穂 審議官(経済
性能規定化(IEC 整合化)の活動が加速されているとこ
産業省 産業技術環境局)
、野村淳二 IEC 会長(パナソ
ろであり、IEC/TC61 に係わる活動の活性化がますます
ニック)を来賓に迎えて第 26 回 IEC 活動推進会議総会
重要となっている。これまで日本提案を実施した主な活
が開催され、上原三八 議長から、議長賞 11 名に表彰状
動内容は以下のとおり。
と副賞が授与された。
・二槽式洗濯機の機械的安全(IEC 60335-2-4)
・電気ポットと電気ケトルの明確化(IEC 60335-2-15)
・電気炊飯器の安全要求事項の日本提案(IEC 60335-2-15)
・温水洗浄便座に係わる日本改定提案(IEC 60335-2-84)
(技術部)
IEC 野村会長(来賓)
議長賞を受賞する JEMA 笹子担当課長(左)
[フラッシュニュース] 59
統計
■ 電機・電子産業の生産額
(経済産業省「生産動態統計調査」による)
(単位:百万円,%)
2016 年 3 月分
機 種
金 額
2016 年 4 月分
前年同月比
金 額
2016 年 5 月分
前年同月比
金 額
前年同月比
発電用原動機計 ※
66,846
66.6
12,927
55.6
49,446
259.4
回転電気機械計 ※
81,515
83.3
72,097
84.7
71,689
103.1
静止電気機械器具計 ※
78,926
93.7
54,377
94.5
50,080
89.4
187,475
98.8
89,361
93.5
86,090
94.9
民生用電気機械器具◎
76,344
123.0
77,747
111.4
73,270
109.3
エアコンディショナ、フリーザ、除湿機◎
83,342
124.5
104,387
103.5
97,756
107.0
電子計算機及び関連装置
126,365
99.0
63,244
86.4
71,796
103.1
電子管・半導体素子及び集積回路
421,975
80.2
357,725
76.8
371,186
82.6
62,173
113.5
55,771
100.9
46,688
93.2
開閉制御装置・開閉機器計 ※
民生用電子機械器具
電子部品
184,695
98.0
185,419
94.8
168,029
96.0
通信機械器具及び無線応用装置
176,471
73.2
44,892
86.7
47,274
81.0
電球、配線及び電気照明器具
98,695
112.6
81,157
101.7
78,057
111.4
電池
73,733
113.0
57,682
110.5
53,049
104.3
6,661
88.0
6,670
119.6
5,334
102.4
142,030
88.0
79,614
89.4
81,230
90.9
1,867,246
90.6
1,343,070
89.5
1,350,974
95.7
事務用電子機器
電気計測器及び電子応用装置
合計
* 1:太字は JEMA 取扱製品
* 2:※の和は重電機器の合計
◎の和は家電機器の合計(下表の家電機器数値とは、対象品目に一部違いがあることから合致しない)
■ JEMA 取扱製品(重電機器・家電機器)の生産・輸出入実績
生 産
(経済産業省「生産動態統計調査」による)
2016 年 3 月分
2016 年 4 月分
2016 年 5 月分
金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%)
重電機器
414,762
87.8
228,762
87.5
257,305
109.3
家電機器
159,164
123.8
181,615
106.7
170,326
107.9
573,926
95.5
410,377
95.1
427,631
108.7
【 合 計 】
輸 出
(財務省「日本貿易月表」による)
2016 年 3 月分
2016 年 4 月分
2016 年 5 月分
金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%)
重電機器
原子炉およびその部分品
家電機器
輸 入
202,094,671
83.2
190,085,522
82.2
814,888
26,073,784
152,596,051
85.1
221.3
293,220
101.0
24,857,255
136.2
1,397,339
601.6
99.8
21,049,028
97.1
(財務省「日本貿易月表」による)
2016 年 3 月分
2016 年 4 月分
2016 年 5 月分(注)
金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%)
重電機器
原子炉およびその部分品
核燃料要素
家電機器
(注)輸入の 2016 年 5 月分は速報値
60 電 機 2016・August
101,110,307
102.2
84,731,660
83.2
91,103,216
87.0
9,441
101.4
3,025
−
5,009
334.2
0
−
0
−
0
−
77,100,757
115.1
75,408,615
92.7
88,774,886
103.2
品目別の詳細な統計データーは、JEMA ウェブサイトで
公開しております(ダウンロード可能)
。
www.jema-net.or.jp
■ 電気機器生産実績の推移
重電機器・家電機器 合計
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
15/5
6
7
8
9
10
11
12
,
16/1
2
3
4
5
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
重電機器
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
15/5
6
7
8
9
10
11
12
,
16/1
2
3
4
5
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
家電機器
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
15/5
6
7
8
9
10
11
12
,
16/1
2
3
4
5
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
[統 計]
61
電機
夏本番を迎える前の 7 月には、18 歳と 19 歳が有権者とな
る初の国政選挙として参議院選挙が行われ、自民党が圧勝し
ました。また、前職の不祥事を受けて、東京都知事選挙も 7 月
に行われて新たな体制がようやく出来上がりました。全国の未
成年有権者約 240 万人の若い意見で日本の政治がどのように
変わっていくのか、期待したいところです。ところで、沖縄では
例年より 7 日遅く梅雨入りしましたが、梅雨明けは 7 日も早か
ったのでした。九州から四国、中国、近畿、東海にかけては、
7 月 18 日ごろに一斉に梅雨明け宣言が発表されましたが、関
東甲信から北にかけては少々足踏みしました。日本全国で
『夏
だ~!』
と感じる時期にも時差があるようです。
この 8 月は、日本から見て地球の反対側が舞台となった『リ
オデジャネイロ オリンピック』へ熱い声援を送られた方も多かっ
たのではないでしょうか。ドーピング問題でロシアの選手が参加
できなくなった一方で、ゴルフでは有力選手が参加辞退するな
ど盛り上がりに少々欠けたところはあったと思いますが、4 年に
一度の五輪、日本選手の活躍だけでなく世界最高レベルの競
発 行
,
THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION
編集兼発行人 松本 俊博
■本 部・〒102-0082 東京都千代田区一番町17番地4
(電機工業会館)
電話03-3556-5882 ファクシミリ03-3556-5891
(本誌編集部)
■大 阪 支 部・〒530-0004 大阪市北区堂島浜2-1-25
(中央電気倶楽部4階)
電話06-6344-1061 ファクシミリ06-6344-1837
■名古屋支部・〒460-0008 名古屋市中区栄2-10-19
(名古屋商工会議所ビル6階)
電話052-231-5211 ファクシミリ052-231-5610
■福 岡 支 部・〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-1-82
(電気ビル北館10階)
電話092-761-4778 ファクシミリ092-751-2094
至九段下
女子学院高・中
至市ヶ谷
一番町
大妻通り
駅
り
麹町
ビ通 楽町線
有
コンビニ
農済会館
4 番出口
酒屋
麹町小
郵便局
麹町学園
女子高・中
GS
3 番出口
20
新宿通り
麹町 4 丁目
至新宿
半蔵門線 半
蔵門駅
だ爽快感は忘れられなかったのでしょう。
この夏を爽快に過ごすために、ビールやハイボールは欠かせ
2016年8月23日発行
テレ
ソーダ水にウイスキーを入れて飲んだところに、
「ハイ・ボール」
が飛んできたとか…いずれの説でも、一気にハイボールを飲ん
頒価540円(本体500円)
日本
技を肴に冷えたビールを飲みながらの観戦は、至福の一時とな
りました。
やはり、暑い夏にはビールは欠かせないものですが、最近は
スパークリングワインやハイボールなどの炭酸系アルコール飲料
もよく飲まれており、お酒好きの皆さんはいろいろと目移りする
ばかりではないでしょうか。ビールとスパークリングワインの炭
酸はアルコール発酵で発生したもので、製造過程で決められて
しまいますが、ハイボールはウイスキーやバーボンをソーダ水で
割ったものですから、個人の嗜好で炭酸水の割合を自由に変え
られるのが良いですね。ところで、ハイボールの語源は諸説あ
るようですが、興味深いものを紹介します。開拓時代の米国の
鉄道(蒸気機関車)ではボール信号というものが一般的に使わ
れていました。この信号のボールが上がっていれば進行(go)
、
上がっていなければ停止(don’t go)の合図でした。隣駅の駅
員が望遠鏡でボール信号を見ながらバーボンをちびちびやって
いた際に、ボールが上がり(ボールがハイになり)
、それを確認
した駅員が急いで一気にバーボンを飲み干すためにソーダ水を
入れたのが、このカクテルの由来になっているとか。また、英国
のゴルフ場のカウンターでウイスキーを飲んでいた人が、急に
自分のプレー時間が来たことを知らされて、チェイサーにあった
2016 August 第785号
麹町 1 丁目
麹町 3 丁目
至永田町
パン屋
至内堀通り
至永田町
■地下鉄半蔵門線 半蔵門駅下車 4番出口徒歩3分
■地下鉄有楽町線 麹町駅下車 3番出口徒歩7分
ませんがついつい飲み過ぎてしまい、爽快感が不愉快感となら
ないよう注意が必要です。また、不愉快感はパートナーへも飛
び火することもありますので、この夏を無難に過ごすために、く
れぐれもご注意下さい。
(matsumo.)
印刷所
港北出版印刷株式会社 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-7-7
JEMAウェブサイト www.jema-net.or.jp
62 電 機 2016・August
(JEMA会員については会費中に本誌頒価が含まれています。)[2016 ⓒ 禁無断転載]