カヤック (3904・東証マザーズ) 2016 年 8 月 26 日 クリエイターを軸とした成長を目指すグループ ベーシックレポート ネット広告の受託制作、スマホゲーム用アプリの提供等行う 同社グループは、(1)新しいアイデア、新しい技術およびサービス を用いたインターネット広告の制作を受託し、クライアントのマーケ (株)QUICK 佐久間 聰 ティングおよびブランディングを支援する「クライアントワーク」、 (2) Google Inc.が運営する Google Play や Apple Inc.が運営する App Store 会 社 概 要 所 在 地 神奈川県鎌倉市 代 表 者 柳澤 大輔 設 立 年 月 資 本 なサービスとしている。現在はソーシャ 489 百万円 (2015/12/31 現在) 上 場 日 U R L 種 しており、クリエイターを軸とした成 長を目指している。 情報・通信 価 当研究所では業績拡大を予想。人員増強で各サービス伸長へ QUICK 企業価値研究所では、今 16/12 期通期の連結業績見通しについ 999 円 1,344 円 (06/10) 510 円 (02/12) 年初来高値 年初来安値 発行済株式数 15,040,400 株 売 買 単 位 100 株 時 価 総 額 15,025 百万円 予 想 配 当 無配 ( 会 予 想 社 ) E P S 21.94 円 ( ア ナ リ ス ト ) 実 績 業 P B R 績 2015/12 2017/12 売上高 百万円 向 て、売上高は前期比 38%増の 51 億円、営業利益は同 31%増の 5.2 億 円を予想する。会社側の今 16/12 期通期の業績予想と同額を見込む。 サービス別の売上高は、クライアントワークが同 15%増の 13.5 億円、 ソーシャルゲームが同 23%増の 25.0 億円、Lobi が同 2.1 倍の 7.5 億 円、その他サービスが同 3.4 倍の 5.0 億円を予想。会社側の予想と同 様、いずれのサービスも大きく伸びる見込み。 来期(17/12 期)の連結業績見通しについて、売上高は前期比 31% 増の 67 億円、営業利益は同 30%増の 6.7 億円を予想する。同社は業容 拡大のため人員の増強を進めている。当研究所では、クライアントワ ークをはじめ各サービスで人員の増強が図られ、全体的に業績は拡大 するとみている。 前期比 % 前期比 % 当期純利益 百万円 前期比 % - 261 - 17.39 前期比 % 37.6 515 31.1 530 33.9 サマリー②(ゴシック・10.5 ポイント) 330 26.3 21.75 想 5,100 ア ナ リス ト 予想 5,100 ※サブタイトルの位置は,サマリー①の分量により上下させる。 37.6 515 31.1 530 33.9 330 26.3 21.75 ア ナ リス ト 予想 6,700 31.4 670 - 30.1 395 EPS 円 (2016 年 02 月発表) 予 392 経常利益 百万円 3,705 社 - 営業利益 百万円 績 実 会 2016/12 8.00 倍 動 同社グループの従業員のうち、クリ いる。クリエイティブ力などを強みと 主要指標 2016/08/24 現在 株 ルゲームが売上高の半分程度を占める。 エイターが占める比率は 90%を超えて 2014/12/25 http://www.kayac.com/ 業 スマートフォンゲームに特化した、ユーザー間の交流を活性化するゲ ームコミュニティ「Lobi」の 3 つを主要 1998/08 金 などのプラットフォームを通じた「ソーシャルゲーム」の提供、(3) 670 26.4 420 27.3 27.92 (注)EPS は 16 年 7 月 1 日付の株式分割(1 株→2 株)の影響を調整 アナリストレポート・プラットフォーム 1 えんけつ 会 社 会 社 概 概 要 要 会社概要 インターネット広告の制作受託、スマホゲーム用アプリの提供などを手掛 会社概要 ける。同社グループのサービスは(1)新しいアイデア、新しい技術および サービスを用いたインターネット広告の制作を受託し、クライアントのマー ケティングおよびブランディングを支援する「クライアントワーク」、 (2) Google Inc.が運営する Google Play や Apple Inc.が運営する App Store な どのプラットフォームを通じた「ソーシャルゲーム」の提供、 (3)スマート フォンゲームに特化した、ユーザー間の交流を活性化するゲームコミュニテ ィ「Lobi」の 3 つを主要なサービスとしている。 経 営 者 経営者 代表取締役 CEO 柳澤大輔 1996 年 4 月、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント入社。1998 年 8 月、合資会社カヤック設立、無限責任社員。2015 年 1 月、同社設立、 代表取締役就任(現任) 。同年 9 月、株式会社テー・オー・ダブリュー取締 役就任(現任) 、同年 11 月、同社子会社プラコレ取締役就任(現任) 。2016 年、クックパッド株式会社社外取締役就任。 企 業 理 念 企業理念 「つくる人を増やす」 。この言葉は、言い換えると同社が創業時から名乗 っている「面白法人」 (「面白がって楽しく働く人が世の中に増えれば、世の 中がより幸せになる」との思いが込められている)というキャッチコピーに 込められた「面白がって楽しく働く人を増やす」という思いを実現するため の方法論でもある。人に何かをやらされている時はつまらないものだが、主 体性を持って、この作品を、この会社を、この地域を、この国を…「自分が つくっているのだ」と思えれば、きっと楽しくなるはず。世の中につくる人 を 1 人でも多く増やしたい。そうすればきっと、人生を面白がり楽しむ人が 増えて、幸せな社会につながっていく。 アナリストレポート・プラットフォーム 2 会 社 沿 概 要 革 会社概要 1998 年 8月 様々なインターネットサービスを提供することを目的 として、合資会社カヤックを設立 2001 年 10 月 合資会社カヤックを自社サービスの開発・運営に特化 させるため、クライアントワークに特化した会社とし て、株式会社クーピーを設立 2005 年 1月 株式会社カヤックを設立 5月 合資会社カヤックを解散 2008 年 9月 業務効率化を目的として、株式会社クーピーを合併 2010 年 1月 株式会社ディー・エヌ・エーのモバゲープラットフォ ームのオープン化と同時に、同社として初となるソー シャルゲームをリリース、ソーシャルゲームサービス の展開を開始 12 月 2013 年 5月 グループチャットアプリ「ナカマップ」をリリース 「ナカマップ」を「Lobi」へ名称変更し、スマートフ ォンゲームに特化したゲームコミュニティサービスを 提供 2014 年 12 月 東証マザーズに株式を上場 2015 年 11 月 ブライダル事業を営むプラコレを子会社として設立 2016 年 2月 ゲームの企画・開発・運営を手掛けるガルチを子会社 化 (出所)有価証券報告書、会社公表資料 アナリストレポート・プラットフォーム 3 会 大 社 概 株 要 主 株主 会社概要 所有株式数 (株) 所有比率 (%) 1 柳澤 大輔 1,983,200 26.39 2 貝畑 政徳 1,710,000 22.76 2 久場 智喜 1,710,000 22.76 4 株式会社サイバーエージェント 150,000 2.00 128,900 1.72 5 日本トラスティ・サービス信託銀行株式 会社(信託口) 6 株式会社スタートトゥデイ 75,000 1.00 7 みずほ証券株式会社 62,100 0.83 56,900 0.76 52,800 0.70 52,000 0.69 8 日本マスタートラスト信託銀行株式会 社(信託口) MORGAN STANLEY & CO. INTERNATIONAL PLC 9 (常任代理人)モルガン・スタンレー MUFG 証券株式会社 10 MSCO CUSTOMER SECURITIES(常任代理人) モルガン・スタンレーMUFG 証券株式会社 (出所)2015 年 12 月期有価証券報告書 アナリストレポート・プラットフォーム 4 事 事 業 業 概 の 内 要 容 会社概要 (1)企業向けにネ ット上で提供される 広告を制作 同社グループのサービスは(1)クライアントワーク、 (2)ソーシャルゲ ーム、 (3)Lobi、 (4)その他サービスに分かれている。以下、各サービスに ついて解説していく。 (1)クライアントワーク 企業向けにインターネット上で提供される広告コンテンツの制作を行っ ている。広告コンテンツの中でも、サンリオピューロランド夏の集客プロモ ーション施策である「ちゃんりおメーカー」のように、ソーシャルネットワ ークサービス(SNS)上で話題になるような新しい技術、新しいサービスお よびアイデアを用いた企画を手掛けており、これまでにないユニークな体験 が SNS 上で話題になることで、広告の相乗効果を生む WEB キャンペーンの制 作を主力のフィールドとしている。また、VR(※1)等の最先端の技術を用い た高付加価値なコンテンツの制作に挑戦することで、最先端の技術・ノウハ ウが蓄積され、結果として高品質・高付加価値なサービスの提供へとつなが っている。 最近は広告領域にとどまらず、サカワと共同開発・業務提携したハイブリ ッド黒板アプリ「Kocri」 (コクリ)等の新しい試みも実施している。また、 総合 PR 会社のベクトルと「ベヤック」、イベント企画・制作を手掛けるテー・ オー・ダブリューと「TOWAC」という形で業務提携をし新たなプロジェクト も行っている。 なお、2015 年は、Yahoo!JAPAN インターネット クリエイティブアワ ード 2015 においてグランプリを獲得するなど、引き続き高い評価も得てい る。収益構造としては、キャンペーン、プロモーションを中心としたインタ ーネット広告の制作を、クライアントから直接、もしくは広告代理店を介し て、受託している。 (※1)VR とは、Virtual Reality(バーチャルリアリティ)の略称で仮想現実のことを 指し、コンピューターなどによって作り出されたサイバースペースをあたかも現実のよ うに体験する技術 図1. クライアントワーク ~新しい企画と技術で話題になるプロモーションキャンペーンを提供 企画力 ・ブレインストーミングによる 面白い企画をつくるノウハウ 技術力 ・新しい技術に挑戦する 組織風土 (注)ブレインストーミングとは、集団でアイデアを出し合うことによって 相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法 (出所)会社公表資料 アナリストレポート・プラットフォーム 5 事 業 概 要 (2)主にスマホ向 けゲームアプリを開 会社概要 発・運営 (2)ソーシャルゲーム 主にスマートフォン向けにネイティブアプリ(※2)として、ソーシャルゲ ームを提供している。アプリの展開先は、 主に Google Inc.の運営する Google Play や Apple Inc.が運営する App Store などのプラットフォームとなって いる。ソーシャルゲームは、ユーザーが他のユーザーと協力してゲームを進 めるゲーム設計に特徴があるため、シリーズ累計 600 万ダウンロードを超え る「ぼくらの甲子園!」シリーズに代表されるようにゲームを通じてユーザ ー間におけるコミュニケーションを促し、ユーザーが強い仲間意識を感じら れること(同社呼称:共闘スポーツ RPG)を意識したサービスを提供してい る。また、一部アプリについては、他社と共同して開発することにより、ノ ウハウ・技術・ブランド等の資産の共有や開発リスクの低減といった協業の メリットを享受する形でのサービスの提供を実施している。 収益構造としては、自社のオリジナルタイトルの場合、ユーザーは原則無 料でサービスを利用することができるが、一部アイテムや機能を有料で提供 することで課金収入を得ている。他社と協業でアプリを提供する場合は、同 社がアプリを開発するため、開発受託による収益と課金収入のレベニューシ ェアから構成されている。 (※2)ネイティブアプリとは、アプリのうち、パソコンやスマートフォンなどの端末が 有するマイクロプロセッサーが直接解釈し実行できる形式のもの 図2. 主にスマートフォンを対象にソーシャルゲームを提供 ○同社の主力タイトル ・「ぼくらの甲子園!ポケット」 ・「冒険クイズキングダム」 (出所)Google Play アナリストレポート・プラットフォーム 6 事 業 概 要 (3)スマホゲームに 特化したゲームコミ 会社概要 ュニティを提供 (3)Lobi スマートフォンゲームに特化したゲームコミュニティ「Lobi」の開発・運 営を行っている。ユーザー間で気軽にコミュニケーションがとれるチャット 機能をはじめ、プレイ動画の録画機能、共闘メンバーを募集するためのマル チプレイ機能等、スマートフォンゲームと相性の良い機能を開発・提供する ことで、ユーザーにとってより面白く、 「Lobi」と連携したタイトルの継続 率・ARPU 等の指標を向上させるとともに口コミによる拡散効果を持たせ、 ソーシャルアプリケーションプロバイダー(SAP)にとってより導入しやす いサービスにすることで、相乗的にユーザー数の拡大を図っていく。16 年 8 月時点において、800 以上のタイトルと連携するとともに、29 万以上のユー ザーコミュニティが形成されている。 収益構造としては、直接または広告代理店およびアドネットワーク事業者 (※3)の仲介により、 「Lobi」内のインターネット広告枠の販売を行うととも に、アドネットワーク事業者に動画広告を提供することで広告収益を得てい る。また、SAP へのソフトウェア開発キット(※4)を一部有料で提供している。 (※3)アドネットワークとは、インターネット広告のうち、広告媒体の WEB サイトを多 数集めて広告配信ネットワークを形成し、その多数の WEB サイト上で広告を配信するタ イプの広告配信手法 (※4)ソフトウェア開発キット(Software Development Kit=SDK)とは、ある特定の ハードウェアやオペレーティングシステム上で動作するソフトウェアを開発する際に必 要な各種のツールをひとまとめにしたもの。これらを提供することにより、各ソーシャ ルゲームと Lobi との導線を確立することができ、Lobi のユーザー数の増加、サービス の拡充につなげることが可能となる 図3. スマートフォンゲームに特化したゲームコミュニティ「Lobi」 ユ ー チャットや動画を使って 攻略情報やフレンド募集 などゲームユーザーが 集うコミュニケーション 機能を提供 ゲームをより面白くする 機能を提供(一部有料) ゲ ・チャット機能 ・プレイ動画機能 ・公認コミュニティ プレミアム会員・ スタンプ等の提供 ー ム 広告による送客 開 ザ 課金収入 発 広告収入 ー 者 リアルイベントの提供 (出所)会社公表資料 アナリストレポート・プラットフォーム 7 事 業 概 要 (4)主要 3 サービス に 続 く 次の 柱と な 会社概要 るサービスを育成 (4)その他サービス その他サービスとして、オリジナリティを重視した主にインターネットサ ービスの開発・運営・販売を行っている。HTML5 等のコード投稿コミュニテ ィ「jsdo.it」など市場としてはあまり大きくないが、その中においては多 くのユーザー数を抱えるサービスを運営している。また、ゲーム音楽オーケ ストラ「JAGMO」 、ウェディングプランナーとユーザーをつなぐブライダルメ ディア「プラコレ Wedding」、スマートフォンゲームに特化した e-sports サ ービス「RANKERS」等、新規サービスの開発も継続的に行っている。前述し た主要 3 サービスに続く次の柱となるサービスの育成に取り組んでいる。 図4. その他サービスの一例 ~ウェディングプランナーとユーザーをつなぐ プラコレwedding (出所)会社HP アナリストレポート・プラットフォーム 8 事 業 概 要 同社グ ル ープ の ク リエイター比率は 会社概要 90%超 ●面白コンテンツをユーザーに届けるクリエイターを軸に成長目指す 同社グループの従業員のうち、クリエイターが占める比率は 90%を超え ており、クリエイティブ力などが強み。面白コンテンツをユーザーに届ける という事業を一貫して実施している。社内起業に近い制度(同社呼称「873 号室」 )を設けるなど働き方の多様化にも取り組んでおり、事業・組織の両 面から多様化を推進。クリエイターを軸とした成長を目指している。 図5. 面白法人カヤックのビジネスの流れ ユ ー ザ ー クライアント サービスを伸ばせる パートナー企業等 売却 同社から直接提供 クライアントを通じて提供 パートナーとともに提供 面 白 コ ン テ ン ツ 創 出 面白法人グループのクリエイター ・クリエイター比率90%超の組織 ・873号室(社内起業に近い制度)など働き方の多様化 ・クリエイテイブ力・採用力などが強み ガルチ ベトナム子会社 (出所)会社公表資料 主力サービス間の シナジーを重視 ●主要領域である 3 サービスを重点分野と捉え成長を図る 前述の通り、クライアントワーク(広告) 、ソーシャルゲーム(コンテン ツ) 、Lobi(コミュニティ)の 3 つのサービスが主要領域。同社は主要領域 である 3 サービスおよびその周辺事業を重点分野と捉え、成長させていく方 針。また、スマホアプリ「セブンナイツ」の CM 放送記念キャンペーン制作 (クライアントワークと Lobi)、 「ホテルモントレ」ウェディングサイト制 作(クライアントワークとプラコレ Wedding)など主力サービス間のシナジ ーを重視している。 図6. 主要3サービスの相関図 送客・プロモーション支援 プロモーション支援 クライアントワーク (広告) 送客/機能の提供 Lobi (コミュニティ) ソーシャルゲーム (コンテンツ) ゲームノウハウの提供 送客 コミュニティ(チャット・動画)機能の提供 (出所)会社公表資料 アナリストレポート・プラットフォーム 9 事 業 売 上 概 構 要 成 会社概要 ソーシャルゲームが売上高の半分程度を占める 図 7 には同社の前 15/12 期の連結売上高の構成比を示した。内訳は、クラ イアントワークが 31.7%、ソーシャルゲームが 54.7%、Lobi が 9.7%、そ の他サービスが 3.9%となっている。ソーシャルゲームが半分以上を占めて いる。その前の 14/12 期(単体決算)でも、ソーシャルゲームは 44.7%と 半分近くを占め、割合が最も高かった。ソーシャルゲームが現在、同社の主 力サービスと言える。会社側は、主力のソーシャルゲームを伸ばしつつ、ク ライアントワーク、Lobi の拡大に注力、さらに、その他サービスの中から 「プラコレ Wedding」など次の柱となるサービスの育成にも取り組んでおり、 事業全体の成長を図っている。 図7. 売上高構成比 ~ソーシャルゲームが半分以上占める 3.9% クライアントワーク 9.7% 31.7% ソーシャルゲーム Lobi 54.7% その他サービス (注)15/12期連結業績 (出所)決算資料 アナリストレポート・プラットフォーム 10 業 績 上期は売上高が 59%増、営業利益 会社概要 が 10%増 ●全てのサービス部門で売り上げが大きく伸長 今 16/12 期上期の連結業績は、売上高が 25.6 億円、営業利益が 2.3 億円。 前 15/12 期 3Q 累計までは単体決算だったため、単体決算だった前 15/12 期 上期実績との比較では、売上高は 59%増、営業利益は 10%増となった。売 上高営業利益率は 9.0%と前 15/12 期上期の 13.0%から低下した。事業規模 の拡大に伴う先行投資で人件費・外注費が増加したことなどが響いた。 今 16/12 期上期業績の会社側の通期業績予想(後述)に対する進捗率は、 売上高が 50.2%、営業利益が 44.8%。会社側では業績は下期偏重の見込み と説明しており、期初時点の通期業績予想を修正していない。 以下、サービス別の動向を解説する。売上高をサービス別にみると、クラ イアントワークが 7.0 億円、ソーシャルゲームが 14.5 億円、Lobi が 2.8 億 円、その他サービスが 1.3 億円。単体決算だった前 15/12 期上期に比べ、ク ライアントワークは 35%増、ソーシャルゲームは 60%増、Lobi は 76%増、 その他サービスは 4.9 倍と全てのサービス部門で大きく伸びた。 クライアントワークでは、1Q には総合人材サービスを手掛けるインテリ ジェンス・DODA と「未来の面接プロジェクト」第一弾として幕末の偉人で ある坂本龍馬との擬似面接体験コンテンツ「VR 面接」を提供。同社は VR を 利用した案件等新しい取り組みを積極的に行っている。このほか、2Q に同 社が手掛けた主要案件としては、化粧品首位の資生堂マジョリカ マジョル カのギフト需要拡大プロモーションなどがある。 ソーシャルゲームでは、主力タイトル「ぼくらの甲子園!ポケット」が引 き続き順調に推移した。加えて、2Q からは、16 年 2 月に 75%の株式を取得 し連結子会社化したガルチ(15/9 期通期業績は売上高 3.5 億円、営業利益 は 4 百万円)が貢献。ガルチは受託開発収入が中心で、ソニー・ミュージッ クエンタテインメントがリリースした新規タイトル「真空管ドールズ」 (Android 版のリリースは 16 年 4 月、 iOS 版は同年 7 月)の開発に関わった。 Lobi では、プレイ動画の録画機能をはじめとする機能の拡充に努めると ともに、ビッグタイトルを中心に「Lobi」と連携するタイトル数を積極的に 増やした結果、公開コミュニティ数が前 15/12 期末の 23.9 万→26.8 万以上 に、SDK(ソフトウェア開発キット)累計導入アプリ数は同 745 アプリ→789 アプリに、公認コミュニティ(各スマートフォンゲームアプリが公認した Lobi 内に設置されているコミュニティ)数は同 138 アプリ→140 アプリ(い ずれも 16 年 5 月 15 日時点)に、いずれも増加するなどサービスを拡大した。 1Q 末からは課金サービス「Lobi プレミアムサービス」の提供を開始。また、 2Q には東京・秋葉原でリアルイベントも開催した。 アナリストレポート・プラットフォーム 11 業 績 その他サービスでは、ゲーム音楽オーケストラ「JAGMO」による公演を開 会社概要 2Q は前四半期比 大幅増収も、費用 増で営業減益 催したほか、ブライダルメディア「プラコレ Wedding」やスマートフォンゲ ームに特化した e-sports サービス「RANKERS」の強化に努めた。 四半期毎にみると、今期 2Q の売上高は 14.2 億円、営業利益は 1.1 億円。 単体決算だった前年同期(前 15/12 期 2Q)との比較では、売上高は 77%増、 営業利益は同 1%減だった。また、前四半期(今期 1Q)との比較では、売上 高は 24%増、営業利益は同 13%減だった。今期 2Q の売上高は四半期として は過去最高となった。ガルチの寄与などで主力のソーシャルゲームがけん引 したことが主因だ。半面、事業規模の拡大に伴う人件費や外注費の増加、テ レビ CM 等の広告宣伝費の増加で営業減益となった。 図8. 四半期毎の売上高の推移 (百万円) 1,600 1,416 1,400 1,200 1,002 1,000 800 788 998 808 802 1Q 2Q 1,097 1,143 4Q 1Q 625 479 600 400 200 0 1Q 2Q 3Q 4Q 14/12期 3Q 15/12期 2Q 16/12期 (注)15/12期3Qまで単体決算 (出所)決算資料、会社公表資料 図9. 四半期毎の営業利益の推移 (百万円) 200 132 150 149 117 100 109 123 108 1Q 2Q 100 50 35 9 -59 1Q 2Q 0 -50 -100 3Q 14/12期 4Q 1Q 2Q 3Q 15/12期 4Q 16/12期 (注)15/12期3Qまで単体決算 (出所)決算資料、会社公表資料 アナリストレポート・プラットフォーム 12 業 績 会社側は 今期 38%増収、営業利 会社概要 益 31%増を予想 売上高営業利益率 10%の確保が目標 会社側は、今 16/12 期通期の連結業績見通しについて、売上高は前期比 38%増の 51 億円、営業利益は同 31%増の 5.2 億円を予想している。 サービス別の売上高は、クライアントワークが同 15%増の 13.5 億円、ソ ーシャルゲームが同 23%増の 25.0 億円、Lobi が同 2.1 倍の 7.5 億円、その 他サービスが同 3.4 倍の 5.0 億円を見込む。いずれのサービスも大幅に伸び る見通し。業容の拡大とともに外注費や広告宣伝費、人件費など費用も増加 するが、売上高営業利益率 10%の確保を目標としており、大幅な増収によ り営業利益も大幅増益を予想している。 サービス別の取り組みについて、クライアントワークでは、引き続き新し い技術と新しいアイデアの追求によるクリエイティブの高いサービスの提 供により収益の拡大および安定化を図る方針。同社はブレインストーミング (集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘 発を期待する技法)により企画を多く生み出している。一方、技術面では、 VR(仮想現実)を重点分野と認識しており、VR 部という VR に特化した部署 を設置し、技術強化を図っている。短納期のキャンペーン案件に特化するこ とで案件数を数多く積み上げ、売上高を伸ばしていく。 ソーシャルゲームでは、主力タイトルの「ぼくらの甲子園!ポケット」が 堅調に推移する見通し。新規ユーザーの獲得・定着を図るため、初心者向け の大型アップデートを行い、テレビ CM を流した。また、受託開発収入が中 心のガルチの貢献も見込んでいる。同社オリジナルタイトルおよび他社から の受託開発収入により売上高を増やす考え。 Lobi では、公開コミュニティ数、SDK 累計導入アプリ数、公認コミュニテ ィ数の増加に注力。8 月 14 日時点では、それぞれ 29.8 万以上(前述の 5 月 15 日時点では 26.8 万以上)、829 アプリ(同 789 アプリ)、143 アプリ(同 140 アプリ)に伸長。課金サービス「Lobi プレミアムサービス」の提供も開 始しており、収益源の多様化により売り上げを大きく伸ばす。 その他サービスでも、「プラコレ Wedding」 、「RANKERS」、 「JAGMO」等を育 成、他の新規サービスの創出に取り組んでいく。 同社は各サービス単独での収益拡大のみならず、シナジー効果の発現によ り全社としての収益拡大につなげることを目指している。この度、ゲーム宣 伝を手掛ける「ゲーセン部」が発足した。クライアントワーク(広告プロモ ーション手法) 、ソーシャルゲーム(ゲーム開発ノウハウ)、Lobi(ゲームコ ミュニティ運用力)を掛け合わせることで、キャンペーンやテレビ CM・Web 連動施策、オフ会などのリアルイベント、コミュニティ形成など、ゲーム会 社のニーズに合わせたプロモーションを一貫して提供していく方針。 アナリストレポート・プラットフォーム 13 業 績 当研究所では人員 増強により業績拡 会社概要 大を予想 当研究所では今期、来期とも大幅な増収増益を予想する QUICK 企業価値研究所では、今 16/12 期通期の連結業績見通しについて、 売上高は前期比 38%増の 51 億円、営業利益は同 31%増の 5.2 億円を予想す る。会社側の今 16/12 期通期の業績予想と同額を見込む。サービス別の売上 高は、クライアントワークが同 15%増の 13.5 億円、ソーシャルゲームが同 23%増の 25.0 億円、Lobi が同 2.1 倍の 7.5 億円、その他サービスが同 3.4 倍の 5.0 億円を予想。いずれも会社側の予想と同額を見込んでいる。 来期(17/12期)の連結業績見通しについて、売上高は前期比31%増の67 億円、営業利益は同30%増の6.7億円を予想する。サービス別の売上高は、 クライアントワークが同11%増の15億円、ソーシャルゲームが同20%増の30 億円、Lobiが同60%増の12億円、その他サービスが同倍増の10億円を見込む。 同社は業容拡大のために人員の増強を進めている。当研究所では、同社の 連結従業員数は前 15/12 期末の 233 人から今 16/12 期末には 350 人程度、 17/12 期末には 450 人程度へ増加すると想定。クライアントワークをはじめ 各サービスで人員の増強が図られ、全体的に業績は拡大する見通し。クライ アントワークではプロジェクト数の増加、ソーシャルゲームでは現在開発中 のオリジナルタイトルの新規投入やガルチの通期寄与などを予想。課金サー ビスを開始した Lobi や新規サービスの成長が期待できるその他サービスは 高い成長率を見込んでいる。 表1. 通期業績表 ~会社予想と当研究所予想 15/12期 16/12期 17/12期 実績 会社予想 当研究所予想 当研究所予想 (億円) 前期比 前期比 前期比 前期比 売上高 37.1 28% 51.0 +38% 51.0 +38% 67.0 +31% 営業利益 3.9 98% 5.2 +31% 5.2 +31% 6.7 +30% 経常利益 4.0 2.2倍 5.3 +34% 5.3 +34% 6.7 +26% 純利益 2.6 2.2倍 3.3 +26% 3.3 +26% 4.2 +27% (注)15/12期より連結決算。15/12期実績の前期比は14/12期単体決算との比較 (出所)決算資料、当研究所 図10. 通期業績の推移 (百万円) 8,000 6,000 4,000 売上高(左) 営業利益(左) 10.6% 7.8% 6.9% 2,803 2,896 売上高営業利益率(右) 10.1% 6,700 10.0% 10% 5,100 3,705 5% 2,000 0 15% 0% 220 199 393 13/12期 14/12期 15/12期 515 670 16/12期 17/12期 -5% (注1)13/12期、14/12期は単体業績。15/12期以降は連結 (注2)16/12期、17/12期は当研究所予想 (出所)決算資料、会社公表資料、当研究所 アナリストレポート・プラットフォーム 14 (出所)㈱QUICK 上記チャート図の一部又は全部を、方法の如何を問わず、また、有償・無償に関わらず第三者に配布してはいけません。 上記チャート図に過誤等がある場合でも㈱QUICK 社及び東京証券取引所は一切責任を負いません。 上記チャート図の複製、改変、第三者への再配布を一切行ってはいけません。 2013/12 株 価 推 移 2014/12 2016/12 予 (アナリスト) 2015/12 株価(年間高値) 円 - 990 1,800 - 株価(年間安値) 円 - 768 635 - 月間平均出来高 千株 - 13,968 7,894 - 売 上 高 百万円 2,802 2,896 3,705 5,100 営 業 利 益 百万円 219 198 392 515 経 常 利 益 百万円 216 182 395 530 百万円 131 118 261 330 業 績 推 移 当 期 純 利 益 E P S 円 10.10 9.04 17.39 21.75 R O E % 21.4 11.5 15.6 16.5 流動資産合計 百万円 1,346 1,908 2,061 - 固定資産合計 百万円 460 444 569 - 資 百万円 1,806 2,352 2,631 - 産 合 計 貸借対照表 流動負債合計 百万円 636 754 865 - 主 要 項 目 固定負債合計 百万円 452 259 94 - 負 百万円 1,088 1,014 960 - 株主資本合計 百万円 618 1,246 1,508 - 純 資 産 合 計 百万円 718 1,338 1,670 - 営業活動による CF 百万円 300 56 237 - 投資活動による CF 百万円 4 -12 -97 - 財務活動による CF 百万円 -204 317 -172 - キャッシュフ ロー計算書 債 合 計 主 要 項 目 現金及び現金同等 百万円 846 1,209 1,176 物の期末残高 (注 1)2014 年 12 月、株式を東証マザーズに上場 (注 2)2013/12 期および 2014/12 期は単体業績。2015/12 期以降は連結 (注 3)株価高安、出来高、EPS は 16 年 7 月 1 日付の株式分割(1 株→2 株)の影響を遡及調整している アナリストレポート・プラットフォーム - 15 リ 事 関 ス ク す 業 る リ 会社概要 分 析 に ス ク 業界動向について 過去において、デジタルコンテンツ市場は、インターネット市場の拡大に 伴うインターネット利用者の増加やインターネット広告の増加、スマートフ ォン端末等の新デバイスの普及、SNS 等のソーシャルコミュニティの増加に より高成長を続けてきた。デジタルコンテンツ市場において市場成長が阻害 されるような状況が生じた場合には、同社の事業および業績に影響を及ぼす 可能性がある。 競合他社について 同社グループが提供するデジタルコンテンツは、ユーザー嗜好の変化の影 響を受けやすく、また、多数の競合他社が存在する。特にソーシャルゲーム は、ユーザーからの課金収入を主としているため、その影響を大きく受ける。 したがって、ユーザー嗜好に即時対応し、満足度の高いサービスの提供を行 うため、新規コンテンツの開発ラインを常に維持することやコンテンツのラ イフサイクルの適正化を図ることで対応している。しかしながら、ユーザー 嗜好と乖離した施策を行った場合および同社のデジタルコンテンツが競合 他社と比較して優位性を保てなくなった場合は、同社グループの事業および 業績に影響を及ぼす可能性がある。 新規事業・サービスについて 同社グループは、今後も事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するため に、積極的に新規事業・サービスに取り組んでいく方針である。不確定要素 が多く存在する可能性があり、新規事業・サービスの展開が予想通りに進ま ない場合、同社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性がある。また、 新規事業への取り組みに付随したシステム投資・広告宣伝費等の追加的な支 出が発生し、利益率が低下する可能性がある。 取引依存度の高い主要な取引先について 現状において、同社グループの売上に関して、スマートフォンの普及が進 む中で、Google Play を運営する Google Inc.および App Store を運営する Apple Inc.への収益依存割合が大きくなってきており、これらのプラットフ ォームサービスの事業戦略の転換並びに動向によっては、手数料等の変動等 何らかの要因により、同社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性 がある。 タイトルの継続的な提供について ソーシャルゲームは提供開始から数カ月~1 年程度でピークアウトする 傾向が一般的であり、安定的な収益をあげるためには、多数のユーザーを獲 得できるタイトルを継続的に提供し続ける必要がある開発の遅延等により、 多数のユーザーを獲得できるタイトルを継続的に提供できなかった場合に は、同社の事業および業績に影響を及ぼす可能性がある。 アナリストレポート・プラットフォーム 16 デ ィ ス ク レ ー マ ー 1.本レポートは、株式会社東京証券取引所(以下「東証」といいます。 )が実施する「アナリストレポー ト・プラットフォーム」を利用して作成されたものであり、東証が作成したものではありません。 会社概要 2.本レポートは、東証によるレビューや承認を受けておりません(ただし、東証が文面上から明らかに 誤りがある場合や適当でない場合にレポート作成会社に対して指摘を行うことを妨げるものではありま せん) 。 3.レポート作成会社及び担当アナリストには、この資料に記載された企業との間に本レポートに表示さ れる重大な利益相反以外の重大な利益相反の関係はありません。 4.本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有価証券の 取引及びその他の取引の勧誘又は誘引を目的とするものではありません。有価証券の取引には、相場変 動その他の要因により、損失が生じるおそれがあります。また、本レポートの対象となる企業は、投資 の知識・経験、財産の状況及び投資目的が異なるすべての投資者の方々に、投資対象として、一律に適 合するとは限りません。銘柄の選択、投資判断の最終決定は、投資者ご自身の判断でなされるようにお 願いいたします。 5.本レポート作成にあたり、レポート作成会社は本レポートの対象となる企業との面会等を通じて、当 該企業より情報提供を受けておりますが、本レポートに含まれる仮説や結論は当該企業によるものでは なく、レポート作成会社の分析及び評価によるものです。また、本レポートの内容はすべて作成時点の ものであり、今後予告なく変更されることがあります。 6.本レポートは、レポート作成会社が信頼できると判断した情報に基づき記載されていますが、東証及 びレポート作成会社は、本レポートの記載内容が真実かつ正確であり、そのうちに重要な事項の記載が 欠けていないことやこの資料に記載された企業の発行する有価証券の価値を保証又は承認するものでは ありません。本レポート及び本レポートに含まれる情報は、いかなる目的で使用される場合におきまし ても、投資者の判断と責任において使用されるべきものであり、本レポート及び本レポートに含まれる 情報の使用による結果について、東証及びレポート作成会社は何ら責任を負うものではありません。 7.本レポートの著作権は、レポート作成会社に帰属しますが、レポート作成会社は、本レポートの著作 権を東証に独占的に利用許諾しております。そのため本レポートの情報について、東証の承諾を得ずに 複製、販売、使用、公表及び配布を行うことは法律で禁じられています。 <指標の説明について> 本レポートに記載の指標に関する説明は、東京証券取引所ウェブサイトに掲載されております。 参照 URL ⇒ http://www.jpx.co.jp/listing/ir-clips/analyst-report/02.html アナリストレポート・プラットフォーム 17
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