基板 CAD で今どき電子工作コーナ LTspiceやKiCadで始めよう! 世界中のパーツ を動かしてカッコいいハードウェア作り! 一人 メーカ・ デビュー 誰でもキマル! プリント基板道場 連載 第1回 必殺技その① ビクともしない塗りつぶし(利用ツール:LTspice) ∼まず足場を固める! トランポリンの上じゃワンチップ・マイコンも形無し…∼ 加東 宗 Takashi Kato 電源電圧を安定化させるコンデンサ (パスコン)1個のIC当たり数個使う PICマイコン やRF IC USB 表層 PICマイコン やRF IC VDD 表層と裏層をつ なぐ導電性の穴 (スルー・ホール) GNDに接続 される USB 細い線状のGND プリント・パターン 塗りつぶし状のGND プリント・パターン (面状の銅箔) 裏層 基材(樹脂) 例えばUSBなどのデータ通信用 のプリント・パターン (a)GNDプリント・パターンその 1(おすすめの技) 例えばUSBなどのデータ通信用 のプリント・パターン (b)GNDプリント・パターンその 2 (細い線状で描く従来の方法.おすすめしない) 図 1 マイコンや FPGA,RF チップなど,最近の高速化したワンチップ IC の真下や信号線の下層にある GND パターンは塗りつぶし状(ベ タまたはプレーンと呼ぶ) にしないと安定した動作が得られない 図(a)のほうが図(b)よりも誤動作の可能性が低い.ベタ状の GND パターンの電位を揺するエネルギは,主に IC の電源−GND 間に接続するたくさんの パスコンを介して供給される.これらのパスコンの実装位置が適切でないと,面の電位が振動する共振が起きて IC が誤動作したり,データ通信に失敗 したりする.本稿では,フリーの電子回路シミュレータ LTspice を使って,適切なベタ GND の作り方を伝授する 商用にも利用できてプロも認める機能を備えたオ ープンソースの無料プリント基板 CAD KiCad(本誌 2016 年 7 月号 特集で紹介)が,大人気です.プリン ト基板を作ることができれば,なによりメーカ製の ようなカッコいいハードウェアを作ることができま す.ユニバーサル基板やブレッドボードじゃ,長持 ちもしないし愛着も今一つわいてきません.それに 世界中にあるレアな IC や超高性能な IC を実装した 基板も作れます. プリント基板は電子回路の大切な「基盤」でもあ ります.IC が少し動作しただけでの基盤がばたつ いたのでは,せっかくの性能が台無しです.そこで 本連載では,プロ御用達の無料電子回路シミュレー タ LTspice やプリント基板 CAD KiCad をどんどん 活用して,正しい作り方を伝授していきます. 本連載 第 1 回は,LTspice を使って,基本中の基 本 塗りつぶしプリント・パターンの正しい作り方 を紹介します.IC や回路にとって,安定な動作基 準 (グラウンド,GND)とエネルギ供給源 (電源)は 158 命綱です.魅力のあるワンチップ・コンピュータや FPGA,RF 無線 IC は,半導体の進化によって内部 のトランジスタがいつのまにか超高速化しています. 下手な塗りつぶしを作ると,大きな電圧の波が発生 して(共振現象という) ,IC や回路の足元やエネル ギ供給源が暴れます.本稿では,LTspice を使って IC が気持ちよく動ける塗りつぶしの形状を検討す る方法も紹介します. 〈編集部〉 GNDや電源には塗りつぶしプリント・ パターンがおすすめ GND と電源は電子回路の動作基準です.プリント・ パターンのどの位置の電位を測っても同じ (GND なら 0 V, 電源なら 3.3 V や 5.0 V) であるべきでしょう.でも, 実際は違います. 図 1 に示すのは,2 とおりの方法で描かれた PIC マ イコンのプリント・パターンです.図 1 (a)は,デー タ信号線の下に広い面状 (ベタまたはプレーンなどと いう)の GND プリント・パターンを敷いた例,図 1 (b) 2016 年 8 月号
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