2016/8/18 松本・長野・飯田支店 【問い合わせ先】松本支店 住所:松本市中央 2-1-27 TEL:0263-33-2180 URL:http://www.tdb.co.jp/ 特別企画:事業継続計画(BCP)に対する長野県内企業の意識調査 BCP を「策定している」13.1%、 「策定していない」41.5% 企業規模間で BCP の策定や資金対応などに格差 はじめに 近年、地震や台風、豪雨などに直面するケースが増えてきた。今年4月には熊本地震により大 きな被害が発生したが、長野県内でも地震に対する不安は根強く、ここ数年に限っても何度か大 きな地震を経験している。この夏は県内各地で不安定な天候に見舞われたが、こうした状況は今 後も続いていくものとみられる。自然災害だけでなく、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇 した場合の企業活動への影響を想定し、企業活動を休止することなく、または早期の復旧を果た し事業を継続させるため、あらかじめ防災・減災対策、災害発生時や発生後の対応措置などに対 する重要性が高まっている。 緊急事態発生時に事業を継続させるための計画「BCP」 。帝国データバンクでは今回、BCP に対す る企業の見解について調査を実施、その策定状況や準備状況などを探った。本調査は TDB 景気動 向調査 2016 年6月調査とともに行っている。調査期間は6月 17 日~30 日、調査対象は全国2万 3606 社、長野県 499 社で、有効回答企業数は全国1万 471 社(回答率 44.4%) 、長野県 229 社(同 45.9%) 。 調査結果(要旨) ■最も意識する災害は「地震」 、構成比は全国を上回る 52.8% 県内企業が普段、最も意識している災害は「地震」で、構成比は 52.8%と半数を超えた。 都道府県別では、高い方から 15 番目。 「自然災害」トータルでは 86.5%に達している。 ■BCP を「策定している」企業は 13.1%、 「現在、策定中」は 10.9% 事業継続計画(BCP)を「策定している」企業は 13.1%にとどまり、全国の 15.5%を下 回った。企業規模間でも格差が生じている。このほか、 「現在、策定中」は 10.9%、 「策定 を検討している」は 28.8%、 「策定していない」は 41.5%など。 ■経営者の代わりとなる人物が「いる」企業が 69.9% 経営者(代表)が不測の事態で不在となった場合、代わりとなる人物が「いる」企業は 69.9%、 「いない」企業は 17.9%だった。ここでも、規模間格差が大きい。 ■災害に備えた現預金、 「ほとんど保有していない」は 26.6% 災害に備えて「売上の1カ月分以上」の現預金を保有している企業は 34.9%。 「ほとん ど保有していない」も 26.6%に達し、小規模企業などでは資金不足が生じる可能性もある。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD. 1 2016/8/18 特別企画:事業継続計画(BCP)に対する長野県内企業の意識調査 1.最も意識する災害は「地震」で 52.8%、 「自然災害」を合わせると 86.5% 企業は普段、どのような災害を最も意識しているのだろうか。構成比が最も高かったのは「地 震」で 52.8%(121 社) 、以下「火災」27.1%(62 社) 、 「水害」4.8%(11 社)と「自然災害」が 続き、 「自然災害」トータルでは 86.5%に達した。 「地震」の構成比を規模別にみると、「大企業」 58.8%、 「中小企業」51.8%、 「(中小企業のうち) 小規模企業」54.2%。主要業界別では、「卸売」 56.4%、「建設」56.0%、「製造」53.3%、「サービ ス」47.6%となり、規模・主要業界すべての区分で 「地震」がトップである。 「地震」を選択した県内企業の構成比は、全国の 51.8%を上回っているが、極端に高いわけではない。 構成比が高かった都道府県は、「高知県」(80.0%)、 「静岡県」(71.6%)、「和歌山県」(70.2%)、「愛 媛県」 (66.1%) 、 「東京都」 (65.4%)などで、長野 県は 15 番目。東南海・南海トラフ地震や東海地震、 首都直下地震などの大規模地震が想定されている 地域で高くなっている。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD. 2 2016/8/18 特別企画:事業継続計画(BCP)に対する長野県内企業の意識調査 2.BCP を「策定している」企業は 13.1%にとどまる 自社における事業継続計画(BCP)の策定状況について尋ねたところ、 「策定している」は 13.1% (30 社)にとどまった。また、 「現在、策定中」は 10.9%(25 社) 、 「策定を検討している」は 28.8% (66 社) で、 3者合わせると 52.8 と半数を超える。 「策 定していない」は 41.5%(95 社) 。 「策定している」と回答した企業は、「大企業」の 29.4%、 「中小企業」 の 10.3%、 「小規模企業」 の 5.1%。 規模間格差が明確に表れている。主要業界別では、 「サ ービス」 の 19.0%、 「製造」 の 14.0%、 「卸売」 の 12.7%、 「建設」の 8.0%が「策定している」と回答。 「サービ ス」と 「建設」 の間には 11 ポイントの差が生じている。 全国の調査結果は、 「策定している」が 15.5%、 「現 在、策定中」 が 8.3%、 「策定を検討している」 が 22.7%、 「策定していない」が 45.1%など。なお、企業からは 「新潟中越地震を機に策定した」「取引先から求めら れ策定したが、中身は現実と乖離している」 「策定の必 要性は感じるが、中小企業では困難」 「目先の事業計画 の実践で手一杯」といった声が寄せられている。 3.経営者の代わりとなる人物、 「中小企業」の2割、 「小規模企業」の3割で不在 災害時には人的資源への対策も必要となる。自社の経営者(代表)が不測の事態で不在となっ た場合、代わりの人物が「いる」と回答した企業は 69.9%(160 社)、 「いない」は 17.9%(41 社)となり、 約7割の企業に経営者の代わりを務める人材が確保さ れていることがわかった。 ただ、規模間では格差が生じており、 「いない」と回 答した企業の構成比は、 「大企業」が 2.9%だったのに 対し、 「中小企業」 は 20.5%、 「小規模企業」 は 28.8%。 「中小企業」の約2割、 「小規模企業」の3割近くでは 経営者の代わりを務める人材がおらず、経営者に不測 に事態が起こった際、存続問題に直結する企業が一定 程度存在していることも浮き彫りとなった。 全国の調査結果は「いる」が 63.7%、 「いない」が 22.3%、 「分からない」が 14.0%。 「いる」は長野県が 6.2 ポイント高くなっている。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD. 3 2016/8/18 特別企画:事業継続計画(BCP)に対する長野県内企業の意識調査 4.緊急時の安否確認方法、 「携帯電話、携帯メール」が8割超える 災害など自社に緊急事態が発生した場合、 従業員と連絡を取り合うためにどのような安 否確認の方法を決めているか尋ねたところ(複 数回答) 、企業の 82.5%(189 社)が「携帯電 話、携帯メール」と回答し、他を大きく引き離 した。以下、 「固定電話(公衆電話含む) 、FA X」 (32.8%、75 社) 、 「直接訪問」 (18.3%、 42 社)と続く。一方、「特に決めてない」も 9.6%(22 社)と1割近くが該当している。 なお、 「携帯電話、携帯メール」は全国調査 でも 82.7%でトップである。 5.大規模地震に対し「特に対策はしていない」企業が 24.5%と4分の1近くに 企業が最も意識する災害である地震。大規模地震に対しては、事前の対策が重要となるが、実 際に行っている対策としては「設備 の転倒防止」が 36.7%(84 社)で最 も多く、「災害用の損害保険への加 入」 (31.4%、72 社)と「避難訓練」 (31.0%、71 社) も 30%を超えた (複 数回答) 。ただ、 「特に対策はしてい ない」企業も 24.5%と4分の1近く に達している(「小規模企業」では 33.9%と3分の1を超えた) 。 なお、全国では「設備の転倒防止」 (33.7%)がトップ、 「食料の備蓄」 が 27.6%で続いている。 6.災害に備えた現預金、 「ほとんど保有していない」が 26.6% 災害に備えて保有している現預金としては、 「売上の1~3カ月分未満」 (24.5%、56 社)と「売 上の3カ月以上」 (10.5%、24 社)の合計が 34.9%。3分の1強の企業が、緊急事態発生後のキ ャッシュフローに必要となる1カ月分以上の現預金を保有している。これに対し、 「ほとんど保有 していない」が 26.6%(61 社)に達したほか、 「売上の1週間~1カ月分未満」が 17.0%(39 社) 、 売上の1週間分未満」が 5.7%(13 社)となるなど十分な備えのない企業もあり、災害復旧時に おける事業運営、緊急時における工場や事務所の整備、事業再開への対策などに要する資金の手 当に不足が生じる恐れもある。 「ほとんど保有していない」と回答した企業の構成比を規模別にみ ると、 「大企業」17.6%、 「中小企業」28.2%、 「小規模企業」30.5%。企業規模が小さくなるほど、 ©TEIKOKU DATABANK,LTD. 4 2016/8/18 特別企画:事業継続計画(BCP)に対する長野県内企業の意識調査 災害に備えた現預金の確保が困難であることを物語っている。 一方、災害に備えて保有している在庫では、 「ほとんど保有していない」が 29.7%(68 社)で 最も多く、 「売上の1週間分~1カ月分未満」が 27.1%(62 社)で続いている。 まとめ 4月に発生した熊本地震などの大規模地震のほか、台風や豪雨災害、あるいは伝染病やテロ、 不正アクセスなど、緊急事態が発生した時に事業を継続させるための計画「事業継続計画(BCP) 」 を策定する重要性が高まっている。長野県は大規模地震の発生も想定されており、今回の調査で は全国平均を上回る 52.8%の企業が「地震」災害を意識し、 「設備の転倒防止」や「災害用の損害 保険への加入」 「避難訓練」といった対策を講じている様子がうかがえる。また、約7割の企業で は、災害時に経営者(代表)が不測の事態で不在となった場合、代わりとなる人物がいることも 明らかとなった。 しかし、全体としては企業の BCP 策定状況が依然として進んでいない実態も浮き彫りとなって いる。とりわけ中小企業・小規模企業では、策定のためのノウハウ不足や時間、コストの負担な どから策定できていないケースが多いとみられる。小規模企業では、BCP を「策定していない」が 50.8%、経営者(代表)が不測の事態で不在となった場合、代わりとなる人物が「いない」が 28.8%、 災害に備え現預金を「ほとんど保有していない」が 30.5%に達している。 経営環境が厳しさを増し、目先の営業活動に追われがちだが、過去の自然災害などを振り返っ ても、事前準備の重要性がクローズアップされている。予測が難しい緊急事態。企業は BCP 策定 とともに、災害復旧時や事業再開時の資金対応も含め、最大限準備を整える必要があろう。 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、 著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 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