座談会 「熊本地震」 で学んだいくつかの教訓 新たな観点で 〝九州はひとつ〟 を実現 特別 ! ろう九州 が な ! つ 九州経済連合会 会長 麻生 泰氏 熊本県知事 蒲島 郁夫氏 4月に発生した「熊本地震」は、行政や 企業などの防災対策や心構え、望ましい 復旧や復興のあり方など、さまざまな課題 があることを示した。一方、インフラやラ イフラインなどの早期復旧が実現した背 景に、日本が過去に経験した災害の教訓を 生かした迅速な対応があったのもまた事 実である。九州が、今回の地震で学んだ教 訓を一体となって次へとつなげる責務を 負ったのは間違いない。行政、経済団体、 観光に関わる3トップが議論を交わした。 司会進行/本誌編集長 山口真一郎 21 Zaikai Kyushu / SEP.2016 九州観光推進機構 会長 石原 進氏 止し、製品の供給がストップした際に は、九州はもとより全国に影響が及び ました。後ほど石原会長がお話される 地震からの復旧にあたって非常にありがた かったのは、電気、ガス、水道、高速道路と を実践したいと考えています。 後もこの三原則に基づく具体的な取り組み 夢が実現できると思います。だからこそ、今 この難局を乗り越えた先には、きっと大きな 国民の誰もが経験したことのない大逆境です。 てきました。熊本地震は、県民はもとより 日頃から「逆境の中にこそ夢がある」と申し なる発展につなげる─というものです。私は ②創造的な復興③復旧・復興を熊本のさら んでまいりました。①被災者の痛みの最小化 蒲島 私は以下の三原則を掲げて、熊本 地震からの早期復旧・復興の実現に取り組 据えて陣頭指揮にあたられたのでしょうか。 ップとして、蒲島知事はどのような方針を きということも改めて示しました。行政ト っては組織や団体の枠を超えて行われるべ ではなく、それぞれが連携して、場合によ ます。それは行政や企業が単独で行うもの むかという課題を九州に突き付けたと言え かった問題や今後の対策に、いかに取り組 総力を結集し、将来世代にわたる県民総幸 地震からの創造的な復興に向けて、 「県民の を策定し、 月初めに公表しました。熊本 旧・復興の道標となる「復旧・復興プラン」 国とも協議を進めています。また、今後の復 見もありますが、復興財源の確保については 初めてゼロになり財政破綻を懸念するご意 大になりました。財政調整用の基金残高が 県では、熊本地震の復旧事業費の計上に より、一般会計予算が1兆円を超えて過去最 の活性化につながると考えます。 業等グループ補助金」も、本県経済の早期 る施設復旧などの費用を補助する「中小企 認定を受けた復興事業計画に基づき実施す 小 企 業 などが県の ま た、被 災 した 中 していただきました。 にスムー ズに 対 応 さ れる な ど、非 常 正予 算 として決 定 7000 億 円 を 補 を決めない予 備 費 月には事 前に使 途 よる指数を基に計算すると、 カ月あたり 込んだということでした。ある旅行代理店に たし、私が直接うかがった鹿児島県のあるホ では修学旅行が相当数キャンセルになりまし あるかを改めて感じました。例えば、長崎県 持つ熊本県が九州観光にとっていかに重要で 石原 観 光 産 業は九 州の主要 産 業です が、阿蘇や熊本城など恵まれた観光資源を されたものと感じています。 っていただけたためでもあり、阪神淡路大震 応援部隊が駆け付け一体となって復旧にあた 関係機関、民間も含めて全国から速やかに フラが早い段階で復旧したのは、国や行政の ったように、ライフラインや主要なイン を感じています。また、知事がおっしゃ に向けて取り組まれていることに力強さ 冷静に受け止めて、いっときも早い復興 ーシップのもと、こうした難しい局面を けました。一方、県は蒲島知事のリーダ 業である 次産業も、甚大な被害を受 な打撃を受けました。さらに、主要産 より、九州全域の観光関連産業が大き 災や東日本大震災などで学んだ経験が生か 1 テルは 月中旬の稼働率が 割程度に落ち 4 1 5 8 22 Zaikai Kyushu / SEP.2016 早期復旧・復興の実現に向けた 「三原則」 (蒲島) とは間 違いあ り ま いったライフラインに加えて、新幹線やコン 福量を最大化する」施策を進めていきます。 の損失額は200億円程度に上るとみていま でしょうが、宿泊客のキャンセルなどに ビニ、スーパーなど、人々が日常生活を送る す。従って、こうした風評被害が発生した際 せん。政 府 も、 上で不可欠な設備を、多くの方のご努力で 麻生 熊本県やその周辺には、半導体な どのエレクトロニクス産業、自動車関連産業 に、九州全域への影響をいかに最小限に食い ─ 月に発生した熊本地震は、これまで 見えなかった、または、想定が十分ではな 非常に短期間のうちに復旧していただいたこ が集積していますから、地震で工場が一時停 5 とです。これが県民の安心感につながったこ 4 しいという要望が関係団体からありました。 業の一環だった「ふるさと割」を復活してほ 感じられました。当初、地方創生交付金事 期の復旧・復興を実現するという強い意志が 相が被災地入りされた姿勢からも、国も早 と考えました。地震発生後、直ちに安倍首 一方で、冷え込んだ観光産業を活性化す るためには、一種のカンフル剤が必要になる 被害の払しょくに取り組みました。 情報を発信することで熊本地震による風評 内外に正確な ましたが、国 を設 置してい に向け準備室 ンター」発 足 州観光広報セ 月の「九 した。当機構 改めて感じま 要な課題だと 止めるかは重 直接的には熊本市の管轄になり てまいります。熊本城の再建は、 再建には、県も積極的に協力し 熊本のシンボルでもある熊本城の ただいたと認識しています。また、 対して積極的な姿勢を表してい ですが、熊本地震からの早期復旧・復興に ました。国が開通時期を示すのは異例のこと ルートについて、年内仮復旧のめどが示され 阿蘇への主要ルートの一つである俵山バイパス きないこともあります。このたび国において、 方、冬場はグリーンロードが凍結して通行で 報を発信する必要があると感じています。一 やく戻りつつありますが、さらに積極的に情 けないと認識されていました。観光客はよう と、風評被害もあって多くの方が阿蘇には行 りました。ただ、あまり知られていないこと ドについて、早い段階で利用できるようにな ました。まず、ミルクロードとグリーンロー 蒲島 県としても、九州観光の宝である 阿蘇へのアクセスの確保に早急な対策を講じ いると感じています。 ました。 考えは間 違いだと分かり かし、今回の地震で、この 言えるかもしれません。し 長がお持ちの一種の美学と うした考 えは、多 くの首 と考えていたからです。こ せんでした。 「自分のところは後回しでいい」 されていましたが、これまで手を付けていま 実は、知事公舎も建て替えの必要性を指摘 機能が損なわれてはならないということです。 災害などの有事の際に拠点となるべき庁舎の の庁舎が被害を受けたことから分かったのは、 めて感じました。また、県内の複数の自治体 くないという認識を持って対応すべきだと改 ちろん日本全体で、いつ地震がきてもおかし ほどの地震が発生したのですから、九州はも る可能性が低いとみられていた熊本県でこれ えられていると感じました。大地震が発生す と講じられていた企業の被害は最小限に抑 回の地震で、地震を含む防災対策をしっかり 「ふるさと割」を参考に、九州への宿泊、旅 ますが、安倍首相も「熊本城の ─被害状況などを調査する過程で、改め て認識されたことはございましたか。 行ツアーが通常よりも割安で利用できる「九 再生なくして熊本地震からの真 麻生 熊本県に進出し た企業が、再 び熊 本 県で 復興への前向きな県の姿勢に力強さ感じる(麻生) 州ふっこう割」の創設を国にお願いして、ス の復興はない」と発言されたよ 早期復旧に向けて取り組 さを感じています。例えば、 蒲島 企業を訪問してBCP(事業継続 計画)対策の重要性を再認識しました。今 ムーズに対応していただきまし うに、県全体の課題として取り まれていることにたくまし は た。多くの方からご利用いただ 組もうと考えています。 6 九州観光における熊本の重要性を再認識 (石原) 工場が大きな ダメージを Zaikai Kyushu / SEP.2016 23 き、期待以上の成果が上がって 座談会 特別 ! ろう九州 なが ! つ 受けたサントリーの熊本工場も、先日、社長 ったのは事実です。その一 で再建するのかは極めて重要な判断になりま す」と宣言されました。企業にとって、どこ 生直後の水と食料は自分で ともありますので、地震 発 ての被災者に水や食料を届けるのは難しいこ るかは今後の課題だと感じま き届くシステムをいかに構築す 民間の力を借りて、物資が行 すから、そうした強いメッセージは非常にあ 確保しておくという 自 覚も した。 番の理由は、物資を受け りがたいと感じました。と同時に、多くの企 必要だと思います。 また、私は今回、国に対し て、支援 物資だけでなく、復 (蒲島) 業が、前向きにチャレンジしていただいてい さらに、今回の地震で重 要性を再認識させられたの 旧に携わる人員など、想定す 成功事例や課題の検証も被災県の役割 ることに感謝したいと思います。 は共 助です。例えば、西 原 る 倍を投入してほしいとい 幾つかの地震を経験して政府の対応が随分と 味、仕方のなかったことだと思います。ただ、 かったことですから、対策の不備は、ある意 もちろん、震度 クラスの地震が短い期間で 指摘されても仕方ない部分はあるでしょう。 員とその家族の安否を地震発生直後に確認 として注目されるのは、企業によっては従業 う。また、同じような機能を果たした事例 トワークが生かされた好例だと言えるでしょ に寝ているのかも知っているほど、密なネッ 助にあたったからです。その家の住民がどこ 地域の消防団や集落の人たちが助け合って救 わらず死亡者はゼロでした。なぜかと言うと、 麻生 知事が発言された共助については、 企業トップとしても非常に興味を持ちました。 識しています。 信することが、本県に与えられた使命だと認 事例や問題点を検証・アーカイブ化して発 はどうだったのかも含めて、さまざまな成功 えたからです。これらの経験を踏まえ、効果 お願いしなければ十分には対応できないと考 した。通常ならばお願いしませんが、 倍で 日分の水や食料を各 回も発生するのは、これまでの観測史上な 関して言えば、最低 に関して、企業は危機管理を徹底すべきだと 関しては、前震による避難者には対応できた 国から、大量の支援物資を送り出す「プッシ 蒲島 国が実施した公助は、機能した部 分もあった半面、課題も感じました。今回、 が不十分なことを痛感しました。企業として ても、ほとんど経験していない地震への備え ぼ毎年影響が出る台風に対しての備えはあっ 食料の確保、地震発生直後の全社員への対応 ─公助という観点から国の支援のあり方 はどうだったのでしょうか。 のですが、県民の %にあたる 万人超が避 ュ型」で対応していただき、大変助かりまし の役割、自助・共助という社員間での呼び掛 け、最低でも 日分の食料や水を全社員が 感じました。また、九州の多くの企業が、ほ 難された本震後は十分とは言えませんでした。 た。一方、発災後の初期に届けられた 万食 18 した。避難場所の確保や支援物資の配給に 3 人口の 割の水と食料を用意できている自治 が、全ての避難場所まで十分に行き届かなか 90 10 体は少なかったと思います。発災後すぐに全 3 1 24 Zaikai Kyushu / SEP.2016 が福岡に来られて、 「必ず熊本に帰ってきま 石原 一方で、今回の地震では、避難所の 不備や救援・支援物資が被災者にスムーズ 村のある集 落では、家 屋な 取りに行く人がいなかったからです。従って、 に行き渡らなかったなど、生活者の視点から 倍の法則」で要請しま 変わったように、九州全体でも今回の経験を されていたというものです。小さな集落以外 正直に申し上げて、そうした体制が十分整 う「 踏まえて新たな対策を講じられるきっかけを でも、工夫次第では共助が実現できることを 備できていない企業が多いと思います。水や どの損 壊が多かったにも 関 得たと言えるのではないでしょうか。 示していると言えます。 すれば、地震への備えが十分ではなかったと 3 3 蒲島 今回の地震で学んだ教訓の一つは、 自助、共助の重要性です。例えば、自助に 7 世帯で常備することが必要だと再認識しま 3 2 で初めて本当の復興だと思います。 出るのではないかと思っています。また、V ベター」の「ベター」の部分でより競争力が 自 宅で確 保しなさいとい 字回復を果たしたいのであれば、高い経済効 す。復旧予算で活性化するのは一時的なもの う指示は、少なくとも「麻 ─知事が設定された熊本地震 からの復興の三原則のうち、 「創 果が望まれる被災企業の支援に注力してもい が通常料金に戻った後で 生グループ」は不十分だ 造的復興」の具体的な内容をも いのではないかと感じています。国として特 なので、長期的に見ると「ビルド・バック・ と感じましたので、すぐに う少し詳しく教えてください。 あるでしょうが、地震を機会に海外を含む他 も、実際に訪ずれること でもメッセージを発信した 蒲 島 震 災 か らの 復 興では 国際基準になっている考え方で、 のエリアに移転されることは大きな損失です。 (麻生) いと思いました。 英 語では「Build Back 企業が実施できる 「共助」 を検討すべき 石原 JR九州は、鉄 道 会社という 立場から、 Better(ビルド・バック・ベ ービスを提供し、また来てみた れたお客さまにご満足いただける質の高いサ ただきたいと思っています。つまり、利用さ 関係者には、その次を見据えた対応をしてい 用期限は、ことし 月末までですから、観光 待する効果につなげなければなりません。使 を配分していただいたわけですから、国が期 ふっこう割」に関しても、今回、貴重な国税 ければならないと感じています。また「九州 提に今後、しっかりと備えを拡充していかな 地震が発生しないという例外はないことを前 います。今回の経験を踏まえて、日本列島で 改善の余地があったのではないかと反省して ため、真剣度という点については、まだまだ れほど被害の大きな地震の発生が少なかった 確保は行っています。しかし、九州には、こ ベター」を、経済対策の一つとし ります。私は「ビルド・バック・ 降は、この考え方が変わりつつあ もしれません。東日本大震災以 ブ港の位置付けは変わっていたか していたら、アジアの国際貨物ハ が、実現しませんでした。もし、これが実現 を整備したいという構想が持ち上がりました が、韓国・釜山港を上回るような港湾機能 例えば、阪神淡路大震災で被災した神戸港 では、対策が不十分なケースが生じています。 としていました。しかし、 「ビルド・バック」 いならば実施主体の責任で行うことを原則 り「ビルド・バック」であり、機能を高めた 本方針は、地震前と同等の機能の復旧、つま という意味です。しかし、これまでの国の基 ター) 」 で 「前よりもいい形でつくり上げよう」 企業も携わることが重要 には行政だけでなく民 間 もちろん、その計 画 策 定 が構 築できると考えます。 アにはできない連 携 体 制 の経験によって、他のエリ とが必要でしょう。そうすれば、熊本地震 の体制を確認し、平時から有事に備えるこ えます。その際、各県が相互に支援と受援 をしっかりとつくり上げることが必要だと考 る中で、熊本県の経験を生かして地震対策 した。南海トラフ地震の発生が懸念されてい 持てると感じながら、お話をお伺いしていま り、ひいては九州全体が安心感、安定感を 討することが、九州の一体感づくりにつなが ている中で、緊急時の九州の協力体制を検 定の企業への支援は避けるべきという考えも ある程度の非常食や水の 麻生 熊本県が「ビルド・バック・ベター」 という発想を取り入れて復興に取り組まれ い思っていただけるようにする であるのは言 うまでもあ 石原 経験から学んで、 りません。 て見ることが大事だと考えていま 12 「九州ふっこう割」 を活用し確実な成果を (石原) Zaikai Kyushu / SEP.2016 25 ことが何よりも大切です。価格 座談会 特別 ! ろう九州 なが ! つ 将来に向かって何を継承し 高規格道路含む道路網の早急な整備必要 (蒲島) ました。しかし、最も致命的 なのは九州の横軸となる道路 インフラが弱いということです。 今回の地震で、初動対応とし て、一番近い拠点から救援物資 を運ぶことがいかに重要かを 再認識しました。東日本大震 災で、支援物資の配送ルート が確保できたのは、東西を結 ぶ高規格道路が複数整備されていたからです。 しかし、九州の場合、熊本と大分とを結ぶ中 九州横断道路、熊本と宮崎とを結ぶ九州中 央自動車道という二つの高規格道路の完成は、 まだ当分先です。この二つの道路が完成して いれば、もっとスムーズに支援を受けられた ことは間違いありません。熊本県が広域防災 拠点として南海トラフ地震で被災した九州の 自治体を支援するためにも早期の整備が必 要です。 「広域防災拠点構想」に基づき、阿 また、 蘇くまもと空港に県の予算で防災ヘリなどの 駐機場を整備していました。これが今回の地 震で、支援物資の受け入れなど、受援に大 きく貢献しました。南海トラフ地震への対応 として想定していた支援先から支援を受ける ことになり、常に相互依存関係にあるのだと いうことを改めて感じました。 麻生 おっしゃるように、九州の高速交通 体系は、まだ十分とは言えません。今回の地 震で、高規格道路を含む道路網の整備の重 要性が再確認されたわけですから、観光や 産 業 振 興のためだけではな く、安全や人々の命を守ると いう観点からも早 急に道路 網を整備しなければならな いと思います。今後、九経連 としてもより 積 極 的に国に 働きかけたいと考えています。 石原 この前、杖立温 泉 に行ったのですが、国道が通 行止めでしたので、地元の方に通行可能な別 のルートを尋ねましたら林道があると教えて くれました。私が持っていた地図には細い線 で描かれていましたが、実際に行ってみると、 非常に通りやすい 車線道路でした。その 後、熊本県が作成した災害ロードマップには 記されていることに気付いたのですが、先ほ ど知事もおっしゃったように、う回路として だけでなく、日常的に使える道路であれば、 農道や林道など農水省が建設した道路もし っかりと地図に載せるべきだと感じました。 蒲島 災害時に感じたことは、何事もひ るまずに言うのが重要だということです。冒 頭で申し上げた三原則も、災害の当日に言 うのは勇気が必要です。ほかに優先すべき ことはあるだろうという方もいるでしょうが、 最初に示さなければ職員が途中で混乱して しまいます。例えば、仮設住宅の建設を四つ の方針に沿って迷いなく取り組めたのは、三 原則をひるまずに言ったからだと思っていま 26 Zaikai Kyushu / SEP.2016 ていくかが大事だと思って います。例えば、私の聞いた話では、地震に よりタイからの観光客200人が湯布院で足 止めされました。移送する手段を確保するた め、その一行は東京の大使館に電話され、本 国にいた元大使が九州の知り合いの方に電話 されて、何とか全員が移動できるバスを確保 できたということでした。こうしたラッキー な状況はそうそう期待できるものではありま せん。今後も外国人観光客が安心して九州 を訪れていただくためには、有事の際にワン ストップで対応できる拠点が必要です。 「九 州観光広報センター」からの情報発信を多 地震も想定した防災機能の強化を進めてき 2 言語対応にしたのも、そうした声を聞いたか らです。 蒲島 被災した現場では、住民だけでな く対応にあたっている職員も被災者ですから、 なかなかクリエイティブな発想は生まれませ ん。そうした意味で、熊本県の早期復旧・復 興を国に直接、働き掛けていただいたり、 「九 州ふっこう割」のような思い切った制度の創 設を提案するなどしていただいた、九経連や 九州観光推進機構、他の経済団体の関係者 の皆さまには心より感謝しております。 ─今回の地震から、将来に向けた防災対 策で備えるという、日々の意識の重要性を 感じました。 1 蒲島 本県は 年 月に「九州を支える 広域防災拠点構想」を策定し、南海トラフ 14 して感じたのは、我々のような企業トップが 生 ひるむというのは、発言する前に躊 ち麻 ょ 躇してしまうということですか。 必要な措置だと思っています。 す。少しでも被災者の苦労を和らげるのには に余裕④ペットとの同居可能─というもので 建設③敷地にゆとりを持たせ、隣との距離 の仮設住宅の整備②集会所「みんなの家」の す。その方針とは①県産材を使用した木造 なと感じていました。リーダーとは常に、そ また、常に県民の視点から物事を考えている 石原 私も複数の知り合いから、蒲島知 事の決断力や判断力の評判は聞いていました。 ます。 に取り組まれたことに敬意を表したいと思い か、強い意志を持って、後で悔やまないよう たことの素晴らしさです。非常時の器という 透明な中で優先順位を決められ、決断され 生命や財産に関わり、さらには、先行きが不 判断する大変さよりも、一つの判断が県民の 蒲島 将来のことを考えて、それが抑止 効果になってしまうということです。例えば こにいる人たちの思いをくみ取って、さまざ 強い意志を持ち明確な方向性を示された知事に敬意(麻生) 「熊本城の復興なくして、熊本地震からの まな観点から総合的に判断することが求め が職員の皆さんの素晴らしさを再認識したの 策が後手に回ったかもしれません。また、私 は既存の支援スキームがありませんから、対 政府も本気にはなりません。熊本城の再生に もいるでしょう。それでも、発言しなければ、 しょうし、熊本市のことではないかと思う人 を整備することも必要だと感じています。 とって最善の結果がもたらされるように体制 能力や資質に左右されるのではなく、県民に 仮に当選直後の知事であっても、リーダーの って幸運だったのではないでしょうか。一方で、 の県知事選で再選されたことは熊本県民にと ちゅう 真の復興はない」と思っても、この時になぜ られます。その意味では、蒲島知事が 月 熊本城のことを言うかのという意見もあるで は、皆が熊本城の再建を自分たちの問題と ─本日はお忙しい中、ありがとうござい ました。 ありません。 して考えて、自分たちで取り組もうとした ことです。従って、リーダーが発言した時に、 ※座談会で石原会長から「う回路として (中略)農水省が建設した道路もしっかりと ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ それを受け入れてくれる土壌が大事だと思い ─知事の発言は、緊急時に求められるリ ーダーのあり方だと思います。 とを受けて熊本県は、阿蘇へのアクセスなど を成し遂げたと言われるが、成 紀行」で確認できる。 や県観光サイト「なごみ 26 ました。私は選挙期間中にも「いろんなこと 麻生 その時のリーダーの姿勢が県の方 向性に関わってきますから、相当なプレッシ の観光マップを更新した。観光パンフレット (石原) 道路情報を確実に伝える方法を確立すべき 地図に載せるべき」 ( ㌻)と発言があったこ し遂げたのは職員です」と発言 ャーがあったのでしょう。お話をおうかがい にそうした土壌があったことが 大いに関係していたのは間違い Zaikai Kyushu / SEP.2016 27 3 していました。今回の地震対応 座談会 特別 ! ろう九州 なが ! つ
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