(株)農林中金総合研究所 2016 年 8 月 18日 家計の所得環境の持続的な改善が消費持ち直しを後押し ~2016 年度:0.6%、17 年度:1.1%~ 2014 年 4 月の消費税増税後、国内景気は足踏み状態が続いているが、持ち直しの兆しも窺え る。4~6 月期の経済成長率は僅かなプラス成長にとどまったが、閏年効果で高めの成長だった 1 ~3 月期と均せば 1%成長のペースに戻った。ただし、円高進行などで輸出や設備投資が悪化 するなど、中期的に下押し圧力として働く可能性もある。しかし、鈍いながらも家計所得は改善し つつあり、雇用環境も良好なため、民間消費の持ち直しが始まる素地ができている。大型経済対 策の効果が出てくる 17 年入り後には成長率がやや高まると予想される。 一方、2 月から「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入した日本銀行は、7 月にも「質」 の拡充を柱とする追加緩和を決定した。9 月にはこれまでの緩和策の「総括的な検証」をする予 定だが、その意味するところを巡って市場の憶測を呼び、長期金利はマイナス幅を大きく縮小さ せた。しかし、日銀は 2%の物価安定目標を早期達成するために必要なものは何かを主眼にする ためのものとしており、今後とも「金利」の深掘りを含む追加緩和を行う可能性は高いだろう。長期 金利には再び低下圧力が強まるものと予想される。 (連鎖方式、兆円) 545 四半期別GDP(季節調整値) 経済成長率の予測(前年度比) (%前年度比) 3 農中総研予測 1.4 0.8 17年度平均 2017年度のGDP予測値 1.1 1.5 18年度へのゲタ は0.3ポイント 2016年度のGDP予測値 540 2.2 1 予測 2015年度のGDP実績値 2.5 2 四半期ごとの実質GDPの推移 1.7 17年度へのゲタ は0.4ポイント 16年度への ゲタ は0.3ポイント 535 16年度平均 1.2 0.6 0.6 530 0.6 15年度平均 0 実質GDP 名目GDP GDPデフレーター -0.9 ▲1 17年度: 1.1%成長 16年度: 0.6%成長 525 15年度:0.8%成長 (ゲタは1.0ポイント) 520 2014 2015 2016 (資料)内閣府「四半期別GDP速報」より農中総研作成・予測 2017 (年度) 1~3 2014年度 4~6 7~9 10~12 2015年度 1~3 4~6 7~9 10~12 1~3 4~6 2016年度 7~9 10~12 2017年度 (資料)内閣府「GDP速報」より作成 (注)2016年4~6月期まで実績、それ以降は当総研予測 お問い合わせ先: (株)農林中金総合研究所 調査第二部 経済見通しの内容について:03-3233-7757、その他(配送など) :03-3233-7760 無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものでは ありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ 1~3 (月期) (株)農林中金総合研究所 1.景 気 の現 状 : (1)依 然 として下 振 れリスクが意 識 される内 外 経 済 6 月 下 旬 に は 、 英 国 で EU ( 欧 州 下方修正が続く世界経済見通し (%前年比) 連 合 ) 残 留 ・ 離 脱 を 問 う 国 民 投 票 が 5.0 実 施 され、結 果 は EU 離 脱 (ブレグジ ッ ト ) と い う結 果 と なり、世 界 経 済 に は 4.5 新 たなリスクが浮 上 した。直 後 の金 融 資 本 市 場 で は リ ス ク 回 避 的 な 行 4.0 動 が一 気 に強 まるなど、動 揺 が見 ら れ た が 、 主 要 国 の 政 策 当 局 が 万 全 3.5 の態 勢 で臨 んだことや、辞 意 を表 明 し た キ ャ メ ロ ン 英 首 相 の 後 継 が 予 想 3.0 2013年 4月時点 2014年 4月時点 2012年 4月時点 外 のスピードで決 定 したこともあり、 2015年 4月時点 2016年 7月時点 実績 混 乱 は ひと まず 回 避 され てい る 。しか 2.5 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 し 、 17 年 以 降 に 開 始 が 想 定 さ れ る (資料)国際通貨基金「世界経済見通しデータベース」より農林中金総合研究所作成 EU との 離 脱 交 渉 は難 航 も 予 想 され ており、欧 州 経 済 に対 する警 戒 感 は強 い。 また、米 国 の追 加 利 上 げ時 期 を巡 っては、主 要 経 済 指 標 の発 表 のたびに市 場 が一 喜 一 憂 する状 況 が続 いている。当 初 、FOMC(米 連 邦 公 開 市 場 委 員 会 ) のボードメンバーらが 年 間 100bpと想 定 していた利 上 げペースは大 きくスローダウンしており、それ自 体 は新 興 国 からの資 金 還 流 や債 務 問 題 への懸 念 を遠 ざけたが、それは同 時 に足 元 の米 国 の経 済 成 長 や 物 価 上 昇 が 過 去 の 拡 張 期 と 比 べ て 低 水 準 に と どま っ てい る こ と の 裏 返 し で も あ る 点 に は留 意 が 必 要 だ 。中 国 経 済 も また 、鉄 鋼 ・ 石 炭 産 業 で の過 剰 生 産 能 力 の 解 消 に 注 力 して お り、下 振 れ リス クが付 きま と う。この よ うに 、世 界 経 済 に は牽 引 役 が不 在 であ り、低 成 長 リ ス クは払 拭 されていない。 国 内 に目 を転 じても 、連 立 与 党 の 勝 利 と なった 7 月 の参 院 選 は表 面 的 にはアベノミクス 継 続 が支 持 された結 果 といえるが、アベノミクスはすでに効 力 が切 れているとの評 価 も決 し て少 なくない。アベノミクスは「名 目 3%、実 質 2 %」の経 済 成 長 、2%の物 価 上 昇 率 を目 指 し てきたが、その実 現 に向 けた経 路 をたどっていたのは 14 年 4 月 の消 費 税 増 税 前 後 までの 1 年 半 弱 で あ る 。 消 費 税 増 税 に よ っ て大 き く 落 ち込 ん だ 民 間 消 費 は 、そ の 後 も なか な か 持 ち 直 しが見 られていない。また、企 業 部 門 、特 に輸 出 製 造 業 では、円 安 が大 きく進 行 したおか げ で 業 績 は大 き く 改 善 し た も の の 、 海 外 需 要 の 鈍 さ か ら 輸 出 数 量 はあ ま り 反 応 せ ず 、 稼 働 率 が高 まらない状 況 に 陥 った 。そ うした 影 響 も あり、企 業 は賃 上 げに慎 重 な姿 勢 を続 けてお り 、 「 企 業 か ら 家 計 へ 」 の 所 得 還 流 は な か なか 強 ま りを 見 せ ず 、そ れ が 消 費 の 持 ち 直 し を 抑 制 するなど、期 待 する好 循 環 は見 え 消費・生産・実質賃金の動き 108 づらい状 況 にある。 消費総合指数 106 鉱工業生産 104 実質賃金 102 100 98 96 2013年 2014年 6月 5月 4月 3月 2月 1月 12月 11月 9月 2015年 10月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 12月 9月 11月 10月 8月 7月 6月 5月 4月 3月 2月 1月 12月 11月 (消費税率 引上げ前) 94 10月 こうした内 外 需 の不 振 は、景 況 感 や需 給 バランスにも悪 影 響 を及 ぼし つ つ あ る 。日 銀 短 観 ( 6 月 調 査 ) に よ れば、大 企 業 製 造 業 の業 況 判 断 D I こそ前 回 3 月 時 点 (6)と 変 わらなかっ たが、全 規 模 ・全 産 業 ベースでは悪 化 が続 いており、先 行 きも悪 化 見 通 しであった。想 定 為 替 レートは 3 月 時 点 か らだ い ぶ 円 高 方 向 へ 修 正 され た ものの、現 状 よりもまだ 10 円 ほど円 安 2016年 (資料)内閣府、経済産業省、厚生労働省の公表統計より農林中金総合研究所作成 (注)2013年10月~直近=100。 1 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 水 準 (1 6 年 度 :111.4 1 円 )で 、先 行 きも業 績 の下 方 修 正 が続 く 可 能 性 がある。また、設 備 投 資 の 底 堅 さの 根 拠 とされ てきた 設 備 不 足 感 も 解 消 、全 体 では過 剰 気 味 と なったほ か 、雇 用 不 足 感 も弱 まっている。 政 府 ・日 本 銀 行 とも景 気 判 断 は一 貫 して「緩 やかな回 復 」との認 識 ではあるが、景 気 動 向 指 数 ・一 致 CI による景 気 判 断 は 15 年 5 月 以 降 「足 踏 み」が続 いているほか、企 業 ・家 計 の 景 況 感 も 悪 化 傾 向 と なってい る 。こうした 中 、デ フレか らの 完 全 脱 却 に 向 けて成 長 のモ メンタムをもう一 度 取 り戻 すために、政 府 は事 業 規 模 28.1 兆 円 に上 る 経 済 対 策 を取 りまと め、日 本 銀 行 も ETF 買 入 れ額 を倍 増 することを柱 とする追 加 緩 和 策 を決 定 した。 (2)4~6 月 期 は辛 うじて 2 四 半 期 連 続 でプラス成 長 8 月 1 5 日 に公 表 された 4~6 月 期 の GDP 第 1 次 速 報 によれば、実 質 成 長 率 は前 期 比 年 率 0.2%と、閏 年 効 果 によって高 めの成 長 率 を記 録 した 1~3 月 期 (同 2.0%)からは大 き く鈍 化 したものの、辛 うじて 2 四 半 期 連 続 のプラスとなった。 た だ し 、 民 間 消 費 は 2 四 半 期 連 (%前期比年率) 経済成長率と主要項目別寄与度(年率換算) 15 続 のプラスとなるなど、閏 年 効 果 が 剥 落 し た 割 に は 底 堅 さ も 見 ら れ る 内 10 容 だった。大 きく落 ち込 んだ 15 年 10 5 ~12 月 期 からは年 率 1.7%のペース での増 加 している計 算 になるなど、 0 持 ち直 しの兆 しも見 え始 めている。 -5 加 え て 、マ イナ ス 金 利 政 策 の 導 入 に 民間消費 民間住宅 よ っ て 一 段 と 低 下 し た 住 宅 ロ ー ン 金 -10 民間設備投資 利 や当 初 17 年 4 月 に予 定 していた 民間在庫投資 公的需要 -15 消 費 税 率 10%への引 上 げを控 えた 海外需要 実質GDP成長率 駆 け込 み需 要 などか ら、民 間 住 宅 が -20 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 大 きく増 加 したほか、15 年 度 補 正 予 (資料)内閣府経済社会総合研究所 算 や熊 本 地 震 の災 害 復 旧 などから 公 的 需 要 も堅 調 に推 移 した。一 方 、海 外 経 済 の回 復 力 の鈍 さや円 高 進 行 の影 響 もあり、 輸 出 や設 備 投 資 は軟 調 だった。 また、一 国 のホームメードインフレ(≒価 格 転 嫁 の度 合 い)を表 す GDP デフレーターは前 年 比 0.8%と 10 四 半 期 連 続 でのプラスだったが、15 年 7~9 月 期 (同 1.8%)をピークに 3 四 半 期 連 続 で鈍 化 した 。デフレ脱 却 の判 断 指 標 として注 目 される単 位 労 働 コストは前 年 比 1.4%と 3 四 半 期 連 続 のプラスだった。 2 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 2.予測の前提条件: (1)当 面 の経 済 ・財 政 政 策 運 営 6 月 1 日 、安 倍 首 相 は懸 案 だった 17 年 4 月 に予 定 していた消 費 税 率 10%への引 上 げ (「酒 類 」と 「外 食 」 を除 いた飲 食 料 品 のほか 、定 期 購 読 の契 約 をした 週 2 回 以 上 発 行 さ れる新 聞 などには 8%の軽 減 税 率 を適 用 )につ いて、19 年 10 月 までさらに 2 年 半 先 送 りす ることを表 明 した。安 倍 首 相 は 14 年 11 月 に当 時 15 年 10 月 に予 定 していた再 増 税 を 1 年 半 先 送 りする判 断 を下 した際 、「再 び延 期 することはない」と断 言 したが、その後 も実 質 GDP や民 間 消 費 には持 ち直 しが見 られず、成 長 のモメンタムが失 われた状 況 に陥 っている。 もちろん、これだけ民 間 消 費 が低 調 であることを踏 まえれば、増 税 後 の落 ち込 みも 14 年 4 月 と異 なり、限 定 的 である可 能 性 もないわけではないが、アベノミクスの目 的 は「デフレ脱 却 」 と「成 長 促 進 」であることを踏 まえれば、今 回 の判 断 もやむを得 ないものであったといえる。 なお 、同 時 に 安 倍 首 相 は、デ フレか らの 脱 却 速 度 を最 大 限 ま で 引 き 上 げる た め に 「 総 合 的 かつ大 胆 な経 済 対 策 」を講 じることを表 明 し、8 月 2 日 には事 業 規 模 28.1 兆 円 にも上 る 「未 来 への投 資 を実 現 する経 済 対 策 」が閣 議 決 定 された。このうち、国 ・地 方 政 府 の歳 出 規 模 は 7.5 兆 円 程 度 で ある。政 府 は 9 月 に召 集 予 定 の臨 時 国 会 に総 額 4.5 兆 円 と想 定 さ れる第 2 次 補 正 予 算 案 を提 出 する方 針 である。 このように、増 税 先 送 りや追 加 財 政 支 出 などが 決 定 されたことにより、20 年 度 に基 礎 的 財 政 収 支 ( PB ) を黒 字 化 す る とい う財 政 健 全 化 目 標 の 達 成 が 一 段 と 危 うく なった 、との 指 摘 も 多 い。そもそも 、内 閣 府 では、アベノミクスが奏 功 して中 長 期 的 に実 質 2 %、名 目 3 %以 上 の 成 長 率 、2 % 近 傍 で 安 定 的 な消 費 者 物 価 上 昇 率 ( 消 費 税 率 引 上 げの 影 響 を 除 く ) を達 成 しても 20 年 度 の PB は大 きな赤 字 が残 るとの試 算 結 果 を公 表 し続 けている(7 月 に公 表 した「中 長 期 の経 済 財 政 に関 する試 算 」では、▲5.5 兆 円 程 度 ( 対 GDP 比 率 で▲1.0%程 度 )の赤 字 としている)。なお、今 回 の試 算 では、17 年 4 月 の消 費 税 増 税 を見 込 んでいた 1 月 時 点 と比 べて 1 兆 円 の赤 字 縮 小 (%) 国・地方の基礎的財政収支(対GDP比率) となっているが、それは高 齢 化 等 を 1 黒字化 除 く歳 出 の増 加 率 が賃 金 ・物 価 上 0 中間目標 ▲1.0 昇 率 の 半 分 程 度 と 想 定 し た た め で -1 ある(1 月 時 点 では物 価 上 昇 率 並 -2 みと想 定 ) 。このように 、政 府 は画 一 実績 的 な 削 減 目 標 や 消 費 税 増 税 に 依 -3 経済再生ケース 10年度からの 存 せ ず 、「 見 え る 化 」 や 「ワ イズ・ ス ペ -4 ベースラインケース 半減目標 ▲3.3 ン デ ィング 」 などの 工 夫 で 、地 道 に 、 -5 (注)経済再生ケース:中長期的に名目3%、実 だ が 着 実 に 、 財 政 構 造 改 革 に 取 り -6 基準年度 質2%以上の成長率 財政健全化 ベースラインケース:足元の潜在成長率並 ▲6.6 目標 組 む 姿 勢 を 強 め てい る こと も 確 か で み(名目1%半ば、実質1%弱の成長率) -7 ある。とはいえ、いずれ財 政 健 全 化 2010年度 2012年度 2014年度 2016年度 2018年度 2020年度 2022年度 2024年度 目 標 の 再 検 討 が 迫 ら れ る 可 能 性 も (資料)内閣府「中長期の経済財政の試算」を元に農林中金総合研究所作成 あるだろう。 最 後 に、概 算 要 求 の作 業 中 である 17 年 度 一 般 会 計 予 算 は、「経 済 財 政 運 営 と改 革 の 基 本 方 針 2016 」 、「 経 済 ・ 財 政 再 生 計 画 」 に 則 った 編 成 を目 指 して い る 。閣 議 了 解 され た 概 算 要 求 基 準 では、年 金 ・医 療 等 は 0.6 4 兆 円 の自 然 増 を容 認 しつ つも合 理 化 ・効 率 化 に最 大 限 取 り組 む、義 務 的 経 費 は 1 6 年 度 並 み、裁 量 的 経 費 は 1 割 削 減 するが、そのうち の 3 割 は「新 しい日 本 のための優 先 課 題 推 進 枠 」として要 望 を行 うこと ができることとしてい る。 3 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 (2)世 界 経 済 の見 通 し 原 油 価 格 の一 段 の下 落 などとともに、16 年 初 頭 に強 く意 識 された世 界 経 済 の失 速 懸 念 は、その後 の原 油 価 格 が持 ち直 しに転 じたことや危 機 を未 然 に防 ぐために主 要 国 が政 策 総 動 員 することで合 意 できたこと、米 国 の利 上 げペースが事 前 の予 想 より大 幅 に緩 和 され たことなどもあり、大 きく後 退 した。しか し、過 去 10 数 年 にわたって世 界 経 済 を牽 引 し、プレ ゼンスを高 めた新 興 ・資 源 国 経 済 は依 然 として低 調 な状 態 が続 いてい る。さらに、6 月 には ブレグジットという新 たな世 界 経 済 のリスクが浮 上 した。 ① 米国経済 16 年 4~6 月 期 の実 質 GDP 成 長 率 (速 報 値 )は前 期 比 年 率 1.2% と、1~3 月 期 (同 0.8% )からは持 ち 直 したものの、3 四 半 期 連 続 で 1.5 % 以 下 に と どま っ てお り 、 成 長 率 の低 さが鮮 明 となっている。内 訳 を みると、堅 調 な雇 用 を背 景 に個 人 消 費 は年 初 の弱 さから持 ち直 してお り、成 長 を 牽 引 し てい る 。そ れ に 対 し、 エネルギー安 やドル高 基 調 を背 景 に、設 備 投 資 の減 少 が継 続 してい る 。ま た 、在 庫 投 資 も 大 き く 減 少 した ことに加 え、住 宅 投 資 も予 想 外 にマ イナス寄 与 になった。 米国の経済成長率と需要項目別寄与度 (%)6 個人消費 設備投資 住宅投資 在庫投資 外需 政府支出 5 4 3 2 1 0 ▲1 ▲2 実質GDP: 前期比年率 ▲3 ▲4 13年Q2 13年Q3 13年Q4 14年Q1 14年Q2 14年Q3 14 年Q4 15年Q1 15年Q2 15年Q3 15年Q4 16年Q1 16年Q2 資料:Bloomberg(米商務省)データから農中総研作成 しか しなが ら、16 年 後 半 の 米 国 経 済 につ い ては、基 本 的 に 内 需 が 主 導 す る 形 での 経 済 成 長 が 続 く と す る これ ま で の 見 方 を 踏 襲 す る 。 5 月 に は雇 用 増 加 ペ ー ス が 一 旦 鈍 化 した も のの、6、7 月 と大 幅 に回 復 、非 農 業 部 門 雇 用 者 数 は平 均 19 万 人 /月 のペースで増 加 して お り、 労 働 市 場 は 堅 調 さを維 持 し てい る 。ま た 、 所 得 の 増 加 や 家 計 状 況 の 改 善 を 背 景 に 、 消 費 者 セ ン チ メン ト も 高 水 準 を 保 っ て 推 移 し てい る 。 こ う した こと か ら 、個 人 消 費 は 引 き 続 き 経 済 全 体 を支 えていくと 予 想 する。 (%) 米国の住宅ローン金利の推移 また、最 近 頭 打 ち気 味 で推 移 す る 住 宅 市 場 に も プ ラスの材 料 が 増 え ている。歴 史 的 な低 水 準 となった住 宅 ロ ー ン 金 利 の 下 で 、住 宅 ロ ー ン は 急 増 している。こうしたなか、今 後 の 住 宅 販 売 と 着 工 は高 水 準 で 推 移 す る 可 能 性 が 高 く 、1 6 年 後 半 に 住 宅 投 資 は再 び増 加 に転 じると期 待 で きる。この低 金 利 環 境 は個 人 消 費 の拡 大 や 、企 業 の 設 備 投 資 マ インド の改 善 につながるとも考 えられる。 7.0 6.5 30年固定住宅ローン金利 6.0 15年固定住宅ローン金利 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 07/6 08/6 09/6 10/6 11/6 12/6 13/6 14/6 15/6 16/6 なお 、原 油 安 や ド ル高 基 調 と い っ (資料) Freddie Macより農中総研作成 (年/月) た逆 風 に晒 されているものの、最 近 発 表 された企 業 決 算 は事 前 予 想 ほどの悪 化 は見 られていない。製 造 業 ・非 製 造 業 とも経 営 者 マ イン ドが 改 善 し てい る こ と に 加 え 、 鉱 工 業 生 産 や 設 備 稼 働 率 も 底 打 ち の 兆 しも 出 て いる。設 備 投 資 は今 しば らく停 滞 するが、さらなる落 ち込 みは回 避 されると予 想 する。 このように、米 国 経 済 は「個 人 消 費 や住 宅 投 資 は堅 調 」 、「 設 備 投 資 と 純 輸 出 は低 調 」と の 構 図 が 継 続 し て い る も の の 、 設 備 投 資 や 純 輸 出 の マ イナ ス 寄 与 は 先 行 き 縮 小 す る 可 能 4 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 性 が高 く、16 年 後 半 には成 長 が加 速 すると予 想 する。以 上 から、16 年 後 半 の GDP 成 長 率 は前 期 比 2.5%(前 回 見 通 し 1.8%から上 方 修 正 )、16 年 を通 じて前 年 比 1.6%(前 回 見 通 しから変 更 なし)、17 年 は同 2.2%と前 回 見 通 し(2.3%)から僅 かに下 方 修 正 した。 ま た 、金 融 政 策 に ついては、利 上 げ の 時 期 と その ペー スが 引 き続 き 注 目 され ている 。ブレ グ ジットに よ る 国 際 金 融 市 場 の 混 乱 は落 ち着 きを取 り戻 す など、国 際 金 融 面 での 短 期 的 な リ ス ク は後 退 した 。労 働 市 場 は総 じ て堅 調 さを 維 持 してお り、 完 全 雇 用 に 近 い と され る 水 準 に達 してお り、賃 金 上 昇 率 も高 まりをみ せる一 方 で、物 価 上 昇 率 は伸 び 悩 んでいる。そのた め、2%の物 価 目 標 に向 けて上 昇 率 が高 まることへの確 信 も揺 らぎ始 めており、米 連 邦 準 備 制 度 (FRB)が想 定 する年 内 2 回 利 上 げとい う見 通 しと市 場 の見 方 にズレが生 じている。 も ちろん 、今 後 発 表 される 雇 用 ・ イン フレ関 連 の経 済 指 標 次 第 では、早 ければ 9 月 にも 追 加 利 上 げが行 われる可 能 性 があるほか、年 末 までにもう 1 回 (年 内 2 回 )の利 上 げも完 全 に は否 定 できない。ただし、市 場 では 12 月 に利 上 げ(年 内 1 回 )するというものがコンセンサス で ある ほか、イタリ ア国 民 投 票 や 米 国 大 統 領 選 の 前 後 は避 ける べき ( 年 内 見 送 り) との 見 方 もある。16 年 後 半 にかけて、金 融 政 策 への思 惑 を巡 って市 場 動 向 にも影 響 が及 ぶ可 能 性 がある。なお、今 回 の経 済 見 通 しにおいては、9 月 に 0.25%の追 加 利 上 げを決 定 (年 内 1 回 )すると予 想 した。 最 後 に、当 面 の経 済 の 下 振 れリスクとして、以 下 の 3 点 を指 摘 してお きたい。まず、国 際 経 済 や金 融 市 場 の混 乱 である。例 えば、イタリアの国 民 投 票 、中 国 経 済 の減 速 リスク、資 源 安 の下 で中 南 米 諸 国 の経 済 危 機 などが挙 げられる。こうした不 安 要 因 による世 界 経 済 ない し国 際 金 融 市 場 の混 乱 リ ス クに 留 意 す る 必 要 が ある 。次 に 、景 気 拡 張 期 が 長 期 化 し、 完 全 雇 用 に 近 い 状 況 と なってい る た め 、予 想 以 上 の ペ ー ス で 賃 金 ・ 物 価 が 上 昇 し始 め る こ と に なれ ば 、 米 国 経 済 が リ セ ッ ショ ン に 突 入 す る リ ス ク も あ る 。 最 後 に ドル 高 進 行 に つ い てで ある。利 上 げ観 測 の高 まりに伴 ってドル高 が再 び進 行 する可 能 性 もあるが、それは設 備 投 資 や輸 出 に対 して再 び 下 押 し圧 力 を加 えかね ない。 2016~17年 米国経済見通し (16年8月改定) 単位 2015年 2016年 通期 通期 2017年 上半期 下半期 (1~6月) (7~12月) 通期 上半期 下半期 (1~6月) (7~12月) 実績 実質GDP 個人消費 設備投資 住宅投資 在庫投資 純輸出 輸出等 輸入等 政府支出 PCEデフレーター GDPデフレーター 参 FFレート誘導水準 考 10年国債利回り 完全失業率 % % % % 寄与度 寄与度 % % % % % % % % 予想 予想 予想 予想 予想 予想 2.6 1.6 0.9 2.5 2.2 2.4 1.8 3.2 2.7 2.4 3.1 2.5 2.2 2.2 2.1 ▲ 1.3 ▲ 3.1 ▲ 0.3 2.7 3.3 4.8 11.7 6.2 5.0 2.3 5.8 6.5 8.0 0.2 ▲ 0.3 ▲ 1.2 0.8 0.2 0.5 ▲ 0.2 ▲ 0.7 ▲ 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.2 ▲ 1.0 0.1 ▲ 0.4 ▲ 0.7 1.1 1.0 0.9 0.9 4.6 0.7 ▲ 0.2 1.9 2.0 1.2 3.7 1.8 0.8 0.8 ▲ 0.5 ▲ 0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.2 1.1 1.2 1.0 1.5 1.7 1.6 1.8 1.1 1.4 1.2 1.5 1.8 1.8 1.8 0.25~0.50 0.50~0.75 0.25~0.50 0.50~0.75 1.00~1.25 0.75~1.00 1.00~1.25 2.1 2.0 1.5 1.8 2.0 1.8 2.2 5.3 4.8 4.9 4.8 4.8 4.8 4.8 実績値は米国商務省”National Income and Product Accounts”、予測値は当総研による。 (注) 1. 予想策定時点は2016年8月4日(16年4~6月期の速報値ベース) 2.通期は前年比増減率、半期は前半期比年率増減率(半期の増減率を年率換算したもの) 3.在庫投資と純輸出は年率換算寄与度 4.デフレーターは期中平均前年比 5.FFレート誘導目標は期末値 5 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 ② 欧州経済 実質GDP成長率(前期比) 0.9 0.8 0.7 2015年 7~9月期 0.6 0.5 (%) ユーロ圏 では、16 年 4 ~6 月 期 の実 質 GDP 成 長 率 (速 報 値 ) は前 期 比 で 0.3%となり、前 期 の 同 0.6 % か ら 減 速 し た 。 経 済 規 模 の大 きい 4 ヶ国 ではそれぞれ 成 長 率 が 低 下 したが 、なか でも 、 フラン ス と イタ リ アが ゼ ロ 成 長 に ま で減 速 した点 が注 目 される。 10~12月期 0.4 0.3 2016年 1~3月期 0.2 0.1 0.0 ▲ 0.1 2015年 7~9月期 4~6月期 ドイツ フランス イタリア スペイン ユーロ圏 英国 EU 0.2 0.4 0.2 0.8 0.3 0.4 0.4 0.4 0.4 0.2 0.8 0.4 0.7 0.5 ユーロ圏 の主 要 な経 済 指 標 10~12月期 2016年 0.7 0.7 0.3 0.8 0.6 0.4 0.5 を 確 認 す れ ば 、ま ず 、これ ま で 経 1~3月期 済 成 長 の主 要 な要 因 であった 0.4 0.0 0.0 0.7 0.3 0.6 0.4 4~6月期 個 人 消 費 に頭 打 ちの気 配 が現 (資料) Eurostatのデータから農林中金総合研究所作成 れている。6 月 の小 売 売 上 高 は 前 月 比 で横 ばいとなり、前 年 同 月 比 についても 1.6%の増 加 にとどまっている。また、同 月 の 鉱 工 業 生 産 指 数 は前 月 比 で 0.6%の上 昇 、前 年 同 月 比 は 0.4%の上 昇 となったものの、最 近 では力 強 さに欠 ける動 きとなっている。このほか 6 月 の失 業 率 は 10.1%であり、改 善 傾 向 が続 いているとはいえその足 取 りは引 き続 き緩 慢 であるほか、7 月 の消 費 者 物 価 上 昇 率 (速 報 値 ) は全 項 目 で 前 年 同 月 比 0.2%の 上 昇 となりプ ラス 圏 を維 持 したものの 、エ ネ ルギー 、 食 品 、酒 、タバコを除 く コアも同 0.9%の上 昇 であり、依 然 として低 い値 が継 続 している。 景 気 回 復 の牽 引 役 として期 待 されるドイツでは、6 月 の小 売 売 上 高 は前 月 比 で 0.1%の 減 少 となった。また、同 月 の製 造 業 受 注 指 数 は前 月 比 で 0.4%の、前 年 同 月 比 で 3.1%の 各 低 下 と な っ た 。 一 方 で 、 同 月 の 鉱 工 業 生 産 指 数 は 前 月 比 で 0.8 % 、 前 年 同 月 比 で 0.5 % の 各 上 昇 であ ったも のの 、ひ と ころに 比 べ頭 の 重 い 推 移 と なってい る 。また 、同 月 の 輸 出 額 は前 月 比 で 0.3%の増 加 にとどまったが、これは前 年 同 月 比 では 0.7%の減 少 であり、 同 様 に力 強 さに欠 ける動 きが現 れている。 ユーロ圏 では財 政 危 機 以 前 の過 熱 期 に南 欧 諸 国 を中 心 に上 昇 した企 業 や家 計 の債 務 比 率 はその改 善 の途 上 にあることで 、一 連 の金 融 緩 和 にもかかわ らず 企 業 の投 資 は盛 り上 がりに欠 け、労 働 生 産 性 は全 般 に伸 び悩 みの状 態 にある。これに加 え、最 近 では個 人 消 費 の 頭 打 ち の 兆 しも 現 れ て お り 、 今 後 、 当 面 の 間 は ユ ー ロ 圏 で は 経 済 成 長 の 加 速 は 期 待 しづらい状 況 にある。さらに、6 月 23 日 の英 国 の 国 民 投 票 ではブレグジットを選 択 したことで、 今 後 は先 行 きの不 透 明 感 から企 業 投 資 や家 計 消 費 の手 控 え感 が強 まり、経 済 成 長 の重 荷 と なる 懸 念 が 生 じている 。この よ うな情 勢 の も と、欧 州 中 央 銀 行 ( ECB ) に よ る 資 産 買 入 れ (QE)期 限 の延 長 などの、追 加 緩 和 の可 能 性 が強 まっている。 ③ 中国経済 16 年 4~6 月 期 の実 質 GDP 成 長 率 は前 年 同 期 比 6.7%と、1~3 月 期 (同 6.7%)と変 わらずと、1 年 ぶりに成 長 鈍 化 が止 まった。その結 果 、16 年 上 半 期 の成 長 率 は 6.7%と政 府 が掲 げている 16 年 の成 長 目 標 である「前 年 比 6.5%~7.0%」の範 囲 に収 まった。 ネット販 売 や自 動 車 販 売 の好 調 さが続 いたことを受 けて個 人 消 費 は堅 調 に推 移 したほ か、政 府 主 導 のインフラ投 資 も引 き続 き大 幅 に伸 びたことが成 長 下 支 えにつながった。一 方 、過 剰 な生 産 能 力 の 解 消 などを受 けて民 間 企 業 の設 備 投 資 が大 幅 に鈍 化 したほか、輸 出 の低 調 さも続 いている。 この よ うに 減 速 は一 旦 止 ま った もの の 、再 び 成 長 率 を高 め てい く よ うな材 料 は見 当 た らず 、 16 年 後 半 にかけては下 振 れ圧 力 が依 然 強 い状 態 が続 くと見 られる。7 月 には民 間 投 資 や 6 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 鉱 工 業 生 産 が鈍 化 するなど、足 元 の景 気 下 振 れ圧 力 は依 然 強 いこと が明 らかになった。そのため、7~9 月 期 の成 長 率 は 6.6%と小 幅 ながら 再 び減 速 すると予 測 する。 中国の実質GDP成長率(前年同期比) (%) 7.5 7.3 7.1 しかし、習 近 平 政 権 が示 した 16~ 見通し 20 年 の平 均 成 長 率 の下 限 は 6.5% 6.9 であることなどから、成 長 率 がさらに 6.7 減 速 する可 能 性 は低 いと思 われる。 財 政 金 融 政 策 の 発 動 な ど を 通 じ て 6.5 14 15 16 17 18 10~12 月 期 の成 長 率 は 6.8%と小 (資料) 中国国家統計局、CEICデータより作成、見通しは当社予想。 幅 なが ら高 まると 予 測 する 。そのた め、 16 年 通 年 では 6.7%の成 長 率 を達 成 すると予 測 する。ただし、鉄 鋼 ・石 炭 の生 産 量 を減 ら す な ど 経 済 構 造 の 調 整 を 進 め て い る 手 前 、 古 い 構 造 の 温 存 に つ なが り か ね な い 大 規 模 な 経 済 対 策 は打 ち出 せ ないことから、15 年 (同 6. 9%)から成 長 率 は減 速 すると思 われる。 このような構 造 調 整 を進 めるなか、中 国 経 済 は当 面 「L 字 型 」の成 長 経 路 をたどると予 想 される。前 述 のように 16 年 中 にボトムを迎 えた後 、17 年 秋 頃 に開 かれる予 定 の第 19 回 共 産 党 大 会 を控 え、17 年 は経 済 成 長 率 が 6.8%と小 幅 ながら一 旦 高 まると考 えられる。しかし、 経 済 構 造 の調 整 圧 力 が強 いこともあり、18 年 には再 び小 幅 減 速 すると予 想 する。 今 後 、短 期 的 に注 目 したいの は、民 間 投 資 の動 き 、そ して年 内 にも 想 定 される 米 国 の 追 加 利 上 げを契 機 に中 国 からの資 本 流 出 が加 速 するかという点 である。中 長 期 的 には、過 剰 設 備 ・過 剰 債 務 問 題 の解 消 は持 続 可 能 な成 長 には必 要 不 可 欠 なものであり、どこまで成 果 が上 がるか注 視 する必 要 があろう。 ④ 輸 入 原 油 価 格 の見 通 し 年 初 に 再 び 大 幅 下 落 し、世 界 経 済 の失 速 懸 念 を高 めた原 油 価 格 は、2 月 中 旬 以 降 持 ち直 しに転 じ、6 月 には一 時 50 ドル/バレル台 を回 復 した。その背 景 には、ナイジェリアやカ ナ ダ などでの 生 産 障 害 や イン ド・ 中 国 などか らの 需 要 の 底 堅 さが 挙 げられ る 。こうした 動 き は 世 界 経 済 の 下 振 れ リ ス ク を 後 退 さ せ た も の の 、そ の 後 は ド ラ イ ブ シ ー ズ ン を 迎 え る 米 国 で の ガソリン需 要 の鈍 さや過 剰 在 庫 の存 在 から弱 含 む動 きもあり、一 旦 40 ドルを割 り込 む場 面 もあった。8 月 に入 るとベネズエラ、エクアドル、クウェートなどの複 数 の OPEC(石 油 輸 出 国 機 構 ) 加 盟 国 が ロ シアな ど非 加 盟 国 と 増 産 凍 結 に 向 けた 協 議 を再 開 す る こと を検 討 してい る こと が 伝 わ り、 再 び 持 ち直 す 動 き と なってい る 。IEA( 国 際 エ ネ ルギー 機 関 ) に よ れ ば 、北 米 産 の シェ ー ルオ イル 減 産 などに よ り 、16 年 後 半 に 向 け て原 油 市 場 は 需 給 均 衡 に 向 か って いるとしている。なお、1 7 年 については OPEC の生 産 量 が 16 年 並 みであれば供 給 不 足 に なる が 、 イラ ン ・ イ ラク の 増 産 や リ ビ ア・ ナ イ ジェ リ アな どで の 生 産 障 害 が 解 消 され れ ば 、 供 給 過 剰 が 続 く と し てい る 。た だ し 、 価 格 が 一 (USD/B) 国際原油市況の推移 140 定 水 準 まで上 昇 すれば、北 米 地 域 での シ ェ ー ル オ イ ル 生 産 が 再 開 さ れ る た め 、 120 一 本 調 子 で 価 格 が 上 昇 す る 可 能 性 は 100 薄 い。 80 60 ドバイ(スポット) WTI先物(期近) 40 (参考)入着価格 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 20 2007年 以 上 を踏 まえ、国 内 への原 油 入 着 価 格 ( C IF ベ ー ス ) は 緩 や か に 上 昇 傾 向 を たどるとみるが 、1 6 年 度 平 均 は 1 バレル 4 0 ドル台 半 ば 、1 7 年 度 平 均 は 50 ドル台 前 半 と想 定 した。 (資料)NYMEX、東京工業品取引所、財務省 7 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 2016~17年度 日本経済見通し 単位 名目GDP % 実質GDP % 民間需要 % 民間最終消費支出 % 民間住宅 % 民間企業設備 % 民間在庫品増加(寄与度) ポイント 公的需要 % 政府最終消費支出 % 公的固定資本形成 % 輸出 % 輸入 % 国内需要寄与度 ポイント 民間需要寄与度 ポイント 公的需要寄与度 ポイント 海外需要寄与度 ポイント GD Pデ フ レー ター ( 前年比) % 国内企業物価 (前年比) % 全国消費者物価 ( 〃 ) % (消費税増税要因を除く) 完全失業率 鉱工業生産 % ( 前年比) % 経常収支 兆円 名目GD P比率 % 為替レー ト 円/ドル 無担保コ ー ルレー ト (O/N ) % 新発10年物国債利回り % 2014年度 15年度 16年度 17年度 ( 実績) ( 実績) ( 予測) ( 予測) 1.5 ▲ 0.9 ▲ 1.9 ▲ 2.9 ▲ 11.7 0.1 0.6 ▲ 0.3 0.1 ▲ 2.6 7.9 3.4 ▲ 1.6 ▲ 1.5 ▲ 0.1 0.6 2.5 2.2 0.8 0.8 ▲ 0.2 2.4 2.1 0.3 0.7 1.6 ▲ 2.7 0.4 ▲ 0.0 0.7 0.6 0.2 0.1 1.4 1.2 0.6 0.5 0.7 4.3 0.1 ▲ 0.2 1.7 1.5 2.0 ▲ 1.8 ▲ 0.4 0.9 0.4 0.5 ▲ 0.2 0.6 1.7 1.1 1.1 1.0 ▲ 1.9 1.7 0.0 1.6 0.8 5.6 0.3 1.6 1.3 0.9 0.4 ▲ 0.2 0.6 2.8 2.9 ▲ 3.2 ▲ 0.0 ▲ 3.0 ▲ 0.1 0.5 0.8 (0.9) (▲ 0.1) 3.6 ▲ 0.5 8.7 1.8 109.9 0.07 0.48 90.6 3.3 ▲ 1.0 17.7 3.5 120.1 0.03 0.29 49.4 3.1 0.9 19.7 3.9 105.2 ▲ 0.13 ▲ 0.19 45.4 2.9 3.4 21.1 4.1 106.3 ▲ 0.20 ▲ 0.25 51.3 通関輸入原油価格 ドル/バレル (注)全国消費者物価は生鮮食品を除く総合。断り書きのない場合、前年度比。 無担保コールレートは年度末の水準。 季節調整後の四半期統計をベースにしているため統計上の誤差が発生する場合もある。 (四半期) 単位 名目GDP 実質GDP % % (年率換算) % 民間需要 民間最終消費支出 民間住宅 民間企業設備 民間在庫品増加(寄与度) 公的需要 政府最終消費支出 公的固定資本形成 輸出 輸入 % 国内需要寄与度 民間需要寄与度 公的需要寄与度 海外需要寄与度 % % % %pt % % % % % %pt %pt %pt %pt GDPデフレーター(前年比) % 国内企業物価 (前年比) 全国消費者物価 ( 〃 ) (消費税増税要因を除く) % 完全失業率 % % (→予測) 2016年 2015年 1 ~3 月期 4 ~6 月期 7 ~9 月期 1 0 ~1 2 月期 1 ~3 月期 2.0 1.2 4.9 1.5 0.1 2.6 3.0 0.6 ▲ 0.1 0.3 ▲ 1.5 1.7 1.1 1.1 1.1 ▲ 0.0 0.1 3.2 0.0 ▲ 0.4 ▲ 1.7 ▲ 0.2 ▲ 0.7 1.7 ▲ 0.9 0.3 0.5 0.3 1.2 ▲ 4.2 ▲ 1.8 ▲ 0.0 ▲ 0.1 0.1 ▲ 0.4 1.4 0.6 0.5 2.0 0.4 0.5 1.1 0.7 ▲ 0.1 ▲ 0.1 0.2 ▲ 1.9 2.6 1.2 0.3 0.3 ▲ 0.0 0.2 1.8 ▲ 0.3 ▲ 0.4 ▲ 1.7 ▲ 0.6 ▲ 0.8 ▲ 0.5 1.2 ▲ 0.2 0.0 0.8 ▲ 3.3 ▲ 0.9 ▲ 1.1 ▲ 0.5 ▲ 0.5 0.0 0.1 1.5 0.4 2.3 (0.3) 3.5 1.1 3.6 2.9 119.1 0.07 0.34 55.9 ▲ 2.2 0.2 (0.1) 3.4 ▲ 1.3 4.0 3.2 121.4 0.07 0.40 59.7 ▲ 3.7 ▲ 0.2 3.4 ▲ 1.0 4.0 3.2 122.2 0.07 0.40 58.3 鉱工業生産 (前期比) % 経常収支(季節調整値) 兆円 % 名目GDP比率 為替レート 円/ドル 無担保コールレート(O/N) % 新発10年物国債利回り % 通関輸入原油価格 ㌦/バレル (注)全国消費者物価は生鮮食品を除く総合。断り書きのない場合、前期比。 2017年 2018年 4 ~6 月期 7 ~9 月期 1 0 ~1 2 月期 1 ~3 月期 4 ~6 月期 7 ~9 月期 1 0 ~1 2 月期 1 ~3 月期 0.8 0.5 2.0 0.2 0.7 ▲ 0.1 ▲ 0.7 ▲ 0.1 0.8 0.9 0.1 0.1 ▲ 0.5 0.4 0.2 0.2 0.1 0.9 0.2 0.0 0.2 0.2 0.2 5.0 ▲ 0.4 ▲ 0.0 0.6 0.2 2.3 ▲ 1.5 ▲ 0.1 0.3 0.2 0.1 ▲ 0.3 0.8 0.2 0.2 0.7 0.3 0.2 0.9 0.3 ▲ 0.0 0.3 0.1 0.5 ▲ 0.5 0.2 0.3 0.2 0.1 ▲ 0.1 0.6 0.2 0.1 0.3 0.1 0.2 ▲ 2.0 ▲ 0.2 0.0 0.1 0.2 ▲ 0.5 ▲ 0.2 0.2 0.1 0.1 0.0 ▲ 0.1 0.6 0.6 0.5 2.0 0.3 0.2 ▲ 1.0 0.7 0.0 1.0 0.2 5.0 0.1 0.4 0.5 0.3 0.2 ▲ 0.1 0.5 0.6 0.3 1.3 0.3 0.3 ▲ 0.5 0.4 0.0 0.7 0.2 3.0 0.1 0.5 0.4 0.2 0.2 ▲ 0.1 0.4 0.4 0.3 1.1 0.3 0.3 0.0 0.5 0.0 0.3 0.2 1.0 0.2 0.5 0.3 0.2 0.1 ▲ 0.0 0.7 0.3 0.2 0.9 0.3 0.3 0.1 0.6 0.0 ▲ 0.1 0.2 ▲ 1.5 0.3 0.4 0.2 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.0 0.6 0.2 0.2 0.6 0.3 0.3 0.2 0.6 0.0 ▲ 0.5 0.2 ▲ 4.0 0.4 0.3 0.1 0.3 ▲ 0.1 0.0 0.6 ▲ 3.7 ▲ 0.1 ▲ 3.4 ▲ 0.1 ▲ 4.3 ▲ 0.4 ▲ 3.7 ▲ 0.2 ▲ 2.5 ▲ 0.0 ▲ 1.2 0.4 ▲ 0.2 0.6 0.5 0.7 0.7 0.8 1.0 1.0 3.3 0.1 4.8 3.8 121.5 0.08 0.31 46.2 3.2 ▲ 1.0 5.0 4.0 115.5 0.03 0.05 33.6 3.2 3.1 3.0 3.0 2.9 2.9 2.8 2.8 0.2 2.1 0.3 1.2 1.0 0.4 0.3 1.2 4.7 4.9 5.0 5.1 5.2 5.2 5.3 5.4 3.7 3.9 3.9 4.0 4.1 4.0 4.1 4.2 108.2 102.5 105.0 105.0 105.0 105.0 107.5 107.5 ▲ 0.05 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.13 ▲ 0.15 ▲ 0.18 ▲ 0.20 ▲ 0.20 ▲ 0.12 ▲ 0.18 ▲ 0.20 ▲ 0.25 ▲ 0.25 ▲ 0.25 ▲ 0.25 ▲ 0.25 41.5 45.0 45.0 50.0 50.0 50.0 52.5 52.5 8 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 3.2016~17 年度の日本経済・物価見通し: (1)経 済 見 通 し ~ 鈍 いながらもようやく始 まる消 費 持 ち直 し 5 月 時 点 の経 済 見 通 しまでは、17 年 4 月 に消 費 税 率 10%への引 上 げを実 施 するという 前 提 条 件 の下 、「16 年 度 下 期 にかけて多 少 なりとも 駆 け込 み 需 要 が強 まるが、17 年 度 上 期 に はそ の 反 動 減 で 景 気 停 滞 に 陥 る 」 と い う 景 気 シナ リ オ を 提 示 し てい た 。 しか し 、 消 費 税 増 税 を 19 年 10 月 まで再 延 期 するとともに、16 年 度 下 期 から 17 年 度 にかけて公 共 事 業 を 柱 とする経 済 対 策 を実 施 することが決 定 されたことから、前 回 6 月 に公 表 した経 済 見 通 しで は景 気 シナリオを大 幅 に変 更 している。それによれば、「消 費 税 増 税 の先 送 り自 体 には景 気 刺 激 効 果 はなく、また 経 済 対 策 の効 果 は早 くとも 17 年 入 り後 と想 定 されるため、しばらく 景 気 回 復 感 の 乏 しい 展 開 が 続 く 。 17 年 度 に 入 れ ば 、 財 政 政 策 の 効 果 に よ っ て 成 長 率 は 高 まるとともに、労 働 需 給 が次 第 に引 き締 まりを見 せるなか、家 計 の所 得 環 境 の改 善 も継 続 し、消 費 の持 ち直 しが徐 々に本 格 化 する」というものである。 今 回 の見 通 し改 定 に当 たって、6 月 の経 済 見 通 しで提 示 した基 本 的 なシナリオを変 更 す る必 要 はないと判 断 しているが、今 後 の経 済 情 勢 を展 望 するうえで重 要 ないくつかの点 に ついて検 討 してみたい。 まず、16 年 入 り後 の 2 度 にわたる追 加 金 融 緩 和 にもかかわらず、円 高 圧 力 が解 消 してい ない 点 は十 分 考 慮 す る 必 要 が あ る だ ろ う 。 この 円 高 は 、 軟 調 な動 き を 続 ける 内 外 の 経 済 情 勢 と相 まって、企 業 業 績 を悪 化 させつつあり、円 高 進 行 は日 本 経 済 にとって重 荷 となる可 能 性 が高 い。参 考 までに、内 閣 府 経 済 社 会 総 合 研 究 所 「短 期 日 本 経 済 マクロ計 量 モデル (2015 年 版 )」に基 づく乗 数 分 析 を紹 介 すると、為 替 レートが円 安 方 向 に 10%動 いた場 合 、 実 質 GDP は初 年 度 に 0.08%、次 年 度 に 0.44%の押 上 げ効 果 が、民 間 消 費 デフレーター には初 年 度 0.16%、次 年 度 0.22%の押 上 げ効 果 が出 るとされている。円 高 ・円 安 の効 果 が対 称 的 であると想 定 すれば、この半 年 で 1 5 円 程 度 の円 高 (=10 %超 の円 高 )が進 んで い る こと を踏 ま え れ ば 、 景 気 ・ 物 価 に 対 す る 下 押 し 効 果 が 先 行 き 時 間 差 を 伴 っ て出 てく る と 思 われる。 次 に、事 業 規 模 28.1 兆 円 の経 済 対 策 についてである。このうち、財 政 措 置 は 13.5 兆 円 とされているが、財 政 投 融 資 が 6 兆 円 程 度 含 ま れており、国 ・地 方 の歳 出 増 加 は 7.5 兆 円 程 度 である。さらに国 費 は 6.2 兆 円 であり、うち 16 年 度 の一 般 会 計 で 4.0 兆 円 追 加 、ゼロ 国 債 で 0.1 兆 円 追 加 、1 7 年 度 以 降 に 0.3 兆 円 追 加 、となる模 様 だ。内 閣 府 は、これらによ る GDP 押 上 げ効 果 は 1.3%としているが、公 共 事 業 を担 う建 設 業 界 は人 手 不 足 ・資 材 値 上 がりなどに直 面 していることもあり、効 果 が一 部 目 減 りする可 能 性 もあるほか、震 災 復 興 や五 輪 特 需 に 関 連 する 受 注 残 も それなりに 水 準 が高 い ことか ら、経 済 対 策 の 効 果 が出 るま でに通 常 よりも時 間 がかかる可 能 性 がある。また、過 当 競 争 に加 えてマイナス金 利 政 策 の 導 入 で、体 力 が徐 々に奪 われている金 融 機 関 にとっては、財 政 投 融 資 の積 極 活 用 がさら に 経 営 環 境 を 圧 迫 す る リ ス ク も あ り、期 待 され る 効 果 が 出 る と は限 らない 。前 年 度 剰 余 金 が 少 なく、税 収 上 振 れも期 待 できないなどの財 源 面 の制 約 により、最 も重 要 な「民 間 消 費 の 底 上 げ」にとって呼 び水 となるような有 効 な手 立 ては不 十 分 との印 象 は否 めない。17 年 入 り 後 には公 共 投 資 が 盛 り上 がりを見 せ 、成 長 率 が 一 定 程 度 押 上 げられる と思 われるが、全 体 への波 及 効 果 はそれほど大 きくはないだろう。 ま た 、 改 善 が 続 く 労 働 市 場 と 賃 上 げ 動 向 も 注 目 材 料 で あ る 。官 製 春 闘 と も 称 され てき た アベノミクス下 での 春 季 賃 金 交 渉 では、長 年 見 送 られてきたベース アッ プ(ベア)が復 活 する など、一 定 の成 果 があ った ものの 、世 界 経 済 の先 行 き 懸 念 の 高 ま りや円 高 が 再 び 進 行 す る 中 、16 年 の春 季 賃 金 交 渉 は、民 間 平 均 で前 年 比 2.14%と、15 年 (同 2 .38%)を下 回 る妥 結 結 果 で あ った 。さらに 、最 近 で はエ ネ ルギー 価 格 下 落 に よ る 実 質 購 買 力 の 改 善 も 続 い て 9 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 民間消費と雇用者報酬の推移 330 270 雇用者報酬(右目盛) 320 265 民間最終消費支出(左目盛) 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 240 2009年 270 2008年 245 2007年 280 2006年 250 2005年 290 2004年 255 2003年 300 2002年 260 2001年 310 2000年 いる。毎 月 勤 労 統 計 によれば、6 月 の 現 金 給 与 総 額 は前 年 比 1.3 % 、 実 質 賃 金 は 同 1.8 % と 、 上 昇 率 が 高 まっている。最 近 の賃 金 所 得 の 増 加 の多 くは賞 与 など「特 別 に支 払 われた給 与 」によるものではあるが、 時 間 当 たりの賃 金 水 準 も上 昇 傾 向 にあることから、総 労 働 時 間 が下 げ 止 まり、増 加 に転 じてくれば、家 計 所 得 は増 加 傾 向 を強 めることにな る。 ま た 、 国 内 の 労 働 市 場 は 人 口 要 (資料)内閣府 (注)実質ベース。単位は2005年連鎖価格表示、兆円。 因 によ る供 給 制 約 が着 実 に強 まってい る 。アベノミ クス 始 動 時 と 比 べ 、雇 用 者 数 は 230 万 人 増 加 し、失 業 者 数 は 70 万 人 も減 少 している 。労 働 力 調 査 の詳 細 集 計 では、4~6 月 期 の非 労 働 力 人 口 4,401 万 人 のうち、適 当 な仕 事 がありそうもないと回 答 する就 業 希 望 者 が 109 万 人 存 在 していることになっているが、団 塊 世 代 が 70 歳 を迎 えるなか、労 働 供 給 の余 力 が乏 しくなっているのは確 かである。とはいえ、依 然 として正 規 従 業 員 の求 人 は多 くない の が 現 状 で あ り、労 働 需 給 逼 迫 が 賃 上 げ 加 速 に つ なが り、そ れ が 消 費 や 物 価 上 昇 の 改 善 につながるにはもう少 し時 間 が必 要 であろう。 以 下 、今 後 の日 本 経 済 についての見 通 しを述 べていく。まず、足 元 の 7~9 月 期 につい ては、15 年 実 績 よりも弱 いとはいえ、夏 季 賞 与 が着 実 に増 加 (経 団 連 調 べ:大 手 企 業 で前 年 比 1.46% )していることや西 日 本 を中 心 とした 猛 暑 、さらにはエネルギー価 格 の下 落 によ る 実 質 購 買 力 の 改 善 な ども あ り 、消 費 に は持 ち 直 しの 動 き が 継 続 す る も の と 思 わ れ る 。ま た 、 住 宅 投 資 も金 利 低 下 の 影 響 で増 勢 が続 く ほか 、16 年 前 半 は慎 重 化 した企 業 設 備 投 資 も 改 善 に向 か うだろう。一 方 、円 高 定 着 やそれに 伴 うインバ ウンド需 要 の 一 服 などで輸 出 は弱 含 みが継 続 し、外 需 寄 与 度 はマイナスとなるだろう。この結 果 、7~9 月 期 は、前 期 比 0.2%、 同 年 率 0.7%と、力 強 さはないが、3 四 半 期 連 続 のプラス成 長 と予 想 する。 年 度 下 期 に つ い ても 、円 高 定 着 や 低 成 長 が 続 く 世 界 経 済 情 勢 の 下 、 輸 出 の 改 善 が 見 込 めない状 況 は続 くが、実 質 賃 金 の上 昇 が消 費 持 ち直 しを促 すこと、金 利 低 下 の影 響 を 受 けた 住 宅 投 資 や設 備 投 資 の増 加 もあ り、プ ラス成 長 を維 持 するだろう。さらに 1 7 年 入 り 後 には公 共 事 業 など公 的 需 要 が成 長 押 上 げに貢 献 することが見 込 まれる。 その結 果 、1 6 年 度 の 実 質 成 長 率 は 0 .6% 、名 目 成 長 率 は 1 .2% 、GDP デ フレーターは 前 年 度 比 0 .6% (前 回 6 月 時 点 の予 測 はそれぞれ 0. 6% 、1. 2% 、同 0. 5%で 、デフレー タ ー を下 方 修 正 した 以 外 は変 更 なし)と 予 測 した。年 度 末 には失 業 率 は 3%前 後 と 22 年 ぶり の水 準 まで低 下 するなど、労 働 需 給 (%) (兆円、2000年連鎖価格) 平均的なGDP水準とGDPギャップ は徐 々に引 き締 まっていく。 20 550 平均的なGDP水準 予測 525 500 475 450 425 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 (右目盛) 17 年 度 に つ い て も 、 前 半 は 経 済 15 対 策 に盛 り込 まれた公 共 事 業 が本 現実のGDP (右目盛) 格 化 す る ほ か 、所 得 環 境 の 改 善 を背 10 景 とした民 間 消 費 の回 復 、さらには 5 20 年 の 東 京 五 輪 な ど を 控 え た 設 備 投 資 需 要 の底 堅 さなどにより、緩 や 0 か な経 済 成 長 を実 現 す る だ ろ う。ま た 、 海 外 経 済 については、共 産 党 大 会 を -5 GDPギャップ率 GDPデフレーター (左目盛) 前 にした中 国 政 府 の経 済 テコ入 れも (左目盛) -10 想 定 されるものの、円 高 定 着 が輸 出 の 順 調 な 回 復 を 阻 害 す る も の と 予 想 (資料)内閣府、総務省統計局のデータから作成 (注)平均的なGDPの水準はHPフィルターなどを利用して作成 10 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 する。この結 果 、1 7 年 度 の実 質 成 長 率 は 1 .1%、名 目 成 長 率 は 1.7% 、GDP デ フレーター は前 年 度 比 0. 6%( 前 回 予 測 はそれぞれ 1 .3% 、2 .2% 、同 0 .8%で 、概 ね下 方 修 正 、下 方 修 正 の 主 因 は円 高 が 輸 出 に 対 して中 期 的 に 悪 影 響 を及 ぼす と したた め) と 予 測 す る 。なお、 失 業 率 は引 き続 き低 下 が予 想 され、2%台 後 半 で推 移 するだろう。 (2)物 価 見 通 し ~ 円 高 で鈍 る物 価 の復 元 力 黒 田 日 銀 に よ る 量 的 ・ 質 的 金 融 緩 和 の 導 入 に よ り、0 8 年 秋 以 降 の 歴 史 的 な円 高 状 態 が解 消 したこと、さらには強 力 な緩 和 策 の採 用 を通 じて人 々の予 想 物 価 上 昇 率 に直 接 働 き か けた こと などが 奏 功 し 、 消 費 者 物 価 ( 全 国 、生 鮮 食 品 を 除 く 総 合 、以 下 同 じ ) は 一 時 、 前 年 比 1%台 半 ばまで上 昇 圧 力 を高 めたが、増 税 後 の民 間 消 費 の弱 さや 14 年 夏 以 降 の 原 油 安 な ど に よ り 、 そ の 後 は 上 昇 率 (%前年比、%pt) 最近の消費者物価上昇率の推移 が鈍 化 し、15 年 夏 にはゼロ%近 傍 、 エネルギーの寄与度 生鮮食品を除く食料品の寄与度 16 年 春 以 降 は▲0.3~ ▲0.5%の下 その他の寄与度 落 と、黒 田 日 銀 総 裁 が就 任 した前 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合) (参考)消費者物価指数(同上、消費税要因を除く) 後 の 下 落 率 ま で 戻 ってし ま った 。 よ り 需 給 環 境 を反 映 するとされる「食 料 (酒 類 を除 く)及 びエネルギーを除 く 総 合 」 は 同 0.5 % 、 日 銀 が 注 目 す る 「生 鮮 食 品 ・エネルギーを除 く総 合 ( 日 銀 コ ア)」も 同 0.7%( いずれ も 6 月 分 )と 、現 時 点 でも プ ラス を維 持 す るなど、あくまで物 価 下 落 は原 油 安 (資料)総務省統計局の公表統計より作成 と い う 外 的 要 因 で 起 き てお り 、 そ れ ら を除 けば一 定 の上 昇 率 を保 っていることは間 違 いない。しかし、全 般 的 に消 費 の持 ち直 し テン ポ が 鈍 い こと 、さ らに は年 初 来 進 行 した 円 高 の 影 響 が 強 ま ってお り 、 エ ネ ルギー 以 外 の 分 野 についても物 価 上 昇 率 が鈍 化 しつつあることは確 かである。 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 -1.5 先 行 きについては、原 油 価 格 と為 替 レートの動 向 がその趨 勢 を左 右 するとみられるが、 現 状 の 40~50 ドル/バレルという原 油 価 格 で推 移 すれば、エネルギー要 因 による物 価 押 下 げ効 果 は秋 以 降 徐 々に弱 まっていくため、物 価 は日 銀 コアに向 けて復 元 していくことが想 定 され る 。 しか し 、円 高 定 着 に よ る 物 価 抑 制 効 果 は 逆 に 強 ま っ てく る と み られ 、 肝 心 の 日 銀 コア自 体 が鈍 化 する可 能 性 も否 定 できない。夏 場 まで全 国 コアは小 幅 ながらも前 年 比 下 落 が 続 き 、 そ の 後 はプ ラス 圏 に 浮 上 す る と み られ る が 、上 昇 テン ポ はか な り 鈍 い と 予 想 され る 。 17 年 度 に入 れば、徐 々 に消 費 の持 ち直 しが進 み、「物 価 の基 調 」にも 前 向 きな動 きが出 て いるだろうが、前 年 比 2 %程 度 の安 定 的 な物 価 上 昇 と 整 合 的 な家 計 所 得 の改 善 が見 えて おらず、依 然 として 2% を見 通 せる状 況 には至 らないだろう。 以 上 から、1 6 年 度 の物 価 上 昇 率 は前 年 度 比 ▲ 0.1 %と、僅 かに低 下 した 15 年 度 (同 ▲ 0.0%)に続 く 2 年 連 続 の下 落 となる。ただし、足 元 では水 面 下 の物 価 上 昇 率 は年 末 までに 上 昇 に転 じるだろ う。1 7 年 度 に入 るとエネルギー 価 格 の下 押 し圧 力 のか なりの部 分 が剥 落 して 0%台 後 半 まで上 昇 率 を高 める。経 済 成 長 率 が徐 々に高 まるなど、マクロ的 な需 給 バラ ン ス が 均 衡 化 に 向 か い 、そ れ が 物 価 押 上 げに 貢 献 す る 半 面 、円 高 に よ る 輸 入 品 価 格 の 下 落 の影 響 がじわ りと 波 及 すること から、その後 2 %に向 けて加 速 していく ことは見 込 めず 、1 7 年 度 を通 じても 同 0 .8%にとどまる だろう。 11 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 実質GDP成長率と各需要別寄与度(前期比) (%前期比、ポイント) 1.5 民間需要寄与度 予測 1.0 公的需要寄与度 海外需要寄与度 実質GDP成長率 0.5 0.0 ▲ 0.5 2015年 2016年 2017年 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 ▲ 1.0 2018年 全国消費者物価上昇率 (%前年比) 3 予測 物価安定の目標(2%) 2 1 0 全国消費者物価(除く生鮮食品) 同上(消費税増税要因を除く) 2015年 2016年 2017年 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 ▲1 2018年 完全失業率 (%) 3.6 予測 3.4 3.2 3.0 2.8 2015年 (資料)内閣府、総務省統計局 2016年 2017年 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 10~12月期 7~9月期 4~6月期 1~3月期 2.6 2018年 (注)予測は農林中金総合研究所による。 12 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 4.当 面 の金 融 政 策 ・金 融 市 場 動 向 : (1)7 月 に追 加 緩 和 を決 定 した日 本 銀 行 マネタリーベースの目標とバランスシートの見通し 「マイナス金 利 付 き量 的 ・質 的 金 (兆円) 2012年末 13年末 14年末 15年末 16年7月末 今後の年間 融 緩 和 」の導 入 から半 年 が経 過 、そ (実績) (実績) (実績) (実績) (実績) 増加ペース の間 、金 利 水 準 は大 幅 に低 下 し、か マネタリーベース 138 202 276 356 404 +約80兆円 つイールドカーブのフラット化 も進 行 し (バランスシート項目の内訳) 長期国債 89 142 202 282 332 +約80兆円 たが、為 替 レー トはほ ぼ一 貫 して円 高 CP等 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 残高維持 方 向 に進 むなど、経 済 ・物 価 への下 社債等 2.9 3.2 3.2 3.2 3.2 残高維持 ETF 1.5 2.5 3.8 6.9 8.7 +約6兆円 押 し圧 力 が 懸 念 され て い た 。ま た 、原 JREIT 0.11 0.14 0.18 0.27 0.32 +約900億円 貸出支援基金 3.3 9 24 30 33 油 安 の影 響 が大 きいとはいえ、消 費 その他とも資産計 158 224 300 383 443 者 物 価 が下 落 状 態 を続 けるなど、一 銀行券 87 90 93 98 96 当座預金 47 107 178 253 303 連 の 異 次 元 緩 和 を 開 始 す る 以 前 に その他とも負債・純資産計 158 224 300 383 443 後 戻 りしたような状 況 と なるなど、金 融 (資料)日本銀行 (注)長期国債の平均買入れ期間は7~12年程度。 政 策 の 限 界 論 が 強 ま る 半 面 、ヘ リ コ プ タ ー ・ マ ネ ー 政 策 などの 別 次 元 の 緩 和 策 を 期 待 す る 意 見 も浮 上 するなど、この数 ヶ月 は金 融 政 策 を巡 る思 惑 が交 錯 していた。しかし、日 本 銀 行 は 1 月 にマイナス金 利 政 策 を導 入 して以 降 はその効 果 を慎 重 に見 極 める姿 勢 を続 けて お り、 金 融 政 策 決 定 会 合 の 度 に 追 加 緩 和 の 可 能 性 を織 り込 む 金 融 市 場 は、 「 現 状 維 持 」 との発 表 直 後 に株 安 ・円 高 が進 むなど、市 場 が大 きく揺 れ動 く場 面 が散 見 された。 こうした中 で開 催 された 7 月 28~29 日 の金 融 政 策 決 定 会 合 でも、事 前 にヘリコプター・ マネー政 策 の可 能 性 が取 り沙 汰 されるなど、市 場 は追 加 緩 和 を強 く意 識 していた。また、 参 院 選 において、消 去 法 的 ではあるがアベノミクス路 線 の継 続 という民 意 を得 た政 府 がデフ レ脱 却 に 向 けた 大 型 経 済 対 策 を取 りま と め る と い うタ イミ ン グ だ った こと も あ り、そ れ と の 一 体 感 を伴 わせるため日 銀 は何 かしら「お付 き合 い」 をするのではないか、との見 方 も強 かった。 このように「外 堀 」を埋 められた感 の強 い日 銀 は、①ETF 買 入 れ額 の増 額 (年 間 3.3 兆 円 →同 6 兆 円 )、②企 業 ・ 金 融 機 関 の外 貨 資 金 調 達 環 境 の安 定 のための措 置 (成 長 支 援 資 金 供 給 ・米 ドル特 則 の拡 大 、米 ドル資 金 供 給 オペの担 保 となる国 債 の貸 付 制 度 の新 設 ) を決 定 した 。今 回 の措 置 により、政 府 の 大 型 経 済 対 策 との相 乗 効 果 が発 揮 されるとの認 識 を示 している。 (2)今 後 の金 融 政 策 ~ 9 月 の総 括 的 検 証 を経 て、マイナス金 利 の 深 掘 りに着 手 か 今 後 の金 融 政 策 運 営 については、 上 述 の通 り、消 費 者 物 価 が前 年 比 2%の物 価 安 定 目 標 の達 成 を見 通 せる状 況 にはないことから、今 後 も 一 段 の追 加 緩 和 があるとの観 測 は 今 なお根 強 い。一 方 で、7 月 の金 融 政 策 決 定 会 合 後 に、次 回 9 月 の会 合 でこれまでの緩 和 策 の総 括 的 検 証 を行 う方 針 が示 されたことから、そ れが示 唆 する今 後 の政 策 運 営 を巡 って市 場 の憶 測 が交 錯 し、イールド カーブ全 体 が大 きく上 昇 している。 さて 、総 括 的 検 証 の 意 味 す る も の についてであるが、基 本 的 には黒 田 (%) ブルフラット化したイールドカーブ 2.0 量的・質的金融緩和の決定前(2013年4月3日) マイナス金利政策の導入決定前(2016年1月28日) 1.5 直近(2016年8月16日) 1.0 0.5 0.0 残存期間(年) -0.5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40 (資料)財務省 13 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 総 裁 や岩 田 副 総 裁 らが述 べたように、2%の物 価 安 定 目 標 を早 期 達 成 するために何 が必 要 か、と いう観 点 か らの 検 証 で あるとみ るのが順 当 だが、これまでの 緩 和 策 をどう評 価 す るか が ポ イン ト の 一 つ に なる 。し か し、マ イナ ス 金 利 政 策 の 導 入 を 決 定 し て 以 降 、日 銀 は 必 要 な 場 合 には「量 」・「質 」・「 金 利 」の 3 つの次 元 で追 加 策 を講 じると明 言 し続 けてきた手 前 、現 行 の緩 和 策 は有 効 との前 向 きな評 価 をする可 能 性 は高 いだろう。実 際 、15 年 5 月 に公 表 された「「量 的 ・質 的 金 融 緩 和 」:2 年 間 の効 果 の検 証 」(日 銀 レビュー2015-J-8)というレポ ートでは、量 的 ・質 的 金 融 緩 和 は実 質 金 利 を▲1%ポイント弱 押 下 げ、経 済 ・物 価 は事 前 に 想 定 した メ カニ ズ ム に 沿 っ た 動 き を 示 し てい る 、 と 評 価 し てい る 。 今 回 の 総 括 的 検 証 に お いても、各 方 面 か らの評 判 が悪 いマイナス金 利 政 策 をあえて前 向 きに 評 価 することで 、先 行 きマイナス金 利 政 策 を強 化 していくための布 石 を打 つ可 能 性 があるだろう。 なお 、先 行 き 、マ イナス金 利 を深 掘 りしていくにあた っては、い くつ かの問 題 点 を解 決 す る 必 要 もある 。例 え ば 、相 性 の悪 さが 指 摘 され るマネ タリ ー・ ベー ス目 標 を存 続 し続 ける べきか 、 先 行 き 増 加 が 想 定 され る 民 間 部 門 の 現 金 需 要 に どう対 処 す べ き か 、 さ らに はマ イナ ス 金 利 政 策 によってフラット化 したイールドカーブが金 融 機 関 の収 益 ・経 営 や金 融 仲 介 機 能 など に与 える 影 響 をどうみる か、などが挙 げられる 。9 月 の総 括 的 検 証 でこれらの問 題 点 にすべ て道 筋 をつ ける こと は困 難 で あろ うが 、これ を機 に いよ い よマ イナ ス 金 利 の 深 掘 りが 着 手 され ていくと思 われる。 (3)金 融 市 場 の見 通 し ~ 長 期 金 利 は マイナス状 態 が長 期 化 ブ レ グ ジッ ト 決 定 直 後 、内 外 金 融 市 場 は 大 き く 動 揺 し 、 円 高 ・ 株 安 ・ 金 利 低 下 が 進 行 し た 。しか し、そ の 後 は米 国 経 済 指 標 の 堅 調 さや ブ レグ ジッ ト を巡 る 不 安 感 の 緩 和 などで 、米 NY ダ ウが連 日 最 高 値 を更 新 する など、リスクオ ンの流 れが出 始 め てい る。以 下 、長 期 金 利 、 株 価 、為 替 レートの当 面 の見 通 しについて考 えてみたい。 ① 債券市場 「量 的 ・質 的 金 融 緩 和 」 の下 、日 銀 は毎 月 11 兆 円 台 のペース(=年 間 の国 債 市 中 消 化 額 (16 年 度 は 152 兆 円 )に迫 る規 模 )での国 債 買 入 れを行 っていることもあり、長 期 金 利 は 低 下 傾 向 をた どっ てい る 。加 え て、 日 銀 が マ イナ ス 金 利 政 策 の 導 入 を 決 定 して 以 降 、金 利 水 準 は大 幅 に低 下 しており、長 期 金 利 の指 標 である新 発 10 年 物 国 債 利 回 りは 2 月 中 旬 にはマイナスに、3 月 中 旬 以 降 は▲0.1%前 後 で推 移 し始 めた。その後 も 6 月 の英 国 国 民 投 票 前 にリスクオフが強 まり▲0.2%前 後 へ、さらに 7 月 8 日 には一 時 ▲ 0.3%まで低 下 する 場 面 も あ った 。そ の 後 も 、 7 月 末 の 金 融 政 策 決 定 会 合 を 控 え て 追 加 緩 和 の 可 能 性 を織 り 込 む動 きが続 いたが、追 加 緩 和 の内 容 が「質 」の拡 充 を柱 とするものであり、かつ 9 月 会 合 で 実 施 を 明 言 した 「 総 括 的 な 検 証 」 の 意 味 す る と ころ を 巡 っ て 市 場 の 憶 測 を 呼 び 、 長 期 金 利 はマイナス幅 を大 幅 に縮 小 させている。 先 行 きについ ては、大 型 経 済 対 策 での 国 債 増 発 も 想 定 され ると はいえ、日 銀 に よる 強 力 な金 融 緩 和 策 はしばらく 継 続 されると み られるほ か、日 銀 が「 総 括 的 な検 証 」 は緩 和 縮 小 に はつ なが らない と してい る こと 、さらに 年 内 は国 内 経 済 ・ 物 価 の 低 調 さ が 続 く 見 込 み であ る こ とから、長 期 金 利 は再 び 低 下 圧 力 を強 めていくと予 想 する。 ② 株式市場 6 月 初 旬 に か けて、米 国 の 早 期 利 上 げ観 測 を背 景 に 円 安 傾 向 が 強 まった こと が 好 感 さ れ、日 経 平 均 株 価 は一 旦 17,000 円 を回 復 した。しかし、その直 後 の 5 月 の米 雇 用 統 計 が 弱 い内 容 だったことに加 え、英 国 民 投 票 を控 えてリスクオフが強 まったことから、株 価 は調 整 色 を強 めた。ブレグジット決 定 直 後 には一 時 4 ヶ月 ぶりの 15,000 円 割 れの年 初 来 安 値 ( ザ ラ場 ベ ー ス ) を更 新 す る 場 面 もあ ったが 、7 月 中 旬 以 降 は米 国 経 済 の 堅 調 さや 大 型 経 14 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 済 対 策 などへ の 期 待 か ら 、再 び 株 価 は 持 ち直 しを 見 せ た 。 過 去 最 高 値 を 更 新 す る 米 国 の 株 価 指 数 や ETF 買 入 れ額 の倍 増 を決 定 した日 銀 の追 加 緩 和 を好 感 し、株 価 は 17,000 円 近 くまで戻 す場 面 もあったが、円 高 懸 念 も根 強 く、その後 は頭 打 ちと なっている。 世 界 経 済 の下 振 れリ スクが 根 強 い中 、今 後 とも円 高 圧 力 に晒 される 場 面 も 想 定 され 、業 績 見 通 しの下 方 修 正 が意 識 されると思 われる。そのため、一 本 調 子 で の上 昇 は見 込 みがた く 、 し ば らく は 上 値 が 重 い 展 開 が 続 く と み る 。た だ し 、 米 利 上 げ が 意 識 さ れ 円 高 圧 力 か ら 多 少 なりとも解 放 され、かつ経 済 対 策 の効 果 が浸 み出 してくれば持 ち直 し基 調 が強 まるだろ う。 ③ 外国為替市場 15 年 を通 じて概 ね 1 ドル=120 円 前 後 で推 移 してきた対 ドルレートであったが、16 年 初 に世 界 経 済 の下 振 れリスクが意 識 されて以 降 、為 替 レートには円 高 圧 力 がかかり始 めた。 そ の 後 、経 済 失 速 懸 念 が 後 退 す る 場 面 で も 、米 国 の 利 上 げ ペ ー ス が 緩 や か なも の に 修 正 され 、早 期 利 上 げ観 測 が 遠 の いた こと もあ り、円 高 圧 力 は払 拭 で き ずにい る 。6 月 には、英 国 民 投 票 が間 近 に迫 るなか、ブレグジットの可 能 性 が意 識 される中 で円 高 が進 行 、ブレグ ジットが決 定 した直 後 には一 時 2 年 7 ヶ月 ぶりに 100 円 台 を割 り込 んだ。その後 、6 月 の米 雇 用 統 計 が 良 好 な内 容 と なり、か つ 政 府 の 大 型 経 済 対 策 や 日 銀 の 追 加 緩 和 ( 特 にマ イナ ス金 利 の深 掘 り)に対 する期 待 感 が強 まる中 、為 替 レートは一 旦 100 円 台 後 半 まで円 安 方 向 に戻 した。しかし、日 銀 の追 加 緩 和 発 表 後 には、その内 容 が失 望 を生 み、再 び円 高 圧 力 が高 まったほか、期 待 外 れの米 経 済 指 標 の発 表 を受 けて、米 国 の早 期 利 上 げ観 測 が 後 退 したこともあり、8 月 中 旬 には再 び 100 円 割 れとなっている。 なお 、国 内 で は依 然 と して追 加 緩 和 策 へ の 期 待 が 根 強 い 一 方 、米 国 は非 常 に 緩 やか と はいえ利 上 げする方 向 にあるなど、日 米 の金 融 政 策 は方 向 性 が真 逆 であり、それ自 体 は 円 安 要 因 で あ る と い え る 。 し か し 、 世 界 経 済 の 下 振 れ リ ス ク は 健 在 で あ り、 リ ス ク オ フに 振 れ る 場 面 で は円 高 圧 力 は 再 び 高 ま る だ ろ う。た だ し、米 国 で 次 回 利 上 げ が 現 実 味 を帯 び てく れば円 安 が進 行 する可 能 性 がある。 また、対 ユーロレートでも年 初 来 、円 高 が進 行 した。6 月 にはブレグジッ トが意 識 されて英 ポ ン ドが急 落 、それに つられ てユー ロ 安 も進 行 し、国 民 投 票 後 に は一 時 的 なが らも 110 円 台 を 3 年 半 ぶりに割 った 。その後 は対 ドルレートと同 様 、円 安 方 向 に一 旦 戻 ったが、直 近 は 再 び 110 円 台 前 半 で推 移 するなど、しばらくは円 高 圧 力 の強 い状 況 が続 くとみられる。 金利・為替・株価の予想水準 年/月 2016年 2017年 8月 9月 12月 3月 6月 項 目 (実績) (予想) (予想) (予想) (予想) 無担保コールレート翌日物 (%) -0.044 -0.1~0.0 -0.2~0.0 -0.2~0.0 -0.2~0.0 TIBORユーロ円(3M) (%) 0.0580 0.00~0.06 0.00~0.06 0.00~0.06 0.00~0.06 10年債 (%) -0.080 -0.20~0.00 -0.30~-0.05 -0.35~-0.05 -0.35~-0.05 国債利回り 5年債 (%) -0.160 -0.30~-0.10 -0.40~-0.15 -0.45~-0.15 -0.45~-0.15 対ドル (円/ドル) 100.7 95~110 95~110 100~115 100~115 為替レート 対ユーロ (円/ユーロ) 113.5 105~130 105~130 105~130 105~130 日経平均株価 (円) 16,745 16,750±1,500 16,750±1,500 17,250±1,500 17,500±1,500 (資料)NEEDS-FinancialQuestデータベース、Bloombergより作成(先行きは農林中金総合研究所予想) (注)実績は2016年8月17日時点。予想値は各月末時点。国債利回りはいずれも新発債。 15 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/ (株)農林中金総合研究所 2016~17年度 日本経済見通し (前期比) 単位 実質GDP % 民間需要 % 民間最終消費支出 % 民間住宅 % 民間企業設備 % 公的需要 政府最終消費支出 % % 公的固定資本形成 % 財貨・サー ビスの純輸出 兆円 輸出 % 輸入 % 内需寄与度 (前期比) 民間需要 ( 〃 ) % % 公的需要 ( 〃 ) % 外需寄与度 ( 〃 ) % デ フ レー ター ( 前年比) % 完全失業率 % 鉱工業生産(前期比) 住宅着工戸数(年率換算) % 万戸 経常収支 兆円 貿易収支 兆円 外国為替レー ト 通関輸入原油価格 ㌦/円 ㌦/バレル 2 0 1 4 年度 通期 ▲ 0.9 ▲ 1.9 ▲ 2.9 ▲ 11.7 0.1 ▲ 0.3 0.1 ▲ 2.6 11.3 7.9 3.4 ▲ 1.6 ▲ 1.5 ▲ 0.1 0.6 2.5 3.6 ▲ 0.5 88.1 8.7 ▲ 6.6 109.9 90.6 2 0 1 5 年度 通期 0.8 0.8 ▲ 0.2 2.4 2.1 0.7 1.6 ▲ 2.7 11.7 0.4 ▲ 0.0 0.7 0.6 0.2 0.1 1.4 3.3 ▲ 1.0 92.1 17.7 0.5 120.1 49.4 通期 0.6 0.5 0.7 4.3 0.1 1.7 1.5 2.0 10.4 ▲ 1.8 ▲ 0.4 0.9 0.4 0.5 ▲ 0.2 0.6 3.1 0.9 97.0 19.7 5.4 105.2 45.4 2 0 1 6 年度 上半期 0.4 0.5 0.6 5.4 ▲ 0.6 1.1 0.7 2.6 10.8 ▲ 1.7 ▲ 0.2 0.6 0.4 0.3 ▲ 0.3 0.7 3.2 0.7 100.3 9.6 2.5 105.3 43.2 下半期 0.5 0.6 0.6 ▲ 1.6 0.4 0.9 0.4 2.5 10.0 ▲ 0.7 0.6 0.5 0.3 0.2 ▲ 0.1 0.6 3.0 2.0 93.8 10.1 2.9 105.0 47.5 2 0 1 7 年度 上半期 通期 1.1 1.1 1.0 ▲ 1.9 1.7 1.6 0.8 5.6 9.4 0.3 1.6 1.3 0.9 0.4 ▲ 0.2 0.6 2.9 3.4 91.9 21.1 7.2 106.3 51.3 0.7 0.6 0.5 ▲ 1.0 1.0 1.4 0.4 6.0 9.4 0.2 1.0 0.8 0.5 0.3 ▲ 0.1 0.5 2.9 1.8 91.5 10.4 3.3 105.0 50.0 下半期 0.6 0.8 0.7 0.2 1.4 ▲ 0.0 0.5 ▲ 2.5 9.3 0.7 1.1 0.4 0.5 ▲ 0.0 ▲ 0.0 0.6 2.8 1.1 92.3 10.7 3.9 107.5 52.5 (前年同期比) 単位 名目GDP % 実質GDP % 民間需要 % 民間最終消費支出 % 民間住宅 % 民間企業設備 % 公的需要 政府最終消費支出 % % 公的固定資本形成 % 財貨・サー ビスの純輸出 兆円 輸出 % 輸入 % 国内企業物価 ( 前年比) % 全国消費者物価 ( 〃 ) % 完全失業率 % 鉱工業生産(前年比) 2 0 1 4 年度 通期 2 0 1 5 年度 通期 通期 2 0 1 6 年度 上半期 下半期 2 0 1 7 年度 上半期 通期 下半期 1.5 ▲ 0.9 ▲ 1.9 ▲ 2.9 ▲ 11.7 0.1 ▲ 0.3 0.1 ▲ 2.6 11.3 7.9 3.4 2.2 0.8 0.8 ▲ 0.2 2.4 2.1 0.7 1.6 ▲ 2.7 11.7 0.4 ▲ 0.0 1.2 0.6 0.5 0.7 4.3 0.1 1.7 1.5 2.0 10.4 ▲ 1.8 ▲ 0.4 1.1 0.4 0.2 0.4 5.4 0.6 1.5 2.1 ▲ 1.7 10.8 ▲ 1.3 ▲ 1.0 1.3 0.8 0.9 1.1 3.2 ▲ 0.3 1.9 1.1 4.9 10.0 ▲ 2.1 0.3 1.7 1.1 1.1 1.0 ▲ 1.9 1.7 1.6 0.8 5.6 9.4 0.3 1.6 1.7 1.1 1.0 1.0 ▲ 3.0 1.3 2.1 0.8 8.4 9.4 ▲ 0.2 1.5 1.8 1.2 1.2 1.1 ▲ 0.8 2.1 1.2 0.8 2.9 9.3 0.8 1.8 2.8 2.9 3.6 ▲ 0.5 ▲ 3.2 ▲ 0.0 3.3 ▲ 1.0 ▲ 3.0 ▲ 0.1 3.1 0.9 ▲ 4.0 ▲ 0.3 3.2 ▲ 0.2 ▲ 1.9 0.2 3.0 2.7 0.5 0.8 2.9 3.4 0.1 0.7 2.9 3.8 0.8 0.9 2.8 2.9 % (注)消費者物価は生鮮食品を除く総合。予測値は当総研による。 16 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/
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