資料 5-2 消費者教育推進会議分科会①第 1 回 「体系化」についての委員からの意見 ○西村委員 体系シートについての意見 本体系シートを含む『消費者教育体系化のための調査研究』は 2005(平成 17) 年 4 月に閣議決定された消費者基本計画で、 「消費者教育を幅広く、かつ効率的・ 効果的に実施していくために、広く関係機関の協力を得て、消費者教育の体系 化を図り、これに基づく消費者教育の推進方策について検討する」と明記され たことを受け実施された。 その契機となったのは、前年に制定された消費者基本法 17 条において、消費 者が生涯にわたり消費生活についての学習の機会が求められていることを指摘 し、学校、地域、家庭、職域その他様々な場を通じて消費生活に関する教育を 充実することを求めていることにあった。また、同法第 2 条 2 項で、消費者の 自立支援にあたっては「消費者の年齢その他の特性」が配慮されなければなら ないとされている点が、生涯の発達段階に即した消費者教育の内容を示す必要 があったと考える。 消費者教育は消費者が多種多様な商品やサービスを市場から選択するに当た り、消費者トラブルに巻き込まれることなく適切な判断が行い得るように、ま た、市場からの選択によって自己実現や社会参加が図れるよう支援するもので あり、そのためには消費者教育の対象や目標を明確にしたうえで、系統だって 行われる必要がある。 消費者問題は古くから存在し、種々の消費者保護政策がとられてきたが、80 年代以降の規制緩和政策のなかで、市場拡大とともに消費者教育の新たな必要 も指摘されるところとなった。 以上の背景の中、体系シートは内閣府事業として設置された『消費者教育体 系化のための調査研究会』の成果物として作成されたものである。 消費者教育の内容を体系化して明示するにあたり、対象領域を①安全、②契 約・取引、③情報、④環境とした点について、とくに情報を独立領域としたこ とは、消費者基本法が第 20 条で高度情報通信社会への進展への的確な対応を求 めたことにある。インターネットの利用拡大、個人情報保護、知的財産権保護 等が意識された。この点は、安全に関する表示学習、契約・取引における情報 収集と選択の学習など他に設定した領域との競合もあったものの、情報リテラ シー教育を消費者教育の一環として位置づけることの重要性を認識したものと 1 言える。この点は、2008 年のOECD消費者教育合同会議で消費者教育の方向 性が議論された際に、持続可能消費分科会、デジタルコンピテンシー分科会と いう2つの要素で分科会が立てられていたのと合致するものと考えられる。 4 領域の設定に関し、新たに加えるべきものはあるかないか、あるいは領域区 分の設定そのものを再検討する余地がないかは議論すべきところである。とく に、消費者教育の体系の原典ともいうべき 1982 年のバニスター、モンスマの消 費者教育の概念の分類を思い起こす必要はある。消費者教育のナンバリングシ ステムとして彼らが立てた、①意思決定、②資源管理、③市民参加は消費者教 育の体系をまさに示すものと言える。ただ一覧にしたことの意義は大きいもの の、実際の発達段階に即した学習内容の明示には至っていない点で、教育のさ まざまな場での消費者教育実践につながっていくか、さらにブレイクダウンし たものに改善する余地はあろう。 さらに体系化分科会として検討すべき事項として、消費者市民社会への実現 へ向けた消費者教育の在り方の議論がある。消費者市民社会の内容の議論は別 項とするが、体系シートの再構成を検討するものとするのならば、消費者市民 あるいは消費者参加の内容を色濃くする項目を明示するなり、別立てするなり 体系のなかでの消費者市民教育を意識したものとする必要はあるものと考える。 2 ○鶴田委員 Ⅰ 消費者教育の体系について 1. 「体系」を筆者は、 「発達を見通したライフステージの教育目標と主な内容」 という程度にとどめたい。体系とは学問および実践の蓄積をもう少し踏む必要 があるし、消費者教育は体系という言葉に象徴される固定的な内容の構想は馴 染まないと思うからである。 2.消費者教育の「理念」「目標」「目的」など意味を検討する必要がある。 3.目標とかかわるものと思われるが、 「消費者の自立」についてもその内容を あきらかにし、それと、「消費者市民」「消費者市民社会」の関係を議論する必 要がある。 4.教育学において、体系は、諸科学(知識)に依拠した系統主義教育に基づ く教科に対応する学びの場合に使われる。この表は、その意味で、消費者に必 要とされる最低限の知識や「できる」という期待される行動目標が、発達段階 に応じて具体化されており、その視点からみれば評価できるものと思われる。 しかし、消費者教育は、系統主義教育なのであろうか。系統主義教育の部分も 含みつつ、どちらかと言えば、問題解決学習に依拠する教育であるといえる。 その場合は○○ができるという具体目標ではなく、期待される能力として示さ れることになる。その理由は以下の点にある。 1)消費者教育は、知識を身につけているかどうかよりも、その知識が消費 行動に生かしているかが肝心であるからである、それには伝達型の教育ではな く、「消費行動の場面」や、「消費者問題の解決」を課題にだしあるいは課題を 児童・生徒自身が設定し、それに共同して取り組むあるいは解決をかんがえて いくプロセス、情報を集め、どう行動するかを自主的に考え、適切な行動を考 えるという学びであるからである。 2)どのように行動するかは、消費者が多様な情報をもとに、消費者自身が 決定するものである。例えば、指導者から見れば不都合な意思決定であろうと も、その結論を批判すするのではなく、結論をだす過程での指導が重要となる。 この表は、消費者行政が望む消費者像の列挙であり、自主的な思考力・判断力 を重視する新学習指導要領の理念に照らし再検討する必要がある。 5.消費者教育の体系にこだわるならば、ライフステージの消費者行動の特徴 を洗い出し、それに対応する身につけてほしい能力を、目標として示すことで はないかと思う。 3 ○室町委員 (1)体系シートに係る意見 体系シートはよく整理されていると思うが、今後、具体的なカリキュラムや 教育内容を検討するにあたって、以下について検討する必要がある。 ①偏りのない内容・情報をいかに盛り込んでいくか ②ライフステージ毎に、中心的に取り組むべき主体は何で、かつ、他の主体と の連携の在り方をどう構築していくか ③関係省庁(文部科学省など)との連絡・調整を密にし、いかに効率的・効果 的に推進していくか 4 ○山根委員 1.「体系シート」について * 目標①に「自ら進んで必要な知識を修得、必要な情報を収集する消費者の育 成」とあり納得するところである。ただ何が自分にとって必要な知識か、本 当に必要な情報をどう選択すれば良いかがたいへん難しい問題であり、豊富 な情報の中から適切なものをどう取り込み、それをどう活かしていくかにつ いて学ぶことが重要だと考える。 *「情報」の分野は個人情報と知的財産に関する記述が多いが、情報(表示や 広告も含む)に接する時の注意点や読み解き方等を学ぶという視点も必要 ではないか。 * 領域別の目標では、自身の安全や利益のみならず、社会全体の利益や将来へ の配慮等が述べられ、またそれらに協力して取り組むことができる、と定め ていることは望ましい。 * 「安全」に関しては、 「危機管理能力」 「危険予知能力」といったものの育成 がとても大事だと思う。問題意識を持つこと、情報をうのみにせず確認する 習慣が身に付くようにしたい。大震災を体験した日本では意識が変化してき たと思われるが、防災といった観点からも「安全教育」は重要になってくる。 5 ○島田委員 体系化シートについて 1目標とする消費者像のイメージをより具体的に示すべき 消費者教育の理念・目標として,消費者教育がどのような消費者像を目指 すものなのかを示すことが必要だと思う。この観点から体系化シートを見る と, 「消費者教育の理念」で掲げられた二つの目標はかなり抽象的でとらえに くい。その下の領域別の目標の部分にいくつか目指される消費者像を具体化 するような記載があるが,4つの分野に分かれて示されているために,全体 としてどのような消費者像が目指されているかがイメージしにくいものにな っているように思われる。 理念と領域別の課題に含まれた要素も取り入れながら,消費者教育が目指 す消費者像を,具体的にイメージしやすい形で示すことが必要と思われる。 その中で,現在のシートでは環境の中に示されている持続可能な消費の観 点は,より強調されるべきと考える。 2 目標とする消費者像に求められる能力を示す 目標とする消費者像を明確にした上で,そうした消費者像に求められる能 力を抽出する。体系化シートでいえば,領域別の目標にはその要素が示され ている。このときに,いくつかのカテゴリーに分けて求められる能力を示すこ とはよいと思うが,現状の4つの区分が消費者のライフスタイル全体をカバ ーするものになっているのか,内容についても,広告に対応する能力(批判 的検討や積極的情報発信の能力)をもっと明確に盛り込むべきではないか, など,改善の余地があるように思われる。 3 ライフステージごとの教育内容の提示について 現在のシートにおいては,ライフステージごとに,領域別の目標にいたる 段階的目標を掲げるという構成になっていて,これはこれで頭の整理に役立 つ面はあるものの,実際に現場で消費者教育に当たる立場の人たちが,これ を見て何をすればよいのか,なかなかイメージがわかないと思う。 必要な能力の育成に向けて,各ライフステージごとに目標を考えることは 有益だと思うが,それを現場で活用できるようにするためには,さらに一歩 進めて,具体的に消費者教育のプログラム例を示して,そこでそのプログラ ムがどの能力と関連するものなのかを示す,という方がよいように思われる。 6
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