農林中金総合研究所

農林中金総合研究所
2016 年 8 月 19 日号
調査第二部
趙 玉亮
≪来週のポイント≫
日本では黒田日銀総裁挨拶と消費者物価指数
23 日に黒田日銀総裁は「第 1 回 FinTech フォーラム」にて挨拶を行う予定である。話題の FinTech が
今後金融業や金融市場にどう影響するかなどを中心に発言すると想定されるが、最近の金融政策運営
や円高進行、また国際金融情勢などについて言及するか、注目したい。
また、26日に「消費者物価指数(全国7月、東京都区部8月)」が発表される。エネルギー価格の低下
や円高の定着による物価下押し圧力が根強いことに加え、消費持ち直しの勢いが依然鈍いこともあり、
消費者物価指数は弱い動きが続くと予想される。
米国ではイエレン FRB 議長の講演(ジャクソンホール)と GDP 改定値発表
25日∼27日にかけてカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(テーマ:Designing Resilient
Monetary Policy Frameworks for the Future=未来に向けた強靭な金融政策の枠組み設計)が開催され
る。イエレンFRB議長は当該シンポジウムに出席し、26日に講演を行う予定である。最近、利上げ時期を
巡ってはFOMC内で意見が分かれていることが7月FOMC議事要旨から判明した。国際金融市場におけ
る短期的なリスクが後退したほか、労働市場も堅調さを維持していることなどから、早期利上げを主張す
る意見がある一方、物価の伸び悩みなどを理由に急がないとの見方もある。9月20∼21日のFOMCを控
え、早期利上げ観測はあまり高まっていないとは言え、警戒感が根強く残っているなか、イエレン議長の
経済や物価の認識、また利上げを巡る姿勢に注目が集まっている。
また、26日に「GDP(4∼6月期改定値)」が発表される。4∼6月期速報値は前期比1.2%増と市場予想
を大きく下回ったことから、米国の低成長懸念が強まった。Bloomberg社がとりまとめた予想値(コンセン
サス中央値、19日現在)によれば、改定値は前期比1.1%と、速報値から小幅下方修正になると見られ
る。
来週のスケジュール(8/22∼8/26)
月 日
国内の予定
海外の予定
8 月 22 日(月)
黒田日銀総裁挨拶(FinTech フォーラム)
20 年利付国債入札(1.1 兆円)
米 「新築住宅販売件数(7 月)」
欧 「マークイット・ユーロ圏総合・製造業・サービス業
PMI(8 月速報)」
欧 「ユーロ圏消費者信頼感(8 月速報)
米 「中古住宅販売件数(7 月)」
8 月 25 日(木)
国庫短期証券(3M)入札(4.4 兆円)
流動性供給入札(0.5 兆円)
8 月 26 日(金)
「消費者物価指数(全国 7 月、東京都区部 8 月)」
(2p に予測掲載)
米 カンザスシティー連銀年次シンポジウム(ジャクソ
ンホール、∼27 日)
米 「耐久財受注(7 月)」
米 「新規失業保険申請件数(8 月 20 日週)」
米 「失業保険継続受給者数(8 月 13 日週)」
独 「ifo 景況感(8 月)」
米 イエレン FRB 議長講演(ジャクソンホール)
米 「GDP(4∼6 月期改定値)」
8 月 23 日(火)
8 月 24 日(水)
農林中金総合研究所
無断転載を禁ず。本資料は、信頼できると思われる各種データに基づき作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するも
のではありません。本資料は情報提供を目的に作成されたものであり、投資のご判断等はご自身でお願い致します。
1
1.来週発表予定の経済指標予測
南 武志
7 月全国、8 月東京都区部の消費者物価【8 月 26 日(金)8:30 】
<当社予測>8月東京 総合:前年比▲0.3%(7月:▲0.4%)、コア:同▲0.3%(7月:▲0.4%)
7月全国 総合:前年比▲0.4%(6月:▲0.4%)、コア:同▲0.4%(6月:▲0.5%)
今回発表分から 2015 年基準へ切り替わる。総務省統計局の資料によれば、過去の基準改定と比べ
て、10 年基準と 15 年基準の前年比の違いは小さく(ほぼゼロ)、特にリセット効果と呼ばれるものが小さ
いとされている。これにより、全国消費者物価(生鮮食品を除く総合)の 6 月分が同▲0.4%(10 年基準:
▲0.5%)となったが、実際に大きなズレは見当たらない。
さて、7 月の消費者物価については、ガソリンが値下げに転じるなど、エネルギーの物価押下げ圧力
は依然根強いほか、円高の定着によって消費財の輸入価格も下落傾向を強めている。消費持ち直しの
勢いは依然鈍く、例えば SRI 一橋大学消費者購買価格指数などを見ても、前年比ゼロ近傍での推移と
なるなど、値上げ圧力は解消している。以上を考慮すると、全国消費者物価(コア)は 5 ヶ月連続の下落
が予想される。なお、年末にかけてはエネルギーの物価全体への押下げ効果が弱まるため、下落幅を
縮小する動きになるだろう。
(%前年比)
消費者物価(全国、総合)の推移
0.4
0.3
2015年基準
0.2
2010年基準
0.1
0.0
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
-0.5
-0.6
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
2016年
(資料)総務省
農林中金総合研究所
2
2.債券市場
多田 忠義
◎市場概況 (8/15∼8/19 前場)
長期金利(新発 10 年国債利回り)は、「マイナス金利付き量的・質的緩和政策」の先行き不透
明感が意識された一方、5 年国債入札が順調だったこともあり、▲0.09%を挟んで推移した。
長期金利は、前週末に金融庁が日銀に対しマイナス金利政策が銀行収益に与える影響について懸
念を伝えたとの一部報道もあり、金融政策の包括的な検証についての先行き不透明感が引き続き意識
され、一時▲0.075%まで上昇した。一方で、5 年国債入札が順調だったこともあり、週を通じてみれば▲
0.09%を挟んでの推移であった。イールドカーブは、前週末比でみると 5∼20 年ゾーンでわずかに上昇
した。
5 年国債の入札(18 日)は、テールが 1 銭まで縮小(前回は 2 銭)、応札倍率は前回から上昇した。
◎来週の市場予想 (8/22∼8/26)
長期金利は、▲0.1%程度の狭いレンジ内で推移すると予想する。なお、23 日には 20 年国債入札が
予定されているが、無難にこなされるとみられる。
<8/19 11時6分時点> ・新発10年国債(#343)
▲0.095% (先週末比
<8/19 11時2分時点> ・10年国債先物(中心限月9月物) (%)
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
日本国債のイールドカーブ
151円44銭 (先週末比
(%)
2016年8月18日
2016年8月12日 (先週末)
2016年7月19日 (1ヶ月前)
2016年5月18日 (3ヶ月前)
2016年2月18日 (6ヶ月前)
▲ 17 銭)
イールドスプレッド
0.7
0.6
20年−10年
10年−5年
5年−2年
0.5
0.4
0.3
0.4
0.2
0.2
0.1
0.0
0.0
▲ 0.1
3/18
▲ 0.2
▲ 0.4
4/18
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40
(年)
先週末差
1ヶ月前差
3ヶ月前差
5/18
6/18
7/18
8/18
新発10年物国債利回り
(%)
0.000
▲ 0.6
0.3
+1.0 ベーシスポイント)
▲ 0.100
0.2
▲ 0.200
0.1
0.0
▲ 0.300
6/8
▲ 0.1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 15 20 25 30 40
(年)
6/22
7/6
7/21
8/4
8/19
(資料)財務省「国債金利情報」より作成
新発10年国債利回りはBloombergより作成
◎国債入札結果
入札日
8/16
8/18
銘柄 ( 回号)
流動性供給 (#219) (20年:#134156,30年:#7-50,40年:#1-8)
5年利付国債 (#128)
表面利率
発行予定額
応札倍率
テール
最低価格 最高利回
―
0.4兆円
1.69倍
―
―
―
0.1%(0.1%)
2.4兆円
3.57倍(3.45倍)
1銭(2銭)
101.28円
▲ 0.163%
(資料)財務省ホームページより農中総研作成。表面利率及び応札倍率、テールの( )内数値は前回入札の値
農林中金総合研究所
3
3.株式市場
古江 晋也
◎市場概況 (8/15~8/19 前場)
日経平均株価は米国の早期利上げ観測の後退から円高が進行したことを受け、週全体を通じて軟調に推
移。
週初の日経平均株価はお盆休みによる薄商いの中、円高が進行したことから利益確定の売りもあり、下
落。その後は為替相場が 1 ドル=100 円台前半までさらに円高進行したことから株価は終値ベースで 273 円
安と大幅続落した。週央の株価は、急激な円高が一服したことから一旦は反発するも、週後半は 99 円台後半
まで円高となったことを受け円高が定着するのではないかとの警戒感や、日銀による ETF 買いが見送られた
との見方から反落した。週末前場は為替レートが小戻ししたことや海外株高を受け、反発して寄付くも、結局
前日比横ばい水準まで戻している。
◎来週の市場予想 (8/22~8/26)
米国景気や利上げ時期の不透明感に伴う円高懸念は根強い一方、日銀の ETF 買入れ期待もあることから
材料は交錯、来週の株価は狭いレンジで推移すると予想。週末には米国でイエレン FRB 議長の講演が行わ
れ、その発言内容に注目が集まる。
<8/19前場終値>
日経平均: 16,474.67
(前週末比 ▲ 445.25 )
日経平均株価の日足グラフ
(円)
25日移動平均線
TOPIX: 1,289.45
200日移動平均線
17,500
17,000
16,500
16,000
15,500
15,000
14,500
(億株)
7/19
7/25
7/29
東証一部 出来高
8/4
8/10
8/17
出来高 株数 (千億円)
出来高 金額
40
40
35
35
30
30
-10%
4
25
20
15
15
-4
10
-6
7/20
7/25
7/28
8/2
8/5
8/10
8/16
0%
買越
5%
10%
海外投資家
2
20
10
-5%
(兆円) 投資部門別株式売買状況(15年1月~累積)
6
25
7/14
)
TOPIX
食品
エネルギー資源
建設・資材
素材・化学
医薬品
自動車・輸送機
鉄鋼・非鉄
機械
電機・精密
情報通信・サービス他
電力・ガス
運輸・物流
商社・卸売
小売
銀行
金融(除く銀行)
不動産
18,000
7/12
▲ 33.77
TOPIX 業種(17)別 前週末比変化率
18,500
7/6
(同
信託銀行
0
個人
-2
売越
15/1/2 15/3/20 15/6/5 15/8/2115/11/616/1/22 16/4/8 16/6/24
決算発表 注目銘柄 (変更になることがありますのでご注意ください)
(資料) Bloomberg より農中総研作成
(8/22)タカショー、住江織物
(8/25)モジュレ
(8/26)ダイドードリンコ、アイ・ケイ・ケイ、アインホールディングス、エイチ・アイ・エス、東和フードサービス、キタック、大和コンピューター
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4
4.外国為替市場
多田 忠義
◎市場概況 (8/15∼8/19 前場)
ドル・円相場は、米 9 月利上げ観測が後退、一時 100 円割れの円高へ
前週末弱めに出た米小売売上高などから米金利が低下したことを受け、101 円台前半の円高水準で
寄り付いた。16 日には、一時 1 ドル=99.55 円と 6 月 24 日以来 1 ヶ月半ぶりに 100 円を割った。17 日に
は浅川財務官が「激しい動きには対応」との円高けん制発言があり、一旦 101 円台に戻したものの、18
日には、前日に公表された 7 月 26、27 日分の FOMC 議事要旨で追加利上げ時期に対する見方が二分
されていると伝わったことで、9 月利上げ観測が後退、円高・ドル安が進行した。19 日前場は 100 円ちょう
どを挟んでの取引となっている。
ユーロ・円相場は、ユーロ高・ドル安も進んだことでレンジ狭まる
ユーロ・円相場は、夏休みシーズン中で商いに乏しく、動意薄となった。週を通じて、113 円を挟んでもみ
合った。19 日前場は、113 円台後半での取引となっている。
◎来週の市場予想 (8/22∼8/26)
ドル・円はやや円高圧力の強い展開、ユーロ・円は、引き続き方向感のない展開と予想。26 日(日本
時間 27 日未明)に開催されるジャクソンホールでのイエレン FRB 議長講演に注目が集まるが、ハト派寄
りの発言でドル売りを誘う可能性があるため、週後半に向けて通じて警戒感は高まるだろう。
(円/ドル)
円/ドル・レート
98
(円/ユーロ)
円
高
100
102
104
106
108
110
112
114
200日移
動平均
25日移
動平均
円
安
116
118
2016/5/27
2016/6/24
ユ
ー
(ドル/ユーロ)
1.16
2016/7/22
2016/8/19
1.14
円
高
25日移
動平均
200日移
動平均
2016/6/24
2016/7/22
2016/8/19
シカゴIMM円ポジション
(円/ドル)
(1万コントラ クト)
▲ 12
124
▲ 10
122
▲8
120
▲6
118
▲4
116
▲2
114
0
112
2
110
4
108
6
106
8
104
円ポジション(左軸)
10
102
12
100
円ドル(右軸)
14
98
15/09 15/11 16/01 16/03 16/04 16/06 16/08
25日移
動平均
1.12
ユ
ー
1.08
2016/5/27
円/ユーロ・レート
ドル/ユーロ・レート
ロ
高
1.1
108
110
112
114
116
円
118
安
120
122
124
126
128
130
132
2016/5/27
200日移
動平均
2016/6/24
ロ
安
2016/7/22
2016/8/19
(注) 1コントラクト=1250万円
(資料)Bloombergより農中総研作成
農林中金総合研究所
5
5−1.海外市場(米国、欧州)
(米国)趙 玉亮、
(欧州)山口 勝義
◎市場概況 (8/12∼8/18)
【米国】
原油価格の連騰や、ダドリーNY 連銀総裁による「9 月利上げを排除しない」との発言などを受け、長期金利
(10 年国債利回り)は、1.58%まで上昇した。しかし、早期利上げに関して FOMC の見解が分かれていること
が 7 月開催分の FOMC 議事要旨(16 日)から判明し、市場の早期利上げ観測が後退したため、長期金利は低
下に転じ、結局 18 日は 1.54%(11 日比 2bp 低下)となった。一方、株式市場については、前週末から週初に
かけて、市場予想を下回った小売売上高や一部の FOMC メンバーのタカ派的な発言などを受け、弱含む場
面もあったが、原油価格の上昇に加え、利上げ観測の後退もあり、株価は小幅な調整にとどまり、18 日のダウ
工業株 30 種平均は 18,597.70 ドル(11 日比 0.1%下落)と高値圏で取引を終了した。セクター別では、エネル
ギーが強かった一方、通信が弱かった。
【欧州】
休暇シーズンで全般に動意が乏しいなか、ポルトガル国債については、唯一投資適格の格付けを得ている
DBRS による格下げ懸念で、週央には利回りが大幅に上昇した。その後は DBRS が格付け維持を示唆したこと
ss
でやや落ち着きを取り戻したが、DBRS
は同国の経済成長への懸念を示しており、今後に向けた不透明感は
継続している。期間内に 10 年ゾーンで、ドイツ国債は 1bp 利回りが上昇。一方、株式市場では欧州ストックス
600 指数は1.1%下落したが、主要セクター別では、石油・ガスが 1.2%の上昇となったのに対し、銀行が 2.1%
の下落と、今週はアンダーパフォームに転じた。
欧州の国債利回り(10年債)
(%)
米国債のイ-ルドカーブ
(%)
5
12
ポルトガル
4
11
スペイン
3
10
1.5
2
9
1.0
1
8
0.5
0
7
▲1
6
3.0
16/02/18
2.5
16/05/19
2.0
16/08/18
イタリア
アイルランド
ドイツ
0.0
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月
1年
2年
3年
5年
7年
10年
30年
16/2
16/3
0.20
0.10
(bp)
20
0.00
15
16/4
16/5
16/6
16/7
ギリシャ
(右軸)
16/8
ドイツ国債との利回りスプレッド(直近1週間の変動幅)(10年債)
10
▲ 0.10
5
0
1週前差
▲ 10
(ドル)
3年
5年
7年
10年
30年
米国の株価指数
18,500
NYダウ工業株30種
18,000
17,500
17,000
16,500
16,000
15,500
16/2
400
220
350
210
300
200
250
190
200
180
150
170
100
160
16/2
16/3
16/4
16/5
16/6
16/7
16/8
英国
欧州の株価指数
(ポイント)
19,000
(参考)日本
2年
(参考)米国
1年
ポルトガル
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月
アイルランド
▲ 15
▲ 0.50
ギリシャ
3ヵ月前差
スペイン
1ヵ月前差
▲ 0.40
イタリア
▲ 0.30
▲5
フランス
▲ 0.20
16/3
16/4
16/5
16/6
16/7
ストックス欧州
600指数①
うち銀行
セクター②
①−②
(右軸)
16/8
(資料)Bloomberg より農中総研作成
農林中金総合研究所
6
5−2.海外市場(中国、その他新興・資源国)
(中国)王 雷軒
◎市場概況 (8/12∼8/18)
【中国】
民間投資の低迷が続いたことなどを受けて追加金融緩和期待が高まったほか、深センと香港の両株式市場
の相互取引(深港通)の認可が正式に発表されるとの期待も高まり、証券株が軒並み高となり、15 日の上海総
合指数は約 7 ヶ月ぶりに 3,100 ポイント台を回復した。しかし、その後は、国家発展改革委員会(国務院のマク
ロコントロール部門)が 16 年下半期の経済見通しでこれまで供給されてきた資金が実体経済に流れていない
と指摘したため、市場では実体経済への懸念が浮上したほか、利益確定売りもあって小幅下落に転じた。な
お、16 日の夜に深港通の認可は発表されたが、市場への影響は限定的であった。
上海総合指数/人民元レート
(ポイント)
上海総合指数←
↑人民元高
(ポイント)
(人民元/ドル)
USD/CNY→
3,400
オーストラリア:株価指数・対米ドル為替
株価:S&P/ASX200指数←
6.4 5,600
↑豪ドル高
(USD/AUD)
為替:USDAUD→
1.25
6.7 5,000
1.40
2,600
6.8
4,800
1.45
16/08
2,800
4,600
原油価格・在庫の動向
50
EMラテンアメリカ
EMヨーロッパ
120
110
100
80
商品価格指数の動向
16/08
90
十万
55
16/8
130
米原油在庫(SPR除く)→
('84=1000)
(億バレル)
WTI期近物←
2600
ICE(北海)ブレント期近物←
5.8
2500
5.6
(米ドル/バレル)
16/7
16/07
16/6
16/6
16/06
16/5
EMアジア
16/05
16/4
16/5
16/04
16/3
MSCI-EM
140
16/4
新興国株価指数(MSCI Index)
16/03
16/2
米ドル高→
500
480
460
440
420
400
380
360
340
16/3
('16.01=100)
ELMI+(通貨指数)→
320
325
330
335
340
345
350
355
360
16/7 16/8
ポイント (逆目盛)
bp(新興国債券と米債とのスプレッド)
債券スプレッド・通貨指数
EMBI+(債券スプレッド)←
1.50
16/2
16/02
16/07
1.35
16/06
6.6 5,200
16/05
3,000
16/04
1.30
16/03
6.5 5,400
16/02
3,200
(ポイント)
200
LMEX金属指数←
190
CRB指数→
180
45
5.4 2400
40
5.2
2300
170
35
5.0
30
4.8 2200
160
25
16/2
(%)
16
16/3
16/4
16/5
16/6
16/7
16/8
4.6 2100
16/2
12
10
0
16/02 16/03 16/04 16/05 16/06 16/07 16/08
ロシア
インドネシア
インド
中国
オーストラリア
ブラジル・レアル/ボベスパ 株
ロシア・ルーブル/RTS
インド・ルピー/SENSEX
インドネシア・ルピア/ジャカルタ総合
オーストラリア・ドル/ASX200
中国元/上海指数
150
16/7
16/8
株価前週(8/11)比
為替前週(8/11)比
安
・
自
国
通
貨
安
株
高
・
自
国
通
貨
高
ド
ル
高
ド
ル
安
)
2
ブラジル
)
4
16/6
(
6
16/5
(
8
16/4
通貨:対米ドル騰落率/株価騰落率
政策金利の推移
14
16/3
0%
2%
4%
▲4% ▲2%
(注)前週が休場の場合、前週の休場前終値との比較
(資料)Bloomberg、Thomson Reuters Datastreamより農中総研作成
農林中金総合研究所
7
6.指標分析・注目点
南 武志
① 今週のレビュー
円高圧力が強まっている。ダドリーNY 連銀総裁らが早期利上げを容認する発言をしたものの、17 日に
公開された 7 月 FOMC の議事要旨において次回利上げに関してボードメンバーの意見が割れていること
が確認され、9 月利上げ観測が後退した。それを受けて、18 日の東京市場では円高が進行、1 ドル=100
円台を割り込んだ。こうした情勢を受けて、財務省・金融庁・日本銀行は国際金融市場に関する幹部会合
を急遽開催している。会合後、浅川財務官は必要であれば対応策をきっちり打つ意向を示すなど、投機
的な取引を牽制した。とはいえ、米国の利上げが現実味を帯びない限り、円高圧力は払拭されないとの
見方は根強い。
こうしたなか、15 日には 4∼6 月期の GDP 第 1 次速報が発表され、実質成長率は前期比年率 0.2%と
2 四半期連続のプラスとはいえ、ほぼゼロ成長にとどまった。回復がももたついていることは否定できない
が、大きく落ち込んだ 15 年 10∼12 月期をボトムに持ち直しが始まっているといえなくもない(そこを始点に
GDP は年率 1.1%、民間消費は同 1.7%で伸びている)。しかし、民間設備投資は 2 四半期連続、輸出も
2 四半期連続で、ともに減少するなど、世界経済の低成長や円高進行が景気抑制に働いている。これを
受けて、当総研では「2016∼17 年度改訂経済見通し」を策定したが、16 年度の成長率は 0.6%で前回 6
月から据え置いたが、17 年度は円高が輸出などへの悪影響を強めることを考慮し、1.1%へ下方修正した
(詳細は http://www.nochuri.co.jp/topics/pdf/topics160818.pdfを参照)。
以下、GDP 速報以外に今週発表された
生産・輸出の動向
(2010年=100)
130
経済指標を確認してみよう。7 月の貿易統計
景
気
改
善
120
によれば、通関貿易出超額は 3,176 億円
110
(季節調整済)と 9 ヶ月連続の黒字であった
100
が、6 月(3,366 億円)からは黒字幅縮小。日
銀が試算する実質輸出入指数は前月比▲
3.2%と 3 ヶ月ぶりに低下するなど、依然とし
て増勢が強まらない(前年比は 2.4%と 3 ヶ
月連続の増加)。
90
80
70
60
2005年
景
気
悪
化
景気後退局面
景気一致CI
鉱工業生産
実質輸出指数
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
(資料)内閣府、経済産業省、日本銀行の資料より作成
7 月の首都圏・近畿圏マンション市場動
向によれば、両地域合計での契約戸数は前年比▲36.2%と 11 ヶ月連続の減少(うち、首都圏は同▲
47.5%、近畿圏は同 11.6%)となり、月末在庫は 8,899 戸へと 3 ヶ月連続で増加、11 年 12 月(9,472 戸)
以来の水準となった。契約率は 66.7%と、再び 70%割れとなった(うち、首都圏は 63.3%、近畿圏は
74.6%)。マイナス金利政策で住宅ローン金利が下がるなどの好材料はあるが、首都圏では価格が高騰
しているうえに、最近は円高によって中国など海外からの購入が鈍っているとされている。消費税増税時
期も先送りされたこともあり、しばらくは調整が続く可能性もある。
最後に、レギュラー・ガソリン小売価格(8 月 15 日時点)は 121.7 円/ℓと、前週から▲0.3 円の値下がり
で、7 週連続の下落。6 月下旬のピーク(124.0 円/ℓ)からすでに 2.3 円下がった。ただし、前年比下落率
は▲12%台まで縮小しており、消費者物価の下落率を縮小させる方向に働き始めた。
農林中金総合研究所
8
7.日米経済指標の動向(グラフ)
【日本】
(千億円)
(%)
貿易収支:通関収支尻(7月)
国内総生産(4∼6月期1次速報)
4.0
10
原数値
基調値
5
3.0
2.0
0
1.0
▲5
0.0
▲ 10
▲ 1.0
実質(前期比)
名目(前期比)
GDPデフレーター(前年比)
▲ 2.0
▲ 15
'14.7
'15.1
'15.7
'16.1
'16.7
▲ 3.0
'14.6
通関ベース貿易収支は5,1351億円と2ヶ月連続で黒字だっ
た。季調済は3,176億円と9ヶ月連続の黒字。輸出額は前年
比▲14.0%、輸入額は同▲24.7%。
'14.12
'15.6
'15.12
'16.6
実質GDP成長率の1次速報値は、前期比0.0%(同年率
0.2%)と、2四半期連続でプラス成長となった。GDPデフレー
ターは、前年比0.8%。
【米国】
(万人) 新規失業保険申請件数(8月13日週)
32
新規失業保険申請者件数
4週移動平均
失業保険継続受給者(右軸)
30
(万人)
230
(%)
鉱工業生産:季調済前月比(7月)
1.5
79.0
1.0
78.0
225
0.5
220
28
215
26
77.0
0.0
76.0
▲ 0.5
▲ 1.0
210
24
2/27
4/9
5/21
7/2
8/13
新規失業保険申請者件数は、26.2万人と事前予測(26.5万
人)を下回った。失業保険継続受給者数(8月6日週)も、
217.5万人と事前予測(214.5万人)を上回った。
(資料)Bloomberg より農中総研作成
(%)
75.0
鉱工業生産(左軸)
設備稼働率(右軸)
▲ 1.5
'14.7
'15.1
'15.7
74.0
'16.1
'16.7
鉱工業生産(速報値)は、前月比0.7%と2ヶ月連続の上昇
で、事前予測(同0.3%)を上回った。設備稼働率は75.9%と
前月(75.4%)から上昇した。
農林中金総合研究所
9
(%)
(%)
生産者物価指数:季調済前月比(7月)
0.8
最終需要財
0.6
CB景気先行指数(LEI):季調済(7月)
先行指数
コア
一致指数
遅行指数
1.0
0.4
0.8
0.2
0.6
0.0
0.4
▲ 0.2
0.2
▲ 0.4
0.0
▲ 0.6
▲ 0.2
▲ 0.4
▲ 0.8
'14.7
'15.1
'15.7
'16.1
'14.7
'16.7
'15.1
'15.7
'16.1
'16.7
生産者物価指数(PPI)の最終需要財は、前月比▲0.4%と事 コンファレンス・ボードの景気先行指標総合指数(LEI)は、前
前予測(同0.1%)を下回った。食料品・エネルギーを除くコア 月比0.4%と2ヶ月連続で上昇、事前予測(0.3%)を上回った。
は同▲0.3%。
一致指数は同0.4%、遅行指数は同0.1%。
(万件)
(ポイント) ミシガン大消費者信頼感指数(8月速報)
120
住宅着工件数:季調済年率(7月)
建設許可件数
住宅着工件数
140
110
130
100
120
90
110
80
100
90
70
80
60
マインド指数
先行指数
現況指数
50
70
'14.7
'15.1
'15.7
'16.1
'14.8
'16.7
'15.2
'15.8
'16.2
'16.8
住宅着工件数は、前月比2.1%の121.1万件で、事前予測(同 ミシガン大学消費者信頼感(マインド)指数(速報値)は90.4と
118.0万件)を上回った。先行指標となる建設許可件数は、同 2ヶ月連続で低下し、かつ、事前予測(91.5)を下回った。現況
115.2万件。
指数106.1、先行指数は80.3だった。
(%)
(%)
消費者物価指数:季調済前月比(7月)
0.6
2.0
0.4
1.5
0.2
1.0
0.0
0.5
▲ 0.2
0.0
▲ 0.4
小売売上高
除自動車
▲ 0.5
総合
コア
▲ 0.6
小売売上高:季調済前月比(7月速報)
▲ 1.0
▲ 0.8
▲ 1.5
'14.7
'15.1
'15.7
'16.1
'16.7
'14.7
'15.1
'15.7
'16.1
'16.7
消費者物価指数(CPI)の総合は、前月比▲0.0%と事前予測 小売売上高(速報値)は、前月比0.0%と事前予測(同0.4%)
通りだった。また、食料品・エネルギーを除くコアは、同0.1% を下回った。自動車を除いた小売売上高は、同▲0.3%。
と事前予測(同0.2%)を下回った。
(資料)Bloomberg より農中総研作成
農林中金総合研究所
10