英国の次はイタリア、国民投票でEU「離脱ドミノ」へ

リサーチ TODAY
2016 年 8 月 15 日
英国の次はイタリア、国民投票でEU「離脱ドミノ」へ
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
英国に続いて、EU加盟国が離脱する「離脱ドミノ」への懸念が燻る中、イタリアで行われる憲法改正を問
う国民投票の行方に関心が集まっている。レンツィ首相は、投票結果が政権の意思に反して「憲法改正に
反対(NO)」となった場合には辞職する意向を示しており、早期の解散総選挙となればEU懐疑政党が議席
数を伸ばすと見込まれる。この国民投票は事実上レンツィ首相の信任投票の様相を呈しており、「離脱ドミ
ノ」リスクを高めている。みずほ総合研究所は『みずほ欧州経済情報』でこの問題を展望した1。国民投票の
日は、今年10月30日か11月6日が有力視されている。現在までの世論調査を下記の図表でみると、2016
年初は憲法改正に賛成の支持率が高かったが、今年7月調査では反対の方が上回るまでに至っており、
結果は予断を許さない。この背景には、現政権への支持率低下がある。加えて、イタリアの銀行の不良債
権処理への不満、イタリアへの難民流入、英国のEU離脱によるEU懐疑的な世論の高まりがある。これらは
今年後半にかけて、市場の不確実性を高める欧州発の要因となる。
■図表:イタリアの国民投票に関する世論調査
(%)
50
45
1月11日
7月18日
40
35
30
25
20
15
10
5
0
賛成
反対
未定
(資料)EMG_Acqua よりみずほ総合研究所作成
次ページの図表はイタリアの各政党への支持率の推移を示す。仮に、国民投票で憲法改正が否決され
た場合、イタリアでは年明けにも解散総選挙が実施される可能性が高まる。現在、イタリアでは、EUとの関
係見直しを問う「五つ星運動」が支持率を伸ばしており、同じくEU懐疑的政党である「北部同盟」も一定の
支持を得ている。総選挙が実施されれば、これらの政党が第一党となる可能性もある。この二つのEU懐疑
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政党が連携すれば、イタリアがEUとの関係性を問う国民投票に向かうリスクが高まる。
■図表:イタリアの政党支持率の推移
(%)
五つ星運動
40
民主党
フォルツァ・イタリア
北部同盟
35
30
25
20
15
10
5
0
(年/月)
(資料)EMG_Acqua よりみずほ総合研究所作成
下記の図表はイタリアの不良債権を示したものだが、不良債権比率は依然2割近い水準にある2。イタリ
アの不良債権問題は景気の弱さが主因であるが、税制などの制度的要因が問題解決の障害だった。さら
に、7月末に行われたストレステストでイタリアの銀行問題が改めてクローズアップされた。英国の次はイタリ
アに注目だ。
■図表:イタリアの不良債権
(単位)
貸出債権
残高
(引当前)
貸倒
引当金
残高
(引当後)
不良債権
比率
(引当前)
億ユーロ
億ユーロ
億ユーロ
%
19,900
1,751
18,149
-
3,600
1,634
1,966
18.1
破綻債権
(Sofferenze)
2,100
1,233
867
10.6
その他
1,500
401
1,100
7.5
うち不良債権
(注)1. 2015 年末の値。
2.不良債権の定義は、欧州銀行監督局(EBA)の統一基準に基づき、「元利金の支払が 90 日超遅延している債権、
元利金の一部しか返済されない可能性の高い債権、破綻先への債権」。
(資料)イタリア中銀よりみずほ総合研究所作成
1
2
『みずほ欧州経済情報』 (2016 年 7 月号 2016 年 7 月 28 日)
松本惇「イタリアの不良債権問題の現状と今後に関する論点整理」(みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2016 年 7 月 29 日)
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