金属中のトリチウム吸放出挙動に 及ぼす金属表面に

金属中のトリチウム吸放出挙動に
及ぼす金属表面に偏析(吸着)した
トリチウムの影響
平成20年度 特定研究“核融合トリチウム”公募研究
九州大学大学院総合理工学研究院
大塚 哲平
2008年8月4, 5日
研究の背景(公募に至った経緯)
従来の水素同位体透過実験
透過係数・拡散係数・溶解度の決定
・供給ガス中の不純物としての水蒸気
・透過バリアとしての表面酸化膜
ステンレス配管から冷却水への
トリチウム透過漏洩
(C02班 富山大学, JAEAなど)
・冷却水とステンレス鋼との腐食反応に
よる不均一な表面酸化膜の形成
・表面酸化膜における高濃度トリチウム
の偏析
ステンレス鋼を透過する水素
1
本研究の特色と貢献できる点
ステンレス鋼表面の水素分布の可視化
酸化膜表面への偏析
(イメージングプレート法)
非金属介在物による捕獲
(オートラジオグラフィ)
4 mm
・ 酸化膜表面における-OH結合(O-H, ~5eV)
・ 酸化膜-母材界面における歪み(膨張率)
・ 熱膨張率の違いにより生じる歪み
および母材中の格子欠陥
・ 水素侵入による歪み
・ 水素溶解ポテンシャルの違い
2
3
目的
表面(表面酸化膜)に偏析したトリチウムが及ぼす
ステンレス鋼中の拡散・透過挙動および材料から
の放出挙動への影響を明らかにする。
これまでの成果
今後の研究方針
フェライト鋼からのトリチウム放出実験
試料: 8Cr2W (f 8 mm x t 2 mm)
PSL intensity
High
Low
50 mm
10 mm
Energy diagram of electrons
in BaFX:Eu2+(X=Cl-, Br-, I-)
Scanning Laser
(632.8nm)
Conduction
band
2 eV
Eu3+
6.5 eV
4.6 eV
Radiation
Valence
band
F center
Eu2+*
Eu2+
8.3eV
3.2 eV
トリチウム導入
陰極電界チャージ法 (EC sample)
電解質: NaOH水溶液 (T/H: 1.6x10-6)
温度: RT for 56 h
電流密度: 1 A m-2
Photo-StimulatedLuminescence
(390nm)
Excitation
PSL process
Temperature:
253 ~ 353 K
トリチウム測定
イメージングプレート(IP)法
- 表面および断面トリチウム分布測定
液体シンチレーション測定(LSC)法
- トリチウム放出量測定
Tritiated sample
Liquid scintillation cocktail
(Perkin Elmer, Ultima Gold)
4
5
トリチウム導入直後の
EC sample表面および断面のトリチウム分布
表面
Normalized tritium concentration, C
切断面
4 mm
1
0.8
Calculated profile
0.6
-14
D=5x10
2 -1
ms
0.4
0.2
0
0
0.2
0.4
0.6
x/L
0.8
1
半径方向
厚さ方向
C(r , t )
 2C(r , t ) 温度: RT(298 K)
 Dapp
t
 r2
時間: 56 h
Normalized T concentration / -
EC sample からのトリチウム放出挙動
1
0
20
Time / h
40
60
80
100
6
3次元円筒座標系における数値計算モデル
0.8
厚さ方向
0.6
初期条件 C= 断面T分布
境界条件 C=0 at surface
0.4
Calculated T ecolution curve
0.2
D=5x10-14 m2s-1
0
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4
6
Time / 10 s
C(r , t )
 2C(r , t )
 Dapp
t
 r2
半径方向
Tritium concentration
7
6
5
4
3
0h
2
1
0
100 h
0
1
2
3
4
5
6
Distance / mm
7
トリチウム深さ分布
Surface
格子間水素濃度
Depth
トラップ水素濃度
Amount of T
Chemical potential
Tritium conc.
4 mm
4 mm
Chemical potential
表面トリチウム分布
8
まとめ
フェライト鋼へのトリチウム侵入、および内部からのト
リチウム放出挙動は、拡散律速過程である。表面(酸
化膜)に不均一に分布するトリチウムは、鋼内部の拡
散・放出挙動に影響しない。
► 2次元表面上の化学ポテンシャルは一定である。
► 表面に捕獲されたトリチウム濃度が変化しても、内部(深さ
方向)に侵入したトリチウムの化学ポテンシャルは大きな影響
を受けない。
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9
表面の不均一・高濃度水素はバルク内部への
水素拡散・透過現象に影響を与えるのか?
M. R. Louthan et al., Corrosion Science (1975)
期待される成果
10
今年度
・水とステンレス鋼(フェライト系およびオーステナイト系)とが共存
している場合の水素(トリチウム)透過パラメータの決定
・3D深さ分布測定によるトリチウム透過プロファイル測定法の確立
高濃度かつ不均一な表面トリチウムの存在が局所的な水素侵入
または破過を招いていないかどうか(非定常状態)、また透過プ
ロファイルに影響を及ぼしていないかどうか(定常状態)を明らか
にする。
次年度以降
透過防止膜/材料界面近傍のトリチウムプロファイルを詳細に調
べ、膜の不健全性に起因する局所的なトリチウム透過や界面へ
の偏析があるかどうかを明らかにする。