シンガポール予算案2016年 シンガポール予算案2016年

ビジネスの観点からの
シンガポール予算案 2016年
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2016年度の予算案は、
シンガポール政府の今後の方針を明確にし、国内産業や経済を国際
化、刷新していく事を目指しています。
企業は、
この政府方針に基づいて事業計画を立てる必要があります。本紙では、貴社のお役
に立てるよう、予算案のポイントを解説いたします。
ボーイ・ヨーク・ピン(BOEY YOKE PING)
税務部門責任者(Practice Leader, Tax)
先日3月24日に開催された、2016年
度のシンガポール予算審議会にて、
財務大臣(Finance Minister)のヘン・
スィー・キート
(Heng Swee Keat)
氏は、
「パートナーシップ」
と
「生産性拡大」
を、シンガポール企業が今後成長し
ていくためのキーワードとして挙げま
した。
昨今の不安定な国際経済情勢に対
処するべく、政府は企業に対する様
々な支援策を打ち出しています。例え
ば、法人税の還付率は既存の30%か
ら50%に引き上げられます。還付の
最高額はS$20,000で据え置かれま
すので、特に小規模企業がこの恩恵
を受けると予想されます。
一方で、ヘン氏の予算案は確実に未
来にも焦点を当てています。国内産業
と経済を、
より一層の「創造」
「国際化」
「生産性拡大」を通して刷新する事を
目指しています。
中小企業(SME)が得られる利点
本予算案に含まれる改正点は、シン
ガポール企業全体の99%を占め、労
働人口の70%を雇用し、GDPの50%
に貢献しているSMEに特に焦点が当
てられています。政府は本予算案の
中で、産業改革プログラム(Industry
Transformation Programme)の導入
を発表し、今後5年間の間に、S$ 45
億の予算が、SMEの成長を支援する
た め に 充てられる予 定であると説
明しました。主な内容は下記の通り
です。
• 事業の自動化を促進するための補
助金が導入されます。補助金はプ
ロジェクト費用の最大50%まで、最
大S$100万まで支給されます。財
務大臣はこの自動化支援の補助
金総額が、今後3年間の間にS$4
億に達するとみています。
• 適格と判断された事業自動化の
ための支出については、通常のキ
ャピタル・アローワンス(資産性支
出に対する所得控除)に加え、イン
ベストメント・アローワンス(支出
額の100%の所得控除、ただし政
府の補助金控除後の金額)が認め
られます。プロジェクト毎に、最大
S$1千万まで控除が可能です。
• SME向けの運転資金融資制度
(Working Capital Loan)が、
まず
は3年間の期間で、SPRINGにより
導入されます。ローカルSME企業
は、本制度を利用して最大S$30万
までの融資を受ける事ができま
す。その際、融資提供先の金融機
関に対し、政府が不履行リスクを
50%請け負います。当該融資は運
転資金や、事業自動化、工場や機
械のアップグレードなどに充当で
きます。本制度の利用条件は以下
の通りです。
– シンガポールで登記されている
会社である事
– 最低30%の株式がシンガポー
ルにて保有されている事
– 会社の年間売上がS$1億を超
えない、あるいはグループ全体
の従業員数が200人を超えな
い事
• SMEメザニン成長ファンド
(Mezzanine
Growth Fund)
は、
年間売上がS$5千
万未満の小規模SMEを支援する
ために2年前に導入され、今後更
に支援を拡大していく予定です。
ファンド総 額 が S $ 5 千 万 増 額さ
れ、S$1.5億となります。
企業、特にSMEが、優遇制度や補助
金に関する情報を収集しやすくなる
よう、政府は2016年度の第4四半期
に、事業補助金ポータル(Business
Grants portal)
を開設する予定です。
こ
のポータルは人財開発・研修・海外進
出等、事業のニーズ毎に情報がまと
められており、申請を希望する企業が
どのスキームが自社に適しているか
を自身で見極める事ができるように
なります。
本予算案には、SMEに対する「 」的
措置だけではなく、
「 」にあたる内
容もいくつか含まれます。従ってSME
は、政府の提示した方向性に即して、
事業を拡大していく努力をする事が
求められます。例えば、PICスキーム
は、従前発表されていた通り、2017
年12月31日に終了します。更に2016
年8月1日以降に発生した適格支出に
対する補助金支給は、現在の60%か
ら40%に低減されます。
これにより、
企業が受け取れる現金での補助金は
最大S$20,000減額されます。
改善、成長、
そして国際化を目指して
生産性を向上するためのひとつの方
法は、ロボットの活用です。政府は、
2
M&Aに関する所得控除、及び印
紙税免税範囲が2倍に
海外進出に関する適格支出の2倍の
所得控除の適用が2020年3月31日
まで延長
一定の株式売却益非課税扱い
の確実性に関する条項の適用
が、2022年5月31日まで延長
一般企業と公的機関パートナーシップ
スキーム(新政策)
企業毎に年間最大S$250,000まで、ま
た公的機関毎に最大S$50,000までの
適格支出について、支出額の150%の
所得控除が適用
税制優遇措置
微調整
当該技術を活用しようとする企業に
対して、向こう3年間でS$4.5億にの
ぼる優遇措置をの適用を予定してい
ます。National Robotics Programme
は、複数の機関による取り組みで、事
業におけるロボット技術の有効活用
を促進するために設立されました。
ヘン氏は「SMEが手頃な価格でパッ
ケージ・ソリューションを入手できる
よう、プロバイダーと連携し更なる
活動をしていく予定だ」と述べてい
ます。
また、企業規模に関わらず、積極的に
「成長」戦略を取る事が推奨されて
います。海外進出を奨励するため、適
格支出の2倍の金額の所得控除を認
める優遇措置は、2020年3月31日ま
で延長されます。適格支出は、市場視
察やビジネス開発のための海外出張
費、ビジネス開発、国外及び(特定の)
国内展示会への参加費用等が対象と
なります。
M&Aに関わる所得控除を受けられ
る取 引 の 限 度 額 が 、S $ 2 千 万 から
2016年度予算
審議会にて提
案された税制
改正案
個人所得税
2018賦課年度より、申請可能な所得控
除額は最大S$80,000まで
中小企業(SME)関連
運転資金融資(新政策)
オートメーション支援パッケージ(新政策)
メザニン成長ファンド
法人税還付制度
2016及び2017賦課年度において
は、S$20,000を還付額の上限とした
上で、還付率を現在の30%から50%に
引き上げ
PICスキーム
2016年8月1日以降に発生した適格支
出に対する現金での補助金支給は、
40%に低減
S$4千万に引き上げられます。取引 シップを推進するパイロットスキー
額の25%の控除が認められますの ムの元、企業の従業員がボランティ
で、最大、S$1千万の控除を5年間で アとして公的機関にサービスを提供
申請する事ができます。印紙税も、年 したり、駐在する場合、その従業員の
度あたり最大取引額S$4千万までの 報酬や経費の金額の150%の所得控
ディールにおいて、免除となります。 除を申請する事ができます。IPCの承
上記は2016年4月1日以降4年間の 認を得る事を条件に、企業毎に年間
間に成立したM&A取引に適用され 最大S$250,000、IPC毎に年間最大
ます。
S$50,000までの適格支出が認めら
れます。本スキームは2016年7月1日
2017年5月31日に終了する5年の間 から2018年12月31日まで実施され
に、株式の売却から発生した利益は、 る予定です。u
一定の基準が満たされている場合は
非課税となります。20%以上の株式
を、24か月以上保有している事が、非
課税扱いの十分条件となります。本
条項は2022年5月31日まで延長され
ます。
地域への貢献(CSR)
社会的観点からの目標を達成する
ために、大臣はCSR(Corporate Social
Responsibility)へ積極的に投資する
企業への優遇措置を提案していま
す。一般企業と公的機関(Institutions
of a Public Character)
とのパートナー
本記事は2016年度の予算審議会にて発表
された内容の一部のみを掲載しています。そ
の他の内容は、下記ウェブサイトをご参照く
ださい。www.singaporebudget.gov.sg
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