日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)受賞コメント

第 17 回 2016 年度(平成 28 年度)日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)受賞コメント
(※所属は受賞時)
前立腺癌における p53 制御を担う新たなアンドロゲン作用メカニズム
日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野
東京大学大学院医学研究科抗加齢医学講座
芦苅 大作
このたびは第 89 回日本内分泌学会学術総会において若手研究奨励賞を頂き大変光栄に存じま
す。この研究に携わり多くの議論や助言を賜りました皆様に心より感謝申し上げます。
本研究テーマである前立腺癌は、アンドロゲンをリガンドとするアンドロゲンレセプター(AR)が
転写・活性化する遺伝子群によって発症や進展が促されることが知られています。そこでゲノム
ワイドに AR 結合部位を同定し、新規に同定したアンドロゲン応答遺伝子群の中から癌抑制遺伝
子 p53 と直接的に結合する遺伝子に着目し研究を進めました。p53 シグナルへの新たなアンドロ
ゲン作用メカニズムを明らかにすることで、治療抵抗性獲得機序の解明や新規診断・治療標的へ
の応用の可能性を示唆することができました。本研究で得られた知見が今後の前立腺癌研究を進
める上での一助となれば幸いです。今後もこの受賞を励みとし、更なる発展を目指して精進して
参りたいと思っております。
脂肪肝での肝再生障害における肝細胞死誘導メカニズムの解明
金沢大学 新学術創成研究機構
革新的統合バイオ研究コア栄養・代謝研究ユニット
稲葉 有香
この度は、2016 年度日本内分泌学会若手研究奨励賞受賞という栄誉を賜り、誠に光栄に存じま
す。評価頂いた選考委員の先生方ならびに関係諸先生方に厚く御礼申し上げます。
私は、肝糖脂質代謝異常の病態とそのメカニズムの解明を目的として研究を進めています。脂
肪肝においては肝障害が遷延しますが、今回、そのメカニズムが細胞死誘導に伴う肝再生障害で
あることを見出しました。脂肪肝再生障害は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進行に関
与することからも、脂肪肝再生過程における肝細胞死制御メカニズムを解明することは重要であ
ると考えています。
将来的には、NAFLD などの肝糖脂質代謝異常の新規予防・治療に繋げられるよう研究に邁進し
ていきたいと思います。本受賞は、助言及び支援をくださいました井上啓教授、また共同研究者
の先生方のおかげであり、深く感謝いたします。
癌と生活習慣病に作用する DNA 損傷シグナル分子 Chk2 の新たな制御機構
千葉大学大学院医学研究院
細胞治療内科学
滝口 朋子
2016 年度日本内分泌学会若手研究奨励賞受賞を賜り、誠に光栄に存じます。私のテーマは、DNA
損傷応答経路の key regulator である Chk2 キナーゼの制御機構と生活習慣病との関わりを明らかに
することでした。大学院当初は右も左もわからない中で始めた基礎研究でしたが、がん抑制シグ
ナルとして重要な分子群が、実際の患者さんの肥満脂肪組織や血管においても機能していること
を見出したことは、自分にとっても驚きであり、病気を「深く診る」ことの大切さを改めて実感
しました。Chk2 を中心とした制御機構ががんと生活習慣病をつなぐ新たなシグナル経路として着
目できると考え、生活習慣病病態を形成する分子メカニズムの一つとしてさらに研究を深めてい
きたいと思います。厳しくも丁寧なご指導いただきました田中知明教授、横手幸太郎教授に深く
感謝致します。また、ご支援いただいたすべての方に、この場をお借りし心よりお礼申し上げま
す。
グレリンによる慢性腎臓病マウスの身体能力改善における
ミトコンドリアエピゲノム制御の意義
慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科
徳島大学病院腎臓内科
田蒔 昌憲
第 89 回日本内分泌学会若手研究奨励賞という名誉ある賞に選出していただき、選考委員ならび
に関係の先生方に心より御礼申し上げます。
身体能力低下は慢性腎臓病(CKD)患者の強い死亡リスクです。本研究では、CKD における身体
能力の改善を目的としました。まず、軽度 CKD モデルである 5/6 腎摘マウスの身体能力低下機構
を解析したところ、骨格筋ミトコンドリア量減少(マイトペニア)と持久力低下が骨格筋量減少と
筋力低下に先行することを見出しました。そこで、骨格筋酸素消費亢進作用が報告されているグ
レリンを投与したところ、骨格筋量増加と筋力増強に加え、ミトコンドリア生合成鍵分子 PGC-1α
プロモーター領域脱メチル化を介したマイトペニアと持久力の改善を得ました。
本研究を通じ、CKD に伴う身体能力改善におけるグレリンの有用性が示唆されました。今後も
さらなる病態解明や新規治療法の開発にむけて努力いたします。最後に、本研究にてご支援とご
指導頂いた、所属研究室の伊藤裕教授、宮下和季先生ならびに諸先生方に深謝申し上げます。
肥満脂肪組織における in vivo 代謝動態解析:グルタミン酸上昇とその病態学的意義
大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学
長尾 博文
この度はこのような栄誉ある賞をいただき、判定委員・評価委員の先生方をはじめ関係各位の
先生方に厚く御礼申し上げます。今回私は脂肪組織における代謝物量・代謝動態に着目し、メタ
ボロミクスを用いて肥満脂肪組織でグルタミン酸生合成が増加していること、そしてそれが脂肪
細胞機能異常と関連している可能性について発表させていただきました。もとより経験の浅い若
輩者でありまだまだ微力ではございますが、この伝統ある賞に恥じぬよう、臨床へ還元できるこ
とを目標として引き続き精進いたします。最後に、今回の研究を御指導いただきました当科の先
生方やお世話になりました共同研究者の先生方に、心より感謝申し上げます。
亜鉛トランスポーターZIP13 による脂肪細胞褐色化制御機構の解明
順天堂大学大学院 医学研究科 代謝内分泌内科学
福中 彩子
この度は第 89 回日本内分泌学会におきまして、若手研究奨励賞を頂き、誠に光栄に存じます。
年次学術集会会長の島津章先生をはじめ、選考委員の諸先生方、学会関係者の方々に心より御礼
申し上げます。
様々な病態における亜鉛の関与は近年徐々に明らかにされつつありますが、その分子機序はほ
とんどわかっておりません。私は生活習慣病における亜鉛の役割を明らかにしたいと思い、亜鉛
恒常性維持に中心的な役割を果たす亜鉛トランスポーター欠損マウスを用いて解析を行った結果、
予想もしなかった脂肪細胞褐色化への関与を見出し、現在その解明に取り組んでいます。今回の
受賞を励みとして今後さらなる研究の発展を目指したいと思います。
最後になりましたが、いつも温かく見守り、かつ適切なサジェッションを与えてくださる藤谷
与士夫教授、綿田裕孝教授にはこの場を借りて改めて御礼申し上げると同時に、共同研究者の皆
様にも心より感謝申し上げます。
Sirt1 はオキシトシンを介してショ糖嗜好性を抑制する
群馬大学 生体調節研究所 代謝シグナル解析分野
松居 翔
この度は 2016 年度日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)を頂き、大変光栄に存じます。まずは、
つね日ごろ研究生活を支えてくださっている群馬大学生体調節研究所代謝シグナル解析分野の皆
様に厚くお礼申し上げます。本受賞は、研究の独創性と他分野の方々に対する発表の分かりやす
さ、話の筋道と面白さが評価していただけたのだと思います。まだ、私は研究者として歩きはじ
めたところですが、このような素晴らしい賞をいただき身が引き締まる思いです。このたびの受
賞を謙虚に受け止めつつ、大いに励みにして今後も内分泌代謝学分野に少しでも貢献できるよう
研究に勤しんでまいりたく存じます。今後とも一層のご指導・ご鞭撻をいただきますようお願い
申し上げます。
恒常的な小胞体ストレスにより、重症 Wolfram 症候群を発症する
新規 WFS1 遺伝子変異の病態解明
北海道大学大学院医学研究科小児科学分野
森川 俊太郎
このたびは栄誉ある賞を受賞し大変光栄に存じます。
評価してくださいました選考委員の先生方をはじめ、このような機会を与えてくださいました
北海道大学小児科の有賀正教授、また、賞への応募を勧めてくださり、いつも御指導をいただい
ております自治医科大学とちぎ子ども医療センターの田島敏広教授に、この場をお借りして心よ
り御礼申し上げます。研究を発表する場に立てただけでも非常に有意義な経験でしたので、今回
の受賞は私にとって望外の喜びです。
「糖尿病と小胞体ストレス」が私の研究テーマです。小胞体ストレスが、なぜ乳児期早期発症
の糖尿病の病因となるのかに興味を持ち、手厚い御指導をいただきながら研究を進めて参りまし
た。この研究テーマの奥深さはもちろん、ひとりの小児科医として患者さんの疾患の本質を捉え、
研究を進めてゆく過程にも魅了されています。
栄誉あるこの賞の受賞者として、私が本当にふさわしいのかどうかは、今後の努力次第で決ま
ることを心に強く刻んでいます。この機会を活かして一層精進する所存です。
アドレノメデュリンは RAMP2-3 機能分化により、血管-リンパ管恒常性を制御する
信州大学大学院医学研究科 循環病態学講座
山内 啓弘
この度は、第 89 回日本内分泌学会若手研究奨励賞に選出頂き、選考委員の先生方並びに関係各
位に御礼申し上げます。広範にわたる内分泌学の研究の中でご評価頂きましたことを、大変誇り
に感じております。
アドレノメデュリン(AM)は 1993 年に北村先生、寒川先生が発見されてから 20 年以上が経ちま
すが、一方で、AM の多様な生理活性の制御メカニズムには不明な点が多くあります。今回私は
その一端として、AM の受容体活性調節タンパク RAMP2 が、発生段階および成体の血管新生、
血管恒常性を制御しているのに対し、RAMP3 が、成体でのリンパ管機能を制御していることをご
報告させて頂きました。RAMP2 および RAMP3 による脈管系恒常性制御システムは新たな治療標
的となることが期待されます。
最後にこの研究を御指導いただきました新藤隆行教授はじめ、信州大学循環病態学講座の先生
方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
CAVI は肥満症患者の心血管疾患発症予測マーカーとなる
-多施設共同肥満症コホートにおける心血管イベント発症追跡-
国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター
山陰 一
この度、栄えある日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)を「CAVI は肥満症患者の心血管疾患発
症予測マーカーとなる - 多施設共同肥満症コホートにおける心血管イベント発症追跡-」と題して
受賞させていただきました。この研究は、2005 年より開始した NHO 多施設共同研究で、日本人
初の肥満症前向きコホート研究(JOMS Study)であり、5 年間の心血管病アウトカム追跡結果をま
とめたものになります。今回、発表の機会を与えていただきました日本内分泌学会様、本研究班
の代表研究者であり私の指導者であります浅原哲子先生、また島津章センター長を始め京都医療
センターにてご指導頂いた先生方、全国 NHO の JOMS 研究班の先生・スタッフ方、そして研究
にご協力頂いた患者様にこの場を借りて深く御礼申し上げます。今回の受賞を糧に、また此度の
学術総会で学んだ新規知見を活かし、今後更なる研究の発展・医学への貢献をすべく、精進を誓
う所存です。