高張力鋼板とアルミニウム合金板の曲げ加工

1 高張力鋼板とアルミニウム合金板の曲げ加工に
おけるスプリングバック特性およびその低減
塑性加工研究室
秋田啓太
高張力鋼板
アルミニウム合金板の
適用例
スプリングバック:大
形状凍結性:低
V・U曲げ
速度依存性・決押し率・しごき率
σ
高張力鋼板の適用例
普通鋼板
アルミ合金板
ε
弾性回復
実験材料の変形抵抗曲線
1200
SPFC980Y
変形抵抗 σ / MPa
1000
800
-3 -1
ε=64.5×10 s
-3 -1
ε=0.2×10 s
-3 -1
ε=91.2×10
s
-3 -1
ε=0.2×10 s
SPFC780Y
600
SPCC
-3 -1
ε=95.6×10 s
400
-3 -1
ε=0.2×10 s
-3 -1
200
0
A5083
0.05
ε=0.1×10 s
-3 -1
ε=51.4×10 s
0.1
0.15
ひずみ ε
0.2
0.25
サーボプレスの特徴
下限位置
1µm単位で制御
サーボモータ
ボールスクリュ
+
スライド
加工速度
最大150mm/s
リニアスケール
金型
実際の板厚にもとづいた
高精度で均一な加工条件
800kN
サーボプレス
V曲げの金型形状,決押し率の定義
パンチ
90°
t0
9.6
Cb
試験片
R1.2
90°
Cb
×100
決押し率 a =
t0
R1.2
9.6
ダイス
試験片形状
L=60mm×W=55mm
t=1.2mm(Steel), 1.0mm(Al)
V曲げの変形挙動(v=24mm/s, a=0%)
(a) SPCC
(b) SPFC980Y
曲げ角度の変化
曲げ角度θ / °
98
180
170
曲げ角度θ / °
160
150
96
94
92
90
88
140
3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4 4.1
ストローク / mm
130
120
負
110
100
加工後の角度 θ
荷
除荷
90
80
0
1
2
3
ストローク / mm
4
θ‒90°=∆θ パンチ先端角度との差
パンチ先端角度との差Δθ / °
V曲げにおけるパンチ先端角度との差と
加工速度の関係(a=0%)
8
SPFC980Y
下限位置一定
6
下限位置制御
4
SPFC780Y
2
SPCC
0
A5083
-2
0
10
20
30
加工速度 v / mm/s
40
50
パンチ先端角度との差Δθ / °
V曲げにおけるパンチ先端角度との差と
決押し率の関係(v=24mm/s)
8
6
4
SPFC980Y
SPFC780Y
2
A5083
0
-2
SPCC
-6
-4
-2
0
2
決押し率 a / %
4
6
V曲げの決押しによる除荷前の板幅方向
応力分布への影響(SPFC980Y)
σ / GPa
1.5
1.0
0.5
0
-0.5
-1.0
-1.5
(a) a=0%
(b) a=6%
-2.0
有限要素法によるV曲げにおける
スプリングバック角度と決押し率の関係
真スプリングバック角度 / °
除荷前の角度 ー 除荷後の角度 = 真スプリングバック角度
6
4
SPFC980Y
2
0
-2
A5083
-6
-4
SPCC
-2
0
2
決押し率 a / %
4
6
U曲げの金型形状,決押し率・しごき率・角度の定義
Cw
パンチ
Cb
WP
R1
.2
試験片
R2
リフタプレート
ダイス
WD
ガススプリング
背圧 3.5kN
Cb
決押し率 a = t ×100
0
Cw
しごき率 b = t ×100
パンチ先端角度との差∆θ
U曲げにおけるパンチ先端角度との差と
決押し率の関係(v=1mm/s, b=0%)
パンチ先端角度との差 Δθ / °
10
8
A5083
6
4
SPFC780Y
SPFC980Y
2
SPCC
0
1
2
3
決押し率 a / %
4
5
U曲げにおけるパンチ先端角度との差と
しごき率の関係(v=1mm/s, a=0%)
(a) しごき率 b=0%
パンチ先端角度との差Δθ / °
A5083
14
12
A5083
10
8
SPFC980Y
6
SPFC780Y
4
SPCC
2
0
(b) b=13%
2
4
6
8
しごき率 b / %
10
12
14
まとめ
1) V曲げにおいて,実際の板厚に基づいた下死点の制御
により,加工精度のばらつきが抑制できる.
2) 高張力鋼板のV曲げは,決押しによって応力分布を均一
にさせ,スプリングバックが抑制できる.
3) アルミニウム合金板のU曲げは,適した背圧と,少量の
しごきによってスプリングバックが抑制できる.
試験片の種類,初期板厚のばらつき
40
試験片 W55mm×
形状
L60mm
公称
1.2mm
板厚
30
SPCC
枚数
種類
SPFC980Y
(二相強化型),
SPFC440
(析出強化型),
SPCC
SPFC980Y
SPFC440
20
10
0
1.17
1.18
1.19
1.2
1.21
1.2
初期板厚 t0 / mm
標本数:各100枚
1.22
実験材料の機械的特性
試験片:JIS 5号引張試験片
試験速度:1 および 500mm/min
材質
ひずみ速度 耐力 引張強さ 全伸び F値
n値
/ s-1
/ MPa / MPa
/ % / MPa
-3
209
317
22.1
496 0.166
0.2×10
SPCC
207
344
18.5
500 0.116
95.6×10-3
-3
302
449
18.0
719 0.172
0.2×10
SPFC440
350
480
16.3
769 0.165
92.9×10-3
-3
733
1040
9.0 1458 0.100
0.1×10
SPFC980Y
699
1067
8.9 1523 0.106
64.5×10-3
-3
118
275
27.3
571 0.344
0.8×10
A5083
114
257
25.8
558 0.352
253.2×10-3
V曲げの変形挙動
V曲げにおける変形挙動
(a) パンチ先端とダイス肩が接触
(b) パンチ肩が接触
(c) パンチ全面が接触
V曲げにおけるスプリングバック角度と
引張強さ/ヤング率の関係
スプリングバック角度 Δθ / °
10
Ti合金
8
SPFC980Y
6
4
2
SPCC
0
-2
0
SPFC440
A5083
0.002 0.004 0.006 0.008
引張強さ/ヤング率
0.01
有限要素法の計算モデル
パンチ
試験片
ダイ
有限要素法の計算条件
計算ソフト
解析条件
工具
板材
板材の板幅方向要素数
板材の板厚方向要素数
加工速度 / mm/s
工具と板材の摩擦係数
LS-DYNA
平面ひずみ
剛体要素
ソリッド要素
85
8
100
0.1
SPFC980Yの下死点の対称軸における
板幅方向の応力差と決押し率の関係
板幅方向の応力差 Δσ/σb
4
3
2
1
0
-10
-8
-6
-4
-2
決押し率 a / %
0
2
4
6
U曲げの金型形状
板厚 / mm しごき率 / % WP / mm WD / mm
0
29.6
27.6
1.0
3
29.54
13
25.4
27.14
0
30.0
1.2
27.6
5
29.88
10
29.76
U曲げにおける変形挙動
(a) SPFC980Y
(b) A5083
下限位置で内側に引張が発生
パンチになじんだまま成形
スプリングバック低減
スプリングバック増大
U曲げにおけるパンチ先端角度との差と
決押し率の関係(v=1mm/s, b=0%)
パンチ先端角度との差 Δθ / °
10
8
A5083
6
背圧 1/3
4
SPFC780Y
SPFC980Y
2
SPCC
0
1
2
3
決押し率 a / %
4
5