野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部長 桑津浩太郎

Society 5.0へのアプローチ
2016年07月28日
株式会社野村総合研究所
コンサルティング事業本部
ICT・メディア産業コンサルティング部
主席コンサルタント
桑津浩太郎
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-6-5 丸の内北口ビル
社会の生産性をあげるための仕組みとして、先行して産業が高度化(Industry4.0)。
IT、なかでもAI、IoT、ロボットが新たな産業、社会基盤として、Society5.0の要素技術に向
かうが・・・・
Industry 4.0
ETHI
産業を包含する社会への広がり
宗教・勤労、文化的背景
産業4と社会5の境界点
▪産業間コンフリクト
▪規制・法制
AI、ロボット、IoT版の不気味の谷
社会の水準、生産性
労働を変える
産業革命、社会、情報化につづく、
Industry4.0→Society5.0
(→Human/Brain/Space6.0?)
技術
IoT、AI、ロボティクス
規制
導入・推進、労働の保護
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女性がスウェーデン並みに働き、高齢者が5年長く働いても、
労働力人口は270万人減少する
シナリオ別にみた日本の労働力人口※の将来推計
(万人)
7,000
6,555
6,495
6,285
6,000
女性・高齢者が
労働参加しても
270万人減
5,000
4,000
【仮定】
• 30∼34歳女性の86%
(現69%)が労働参加
3,000
2,000
• 60∼64歳男性の91%
(現75%)が労働参加
1,000
0
2012年(実績)
(推計)
2020年(予測)
経済ゼロ成長、労働参加一定
(推計)
2030年(予測)
経済2%成長、労働参加増
※満15歳以上の人口のうち、就業者、休業者、完全失業者の合計
出所) 労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計 ― 労働力需給モデル (2013年度版)による将来推計」よりNRI作成
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日本、欧州に続き、中国も生産年齢人口はピークに達し、
中期的には、中国は労働輸入国となる。21世紀は人的資源の確保競
争。
 「日本で働いても、他の国でのキャリアにつながらない」
 頼んでも日本に来てくれない時代がやってくる。
日欧中の生産年齢人口(15歳∼64歳人口)の推移
(億人)
1,200,000
12
1,000,000
10
日本
中国は2015年
がピーク
欧州
中国は2025年から
総人口減、労働輸入国へ
中国
800,000
8
欧州は2010年
がピーク
600,000
6
400,000
4
200,000
2
日本は1995年
がピーク
01985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 (年)
出所) United Nations World Population Prospects, the 2015 Revision (数値は中位シナリオを使用)よりNRI作成
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すでにIoTは、「モノのインターネット」から、「人、社会、コトまで含めて、インダストリー超え」
・ヘルスケアは?ヒトもThings。IoEなのか?社会まるごとか?
・もう言葉を変えるのは面倒くさい。「もうITで良いんじゃないかな?」
従来のM2M、当初のIoT
これからのIoT
モ
ノ
モ
ノ
モ
ノ
モ
ノ
モ
ノ
モ
ノ
モ
ノ
モ
ノ
体重計はIoTなのか?少なくともM2Mじゃないのでは?
→ある意味、ヒトをモノと見なしてデータをとるものは、
IoTと呼んで良いのでは?
モ
ノ
ヒト
映像処理はIoTなのか?
→もう、映像はCCDセンサーということで、IoTに入れ
てしまえ! デジタルなんだから、映像も信号だ!
社会
インフ
ラ
ヘルスケアのように
人も対象に
人の動き、流れ
人に関連したコト
(渋滞等)も対象に
出所:NRI
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IoT市場の振り返り
・夢が膨れる一方で、現実の採算に一部難。バブルではなく腰を落ち着けたい。
・民間企業だけでは、時間のかかりそうな分野、アプローチに注目。
・営利だけではない、公的な支援、規制への要請が強まりつつある。
世の中はM2M(IoT)ブーム
21世紀中盤には、センサー1兆?
「ITバブルを彷彿」
単価安い?本当に儲かるのか?
個別事業、サービスはニッチだらけ、単価安い
「すそ野は広いが、薄利多売のビジネス」
「供給側、ITは儲からないのでは?」
ヘルスケア、エネルギー、社会インフラが褒
めそやされる。
でも、勢いがない、あまり楽しくもない。
ブームになりにくい。導入期間も長い
公的な支援(新エコポイント、続住宅エコ
ポイント、廃ガス規制のエレキ・メカトロ版
)もしくは、規制が必須。
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製造業大手は、ライフサイクル、保守契約セッ
ト、不正利用防止、メンテ囲い込み、顧客の使
い方を覗く(開発に反映)ために、IoTを手放す
気はない。
「これまで、商いが形になったIoTは、監視機器
の単価が300万円超のもののみ。単価が高い
と保守、監視にお金をかけることができる、反
面、機器台数は自動車、携帯電話等に比較す
ると極めて少ない」
言葉の壁が低いので、意外にグローバル
向き。
5
ポストIoT、Internet of Remote/Connected/Controlの萌芽
・感じるだけではなく、動く。
IoT
IoT2.0?、IoR/C/C
クラウド
クラウド
検知から、
遠隔コント
ロールへ
ネットワーク
収集データ
・車両
・運行状況
・道路情報
・運転手等
制御データ
・施錠
・パネル表示
収集データ
・車両
・運行状況
・道路情報
・運転手等
制御データ
・自動運転支援
・遠隔運転支援
出所:NRI
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労働力不足が自動化を、自動化がIoT、AI、ロボットを必要
とする。
倉庫業務の自動化
長距離トラック運転手不足から進む自動運転
ア マ ゾ ン 等 で 、 倉 庫 業 務 の 自 動 化
ロボットは導入され始めている。
トラックメーカー各社は、2020年の市
場投入を目指す。
規格化されたパッケージの取り扱い
については、すでに技術的に可能。
高速道路のインターチェンジ付近に
積み替えスペースを用意し、そこから夜
間自動運転の専用レーンを走行。「か
つ て の 『 通 運 』 を 、 高 速 道 路 と 自動
運転トラック群で実現」
技術革新と労賃上昇による採算改善
がカギ。
画像) Amazon tour: What happens after you place that order ― YouTube
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画像) 日本自動車研究所
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就業者数が多い事務職・ホワイトカラー業務も、
コンピュータにより代替が可能となる
職種ごとのコンピュータ化可能確率と雇用者数の分布
100
配達員
ビル・建物清掃員
会計事務従事者
コンピュータ化可能確率︵%︶
食料品製造従事者
電気機械器具組立従事者
80
総合事務員
自動車運転従事者
庶務・人事事務員
60
その他の一般事務従事者
販売店員
調理人
飲食物給仕・身の回り世話従事者
40
20
その他の運搬・清掃・包装等従事者
その他の営業職業従事者
介護職員(医療・福祉施設等)
看護師(准看護師を含む)
0
0
50
500
100
1,000
150
1,500
200
2,000
250
2,500
300
3,000
350
3,500
雇用者数(万人)
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出所) NRIと英オックスフォード大学マイケル A.オズボーン准教授等との共同研究(2015年)
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複雑で高度な業務であっても、コンピュータ化が可能になる
職種ごとのコンピュータ化可能確率と平均賃金の分布
ビル・建物清掃員
100
包装従事者 受付・案内事務員 総合事務員
廃棄物処理従事者
看守,その他の司法警察職員
その他の清掃従事者
発電員,変電員
郵便事務員
クリーニング職,洗張職
鉄道運転従事者
その他の法務従事者
公認会計士
弁理士,司法書士
80
コンピュータ化可能確率︵%︶
船舶機関長・機関士(漁労船を除く)
船長・航海士・運航士(漁労船を除く),水先人
60
40
当初の予想?
相関係数
-0.16
20
裁判官,検察官,弁護士
大学教員
0
0
200
400
600
800
1,000
航空機操縦士
医師
1,200
1,400
1,600
1,800
対象職種内の平均賃金(万円/年)
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※平均賃金は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとにNRI推計
出所) NRIと英オックスフォード大学マイケル A.オズボーン准教授等との共同研究(2015年)
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IoTの社会分野では、10年超モデル。時間を要する・・・
「時間の壁」
・エネルギー等の社会基盤更新には先進国で20年超の期間を要する。
・電子書籍のような電子化のみ、ITに閉じたモデルの場合、先進国で10年以内。
2010
2015
従来市場
存在感確立
S電気モビリティ
(先進国)
(シェア∼17%)
(シェア3%)
機器販売が先行
するので、市場の
成立は早い
電子出版(先進
国)
S電気モビリティ
(先進国)
電子出版(先進
国)
萌芽・社会実験
2025
電子出版(先進
国)
逆転(40%超)
市場成立
2020
S電気モビリティ
(先進国)
Sユーティリティ
(先進国、日本除
く)
2030
S電気モビリティ
(先進国)
2035
Sユーティリティ
(先進国、日本除
く)
Sユーティリティ
(先進国、日本除
く)
Sユーティリティ
(先進国、日本除
く)
インフラ整備が必
要なので、市場立
ち上がりに時間を
要する
Sユーティリティは、日本を除く先進国
S電気モビリティは、日本を含む先進国
Sメディアからは、先進国、電子出版を抽出
現状
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産業間、国家間の壁
企業の取組だけでなく、産業間、社会での間のコンフリクトも生じる。
北米はFun to drive(厳密にはデトロイト)。
ドライブは楽しい。
モビリティは、神が人に与えた権利
ハイウェイを、かっこいい自家用車が走ることを自動化
。
日本では、ドライバー不足対策。
特に、長距離ドライブの運転手不足
(その日のうちに家に帰りたい)
夜間の高速道路の1車線を、自動運転の専用車線に
インターチェンジ付近に、通運駅のような持ち込み、積
み替えスペースを用意。
そこから、自動運転で高速道路を夜間走行。
「かつての通運を、高速道路と自動運転トラック群で実
現」
外航海運でも同じモデル(船長は近海で下船して帰宅)
を模索。
出所:Google社
図を入れる
西海岸に新興勢力が登場。
「運転は時間の無駄。その間にメールを読みたい」
出所:自動車研究所
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文化コンフリクトと日本 IoTはAI、ロボットの神経網。
「(日本人は)禁忌意識、想像力が足りない」
「日本はユダになるのか」
欧州知的階層
昭和57年、中堅企業に導入された産業用ロボット
「よっちゃん」「とみちゃん」「たけちゃん」
「心配の仕方が怖い」
「冷たい感じがする」
伝統的な日本
AIは、自己を最適化して必ず人間を超える。
人間は生物学な制約から、これ以上進化できない。
ロボットが普及したら
?
おれは貴族になって、もう働かない・・
欧州中間層
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ホンダの北米工場
手前のロボットがゴジラ、奥がT-Rex
北米
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