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オンライン ISSN 1347-4448
印刷版 ISSN 1348-5504
©2016 Global Business Research Center
赤門マネジメント・レビュー 15 巻 7 号 (2016 年 7 月)
〔ものづくり紀行 第九十五回〕
Come! 「ものづくり」 in India (上)
インドにおける日系製造企業の製造現場
―海外拠点における「従業員満足を高める活動の現地化」の必要性―
Come! “Monozukuri” in India
Factory Shopfloor of Japanese Manufacturing Companies in India:
Importance of Localising Employee Satisfaction Enhancement Activities at Overseas’ Bases
横澤
公 道,a 伊 藤
Kodo Yokozawa,
Hiroshi Ito
洋,b 樋 沢
洋 司c
Yoji Hizawa
a
横 浜 国 立 大 学 大 学 院 国 際 社 会 科 学 研 究 院 (Graduate School of International Social Sciences,
Yokohama National University, 79-4 Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama, Japan), [email protected]
b
東京大学ものづくり経営研究センター (Manufacturing Management Research Center, University of
Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, Japan), [email protected]
c
日本機械輸出組合大阪支部 (Japan Machinery Center for Trade and Investment, Osaka Branch, 3-6-14
Ito Biru 3rd floor, Minami Honmachi, Chuo-Ku, Osaka, Japan), [email protected]
1 はじめに
近年のインドは市場の規模と将来性において世界からポスト中国として特に注目されている投資
先である。2014 年 5 月に誕生したモディ政権は、各種の制度改革 (統治機構改革、経済改革、投
資環境整備、労働改革) を進めてきており、特に製造関連では、製造業振興策として「Make in
India」を掲げ、外国企業の誘致を活発化させている。
一方、日本の機械系企業は、事業環境、競争環境、グローバルでの地域及び事業戦略方針などが
大きく変化する中で、インドをどのように位置付け、どのように事業展開をしていくべきかいまだ
模索している企業が多い。
2015 年 12 月 13 日 (日) から 12 月 19 日 (土) の日程で、日本機械輸出組合が実施した「イン
ドの投資・市場環境調査」に同行する機会をいただいた。今回はデリー、ムンバイ、バンガロール
の 3 都市を北から南へとインド大陸を縦断する形で調査を行い、日本政府系外郭団体 4 社、日系民
間企業 2 社、インド州政府外郭団体、地場インド企業等を訪れ話を伺った。また 2016 年 2 月にも
デリー近郊の日系自動車部品メーカ 4 社で訪問調査を行った。そこから得た最新の情報をもとに
Come!
「ものづくり」in India (上・下) として二回にわたりインドの「今」を素描していく。第
一回目は投資先としてのインドの現状と課題を記述し、その後、在インド日系企業の現場の現状と
課題を 4 社のケースを紹介しながら明らかにしていく。
375
横澤・伊藤・樋沢
2 インド概要
インドはその市場の大きさ、豊富な労働人
口、そして安価な労働賃金から世界から市場と
製造拠点として注目を集めている。国連のレ
ポートによるとインドの人口は 2015 年の段階
で約 13.1 億と、中国の 13.7 億人に次いで 2 位
となっている。しかし、差は僅かで 2022 年に
はインドが中国を追い抜き世界第一の人口とな
る見込みである。また 15–59 歳が人口の 62%
を占め、さらに全体の 54%以上が 25 歳以下で
あり、2050 年まで 15–64 歳の人口が継続的に
写真 1 急速に進む交通インフラの整備 (グル
ガオン)
スモッグで 1 キロ先のビルがかすんで見える
増加する (United Nations, 2015 年)。また製造
業における労働基本給は、作業員レベルで月に
239 米ドル (中国:403 米ドル)、エンジニアレベルで 557 米ドル (中国:673 米ドル)、マネー
ジャレベルで 1,268 米ドル (中国 1,234 米ドル) である。中国と比較してもマネージャレベル以外
はいまだ低い水準である (JETRO, 2015)。
3 ビジネス面におけるインドの課題
国際協力銀行の 2015 年度在インド日系企業 171 社を対象とした調査によると、インドの主な課
題はインフラの整備 (152 社:88.9%) 及び法制度の運用の不透明さ (56 社:32.7%) となってい
る。JICA (2014 年) が世界開発指標 (World Development Indicators) をまとめたデータによると、
インドの一人当たりの年間所得は 1,560 米ドル (中国 6,560 米ドル) と低く、いまだに貧困層が多
い。電気にアクセスできる人の割合は 75% (中国 99.7%)、下水道普及率は 36% (中国 65%) な
どインフラ整備も遅れている。インフラ不足に加え、ビジネス環境でも、189 ヵ国中 142 位 (中国
90 位) と低く、特に許認可、税制、契約履行など改善の余地が大きい。さらに国際競争力に関す
る比較を見ると 144 ヵ国中 71 位 (中国 28 位) で労働市場効率性、マクロ経済、技術力などにも課
題がある。また就業人口に占める第一次産業の占める割合が高く (全体の 60%)、GDP に製造業が
占める割合は過去数十年間 15%前後で変化が見られず、熟練労働者が不足しているという現状が
ある。
4 製造業に追い風? 「Make in India」政策
一方、モディ政権になってインド政府は若年層の雇用確保と貿易赤字の削減のために“Come,
Make in India!”の掛け声のもと、1) 製造業による GDP シェアを 2022 年までに 16%から 25%に向
上させること、2) 同年までに 1 億人の雇用を創出することを目指している。25 セクター (表 1 参
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ものづくり紀行
照) に焦点を当て、外国企業に対してインドを
表1
製造拠点とするように投資を促している。具体
重要 25 セクター
自動車
自動車部品
航空
バイオテクノロジー
化学
建築
防衛
電子機器
電子システム
食品加工
IT&BPM
皮革
メディア・エンターテイメント
鉱業
石油&ガス
製薬
港湾
鉄道
再生可能エネルギー
道路・高速道路
宇宙産業
繊維衣類
火力発電
観光・ホスピタリティ
ウェルネス
的な取り組みとしては、中央政府のすべての部
門の行政サービスの窓口を eBiz (電子登録サイ
ト) に統合し、ビジネスをしやすい環境を構築
する。また産業ライセンスの有効期間を 3 年に
延長、環境クリアランス取得のオンライン化な
どの免許制度と規制の緩和を行う。投資家に対
応する専門家チームを設ける。急速に進められ
ているインフラ整備に関しては、スマートシ
ティの開発や DMIC (デリー・ムンバイ間産業
大動脈構想) や CBIC (チェンナイ・バンガ
ロール間産業回廊構想) などの産業大動脈の開
発のために、国家産業回廊局を設置する。防衛
産業、建築業、鉄道の高付加価値産業に対し
て、投資額の上限や規制を緩和するなどしてい
る (JICA, 2014)。
5 日本企業の動向
インドへの期待は日系企業の間で高まっており、国際協力銀行 (2014) の直近の調査によると事
業展開の長期・中期のどちらも有望国としてインドが 1 位になった。2015 年 1 月時点でインドに
は 1,209 社の日系企業が進出しており、その数は過去 5 年で約 2 倍となった。また、すでにインド
に進出している日系企業の 7 割以上が、今後 1–2 年に事業を拡大する姿勢を示している (JETRO,
2015)。在留邦人も同様に増加し、2014 年に 8,000 人を超えており、そのうち 5,000 人はデリー近
郊に在留している。デリー近郊のグルガオンにも日本食レストランが出始め、またスーパーでも日
本人向けの食品や飲み物を置いてある店が増えてきている。
JETRO (2015) の調査によると、インドに進出している企業の売上高に対する輸出の比率を見る
と、57.2%が完全内販型であり、完全輸出型はわずか 2%のみで、輸出型企業が多く進出している
ASEAN の傾向とは異なる。輸出比率が 50%未満の内販を中心とする企業の 2014 年の営業利益
(見込み) を見ると、黒字化率は 5 割にとどまる。しかし設立後 10 年以上経過した企業の黒字率は
7 割を超える。このデータから、インドは 2–3 年という短期で利益を見込むことは難しく、長期的
な計画をもとにじっくり腰を据えなければいけない投資先であるということがうかがえる。また、
中小企業にとっては、設立から数年の間、赤字をいかに吸収するかが大きな課題となる。
6 在インド製造企業の現場の現状と課題
インドの概要と日系企業の動向を見てきたが、ここからはインドにある日本企業の製造現場から
377
横澤・伊藤・樋沢
得た情報をもとに、在インド日系企業の現場の現状と課題を明らかにする。
6.1 調査概要
2016 年 2 月 8–9 日にデリー近郊に位置する工業団地内の自動車部品メーカ (一次・二次サプラ
イヤ) 4 社を訪問し聞き取り調査と工場見学を行った。日本人従業員、現地従業員への自由回答形
式の聞き取り調査とともに各社 1 時間ほどの工場見学をしてデータを収集した。4 社の従業員数は
150 名から 450 名と中規模の企業が対象である。B 社と C 社は同じ工業団地内に位置し、A 社と D
社はそれぞれ、A、B 社とは異なる工業団地で営業している。4 社ともインドにおいては設立され
てからまだ 10 年以下と比較的年数が浅い工場となっている (表 2 を参照)。
6.2 調査の結果
4 社の聞き取り調査では、インドにおける開発、製造、販売、調達、設備、人事など様々な側面
に対して自由回答形式で聞き取り調査を行った。この度の調査で我々は、事前に仮説を持たず、む
しろ情報提供者との対話を通じて、浮かび上がってきた課題に焦点を当てた。こうすることで、在
インド日系企業の現時点で関心の高いテーマに焦点を当てることができる。今回の調査で得られた
最新の情報の中から特にインド特有の事情 (契約工、離職率、女性従業員) に着目していく。表 3
は調査結果の要点をまとめたものである。
表2
調査対象企業の概要
A社
B社
C社
D社
事業内容
自動車部品
自動車部品
自動車部品
自動車部品
工場の位置
ラジャスタン州
タプカラ
ラジャスタン州
二ムラナ
ラジャスタン州
二ムラナ
ハリヤナ州
ロータク
設立
2007 年
2011 年
2011 年
2012 年
従業員数
約 250 名
約 450 名
約 150 名
約 450 名
日本人駐在
(常駐)
4名
3名
4名
27 名
表3
調査結果の要点まとめ
A社
B社
C社
D社
女性従業員
4名
28 名
5名
16 名
契約工率
50%
100%
90%
30%
オペレータ
10%
約 50%
15-20%
11%
スタッフ
5%以下
5%以下
5%以下
5%以下
離職率/年
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ものづくり紀行
6.3 インド日系製造企業の人材管理の現状と課題
低い女性従業員の活用
タイ、中国、インドネシアなどの他のアジアの多く国と違い、インドにおいて女性従業員の活用
のレベルが低いという現状が明らかになった。インドの女性への活用に関し、「庭師が女性だった
が真夏の 40 度を超える中でずっと草をとっていた (A 社)」、「検査する目の良さや長時間労働は女
性が向いている (C 社)」というように、女性のほうが我慢強く同じ仕事を長時間できる、または
細かい作業が得意といった認識を訪問企業がもっているのは他の国と同様インドでも変わらない。
実際、訪問した工場では女性のオペレータのほとんどは最終検査の工程で作業をしていた。
インドにおいて女性活用への期待が高い一方で、女性の職場進出はまだ時間がかかりそうだとの
認識が多く見受けられた。D 社では「(女性従業員がいると) 職場が和む。男同士だと突っ張りあ
う」ということで今後、積極的に採用していきたいとは考えているが、一方で現場は 3 直なので、
夜中のシフトに入れることができないという実務的な制約もあり積極的に女性従業員を雇えないと
いった声があった。また C 社では女性のオペレータの採用をローカルの人事マネージャから反対
されたという。インドではいまだ女性軽視の傾向があり職場での差別やハラスメントが多く、社員
啓発や教育を施す必要があり、それに手間がかかってしまうということである。
製造現場における女性進出を阻む要因
インドにおける女性の労働力率は新興国の中でも低く、国際通貨基金 (IMF) の研究結果報告に
よると、2012 年の時点で労働年齢にあるインド人女性のうち、賃金を得て働いている、もしくは
職を探している人は 33%しかおらず、これは全世界の平均 50%を大きく下回る数字である。(Das,
Jain-Chandra, Kochhar, & Kumar, 2015)。世界第 2 位の人口 (2014 年時点で 12 億 6,000 万人) を抱え
るインドにおいて女性労働力率が 33%というと、1 億 2,500 万人にしかならない。さらに近年の国
際労働機関 (ILO) の調査 (2013) によると、女性労働者の数は、年齢集団、教育レベル、都市
表4
店舗施設法に基づく女性の労働条件の規制
州名 (主な都市)
規制の概要
デリー連邦直轄領
女性および若年者を、夏季 (4 月から 9 月まで) に午後 9 時から午前 7 時ま
で、冬季 (10 月から 3 月まで) に午後 8 時から午前 8 時までの時間帯に就
業させることの禁止。
ハリアナ州
(グルガオン)
女性を、午後 8 時から午前 6 時までの時間帯に就業させることの禁止。
マハラシュトラ州
(ムンバイ)
女性および若年者を、生命、健康、道徳に危険が生じる作業として州政府が
指定する労働に従事させることの禁止。
カルナタカ州
(バンガロール)
女性および若年者を、午後 8 時から午前 6 時までを含む連続する 12 時間の
間に就業させることの禁止。
出所) 琴浦 (2013, pp.79–80) の別表 1 から一部抜粋
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横澤・伊藤・樋沢
部、地方にかかわらず減少傾向にあるという。これは高校へと進学する労働年齢の女性の増加や、
家計所得が上がったことで働く必要がなくなってきたということで一部説明がつくが、さらに大き
な要因は、女性に対する保守的な文化的態度や社会的規範を背景とする男性と女性の賃金の格差是
正や、女性の雇用機会均等のための法整備などの遅れである(International Labour Organization,
2013)。
インド人の抱く女性の社会進出に対する保守的な価値観は、店舗施設法に反映されており、各州
において女性の夜間の就労を禁止するなどの規制がある (表 4)。価値観は短時間では変化するこ
とが見込まれないために、女性の社会進出にはまだしばらく時間がかかりそうである。
高い契約工の割合
表 3 から契約工の比率が 30%から 100%と全従業員数の高い割合を占めていることがわかる。調
査対象の 4 社すべてにおいてこれらの契約工は現地の人材派遣会社から送られてきていた。契約工
が多いのは生産に変動が多いので柔軟性を確保するのが主な目的であり、顧客から 50%は非正規
にするようにと指示されていたケースもあった。
インドの製造業企業における高い契約工の比率は、独立後の社会主義的な色合いの濃い経済政策
からくる、労働者に手厚い労働関係諸法が背景にある。その代表的なものが、1947 年に制定され
た産業紛争方の第 5 条の規定である。規定によると、
「従業員 50 人以上の会社の場合、州政府へ届
け出、100 人以上の会社の場合、州政府の事前認可が必要 (国際協力銀行, 2013)」とあり、それ故
に、景気の浮沈に合わせて雇用調整を行うのが困難になっている。高い契約工比率の常態化は特に
日本企業にとっては、高離職率をもたらし、長期雇用をベースとした経営知識や技術の移転が困難
になるが、インドに投資する欧米、東南アジア、中国企業が増え競争が激化する中でコスト面から
契約工を増やして対応するしかないという状況である。
契約工の正社員への登用に関して「3–5 年からまじめにやっており正社員になりたいという希望
があればやらせる (A 社)」
、「(契約工は) みな社員になりたい。1 年くらい働いてなおかつ (ロー
カル) マネージャがみていいと思う人を社員にする (C 社)」というように、まずは契約工として
採用し、その中からまじめで優秀な従業員を正社員として採用していた。また契約工のひとつの特
性としては、「一般的には契約工は正社員になるためにまじめに働き、正社員になったら怠けたり
するケースがあるが、ここでは契約工のほうが突発的に欠勤したりする (A 社)」ということを指
摘する声もあった。
高い離職率
海外では、日本人のような企業に対する高いコミットメントを望むことはできない。それはイン
ドも例外ではないようである。今回の調査ではオペレータで年間 10–15%前後の離職率であった。1
2015 年 12 月に調査したムンバイにある製造企業の離職率も約 10%であったことを考えると都市部
1
B 社の離職率が 50%と飛びぬけて高いのは現場のオペレータの全員が派遣社員ということと、作業が比較
的きつい内容であることも影響していると考えられる。B 社では 2015 年 11 月、それまで私服だったス
タッフの制服をそろえたが、オペレータの離職率が高いので制服を与えても辞めて持って行ってしまうの
で渡すことはできない」という。
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ものづくり紀行
近隣の工業団地内における離職率は 10%を超えてくると考えられる。
またスタッフに関しては約 5%かそれ以下の離職率でオペレータに比べて離職率は低い。仕事を
辞めていく多くのスタッフは 3 年ほどで高い賃金、職位を目指してジョブホッピングをしていく。
一方で「インドの人材はマネージャのタイトルをとるのが目的であり、その目的を達成したらジョ
ブホッピングはなくなる (A 社)」というように一度マネージャクラスになると定着率が上がると
いう認識を持っていた。A 社では、採用時に人を選ぶ際に 10 年で 3 社目という候補者が多いな
か、15 年で 2 社目というような候補者には定着するであろうと見込んでそういう人材を積極的に
採用している企業もあった。
6.4 現場活動 (安全、5S、改善提案活動) の現状
日本企業が得意とする流れづくりの生産システムは、日本企業特有の長期雇用をベースにして発
展してきた。そのために離職率が日本と比較して高い外国ではその適用が困難であることが言われ
て久しい。インドも離職率が高い厳しい状況のなか、訪問した各社は安全、清掃活動 (5S)、改善
提案活動に対して積極的に取り組み、様々な努力と独自の工夫をしながら実行していた。4 社の現
場活動の現状を見ていくことにする。
A社
【5S 活動は定着しつつある】
生産体制を整えてから最初の 2 年間は工場の改善活動の初段階として清掃活動を行った。最初
は、日本人駐在員が工場の清掃をローカルに指示してもハウスキーパーにやらせろと取り合っても
らえない状態だった。社長自らがゴミを拾うなど清掃をおこなうと、ローカルスタッフからは社長
の権威が落ちるからやめてくれと言われた。その際はそういうものかと清掃はハウスキーパーに任
せていた時期もあったが、ロボット内のスパッターの掃除までをハウスキーパーにやらせていたこ
とを目撃してからやはりこれではだめだということで再び 5S に取り組むことにした。ローカルス
タッフと一緒に工場を歩きながら、汚い部分があったらその都度指摘し、落ちているゴミを拾って
はオペレータに手渡しゴミ箱へ入れるように指示し続けた。開始から約 1 年たったあたりから徐々
にオペレータの意識が変わってきたように感じている。ただまだ定着までしているとは言い切れ
ず、継続的に意識づけが必要だと感じている。
【流れづくりと改善マインドの育成はこれからの課題】
ほとんどの従業員が今までものづくりに携わったことがないので流れづくりや一個流しといった
考えがあまり見られない。製造ラインにおいてすぐにモノを滞留させがちで、指摘してもなぜそれ
が悪いのか理解してもらえないことが多い。インド人のオペレータはまずモノをとにかく造り、最
終検査でチェック不良のないものを出荷すればいいと考えている傾向がある。スクラップになった
ものも高く売れるため、廃品を出すことは悪いというイメージがないのではないのかもしれない。
インド人と働く中で、まだ責任意識が希薄で、担当の工程で問題が起こっても自らの責任である
と認めてくれないと思うことが多く、問題の存在を認めることが最初のステップとして重要である
改善提案活動を行っていくのはまだ難しい。現段階ではオペレータレベルから提案が出るまでには
381
横澤・伊藤・樋沢
至っておらず、スタッフレベルが現場を回り改善する箇所を見つけてはそれを具体化している段階
である。よい提案に対しては年に 4 回表彰し、動機づけを行っている。本格的な改善活動はこれか
らの課題である。
B社
【トレーニングルームで初期教育】
約 2 ヵ月前から、教材を作りローカルの従業員がトレーナになって従業員教育を始めた。B 社で
はすべてのオペレータが派遣社員で、その大半が農家出身で工業の知識が乏しい。したがって、彼
らのレベルにあったトレーニングが必要でこうした初期段階の訓練活動から始めている。オペレー
タは、言われたことをこなす、労務標準を守るといった規律に特に問題がある人が多い。5S は、
モデルなどを使ってモノを定位置に置くことの指導や、製造の基本的なコンセプトの教育を毎日
40 分間オペレータに対してトレーニングルームで行っている。
【品質ポリス:QT (Quality technology) 部署の設立】
初めての取り組みで新しい品質保証室の中に QT 部署を作った。3 人のローカルスタッフが 3 直
24 時間現場に頻繁に足を運び、そこをチェックすれば品質が安定するというキーになるポイント
を中心にチェックを行っている。
【従業員の表彰】
最近オペレータの動機づけのために、表彰を始めた。全社員の作業を一回全部止めて食堂に集
め、まず GM のコメントからはじめる。その後、優れた従業員を表彰し賞品を渡した。ちなみに 1
等賞のプレゼントはサービストレーとグラス (約 1,000 円相当)、他には圧力鍋などである。個人
を対象にしたものより家族が必要とするものが喜ばれる。2016 年 1 月には 12 名に対して賞状と商
品が渡された。その場は非常に盛り上がった。
C社
【5S は粘り強く】
5S は月曜日と木曜日の 30 分間、全員参加で日本人駐在員も一緒に清掃活動を行っている。最初
の頃、ほとんどのインド人従業員は掃除する習慣がなく、床を掃除するのはハウスキーパーが行う
という感覚をもっていた。駐在員がオペレータに掃除を指示してもぼろきれでの機械の上をはたい
て埃を下に落とす程度であった。一方でインド人のマネージャは、学校や、本などで 5S を知って
いたのでそれなら実際にやってみようと働きかけた。とにかく日本人が見本を見せなければいけな
いということで、日本人駐在員の製造担当だった一人が骨をおり、毎日床掃除を行い、オペレータ
にも清掃活動を行うように働きかけた。そのうち現場のオペレータが汚れたところに気が付けば掃
除するように変化していった。一年したら掃除も上手になり、そういう面では少しずつ定着してい
るのかなという感覚がある。まだ足りないところはあるが徐々に良い方向に向かっている。
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ものづくり紀行
【現場からの提案はまだ難しい】
安全に関しては特に気を使っており、週に一回、安全ブリーフィングを行い、関連会社の事故の
状況や事例を紹介して意識付けを行っている。安全に関する改善提案は現場から聞かないとわから
ないことが多いので、マネージャが現場を回り、オペレータに直に聞くことによってすくい上げよ
うとしている。また見回りの際に危険な場所が見つかったらすぐに直すようにしている。まだ自発
的にオペレータから提案が出てくる段階ではない。
D社
【採用時の教育】
D 社では採用時の教育に力を入れている。いくつかの筆記試験を踏まえて採用されると、まずは
4 日間の導入研修で企業概要、安全、技術訓練、TPS、七つの無駄、コミュニケーション、ソフト
行動訓練 (態度、リーダーシップ、マナー、経営責任、企業規則 (賄賂防止等)) など 24 項目につ
いて学ぶ。その後、スタッフとオペレータに分かれ、各 2 日間の講習を受ける。その後オペレータ
は、1 日 8 時間の訓練を 2 週間、現場に設けられた技能道場で、安全、品質、製造を疑似ラインの
中で集中的に訓練される。その後、実際のラインに配置されていく。
【5S 定着の秘訣はとにかく毎日毎日言うこと】
2012 年に工場が設立され、1 年の準備期間を経て 5S 活動を始めたのは 3 年前のことである。現
在は 5S のうちの 4S まで進んでいる段階で、工場の清掃が行き届き、ものが整然としている状態
が標準となりつつある。今後は現場が汚かったり、あるべき場所に道具がなかったりすると皆が違
和感を覚えすぐに対応するという段階まで進めていきたい。ここまでの道のりは、苦労が絶えな
かった。3 年前に日本人駐在員が着任した当初、オペレータが並んで作業するところで足元のごみ
を掃除するように指示すると、自分の周りにあるごみを脇に掃くだけであった。その様な状況の中
日本人駐在員が自ら工場を掃除し見本を見せようとするとローカルスタッフから恥ずかしいことを
しないでくれと言われた。それでもそこは折れず、「皆が汚した所は皆で掃除をしよう」と意識付
けを行ったが、どうしても掃除に対して抵抗があった。そこでフロアは赤 (危険区域)、緑 (作業
区域)、白 (通路) と色分けをしているところの、通路はハウスキーピング担当、緑と赤の区域は
皆がおこなうという折衷案でなんとか落ち着いた。現在は毎朝のラジオ体操の後、社長とローカル
工場長を含むマネージャクラスが 3 班に分かれて懐中電灯を持って現場を回り、機械や設備の上を
指で触り、埃がついていないかなど細かい部分まで点検を行っている。さらに見回りの際に、汚い
場所を見つけるたびに、その場所を写真に撮ってその区域を担当する職長レベルに展開している。
さらに月曜日はフィルターなどのエア関係、火曜日は水漏れのチェック、金曜日はゲージ関連など
といったように曜日ごとに重点的に清掃する場所を決め、ルール化している。ランチ後には、掃除
の時間を設けて、現場、オフィスで一度作業をとめて清掃作業を行う (今回の調査では従業員が
ちょうどランチの後に各自、雑巾を持ってデスクや電話などを拭いているところであった)。また
社長自らが、日本に帰った際に百円ショップ等でほうきと塵取りが一体になったものを購入してオ
フィスに配置している。さらに月に一度は、作業を止めて普段清掃できない部分を清掃する時間を
設けている。こうした地道な活動を通じてようやくこの一年で従業員が清掃活動の重要さについて
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横澤・伊藤・樋沢
意識し始めた。
5S 定着の秘訣は、従業員はトップが決めたルールは守ろうとする傾向があるので、トップが
ルールを作っていって、毎日毎日言って意識づけることである。ローカルのマネージャ達にごみが
落ちていることを指摘すると、オペレータが言うことが聞いてくれないと言われることがある。そ
れでも 10 回言ってだめなら 11 回、11 回言ってもだめだったら 12 回言えと指示している。5S の定
着に近道はなく、地道に意識付けを行っていくしかないと認識している。
【作業の標準化の取り組み】
以前は現場のオペレータの間で作業標準を守ることが定着せず、客から不良などの苦情が少なく
なかった。そこで約半年前から現場の一角にすべての作業標準書を集め、毎朝その場に全員が集合
し、そこで各自作業標準書を読んでからラインに入るという活動を行っている。しばらく続けた結
果、顧客からの苦情が減り、訪問当時 29 日間不良、苦情がなかった日が続いていた。オペレータ
もこれを継続させようと努力をしており、モチベーションを持続させるのに貢献している。標準書
通りに作業を行うことで、次第にオペレータから改訂案が出てくるようになってきた。
【改善案が多くて改善ルームが回らないほどに】
5S と作業が標準化されてくると改善提案も出てくるようになった。毎朝の 5S チェックの見回り
の際、マネージャが各ラインで問題点を見つけたりもする。それを職長レベルに投げ具体的な改善
案としてまとめる。以前は改善案として出てきた棚やシュートを外注していたが、納期が遅いのと
不良も多かったので現在はそれを改善ルームで内製している。改善ルームがフル稼働するほど改善
案が出てきている。ただ、オペレータから改善案が出てくるようになるのはこれからの課題であ
る。
6.5 4 社の現場活動のまとめ
インドにおいては、労働者の教育のレベルや、清掃に対する意識の低さから 5S を進めることが
困難であると認識していることが明らかになった。5S 活動に対しては、スタッフとオペレータの
身分格差が大きく、スタッフレベル以上が現場で掃除を行うことは初期の段階でローカル従業員の
心理的な抵抗が強い。また現場においても床や設備の掃除などは、ハウスキーパーがやるものとい
うように認識しているオペレータが多かった。
調査対象の 4 社の中でも D 社は、
「5S でも活動を標準化するか」という 4S まで進んでいた。D
社は日本人駐在員も 24 名と他社に比べて多いのも影響しているだろうが、D 社の現場視察中、案
内をしてくれた駐在員の方に、ここまで徹底した 5S 活動ができている特別な理由はなにかと質問
すると、
「特別な理由はない。10 回言ってもダメなら 11 回言うそれでもだめなら 12 回言う」とい
うことである。今回のケースから明らかになったことは、5S に楽な道はなく、とにかく毎回毎回
汚い部分を指摘して意識づけをおこなっていく地道な方法しか無いようだ。また各企業それを続け
て約 1 年すると定着し始めるという点でも共通していた。
各社の調査から、インドにおける現場活動の移転は苦労が多いと認識していたが、実際 4 社の現
場を観察していると、しっかりと整理整頓が行き届いており、整然としている。各企業とも、イン
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ものづくり紀行
ド工場との比較の対象が日本のマザー工場であり、各社目指す基準が高いのでこういった厳しい意
見が現場から出ているということをここで強調しておきたい。
6.6 その他の現場からの声
ワーカーのスタッフ昇進への抵抗
今回の調査から現場作業員で入社すると絶対にスタッフにはなれないという認識をローカル従業
員が持っていることがわかった。A 社ではワーカーのモチベーションを向上させるためにワーカー
とスタッフの間に、シニアワーカーという中間的な階層を作り、優秀なワーカーを昇進させようと
したところローカルスタッフに反対されてしまった。また D 社においてもメンテナンスで働いて
いたまじめなワーカーをスタッフにしたいと提案したのだが、結局ローカルスタッフから英語が話
せなければ昇進は認められないと言われてしまった。同じような事例はトヨタのバンガロール工場
でも見られる。島田 (2007) によると、トヨタのバンガロール工場立ち上げ時の採用の際、経験と
技術・技能のレベルアップによって一般作業者が将来はチームリーダーに、さらにはグループリー
ダーにもなれるということで作業員のモチベーションを向上させようとした。しかしローカル従業
員からは「うまいことを言って自分たちをごまかしている」や「工場長は昇格というが、インドの
会社ではブルーカラーで入社すればずっとブルーカラーだ」という声を耳にしたという。また優秀
者に昇格を打診しても「俺はチームリーダーなどになりたくない」と断られてしまった。自分だけ
が周りを出し抜いて上に行くことが怖いという認識をもっていたためであった。
従業員の遅刻:1 時間遅れはオンタイム
デリー近郊の工業団地において、従業員の大半はデリーやグルガオンから乗り合いのバスに乗っ
てくるのだが、通勤路で発生するトラブル (水たまりや事故など) で渋滞多く、従業員の遅刻が非
常に多い。より早い時間のバスに乗るように指示したこともあったが、それはできないと抵抗され
た。インド人従業員は家を出るときから仕事という認識を持っていて、自分以外の理由で遅れてし
まったらそれが遅刻の理由になってしまう。インドでは 1 時間遅れてもオンタイムという認識の人
が多いという話を聞いた。遅刻による作業員の穴は、前のシフトの人に残業してもらうことで対応
している。
小括
今回、調査した企業において、人材管理の課題として高い派遣社員の比率、高い離職率、そして
低い女性従業員の活用という特徴が明らかになった。この中でも高離職率は各社頭を悩ませてい
る。日本の工場で培われた生産システムや技能は、長期雇用の土壌があるかどうかが重要であり、
従業員の企業へのコミットメントが低い海外における工場へのシステムの移転は困難になるからで
ある。高い離職率に対してどのように対応するべきなのか、最後にタイにある日系企業の事例を引
き合いに考察を加え本稿の結びとしたい。
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横澤・伊藤・樋沢
7 最後に:従業員満足のための取り組みの現地化がカギ
離職率が高い中で海外の日系企業は、主に三つのアプローチでものづくりを進めてきた。ひとつ
目は生産プロセスの自動化、作業の標準化などで高離職率の中でも生産を進められるような制度作
りをするアプローチ、二つ目は賃金を近隣の工場より高くするアプローチ、そして最後は福利厚生
を手厚くして従業員満足度を上げ離職率を低く抑えようとするアプローチである。今回は、従業員
満足度を上げ離職率を下げるアプローチに着目したい。その理由は、離職率の低減だけでなく、
2012 年 7 月にニューデリー近郊にあるスズキ子会社マルチ・スズキ社のマネサール工場で発生し
た暴動に代表されるように、インドでは暴動事件が頻繁に起こっている。こうした状況の中、暴動
を未然に防ぐという意味でも従業員満足度を上げる活動はインドにおいて特に重要となる可能性が
あるからである。
海外に進出している多くの日系企業はすでに製品や人事制度 (採用・評価システム) 等の現地化
が成功の重要な要因ということをよく理解し、日々努力を重ねている。しかしながら従業員満足度
を向上させる活動に関して熱心に現地化に取り組んでいる企業はまだ多いとは言えない。筆者が訪
問する多くの海外の日系企業は、新興国の状況を日本の高度経済成長期になぞらえ、その当時日本
で行われていた従業員満足度向上のための活動を新興国の製造拠点へと移転しているケースを頻繁
に聞く。例えば従業員の表彰、社員旅行や運動会、正月などの行事の際にプレゼントを渡すなどで
ある。もちろんこうした活動が従業員満足度を高めている事実はあるが離職率はいまだ高いまま
と、頭を抱える企業は少なくない。従業員の満足度は、その国の経済状況、生活様式、そしてその
ベースとなる文化や宗教観などに深く根差しており、その国に合わせた活動をすることが必要にな
る。
7.1 タイにおいて離職率の低減に成功した日本企業
インドではないのだが、日本企業のタイにおける製造拠点で現地従業員の満足度を向上させ、離
職率を激減させることに成功した企業 A 社を紹介する。この企業はバンコク近郊の工業団地内に
ある従業員数約 800 名の第二次自動車部品メーカである。近隣に大手自動車製造工場があり、そこ
と給料こそあまり変わらないが、A 社のボーナスが 6 ヵ月分なのに対し近隣の大手自動車メーカの
ボーナスは 10 ヵ月分と多いため、優秀な従業員ほどそちらに流れていってしまい、離職率は月に
5–6%程度と高い水準であった。
A 社はこれを問題視し、1996 年よりいかに愛社精神を育てるか、従業員同士の信頼を構築する
か、会社に居たらより幸せになるかという三つの課題を立て、従業員満足度向上のための活動を始
めた。活動の中心はローカル従業員のみで構成された福利厚生委員会である。委員は 2 年に一度、
従業員の選挙で選ばれる。委員会は従業員の満足向上のためのイベントを毎年 20 前後考え、その
ほとんどを実行している。委員会の活動やプロジェクトへの参加は基本的にはボランティアベース
で、仕事の後、休み時間、早朝、土日、連休の時などに活動している。彼らの活動資金は、一部企
業が負担しているが基本的には従業員の寄付が中心である。以下が具体的な活動の一部である。
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ものづくり紀行
•土曜日の休日出勤の際、親の現場での仕事を子供に見せる。親が職場でどのように仕事に励ん
でいるか見せることで、子供も見習おうとする。親にとっても誇りになる。タイは子供を生ん
でも仕事を続ける傾向にある。女性にとって、子育てをしながら仕事をすることは負担になる
が、それをすこしでも軽減する狙いがある。
•工場の敷地内の空いているスペースを利用し野菜やフルーツを作り、食堂でみなに食べさせ
る。余った野菜、フルーツは販売し、それを資金にまたイベントを回す。
•会社に相談窓口があり、借金などの従業員の様々な問題を直接、またはメール、電話で相談で
きる。
•カラオケルーム、フィットネスルームを設置。
•年に一度、寺院にいって瞑想を行う。借金などの家庭のトラブルで仕事が手につかなくなって
いる従業員が少なくない。寺で瞑想して考えを整理させるのに役に立つ。昨年は約 50 人が参
加した。
•従業員は家族を大事にしており、ボランティアで従業員の実家を屋根の雨漏りや塀を修復す
る。そのほかにも近隣の学校の修復などを行う。
•従業員の子供の誕生日に会社がお金と車を出して動物園等にいく。
•ミルクの空き箱を従業員から集める活動を 4 年間続けている。ミルクの空き箱は地方では家屋
の屋根の材料になる。10 個集めたらインスタントラーメン一個と交換している。
•麻薬使用者の従業員を即解雇にせず、やめさせるのを支援する活動を行っている。ある従業員
は 3 年を続けていた麻薬をやめることに成功した。
こうした活動を続けた結果、2014 年の従業員を対象とした調査では、79%が満足度は高いと答
えており、それが 2015 年度は 82%に向上した。そして年間の離職率は 0.2%程度と非常に低い比
率を維持している。今後は満足度を 100%にできるように、不満足と答えた従業員から意見を聞い
て改善に取り組んでいる。
これらの活動内容を見てみると、タイの生活習慣や宗教観に根ざしているものが少なくなく、滞
在年数が短い日本人駐在員には理解することが難しいかもしれない。インドにおいても、ローカル
が中心になり、ローカルの従業員が職場で何が本質的な問題なのかを改めて探し出し、その不満を
解消するために会社は何ができるのかを改めて考え、「従業員満足度を向上させる活動の現地化」
が離職率を低下させることに有効な手段のひとつとなるのではないだろうか。
謝辞
本稿を執筆するにあたり、工場におけるヒアリングや情報の提供などでご協力いただいた皆様、また調
査の機会をいただきました日本機械輸出組合、貴重なご助言の数々をいただいた野村総合研究所の岩垂好
彦 様 に 対 し て お 名 前 を こ こ に 記 し て 、 深 甚 な る 感 謝 の 意 を 表 し ま す 。 な お 本 研 究 は JSPS 科 研 費
JP26780209 の助成を受けたものです。
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横澤・伊藤・樋沢
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赤門マネジメント・レビュー編集委員会
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赤門マネジメント・レビュー 15 巻 7 号 2016 年 7 月 25 日発行
編集 東京大学大学院経済学研究科 ABAS/AMR 編集委員会
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理事長 高橋 伸夫
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