特集:価値を創造する力 FinTech を活用した取り組み 「FinTech(フィンテック)」―Finance(金融)と Technology(技術)を合成した造語で、ICT を活用し金融機 関以外の企業が新しい発想で金融サービスを提供することです。FinTech は、既存金融機関にとっては新しいライ バルにもなりますが、連携することでお客さまに全く新しいサービスを提供することが可能となります。MUFG の FinTech を活用した取り組みについてご紹介します。 従来にない組織での対応 FinTech は、まず米国シリコンバレーで生まれました。こ カブドットコム証券、ネット専業銀行のじぶん銀行など、グ こでは、ペイパル、スクウェアー、ウェルスフロントなど、ア ループ全体での取り組み強化を進めています。 イデアと技術を有するベンチャーが次々と金融サービスに参 さらに、2016 年 1 月に、新たに「イノベーションラボ 」を開 入しました。こうした情報の入手と MUFG ビジネスでの活 設しました。ここでは、既存業務にとらわれない革新的な新 用を検討するため、2014 年に当地にイノベーションセンター 事業の創出、アイデアの迅速な具現化、オープンイノベー を開設し、情報収集や FinTech とのネットワーキングなどを ションの推進・加速をミッションとしています。オフィスも 開始しました。 「ブロックチェーン *1」技術を応用した「R3」 従来の銀行組織から切り離された環境で、外部企業との協業 社主催の DLG*2 への参画は、こうしたネットワーキングから を促進する業務スタイルを実践していきます。 生まれたものです。 *1 ビットコイン(暗号通貨)から生まれた技術で、取引履歴の台帳をネットワー クに分散して保持するため、改ざんが極めて困難な点が注目されています。 2015 年 7 月には、これまで銀行傘下にあったデジタルイノ *2 ブロックチェーン技術を「分散型台帳技術 」と呼び、その開発、評価、普及を 目的に 2015 年 9 月に結成されたコンソーシアム「R3」には世界 42(2016 年 6 月現在)の大手金融機関が参加、ブロックチェーン技術をベースにした ベーション推進部を持株会社傘下にも新設しました。これに より、三菱 UFJ 信託銀行や三菱 UFJ モルガン・スタンレー証 金融業務の標準化に取り組んでいます。 券、三菱 UFJ ニコス、アコム、さらにはネット専業証券会社の 注目しているテーマ ビッグデータ 決済 • 顧客データの分析 ロボット • モバイル決済、 ソーシャルメディア 19カ国語対応が可能な人 型ロボットNao を成田空 港支店に常設。将来的に は顧客データと連動し、お 客さまの属性や嗜好にあった商品を提案 • 新チャネルとしての活用 • お客さまの声収集 ブロックチェーン技術 電子ウォレット AI(人工知能) AI 米国 IBM 社の「Watson」を活 用し、Web サイト、コールセン ター、店 舗 などにおける紹 介 対応や業務支援に活用 ウェルスマネジメント 家 計 管 理、ロボ・アドバイ ザーによる最適な資産ポー トフォリオのアドバイス 42 セキュリティ • 詐欺検知 • モバイルバンキング 向け生体認証 2015 年 9 月に欧 米 銀 行 が参加するブロックチェー ン 活 用 コンソ ー シ ア ム DLG に参画。今後参加各 行との議論を通じ、ブロックチェーンの金融で の活用方法の研究、技術標準化を推進 オープンイノベーションの取り組み MUFG の ICT 戦略の特徴の一つにオープンイノベーションがあります。MUFG の有する 金融ビジネスの知見、長年培った「安心・安全 」に対する考え方と、外部の新しいアイデアを 組み合わせることで、お客さまに、従来にない、利便性が高くかつ安全にお取引いただける サービスの提供をめざし、さまざまな取り組みを行っています。 日本の銀行初の FinTech アクセラレータ・プログラム 立ち上げ ハッカソン「FINTECH CHALLENGE 2016 Bring Your Own Bank」の開催 イ ン タ ー ネ ッ ト の 世 界 で は、多 く の 企 業 が API (Application Programming Interface)を通じてさまざ まな機能をネット上に公開し、新たな価値を創造する動きが 広がっており、それは金融ビジネスにおいても例外ではあり ません。三菱東京 UFJ 銀行では、こうした動きを受け、日本の 銀行で初めて銀行 API を利用したハッカソン(ソフトウェア 開発者が共同して、一定期間集中的にサービスの考案やプロ グラムの開発を行い、その成果を競うイベント)を開催しまし た。 「より身近で便利な IT ×金融のサービスづくり 」をテーマ 新たに FinTech 事業への参入をめざす企業などに対し、 として本イベントには、12 社が参加しました。 MUFG グループの総力を挙げて、事業プランのブラッシュ アップ、プロトタイプの構築支援、事業プランの方向性に合 受賞企業のインタビュー わせたパートナー選定、アライアンスなど、事業化に向けた 大賞を受賞した「Petty Pay」は、法人向けに小口現金を決済す ステップを全面的に支援するプログラム「FinTech アクセラ るサービスです。今回のイベントでは、銀行 API がデモで公開さ レータ・プログラム 」を立ち上げました。第 1 期生として、AI れるというのも魅力の一つで、実際に使用してみていろいろな可 を活用した投資アルゴリズムによる事業展開をめざす企業や ブロックチェーンを活用したポイント事業の構築をめざす企 業など 5 社が参加しています。 能性が広がったと思い ます。 まだ課題もあります が、一つひとつクリア して実現化していきた いと思います。 株式会社ネットネイティブ 門脇さん(右) 株式会社 Housmart 松江さん(左) 「FINTECH CHALLENGE 2016 Bring Your Own Bank」での表彰式 43
© Copyright 2024 ExpyDoc