東京五輪、県内企業の 40.9%が「売上増加」を見込む

2016/7/28
宇都宮支店
宇都宮市大通り 2-3-1
TEL: 028-636-0222(代表)
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画 : リオおよび東京五輪に対する栃木県内企業の意識調査
東京五輪、県内企業の 40.9%が「売上増加」を見込む
~ 東京五輪に向けて期待する自社商品・サービス「あり」が 12.7% ~
はじめに
2016 年 8 月 5 日に開会式を迎えるブラジルのリオデジャネイロ五輪、更に 4 年後の 2020 年には
東京五輪が開催される。世界最大のスポーツイベントの開催は単にスポーツの祭典としての注目
度だけではない。莫大な経済効果を生む事は間違いなく、直接関連する企業・業界だけでなく、
間接的な需要や思いがけないヒット商品の誕生など、様々な事業に対して業績への影響が表れる。
そこで、帝国データバンク宇都宮支店では、リオおよび東京五輪による企業への影響について
県内企業がどのような意識を持っているのか調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2016
年 5 月調査とともに行った。
※調査期間は 2016 年 5 月 18 日~31 日、調査対象は栃木県内企業 269 社で、有効回答企業数は 110
社(回答率 40.9%)。
※本調査における詳細データは景気動向調査専用 HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載している。
調査結果(要旨)
1.栃木県内企業の 31.8%がリオ五輪に「関心がある」一方で、57.3%は「関心はない」。東京五輪
は、企業の 64.5%で「関心がある」と回答。特に、
「大企業」ほど関心度は高く、
「小規模企業」
との比較では 20 ポイント以上上回った。
2.自社の企業活動に「プラスの影響がある」と回答した企業は、リオ五輪では 0.9%、東京五輪で
は 37.3%。ただし、プラスの影響とする企業も規模・業界・従業員数によって割合は大きく異
なっており、企業の属性によって五輪から受ける恩恵は大きく変わると判断される。
3.リオ五輪関連で自社の売り上げが「増加」するとした企業は 0.9%、「減少」は 0.9%。リオ五
輪関連で企業の売り上げへの影響は極めて限定的であると云える。東京五輪では、売り上げが
「増加」するとした企業は 40.9%、
「減少」は 3.6%。東京五輪で企業の売り上げは平均 2.25%
増加と試算された。
4.自社において期待する商品・サービスの有無では、リオ五輪関連で「ある」は 0.0%、「ない」
は 80.9%。リオ五輪関連では自社商品・サービスへの期待が低い。東京五輪関連では、
「ある」
が 12.7%、「ない」が 58.2%であり、五輪関連需要を慎重に見ていることも明らかとなった。
©TEIKOKU DATABANK, LTD.
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特別企画:リオおよび東京五輪に対する栃木県内企業の意識調査
1. リオ五輪に関心のある県内企業は 31.8%、東京五輪は 64.5%
栃木県内企業に対し 2016 年 8 月~9 月にかけて開催されるブラジル・リオ五輪に関心があるか
尋ねたところ、「関心がある」と回答した企業は 31.8%で 3 社に 1 社にとどまった。また、「関心
はない」は 57.3%となり、半数超の企業がリオ五輪に関心を持っていなかった。
他方、2020 年の東京五輪に対する関心度では、
「関心がある」が 64.5%で 3 社に 2 社の企業が
関心を示した。また、企業の 23.6%は「関心はない」と回答した。
企業からの声を紹介すると、「東京五輪に関しては、2 年間分程度の設備投資が前倒しで来るの
ではないかと予想しています。開催地が近いという事もあり、影響は大きいと思われる。」
(建設)
や「昔ほどの経済効果はないとは思うが、自国開催という事になると開催前から参加国のキャン
プ地を含めて地方にも経済波及があるのではないかと期待しています。」(サービス)など、特に
東京五輪での期待の声があがった。
他方、「関心はない」という企業からは、「五輪などで国の予算を使ってもらいたくない。結局
税金が使われていることを忘れてはならない」
(建設)や「リオの治安の悪さや、東京での準備段
階でのごたごたなど、いい
■リオおよび東京五輪の関心度
加減な主催者側の運営に
はあきれています」
(卸売)、
関心がある
関心はない
分からない
「長野オリンピックのあ
との長野県のように、景気
が悪くなることが心配で
リオ五輪
す。」
(卸売)といった声も
31.8%
57.3%
10.9%
聞かれ、五輪によるマイナ
スの影響や様々な問題が
噴出するなかで関心を持
てないでいる様子がうか
64.5%
東京五輪
23.6%
11.8%
注:母数は有効回答企業110社
がえる。
■リオおよび東京五輪の関心度~共通の関心度~
(%)
東京五輪
関心がある 関心はない 分からない
リ 関心がある
31.8
0.0
0.0
オ
関心はない
28.2
23.6
5.5
五
4.5
0.0
6.4
輪 分からない
総計
64.5
23.6
11.8
注:母数は有効回答企業110社
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総計
31.8
57.3
10.9
100.0
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特別企画:リオおよび東京五輪に対する栃木県内企業の意識調査
2. 自社の企業活動に「プラスの影響」と考える企業、リオ五輪は 0.9%、東京五輪は 37.3%
リオ五輪が自社の企業活動にどの
■リオおよび東京五輪による自社の企業活動への影響
ような影響を与えるか尋ねたところ、
「プラスの影響がある」と回答した企
プラスの
影響がある
業は 0.9%、「マイナスの影響がある」
マイナスの
影響がある
影響はない
分からない
も 0.9%にとどまった。他方、
「影響は
ない」は 8 割を超えており、多くの企
業はリオ五輪が自社にあまり影響を
0.9%
0.9%
80.9%
リオ五輪
17.3%
及ぼさないと考えている。
また、東京五輪による影響では、
「プ
ラスの影響がある」が 37.3%で 3 社に
東京五輪
37.3%
9.1%
32.7%
20.9%
注:母数は有効回答企業110社
1 社以上がプラスの影響を期待してい
ることがわかった。一方、
「マイナスの影響がある」は 9.1%にとどまる。また、
「影響はない」と
答えた企業は 32.7%あり、3 社に 1 社はビジネスチャンスとは捉えていないようだ。
東京五輪で自社の企業活動に「プラスの影響がある」と回答した企業において、規模・業界・
従業員数別に見ていくと、最高と最低で割合に大きく差が見られる。規模別では最高となった「大
企業」は 46.2%、最低となった「小規模企業」では 20.0%という結果であり、その差は 26.2 ポ
イントと大きな格差が見られた。また、業界別では最高値を示した『不動産』と『サービス』が
50.0%、最低値の『小売』では 0.0%とプラスの影響をイメージする企業が全くないという結果と
なり、その差は 50.0 ポイントであった。また、従業員数別で比較すると、最高値の「301~1000
人」が 50.0%、最低値の「5 人以下」では 18.2%となり、その差は 31.8 ポイント差となった。こ
の調査結果は、全国集計と比較しても大きなブレがない事から、県内企業においても企業の属性
によって五輪に対するイメージは異なっており、受ける恩恵は大きく異なると想定している様子
がうかがえる。
企業からの声を紹介すると、
「海外からのお客さまが増えれば、和食の需要など直接的なニーズ
に結びつく」(製造)や、「オリンピック関連施設の工事に顧客が関わっており、当社商品の需要
増に期待している」(卸売)などの直接的なプラス影響を期待する声や、「東京五輪では直接的な
影響は出ないにしても、顧客が恩恵を受けることで間接的に景気浮揚になればと期待している」
(サービス)や「東京五輪では国のインフラ投資だけでなく民間の設備投資需要も高まると思う
ので、大いに期待している。規制緩和が必要だろう」
(サービス)といった間接的ながらプラスの
影響を受けるイメージの企業も散見された。他方、
「一時的な受注増加はあっても、その後経験を
したことがないような不況になるのではと心配している」
(建設)や「五輪とは全く関係のない商
品を扱っているので、影響はイメージできない」
(製造)といった、五輪終了後の景気を心配する
声や、プラスの影響をイメージできないといった声も多く聞かれた。
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特別企画:リオおよび東京五輪に対する栃木県内企業の意識調査
■ 東 京 五 輪 で 「プ ラ ス の 影 響 が あ る 」割 合 ~ 規 模 ・業 界 ・従 業 員 数 別 ~
(% )
60
50
5 0 .0
5 0 .0
4 6 .2
4 0 .9
40
5 0 .0
4 6 .7
4 5 .0
4 0 .9
4 0 .0
4 0 .0
3 4 .5
2 8 .6
2 7 .8
30
2 0 .0
20
1 8 .2
10
0 .0
人
3 0 1~ 1 0 0 0
1 0 1~ 3 0 0人
5 1~ 1 0 0人
2 1~ 5 0人
6~ 2 0人
5人 以 下
サー ビ ス
運 輸 ・倉 庫
小売
卸売
製造
不動産
建設
小規模企業
中小企業
大企業
0
3. 企業の売り上げ、リオ五輪関連で 0.9%、東京五輪関連では 40.9%が増加を見込む
栃木県内企業においてリオ五輪関連で自社の売り上げがどの程度変わると見込まれるか尋ねた
ところ、「増加」と回答した企業は 0.9%だった。他方、「変わらない」は 82.7%で、リオ五輪で
は 8 割強の企業が自社の売り上げに変化はないと捉えている。
また、東京五輪による影響では、「増加」が 40.9%と 4 割を超えたなか、
「減少」は 3.6%にと
どまった。また、
「変わらない」は 34.5%だった。東京五輪関連による企業の売り上げに与える影
響を試算すると、平均 2.25%増加すると見込んでいる。
東京五輪関連での売り上げ増加を見込む企業を業種別に見てみた。増加率の順位は、
「サービス」
が最も高い 3.60%であった。次いで「建設」の 3.00%、
「卸売」2.61%の順で続く。
「サービス」は間接的な恩
恵も含めて「プラスの影響がある」と答えた企業の比
業種別売上増加率
東京五輪
業 種
率が最も多かった業種でもあり、売上を取り込むイメ
ージが様々あるようだ。また、
「建設」については、地
域的な利点もあり、元請受注の獲得までは考えていな
いにしても協力業者としてニーズに対応していくとい
った形で売上獲得を期待しているようだ。県内企業は
リオ五輪が業績にプラスとなるイメージはあまり持っ
1
2
3
4
5
6
7
サービス
建設
卸売
製造
運輸・倉庫
不動産
小売
増加率
(%)
3.60
3.00
2.61
2.01
2.00
1.25
0.00
ていないが、東京五輪に関しては自社の業績を押し上
げる契機と考える企業も多く見られることがわかった。
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特別企画:リオおよび東京五輪に対する栃木県内企業の意識調査
■五輪関連による自社の売り上げへの影響
増加
リオ五輪 0.9%
東京五輪
変わらない
減少
82.7%
40.9%
分からない
0.9% 15.5%
34.5%
3.6% 20.9%
平均0.00%
平均2.25%増
注1:「増加」(「減少」)は、「10%以上増加(減少)」「5~9%増加(減少)」「1~4%増加(減少)」の合計
注2:母数は有効回答企業110社
4. 県内企業の 12.7%で、東京五輪に向けて期待する商品・サービスあり
自社において、リオ五輪に関連して既存の商品・サービスだけでなく、新しいものも含めて期
待する商品・サービスはあるか尋ねたところ、
「ある」と回答した企業は皆無であった。他方、
「な
い」は 80.9%となり、リオ五輪関連では自社商品・サービスにあまり期待していない様子がうか
がえる。
一方、東京五輪関連では、
「ある」が 12.7%となり、8 社に 1 社強が自社の既存あるいは新しい
商品・サービスについて、東京五輪に向けて期待していることが明らかとなった。ただし、企業
の 58.2%は「ない」と回答しており、約 6 割の企業は五輪需要を慎重に見ている事が分かった。
企業から具体的な内容として、「キャンプ地や練習場などの施設」(建設)や「モルタルや漆喰
などの建設資材」(製造)、「建築資材の部品」(製造)、「スポーツシューズに代わるタウンスニー
カー」(卸売)、「日光産そば粉を使った乾そばや菓子」(製造)、「スポーツマウスガードなどまだ
普及が不十分なスポーツ関連商品」
(卸売)、
「北関東という位置付けにあることから、東京を中心
とした荷動きが大幅に増加するので、その関連受注」(運輸・倉庫)、
「海外旅行者の観光ニーズ」
(サービス)など、五輪に関連した商品・サービスのさまざまなアイデアが企画、開発されてい
る。特に県内の基幹産業である建設関連業者からは、五輪で直接使用する設備だけでなく、海外
選手の来日の際、練習場やキャンプ地などを誘致することで、栃木県の位置的な利便性を強調で
きるとともに、施設建設などに多くの需要が見込めるという点に期待する声が多く聞かれた点は
特記しておく。ただし、残りの 87.3%の企業は、「ない」または「分からない」と回答しており、
東京で開催される世界最大のスポーツイベントであっても、自社の商品・サービスに結びつける
ことはむずかしく、ビジネスチャンスと認識していない企業が思いのほか多いと感じている。
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特別企画:リオおよび東京五輪に対する栃木県内企業の意識調査
■期待する商品・サービスの有無
ある
リオ五輪
ない
分か らない
80.9%
0.0%
東京五輪 12.7%
19.1%
58.2%
29.1%
注:母数は有効回答企業110社
まとめ
今回の意識調査において、栃木県内企業はリオ五輪については 31.8%、東京五輪については
64.5%の企業が「関心がある」と答えた。特に東京五輪に関する期待が大きく、自社の企業活動
に「プラスの影響がある」と回答した企業は 37.3%、自社の売上が「増加」するが 40.9%、さら
に、12.7%の企業が具体的に期待する商品・サービスが「ある」と答えている。
総体的には、県内企業における五輪の影響は現時点では限定的ということになるだろう。しか
し、景気後退ムードにはいっている日本経済においては、東京五輪は景気浮揚の大きな起爆剤と
なることは間違いない。自ずとそれに期待する意識が高まってくる事となろう。4 年後に向けたカ
ウントダウンが始まる今日、その準備段階から様々なビジネスチャンスが生まれてくるものと思
われる。これを「チャンス」と捉えて、新たな商品開発力やサービス提供力を駆使し、いかに業
績に結びつけていくか、県内企業の今後の躍進に期待したいものだ。
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(株)帝国データバンク
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哲也
FAX 028-633-5639
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