第8章 小売業者による製販統合

流通論A
第14回 7月15日
第8章 小売業者による製販統合
-小売主導の多頻度少量配送システム-
• 製販統合
商品の生産や物流における一連の活動を生
産者と商業者の間で連動させて、迅速で多頻
度少量の配送や統合的な生産・在庫管理によ
る効率化をめざすこと
• 小売業者のパワー
取引価格の引き下げだけでなく、物流・生産・
商品開発などの活動における統制に使われる
この章の主な問題
• 小売業者はパワーをどう使うか。
• なぜ他頻度少量配送が要求されるか。
• なぜ小売業者は製販統合をめざすのか。
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製販統合
①物流活動の調整(←受発注情報)
オンライン受発注、電子データ交換により、物流
処理の自動化・機械化(物流情報システム)
→小売業者は在庫費用圧縮、リスク削減、効率的
な品揃え形成がめざせる
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製販統合
• 情報を共有することで、迅速・多頻度少量の
商品流通の効率性を高める
調達計画
生産計画
物流計画
需要予測
販売・在庫データ
情報システム=情報共有化
受発注情報
②生産・在庫活動の連動(←需要情報)
小売業者の販売・在庫データをもとに生産者や
卸売業者は迅速・多頻度少量の生産配送計画
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調達
生産
物流
販売
原材料メーカー
完成品
部品メーカー
メーカー
消
費
者
卸売業者
小売業者
物流業者
119
在庫形成の延期化
流通の延期化現象
ある小売業者が今週の金曜日からの3日間の
• 在庫形成の延期化
現実には製販統合しなくても、流通の効率化は
可能。商品流通の環境が便利になったため、
小売業者への迅速・多頻度・少量ずつの配送
が可能に
特売のために商品を注文する(在庫形成の意思決定をする)
仕入先の業者がその注文の処理・配送に1週間かかっていた
⇒物流情報システム改善で2日に短縮できると,小売業者は
発注の意思決定を遅くすることができる(発注が5日間延期化)
2日前
納品日
1週間前
金
水
金
土
日
延期化
従来の
新しい
発注日
発注日
納品リードタイムの短縮
121
120
在庫形成の延期化
さらに,
週1回分の配送(1週間分の販売量)に相当する
水
木
金
土
日
ロットサイズしか扱えなかった
従
⇒物流情報システム改善で毎日の配送(1日分販売量)の
3日分の
3日分
発注日
の納品
来
小さなロットサイズが可能になると,同じ2日間のリード
金曜分の
タイムでも,これまで小売業者は3日間の特売用注文を
延
納品
発注日
期
土曜分の
すべて水曜日に発注しておかなければならなかったのが,
納品
化
発注日
2日目,3日目の分の注文は
日曜分の
納品
発注日
それぞれ1日ずつ発注の意思決定を遅くすることができる
122
123
延期-投機の原理
迅速な多頻度小口(少量)配送によって,
品切れが発生しそうになってから直前でも追加発注できる
生産活動(製品形態)を 時間的に
マーケティングフローの中のどの地点で行うか
小売業者の店頭在庫は削減される、
商品の鮮度を保てる、廃棄ロス削減される、
流通活動(在庫位置)
空間的に
マーケティングフローの中のどの地点で行うか
(←消費者需要の不確実化)
一方,供給業者側の情報処理費用,物流処理費用,
マーケティングフロー
販売・
消費段階
(実需情報の発生時点)
実需情報の発生時点)
生産段階
在庫費用は大きくなる
( ←情報技術革新)
生産・流通活動
投
機
化
全体の流通費用を最小化するような延期・投機の程度124
延
期
化
生産・流通活動
合計費用
延期:
生産・流通活動に投入される情報は「実需」に基づく
費用
供給業者側の
情報処理費用
物流処理費用,在庫費用
投機:
生産・流通活動に投入される情報は「事前の計画」に基づく
小売業者の在庫費用
投機
延期
長い
短い
配送リードタイム
少ない
多い
配送頻度
大きい
小さい
配送ロットサイズ
126
127
◎コンビニはいかなる小売業態よりも
「延期的」である
→ 競争優位の源
・
延期化のメリット
①
不確実性の減少:
生産・流通活動をより引き延ばすことから、より正確な実需に
基づくため、生産計画や発注行為の予測精度が高まる。
②在庫費用の軽減:
実需の発生まで生産決定を引き延ばせば(受注生産)、
在庫期間が短縮し(製品在庫はゼロとなり)、
在庫費用、在庫リスクが低下(ゼロ)する。
③物流の効率化:
生産決定を販売時点(店頭)まで場所的に引き延ばすと、
原材料のままという同質的で大ロットの物流となり、
物流費用が節約できる。製品化後の納期も短縮される。
④品質信頼性の確保:製品化を店頭まで引き延ばすと、
鮮度の高い商品を供給でき、
配送時の破損のリスクも減少する。
・
投機化のメリット
①
規模の経済:
事前の計画に基づいて生産できれば規模の経済
(大量生産による平均生産費用の低下)が大きくなる。
大ロットで在庫ができ、流通費用が節約される。
②
流通サービスの改善:事前に生産や在庫ができているので、
在庫切れがなく、納期が短縮できる。顧客の信用を獲得しやすい。
生産拠点
物流拠点 = 工場 倉庫 営業所 配送センター など
販売拠点
ネットワーク
物流拠点で在庫形成
総費用
流
通
費
用
在庫費用
物流拠点間のリンクが輸送
輸送費用
物流フローの意思決定
物流拠点の数,規模,位置,配列 の決定
(集中)少ない
物流拠点の数
多い(分散)