発表資料

時間がまいりました。
研究発表会 A-3 災害事例調査(1)をこれより始めます。
私は座長を務めます、アジア航測の天野篤です。
本セッションは4題の発表があり、ひとつの持ち時間は15分です。
一鈴が予鈴として10分、二鈴が12分で鳴ります。
二鈴が鳴ったときにはただちに発表を終えてください。
その後、会場と質疑応答を行います。
それでは、これから1時間、よろしくおつきあいください。
はじめに、天野の発表から入ります。
今年起こった二つの風水害事例から、災害情報に関わる教訓や課題を拾いまし
た。
2
今日は、予稿集に示したうち、防府市の土砂災害、佐用町の水害事例を取りあ
げます。
<click>
どちらもさまざまな課題がみられますが、ここでは時間の関係から、「場」に
関する防災情報に絞ります。
3
まず、7月に起きた山口の土砂災害です。
防府市真尾の特別養護老人ホーム「ライフケア高砂」は、21日12時半頃、土石流に直
撃され、入所者7名が犠牲となりました。
『12時15分頃特養の職員から「施設に水が入り危険な状態」と市に通報があった』と報
道されていますので、“前兆現象”も見られました。
<click>
また、県と地方気象台は、7時40分、8時10分、9時10分と、早くから「土砂災害警戒情
報」を出していました。
4
これは、災害直後に撮った航空写真と航空レーザー測量から判読した図です。
土石流は、白い線の範囲を、右から左方向へ駆け下り、谷の出口にある特養のまわり
で止まりました。
5
こちらは、「山口県土木防災情報システム」でWebに出ている「土砂災害危険箇所マッ
プ」です。
掲載情報は、「土砂災害警戒区域」「避難場所」「災害時要援護者関連施設」などです。
防府市一帯は
防府市
帯は、昨年3月25日に「土砂災害警戒区域」などが指定されていました。
昨年3月25日に「土砂災害警戒区域」などが指定されていました
6
先ほどの土石流の判読図と重ねてみました。
区域設定のほうがやや広めですが、山で起こる自然現象の予測としては、よくあって
いると思います。
<click>
つまり、土石流発生の切迫が予測された数時間後のタイミングに、前もって危険が想
定されていた場所で、災害が起こりました。
結果としてみれば、予知予測が成功したにもかかわらず、被害が未然に防げなかった、
という構図になります。
7
「土砂災害警戒区域」は、2001年に施行された「土砂災害防止法」に基づいて、都道府
県が設定します。
区域に指定されると、市町村は、ここに書かれている義務を生じます。
青い字に赤丸を付けています、
青い字に赤丸を付けています
2.「災害時要援護者関連施設利用者のための警戒避難体制」、
3.「土砂災害ハザードマップによる周知の徹底」が、
そのとき防府市ではなされていませんでした。
8
このように、せっかく法律に基づいて情報が作られていながら、「どんな自然災害に見
舞われる場所か」の周知ができていませんでした。
市は、県の資料をもとに、地域防災につながるようブレイクダウンした、身近な「豪
防
」
、
条
定
険
民
雨時総合防災マップ」を作り、立地条件から想定される災害の危険性を正しく住民に知
らせて、回避策を地域に根付かせることが求められます。
<click>
その際には、大雨に伴う、洪水、内水氾濫、土砂災害などの総合化、地域住民の主体
的参画による学習などが、あわせて望まれます。
また今後は、土地利用面で、危険なところへの立地抑制策に活かすことが重要となり
ます。
ます
9
これは当日の時系列の国土交通省解析雨量、気象庁土壌雨量指数の時空間分布状
況です。
今日は時間がありませんので、「時」に関する話題は省きます。
こちらも土砂災害発生予知に関する時系列の検討です。
この事例から、ひとことだけ言いますと、かつての気象庁の「重要変更!」(土壌雨量
指数の履歴順位に基づくスーパー警報)は優れていた、というのが結論です。
11
次に、兵庫県佐用町の水害事例に移ります。
8月9日(日)、夜9時頃、佐用町周辺は、台風9号の大雨による、同時多発的な洪水で再
度災害に見舞われました。
<click>
左の写真は、町役場がある佐用地区で、1.5m浸水しました。
高齢者が自宅で亡くなられたほか、職員参集中の車が水没したのもこの近くです。
<click>
中の2枚は、本郷地区にある町営幕山住宅の一帯です。
上の写真は上流で幕山川が溢れた地点から撮 ています
上の写真は上流で幕山川が溢れた地点から撮っています。
向かって右の町営住宅に住む9名が、指定された近くの小学校へ避難する途中、 用水
路で流され、犠牲になりました。
地域の自主防災活動をしていた公民館が目の前にあり、その頃、下の写真にある装
置から大雨への注意が呼びかけられていました。
<click>
右の2枚は、最も深い1.8mまで浸水した久崎地区の様子です。
全壊した建物が目立ちましたが、当日の犠牲者はありません。
今回の災害は、屋外、とくに自主避難の最中、多人数が犠牲になったのが特徴といえ
ます。
12
こちらは、その時の千種川水系の水位、浸水範囲をまとめた、県の資料です。
佐用町周辺で起きた急激な増水、超過洪水によりいたるところで起きたはん濫の実態
がわかります。
この水位情報はリアルタイムで見ることができ、佐用川の「避難判断水位」超過情報が
この水位情報はリアルタイムで見ることができ
佐用川の「避難判断水位」超過情報が
あったにもかかわらず、町の対応が後手に回ったと指摘されています。
(一部にエラーがあるが発災後)
13
佐用町のホームページには、水害と土砂災害の「防災マップ」が公開されています。
掲載情報は、「浸水想定区域」「土砂災害危険箇所」「避難場所および防災関係機関」
「災害時要援護者関連施設」です。
<click>
町営幕山住宅は、2005年に幕山川沿いの氾濫原の一角にある水田を造成して建てら
れました。
しかし、マップを見ても、幕山川沿いに「浸水想定区域」の表示はなく、少し離れた山の
斜面からの土砂災害の危険性だけが描かれています。
したがって、この「防災マップ」から水害の危険がある場所だということは、読み取るこ
とができませんでした。
14
マップには、すべてを網羅できていないという、一般的な注意書きが添えられていまし
た。
しかし、全域が同じ水準で作られていないという事実までは、住民にわかりません。
実際、今回の浸水実績と見比べてみると、赤い丸で囲んだところ、いずれも検討対象
実際
今回の浸水実績と見比べてみると 赤い丸で囲んだところ いずれも検討対象
外のエリアで、ひどい被害が出ています。
つまり、新しく引っ越してきた住民には、佐用川などの本川筋に比べて水害の心配は
少ない所、はからずもそういうメタ・メッセージとなってしまっていたのです。
15
千種川流域には、県の発行した「地形分類図」があります。
赤丸のところは、どこも緑色、氾濫原、谷底平野と示されていて、潜在的な危険性を知
ることができました。
しかし、専門家や、興味のある人にしか、この資料は目にとまらないでしょうから、利用
しかし
専門家や 興味のある人にしか この資料は目にとまらないでしょうから 利用
者のため、もう少し注意を払ったハザードマップ作りに心がけねばなりません。
16
これも時系列の検討なので、今日は飛ばします。
ポイントは、19時50分の「避難判断水位」超過、遅くとも20時10分の「土砂災害警戒情
報」のタイミングでしょう。
17
最後、まとめます。
防府市の例では、県の「土砂災害警戒区域」の指定が、地域に根付いていませんでし
た。
「土砂災害防止法」は先進的な法律ですが、思うように運用が進まず、なかなか実効
「土砂災害防止法」は先進的な法律ですが
思うように運用が進まず なかなか実効
があがりません。
例えば、「土砂災害警戒情報」ともども、箇所が多い、対象範囲が広い、空振りが多い
などの点もネックなのかもしれません。
技術上の限界にも依存しますので、真摯に受け止め、将来に向け、改善に取り組んで
いきたいと考えています。
佐用町の方は、豪雨時の総合的なハザードマップを作って公開していました。
しかし、県が主な河川について計算した浸水想定区域を、そのまま町全域の「防災マッ
プ」に移しこんだ結果、幕山川のような検討対象外のところでは、はからずも裏返しの
安全情報、メタ・メッセージとなっていたわけです。
以上のように、「場」の危険性を知らせる情報ひとつとっても、いざ起きてみないとわか
らないボトルネックは 大小さまざま潜んでいます
らないボトルネックは、大小さまざま潜んでいます。
さらに、ここで触れませんでしたが、豪雨災害で重要となる、「時」の危険性を告げる情
報についても、多くの課題が見出されています。
われわれは、稀にしか起こらない災害事例から謙虚に学んで、情報防災の改善を、ひ
とつひとつ積み重ねていかなければなりません。
そのような思いを新たにした、今年の二つの豪雨災害でした。
そのような思
を新たにした、今年の
の豪雨災害でした。
以上で発表を終わります。
ご静聴、どうも有難うございました。
18
それでは、会場の皆さん、質問やコメントなどありましたら、挙手をお願いします。
最初に、所属とお名前をおっしゃってください。
(1名やりとり)
時間がまいりましたので 次の発表 移ります
時間がまいりましたので、次の発表へ移ります。
有難うございました。
19