インド2016年破産法が成立

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Asia & Oceania
July 22, 2016
Ⅰ.シンガポール就労ビザ発給規制の動向
Rajah & Tann Singapore LLP
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有馬 潤
Ⅱ.インド 2016 年破産法が成立~迅速な手続に期待~
松田綜合法律事務所
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弁護士 久保 達弘
Ⅲ.各国トピックス
【インドネシア】租税特赦制度 7 月 18 日より開始
【インドネシア】マルチビザの有効期限を 5 年に延長
【マレーシア】中銀、政策金利を 3%に引き下げ
【マレーシア】7 月 1 日より最低賃金引き上げ
Ⅳ.自動車業界レビュー(インドネシア、インド)
【インドネシア】2016 年 6 月の販売は 3 カ月連続の前年超え、5 月の完成車輸出は
今年初の前月比マイナス
【インド】6 月の乗用車販売は 12 カ月連続の前年超え、前月比では 3 カ月連続のマイナス
・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。
本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実
行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。
・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。
・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあり
ません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、その他
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について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。
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Ⅰ.シンガポール就労ビザ発給規制の動向
シンガポール政府は 2016 年に入り外国人労働者の受け入れについて、ますます厳しい方針を打ち出して
います。特に、2016 年 4 月にシンガポール人材開発省(Ministry of Manpower:MOM)が、就労ビザ発給
制限措置の対象とされている企業の存在を公表したことは、地元紙でも大きく報道され、就労ビザ発給申請
を検討する企業の関心は、ますます高まっています。本稿では、近時のシンガポール政府による外国人労働
者受け入れ規制の影響や留意点について解説します。
1. Singaporean Core
シンガポール政府は、シンガポール国民を中心とする労働力基盤「Singaporean Core in the Workforce」
を目指し、将来的には国内総労働力の 3 分の 2 がシンガポール国民(および永住権保持者)により構成され
ることを目標に掲げています。この目標に向かって、MOM はシンガポール国民向けのキャリア・サポート・
プログラム(CSP)を強化するほか、シンガポール国民の雇用に係る政府補助金の支給期間延長などの対策
を講じています。
これに先立つ 2015 年 7 月には、外資系企業の駐在員の多くに発給されている Employment Pass(EP)の
取得申請に関し、発給審査において申請者の「Quality」、すなわち知識と経験をより重視すると MOM は発
表しています。これは、外国人労働者を採用する場合に、学歴などで同条件のシンガポール国民に勝る知識
と経験を有していることを EP 発給の条件とすることで、企業に対してシンガポール国民の採用を促す狙い
がありました。
さらに MOM は、同業他社と比べて、従業員構成に占めるシンガポール国民の割合が低い「 Weak
Singaporean Core」とされた企業に対して 、(1)シンガポール国民と外国人労働者の採用を平等な基準で
行っているか、
(2)従来から在籍するシンガポール国民労働者の育成に積極的に取り組んでいるかなど、説
明資料の提出を求めることも発表しました。
2. Warning Letter
2016 年 3 月に MOM は、Tripartite Alliance for Fair and Progressive Employment Practices(TAFEP)1
に寄せられた苦情 1,400 件のうち、70%が国籍に関連する問題(Nationality-related)であったと発表しまし
た。MOM は、採用時や人事面でシンガポール国民が企業から不平等な扱いを受けたとされるケースにおい
ては、具体的な例示を開示しなかったものの、企業に対して警告書(Warning Letter)を発行し、将来的に
就労ビザの発給を受けられない措置を取ることを示唆しました。
3. Triple Weak
また、2016 年 4 月に MOM は企業に対して、求人を行ったにもかかわらずシンガポール国民を採用せず、
外国人労働者を採用した理由を明確にすることができない場合や、シンガポール国民の育成に積極的に取り
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1
TAFEP とは、全国雇用者連盟(Singapore National Employers Federation:SNEF)、全国労働組合会議(National Trades Union
Congress:NTUC)
、MOM、その他一般企業、組合などの各機関代表者で構成された、公正な雇用促進を目指すアライアンス
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組んでいく計画を具体的に示せない場合、EP 発給申請時に、より厳しい審査を行うと発表しました。
具体的には、EP のスポンサーとなる企業に関する以下の三つの要素を挙げ、EP 発給審査の重要な考慮要
素であることを発表しています。
(1)全従業員に占めるシンガポール国民(および永住権保持者)の割合
(2)シンガポール国民(および永住権保持者)の割合が低い場合、将来的にシンガポール国民中心の
「Singaporean Core」となるような人事面での企業努力(育成、強化)
(3)シンガポールへの経済・社会的貢献度
また、これら三つ全ての考慮要素において「Weak(弱い)」と判断された企業については、既存の EP 保
持者の更新時や、新規 EP 取得申請に影響を及ぼすとも公表しています。これに対し、上記三つの要素が
「Strong(強い)
」とされる企業については、シンガポール国民の育成という観点から、知識やノウハウを
持つ外国人労働者の EP 取得が容易になると予測されています。
さらに TAFEP は、月給が 3,300S ドル以上の従業員の半数以上が、外国人労働者で占められている企業に
対して、その採用動向に注視しています。現在、そういった企業約 100 社が、TAFEP の調査対象となって
います。
4. Managing Excess Manpower
2016 年 5 月 24 日に MOM は、整理解雇に当たってのガイドライン「Tripartite Guidelines on Managing
Excess Manpower and Responsible Retrenchment」2 を改訂したと発表しました。そこでは企業に対し、
Strong Singaporean Core の維持を長期的な視野に入れることを強く推奨しています。
また、MOM の発表によると、人事面での偏った対応(例えば、シンガポール国民を中心にした整理解雇
や、外国人労働者との入れ替えによるシンガポール国民の整理解雇など)が行われたとの苦情を受けた場合
は、調査を行うとしています。そして、それらが証明された場合、同企業に対して、就労ビザ発給申請を行
う権利を剝奪する可能性があるとしています。この点については、今回の改訂で新しく導入された内容とし
て、地元紙でも報道され、注目を集めています。
シンガポール政府は、シンガポールに進出した外資系企業についても、上記方針に基づいて厳しい監視の
目を光らせています。このように、景気がやや減退する中、シンガポール政府は、人材の採用のみならず、
育成や解雇に至るまで、シンガポール国民を優遇する政策を継続し、特に EP 発給申請に関しては、申請者
および企業の双方に対して、これまで以上に厳しい審査基準で臨むとしています。シンガポールで事業を運
営する外資系企業はその推移に注目する必要があるでしょう。
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SNEF、NTUC、MOM の政労使 3 者による整理解雇に係るガイドライン
記事提供:Rajah & Tann Singapore LLP 有馬 潤
(2016 年 5 月 27 日作成)
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Ⅱ.インド 2016 年破産法が成立~迅速な手続に期待~
インドの新しい破産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)が成立しました。
この法律は、2015 年 12 月 21 日に法案として議会に提出された後、2016 年 5 月 5 日に下院(Lok Sabha)、
同月 11 日に上院(Rajya Sabha)をそれぞれ通過し、同月 28 日に大統領承認を得て法律として成立してい
ます。あとは、今後の官報通知で施行日が発表されるのを待つのみ、となっています。
1.従来の法制と新法の影響
インドにおける破産に関する手続に関しては、これまで体系立った包括的な法律がなく、法整備が遅れて
いました。
倒産や破産、清算といった撤退時の手続が不透明であったり煩雑であったりすることは、新規投資を委縮
させる効果もあります。例えば、世界銀行が発表している世界各国のビジネス環境ランキングにも破産処理
に関する項目がありますが、2016 年度の評価で、インドは破産処理の項目で 189 ヶ国中 136 位、全体で 130
位と大変低い評価を受けていました。このレポートによると、インドの破産処理にかかる平均手続期間は 4.3
年とされています。例えば、米国は平均手続期間が 1.5 年でランキングは 5 位、日本は平均手続期間が 6 ヶ
月でランキングは 2 位と評価されていることと比べると、インドの破産処理がいかに長いかがわかります。
今回の新法制定は、破産処理手続を円滑にすることを通じてインドの投資環境を改善し、国内外の投資を
活性化しようとするもので、まさに現行政権が目指している方向性に沿った動きといえます。
特に日系企業の関心が高い会社の破産・清算に関しては、従来、製造業について適用される 1985 年「Sick
Industrial Companies Act」
(SIC 法)という法律がありました。この SIC 法では、累損額が一定規模以上に
なった場合には届出が義務付けられ、累損解消に向けた報告や、是正措置、ひどい場合には清算を命じられ
る場合がありました。インドに進出する日系企業には製造業が多く、また進出初期の何年かは損失を計上す
る場合が多いため、この法律への対応は悩みの種の 1 つでした。
この SIC 法を廃止する法律は 2003 年に成立していたものの施行されないままとなっており、その後、2013
年会社法が SIC 法を統合するとも言われていましたが、それも行われないばかりか、会社法の清算に関する
条項は未施行のまま、今日まで放置されていました。今回、新法は 2013 年会社法の清算に関する条項も変
更し、会社の破産と清算に関する手続を整理統合しています。これは、インド事業の予見可能性を高めたも
のとして、高く評価できます。
2.新法下での会社破産・清算手続の概要
(1)破産法の構成
破産法は、全 255 条からなり、以下のように構成されています。

第 1 編:序章(総則)
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
第 2 編:会社(と有限責任組合)の破産・清算

第 3 編:個人と無限責任組合の破産手続

第 4 編:破産管財人、管轄当局、情報取扱事業者

第 5 編:雑則
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新法が適用されるのは原則としてあらゆる主体の破産であり、これには、個人、組合および会社の全てが
含まれます。
(ただ、金融機関については明文で排除されており、別の制度が作られる見込みです。
)
ここでは、特に日系企業の皆様の関心が高い、会社に関する手続についてご紹介します。会社に関する手
続は、第 2 編で定められています。
(2)会社の破産手続
まず、会社の破産手続が問題となるのは、債務者である会社が「10 万ルピー以上で中央政府が定める最低
額」以上の債務について支払不能に陥った場合です。この場合の申立権者は、債権者と会社自身です。
なお、申立債権者は、ローン等の金融取引による債権の債権者である「金融債権者(Financial Creditor)」
と、商品・サービスの取引による債権の債権者や法定の債権を有する中央・州・地方政府などの「事業債権
者(Operational Creditor)
」に区別されています。
前者は下記①の支払不能の際に直ちに破産の申立てを行うことができますが、後者はまず債務者に対して
支払催告を行う必要がある点で取扱いが異なります。事業債権者は、この支払催告に対して、債務者が 10
日以内に支払いを行わなかったか、あるいは請求に対して争うことを選んだ場合に初めて、破産の申立てを
行うことができます。
新法の最大の特徴は、破産手続を迅速に進めるために、申立て後の各手続に時間制限が課せられている点
です。手続の流れは以下のとおりです。
項目
①
時間軸
会社が最低 10 万ルピー(※中央政府はこの最低金額を 1,000 万ルピー
まで引き上げられる)の債権について支払不能に陥る。
(※前述のとお
り、申立債権者が事業債権者の場合はこの後支払催告の手続が必要。
)
②
会社法審判所(National Company Law Tribunal)に対し、債権者又
は債務者が破産手続開始の申立てを行う。
③
会社法審判所が支払不能の事実を確認し、申立受理の有無を決定する。 上記②から 14 日以内
(申立書に不備がある場合は更正手続に。
)
申立受理日をもって破産手続が開始される。
会社法審判所は、手続開始の公告を行い、訴訟・会社財産の処分・担
保の実行などの各種手続の停止(Moratorium)を宣言する。
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④
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会社法審判所が暫定的(interim)破産管財人を選任する。(※原則と
上記③から 14 日以内
して申立人が提案した候補者が選任される。
)
暫定的破産管財人の選任により取締役会の機能は停止され、管財人は、
会社経営、財産管理・保全およびこれらに関する情報収集等を行う。
暫定的破産管財人の任期は 30 日以内。
⑤
上記④から 30 日以内
暫定的破産管財人が債権者集会を組成する。
(※暫定的破産管財人が任
期中に行うべき事項である
ため。
)
⑥
第一回債権者集会が開催され、破産管財人が確定される。
上記⑤から 7 日以内
(※暫定的破産管財人をそのまま選任することも、他の者に交代させ
ることも可能。その後も債権者集会の決議で破産管財人を交代させる
ことができる。
)
(※債権者集会の決議には 75%の同意が必要。)
⑦
破産管財人が目論見書を作成し、これに基づいて再建計画が作成され、
債権者集会の承認を受ける。
⑧
債権者集会が承認した再建計画が会社法審判所に提出される。
(※上級 上記③から 180 日以内(延長
審判所への不服申立手続あり。
)
された場合は最長 270 日以

承認された場合、手続停止(moratorium)宣言は失効。
内)

承認されなかった場合、清算手続に進む。
※今後中央政府が定める一
いずれにせよ、破産手続が完了する。
定の小規模手続の場合は「簡
※この他、再建計画が期間内に提出されなかった場合、破産手続中に
易会社破産手続」が利用で
債権者集会で清算の決定がなされた場合、再建計画に違反した場合等
き、この場合は原則 90 日・
も清算手続に進む。
最長 135 日で手続が完了。
表中の⑧のとおり、原則として、申立受理から 180 日以内に再建計画の承認か清算かが決定して破産手続
を完了しなければなりませんが、この例外として、債権者集会の 75%の賛成と会社法審判所の許可を得てさ
らに上限 90 日間この期間を延長することができます。これを踏まえても、最長 270 日以内に破産手続を完
了しなければなりません。これが実現されれば、現在の平均 4.3 年とは比べ物にならない迅速さで手続が進
むことが期待されます。
(※ただし、会社清算手続には時間制限が特に設けられていませんので、利害関係や財産構成が複雑な案
件の場合は清算手続に入ってから時間がかかる可能性は残ります。)
(3)会社の清算手続
一定の場合には、会社の破産手続に続いて会社の清算手続が始まります。新法は、残余財産の配分におけ
る優先順位を定めています。
① 破産・清算の手続費用
② 清算手続開始前 24 ヶ月の間に弁済期が到来した労働者(ワークマン 1)に対する債務、新法 52 条に
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従って担保権を放棄した担保付き債権
③ 清算手続開始前 12 ヶ月の間に弁済期が到来した労働者(ワークマン以外)に対する債務
④ 無担保の金融債務
⑤ 清算手続開始前 2 年の間に弁済期が到来した中央政府・州政府に対する債務、担保権を実行した担保
権付き債権者に対する残債務
⑥ その他の債務
⑦ 優先株主への残余財産の分配
⑧ 普通株主への残余財産の分配
会社清算には、この他に、支払不能とは関係ない自主清算による場合もありますが、その場合の手続は会
社法に定められています。この会社法の自主清算の手続も新法により修正されました。
1 インドの労働法は、労働者をワークマンとノンワークマンに区分し、前者を手厚く保護しています。実際の区別は細かい
定義を確認して頂く必要がありますが、大まかにいえば、相対的に安い賃金の労働者がワークマン、相対的に高い賃金で
管理監督的業務を行うスタッフがノンワークマンとなります。
3.今後の動向について
新法は、以下の4種類の組織を、破産手続を支えるインフラ機関として設置することを予定しています。
これらの機関がうまく機能してはじめて、迅速な手続が可能となります。
① 破産手続を担当する破産専門家(破産管財人)制度
② 債権債務の条件や履行条項に関する情報を集約するデータベースと情報取扱事業者
③ 会社や有限責任組合に関する破産手続を管轄する会社法審判所と、個人や無限責任組合に関する破産
手続を管轄する債権回収審判所(Debt Recovery Tribunal)
④ 上記①②の管轄当局としての破産委員会(Insolvency and Bankruptcy Board)
上記のうち会社法審判所は早速 6 月 1 日に設置されましたが、その他の組織の設置にはまだ暫くの時間が
必要と予想されます。現地からの情報では、2016 年度中には新法を施行する方向で準備が進められているよ
うです。新法は破産手続を迅速化するものとして大いに期待されますが、新法を支える体制が整い、施行さ
れて実務が落ち着くまで、引き続き動向を見守る必要があります。
記事提供:松田綜合法律事務所 弁護士 久保 達弘
松田綜合法律事務所:日系企業のインドを含む海外にむけた単独・合弁・M&A による進出や
現地で直面する法律問題をサポート
(2016 年 7 月 19 日作成)
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Ⅲ.各国トピックス
【インドネシア】租税特赦制度 7 月 18 日より開始
インドネシアではタックス・アムネスティ(租税特赦)制度が 7 月 18 日よりスタートした。タックス・
アムネスティは納税対象となる資産や所得を正しく申告していなかった納税者が自主的に開示・申告を行っ
た場合に、これに本来ならば課される加算税等を減免したり刑事告発を免除したりする制度。
同国のタックス・アムネスティ法は 9 ヵ月の時限立法となっており、同国財務省財政政策庁のナザラ長官
は同制度により最大で 165 兆ルピアの税収増が見込めるとしている。一方で同国中銀は同制度の効果で見込
まれる海外からの資金流入が急激なルピア高を引き起こさないよう対策を講じる方針を示している。
【インドネシア】マルチビザの有効期限を 5 年に延長
インドネシア内閣官房は 6 月 27 日付けの政令「2016 年第 26 号」で外国人の数次ビザ(マルチビザ)の有
効期限を従来の 1 年から 5 年に延長することなどを定めたと発表した。これにより、ビジネスなどでインド
ネシアを訪問する際の利便性の向上が見込まれる。
数次ビザは有効期限内に複数回の入国が可能なビザで、1 回あたりの滞在日数は 60 日以内となっており、
発効日から 90 日以内に入国しなければ失効となる。
すでに発給済みで有効期限内の数次ビザや申請手続き中で今後発給される数次ビザも対象となっている。
アジアでは 6 月に在日インド大使館も、日本人に対する長期ビジネスビザの有効期限をこれまでの 1 年か
ら「最長 10 年」に延長している。
関連レポートリンク:6 月 18 日「インド:日本人の長期ビジネスビザ有効期限を最大 10 年に延長」
http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20160617.pdf
【マレーシア】中銀、政策金利を 3%に引き下げ
マレーシア中央銀行は 7 月 13 日に行われた金融政策委員会で翌日物政策金利(OPR)を従来の 3.25%か
ら 0.25 ポイント引き下げて、3.00%にすると発表した。OPR の引き下げは 2009 年 2 月以来 7 年 5 ヵ月ぶり
となる。また、インフレ率の予測も従来の 2.5~3.5%から 2.0%~3.0%に引き下げた。
中銀は内需に関しては堅調に伸びているものの、外需は貿易相手国の景気低迷などに伴い減速傾向にあり、
世界経済の不透明な状況が国内経済の成長に影響を及ぼす可能性があるとして今回の利下げに踏み切った
としている。
【マレーシア】7 月 1 日より最低賃金引き上げ
マレーシアでは 7 月 1 日より民間企業の月額最低賃金が引き上げられた。マレー半島部で従来の月額 900
リンギット(約 2 万 2,500 円)から 1,000 リンギット、東マレーシア、ラブアンで同 800 リンギットから 920
リンギットに引き上げられた。2013 年 1 月に最低賃金制度を導入して以降、今回が初めての引き上げ。
企業からは景気の低迷などを理由に延期を求める声も多かったが、リオット人的資源相は「景気は決して
悪くない」として予定通り行うと強調した。また、ナシブ首相は「今回の引き上げは国民の福祉と利益を重
視していることの表れだ」と述べている。
(各国トピックスの出所)各国政府・業界団体発表、各種報道
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Ⅳ.自動車業界レビュー(インドネシア、インド)
「インドネシア」
、
「インド」の自動車業界の動向を記載します。
【インドネシア】
2016 年 6 月の販売は 3 カ月連続の前年超え、5 月の完成車輸出は今年初の前月比マイナス
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・インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)がまとめた 6 月の自動車販売台数(出荷ベース、速報
値)は前年比+11.3%、前月比+3.3%の 9 万 1,471 台と 3 カ月連続の前年超え、2 カ月連続の前月比プラス
となった。レバラン前の業界各社の新モデル投入に伴う販売増加が継続したと見られているが、7 月に
ついては、レバラン休業や 5 月、6 月の販売増加の反動から、販売台数の減少が見込まれている。
・同協会(GAIKINDO)がまとめた 5 月の完成車(CBU)輸出台数は前年比▲5.1%、前月比▲6.6%の 1 万
7,796 台と前年割れ継続、今年初めての前月割れとなった。GAIKINDO では「前月割れは、日系メーカー
での多目的車(MPV)およびスポーツタイプ多目的車(SUV)のモデルチェンジに伴う一時的な輸出停止
によるもの。今後も輸出増加が見込める」とし、
“世界経済安定の兆し”を理由に、2016 年通年の完成車
(CBU)の輸出台数の目標を年間 20 万台→22 万台へ上方修正した。
・ジャカルタ特別州政府が交通渋滞解消を目的に導入を公表していた「車両のナンバープレート番号による
通行規制」について、試験導入期間を 7 月 27 日~8 月 26 日の 1 カ月間とすることを決定した。7 月 27 日
より、平日の 7 時~10 時、16 時~20 時の間、奇数日には奇数番号車両、偶数日には偶数番号車両のみ通
行できることになる。公用車・緊急車両・許可を受けた輸送車両は対象外。対象エリアは旧「3 in 1 規制」
(5 月 16 日に廃止されたジャカルタ中心部への車両乗り入れ規制)および道路料金自動徴収システム
(ERP)
対象のラスナ・サイド通りで、当該試験期間を経た後、8 月 30 日より正式導入の予定。
・ジャカルタ特別州政府は、自動車・二輪車の車両名義変更税(BBN-KB)引き上げを主な目的とする自動
車税条例“2015 年第 2 号”の改定に着手した。首都圏の車両増加に歯止めをかけるため、現行税率 10%
を平均 15%、最大 20%まで引き上げるもの。州税務局が改正条例案を作成し、行政会議に提出される予
定だが、各業界団体は「販売に甚大な影響が出る」として、強い懸念、反対の意向を示している。
・政府は「現在 10%~25%に設定されている自動車ローンの頭金比率を引き下げる」規制緩和の方針を表明
した。不良債権比率の低い優良なローン会社を対象とするもので、今後、金融監督庁(OJK)と業界側が
協議に入る予定。対象が優良なローン会社に限定されるため、効果は限定的となる可能性があるが、自動
車・二輪車販売へのプラス寄与が期待されている。
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【インド】
6 月の乗用車販売は 12 カ月連続の前年超え、前月比では 3 カ月連続のマイナス
・インド自動車工業会(SIAM)公表の 6 月の乗用車(ユーティリティー・ビークル、バンを含む)販売台
数は前年比+2.7%、前月比▲3.5%の 22 万 3,454 台と 12 カ月連続の前年超え。一方、前月比では 3 カ月連
続マイナスとなった。一般乗用車は前年比▲5.2%の 15 万 4,237 台と 2 カ月連続のマイナス。また、バン
も同▲2.2%の 1 万 3,392 台と振るわなかった。一方、スポーツタイプ多目的車(SUV)は同+35.2%の 5
万 5,825 台と前月(同+35.9%)に続き、大幅な増加となり、全体を牽引した。
・特に小型 SUV 車が好調で、各社の新モデル投入効果が続いている。SIAM は今後の販売見込みについて、
「モンスーン期の降雨量が好調に推移し農業部門の所得増加が見込まれることや、“第 7 次公務員給与の
引き上げ”効果により、暫くは需要の回復が見込める」としている。
・同工業会(SIAM)がまとめた 6 月の自動車(二輪・三輪車を含む)輸出台数は前年比▲10.7%の 28 万 2,533
台となった。従来より SIAM は、今後の輸出見通しについて、資源価格下落の影響によるア
フリカや中南米向け輸出の減少等の状況を踏まえ、
「輸出先の産業構造に変化が無い限り、短期的な回復
は見込めない」と、悲観的な見解を示している。
・政府は、自動車業界に対するリコール(回収・無償修理)規定を制定し、2016 年 10 月 1 日より導入する
意向を示した。
「道路交通安全法案」にリコール規定を盛り込み、次期国会に提出する予定。導入後は、
政府によるリコール命令の発令が可能になると共に、リコール命令に従わなかった際の罰則(罰金)規定
も織り込まれるとされているが、現状、詳細は不明。
・最高裁判所により規制の継続が決定され、現在も禁止されている、デリー首都圏(NCR)での排気量 2,000cc
以上のディーゼル車新車登録について、自動車業界での雇用確保を事由に、政府は最高裁に対し規制の緩
和を要請した。また、規制緩和の代替案として最高裁が導入を検討している“環境税”についても難色を
示している。政府側では、当該規制の代替案として、現行の排気ガス基準未達の車両を廃棄処分した際、
補助金を支給することを検討している。
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・インド道路交通・高速道路省(MORTH)は、2005 年 3 月末以前に購入した自動車の買い替えを資金的に
支援することを骨子とする新たな政策“自発的自動車近代化計画(V-VMP)”の草案を策定した。環境対
策と税収拡大、経済対策がその目的で、廃車時の買取価格の一部割り当てと自動車メーカーによる新車販
売価格の特別割引、更には新車購入時の“物品税”の一部免除が主なもの。今後、財務省による詳細の詰
め、承認がなされた後、閣議で導入の検討がされる予定。
(自動車業界レビューの出所)各国政府・業界団体発表、各種報道
(編集・発行) 三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部
(照会先)高垣 恭 小澤 文月 北村 広明
(e-mail): [email protected]
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