第4回 大気の環境

第4回 大気の環境
4.1 公害と規制の歴史
・典型7公害(1950∼1970年代)
大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・悪臭・地盤沈下
・・・これらの多くは1980年代には沈静化
法律の制定(公害対策基本法(1967),大気汚染防止法,
水質汚濁防止法,環境基本法(1993)など)
・現代(1980年代∼)の公害
ゴミ,環境ホルモン,酸性雨,フロン,二酸化炭素(地球温暖
化)など
・・・より広域な地球規模の環境問題へと変化している
4.2 大気汚染の原因物質
発生源(量,106トン/年,世界)
硫黄酸化物
火山(45),工場・化石燃料(150)
窒素酸化物
工場・自動車(60),土壌細菌(500)
一酸化炭素
自動車(120),山火事(80)
炭化水素(メタン等) 水田・湖沼(480),自動車(ガソリン,90)
オキシダント
自動車(?)
(光化学反応産物)
硫化水素
火山(100),工場(3)
煤塵(ばいじん)
火山(2000(?)),自動車(?)
有機溶剤,フロン
?
4.2.1 硫黄酸化物(SOx(SO2, SO3))
化石燃料中に含まれる硫黄分が燃焼して生成
→脱硫により大気中の平均SO2濃度(0.002 ppm(平成25年))は
1960年代の1/10以下に減少(環境・循環型社会・生物多様性白書,
H27年)
酸性雨の原因
4.2.2 窒素酸化物(NOx(NO2, NO,N2Oなど)
大気中濃度は最近20年間ほぼ横ばいかやや減少傾向
(0.010∼0.020 ppm(平成25年))
Fuel-NOx・・・化石燃料そのものに含まれる窒素分が燃焼
Thermal-NOx・・・空気中の窒素が燃焼熱により酸化される
酸性雨,オキシダント,およびSPMの原因
4.2.3 一酸化炭素(CO)
ディーゼル自動車が主原因
大気中濃度は0.3∼ 0.4 ppm(平成25年)で近年は横ばい
血液中のヘモグロビンと結合して酸素運搬機能を阻害
温室効果のあるメタンの寿命を長くする
4.2.4 炭化水素(メタン,ベンゼン)
メタン・・・温室効果ガス ベンゼン・・・発がん性
不飽和炭化水素はNOxとともに光化学反応により
PAN(硝酸ペルオキシアセチル)を生成
4.2.5 光化学オキシダント
光化学型スモッグの原因(smog = smoke + fog)
発生機構・・・NOx,不飽和炭化水素(VOC, Volatile Organic
Compounds, 揮発性有機化合物)の光反応
オゾン(O3)が関与(?)
例) PAN(peroxyacetyl nitrate,硝酸ペルオキシアセチル)
環境基準の達成率は極めて低い(平成24年で達成率0.3%以下)
4.2.6 浮遊粒子状物質
大気中の固形物・・・
粉塵・煤塵(10 µm以上)と浮遊粒子状物質(10 µm未満,SPM
(Suspended Particulate Matter ))に分けられる。
大気中0.020-0.022 mg/m3、環境基準達成率97.3-94.7%(平成25年)
→ ゆるやかな改善傾向
SPMの例: 火山塵,黄砂 → PM-2.5(2.5µm以下の微粒子)が特に危険
4.2.7 微小粒子状物質(PM-2.5)
煤煙,ディーゼル排気ガス(発がん性)が最も深刻
平成21年に環境基準が制定された。
大気中15.3-16.0 µg/m3、環境基準達成率13.3-16.1%(平成25年)
→ 年々着実に悪化している。 4.3 大気の環境基準
環境基準とは(環境基本法)
人間の健康を保護するうえで維持されることが望ましい基準
①大気の汚染、②騒音、③公共用水域の水質汚濁、④地下水の水質
汚濁、⑤土壌の汚染、⑥ダイオキシン類について定められている
大気汚染防止法に関わる環境基準(11物質)
二酸化硫黄,浮遊粒子状物質,二酸化窒素,光化学オキシダント,
一酸化炭素,ベンゼン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,
ジクロロメタン,ダイオキシン類,微小粒子状物質(PM-2.5)
(ダイオキシン類はダイオキシン類対策特別措置法)
有害大気汚染物質(248物質),優先取り組み物質(23物質)
を制定(1996年)
現在では、一部の物質を除いて環境基準ははほぼ満たされている
4.4 大気汚染防止対策
1) 国民の意識改革
エネルギーの無駄遣いや贅沢の抑制,環境意識の変革
2) 環境政策の徹底
国または自治体による規制(法律,条例,税制など)
3) 技術的対策
燃料の低公害化,燃焼改善法,排煙からの汚染物質の除
去,エンジンの改良(ハイブリッドカー,電気自動車),
交通規制