JANSPORT

JANSPORT
SINCE1967~
ヒッピーカルチャーに
大きな影響を与えた
ビート・ジェネレーションの名著
﹁路上﹂で描かれる〝放浪〟の
価値観は、
カウンターカルチャーの
成立に欠かせない思想となった。
その影響力が世界中に及んだことは
いうまでもない。
著者のジャック・ケルアックと
友人のニール・キャシディを
モデルにした二人の登場人物が
1940年代∼1950年代の
アメリカを放浪し、
まだまだ保守的な価値観が
支配していた時代において、
若者を中心に大きな思想的変化を
呼び起こしたのである。
以降の時代で、
世界中を旅することは
就業前の若者の特権となった。
つまり、
現代で言うところの
バックパッカーの源流は
一冊の小説から始まったわけだ。
そして、
そんなバックパッカーの
語源となった背中のパックにも
知る人ぞ知る源流がある。
アウトドアの世界では
伝説的人物として知られる
スキップ・ヨーウェルを中心とした
﹃ジャンスポーツ﹄が生み出した
アルミフレームを採用したバッグが
そのひとつであり、
同時にあのデイパックも
このブランドから誕生していることを、
読者諸兄はご存知だったろうか?
6
7
80年代、
ジャンスポーツはキャンパスで
学生が教科書を持ち歩いたり、
一日分のアウトドアギアを詰め込んで
出かけたりするのに便利な
「デイパック」
と
呼ばれるコンバーチブル仕様の小型バッグを
開発して大ヒットさせた。
これが
「デイパック」
の始まりである。
VOL.46
mono
●[ジャンスポーツ]
Photo / Tomoaki Tsuruda
(WPP)
JanSport
Text / Teruhiko Doi
(WPP)
mono
“人間工学”
という言葉がまだ一般的では
なかった時代、
ジャンスポーツは
身体のラインに沿った
曲線的なアルミフレームの開発に成功した。
それはアジャスタブルアルミフレーム
と呼ばれ、
以降のアウトドアバックにおいて
定番のシステムとなった。
1980年代の半ばくらいからだろうか、
アウトドア用品のハイテク化が進んだのは。
アメリカは宇宙開発や軍事用品の研究で
常に世界をリードしており、その技術は
間を置かずに民間へとスピンオフされる。
素材とデザインの急激な進化はそれで
歓迎すべきものではあるのだが、
一方では、アウトドアが本来持つべき
精神性、たとえばコリン・フレッチャーが
提言した﹁クワイエット・スポーツ﹂のような
考え方が忘れられていくのは寂しい限りだ。
ジャンスポーツのライトパックシリーズは
そんなアメリカのアウトドアシーンが
コンセプチュアルだった時代を彷彿させる
クラシックなデザインが魅力。デイパックの
最も基本的なスタイルがそこにある。
定番のデイパック
「ライトパック」
シリーズ。
アメリカのカレッジでは誰もが持っているほど人気のアイ
テム。
スウェードのボトムは創業以来のスタイル。
古着とのコーディネートに最適なクラシックなカラー
がいい。
タイガーオレンジ
(左)
、
タローティール
(下左)
、
エレクトリックパープル
(下右)
。
価格9975円
(各)
ブラックナチュラルストライ
プ・デザインのライトパック。
内側に15インチまでのPCを
収納できるスリーブを搭載。
時代の要求に則したデザイン
でありながら、
アメカジ感た
っぷりのヒッコリー・パターン
が嬉しい。
価格 1 万2075円
9
8
ジャンスポーツを語る上で
欠かせないのが、
共同創業者である
スキップ・ヨーウェルの
伝説的な活動の歴史。
アウトドアへの愛に満ち溢れた
ヒッピーな半生記は
一冊の本にもなっている。
ージックに歓声を上げる長髪
主役となったのは、ジーンズ
姿で反戦を叫び、ロックミュ
60∼1970年代のことだ
った。代わってキャンパスの
ンパスを歩く学生が、アメリ
カの大学から消えたのは19
た教科書を持ち、颯爽とキャ
オックスフォードのボタン
ダウンシャツにクルーカット、
手にはブックバンドで固定し
ンを持っており、パターンを
引くのも得意としていたので、
マレーは恋人のジャン・ルイ
スに﹁もし僕と結婚してくれ
たら君の名前を会社につける
偶然にもマレーの恋人がミシ
ネスにはアウトドア用のバッ
グを縫製できる人物が必要で、
店の2階で事業をスタートさ
せた。ただ、自分たちのビジ
とを決意し、地元シアトルに
ある叔父の経営する変速機の
で従兄弟と一緒に起業するこ
情熱を活かしたビジネスがで
きないかと思っていた。そこ
能優先でデザインは地味にな
りがちだったアウトドア用品
の世界で、スキップ・ヨーウ
ェルはナイロン素材に赤や黄
色のポップカラーや、フラワ
ームーブメントを象徴するよ
うな花柄のプリントなどを大
胆に採用し、その革新的な色
使いも大きな注目を集めた。
年代に入ると、アウトド
ア業界ではインターナルフレ
ームバッグがメジャーとなっ
ていたが、彼らはキャンパス
で学生が教科書を持ち歩いた
り、一日分のアウトドアギア
を詰め込んで歩き回ったりす
るのに便利な﹁デイパック﹂
を開発。このコンバーチブル
仕様の小型バッグは、雨の多
いシアトルの学生たちのため
に開発されたものだったが、
やがてあちこちの大学のブッ
クストアに置かれるようにな
り、大ヒット商品となる。そ
に、あらためて敬意を表した
い。
ルを世に送り出してくれたジ
ャンスポーツというブランド
クションや、昨今のデジタル
文化を反映したデジタルコレ
クションなども製品に加えて、
進化を続けている。その進化
が一朝一夕で終わらない理由
は、同社が積み重ねてきた挑
戦的な製品開発の歴史。前述
の人間工学に基づいたアルミ
フレームや、初
めてバックパッ
クにジッパーを
採用するなどの
先進性に加え、
いまでは当たり
前であるU字型
のジッパーを採
用したダッフル
バッグや、PU
やレザーをボト
ムに採用したデ
ザインなど、卓
越したアイデア
を積極的に製品
に反映してきた
歴史があるので
ある。現在では
創業当時の秀逸
な製品を忠実に
復刻したモデル
なども販売され、
当時を懐かしむ
層だけではない
幅広い年代に支持されている。
デイパックという便利なツー
80
ジャンスポーツが誕生した
時代のアメリカは、長引くベ
トナム戦争への厭戦感が高ま
り、その不満は抗議活動だけ
ではなく、芸術や文化にまで
はけ口が広がった。愛と平和
をスローガンに掲げたフラワ
ームーブメントもそのひとつ
で、
花柄のデザインは当時、
若
者を中心に世界中へと広まっ
ていった。 年代ファッショ
ンを語る上でも欠かせないム
ーブメントだ。そんな象徴的
なデザインを最新のテクノロ
ジーを持つ製品に採用したの
は、感覚的には非常に進んだ
ものだったはずで、ヒッピー
カルチャーに傾倒、そして実
践していた創業者たちの思い
が伝わってくる。
の時代とデザイン
フラワームーブメント
ジャンスポーツの共同創業者
スキップ・ヨーウェル
(右)
と
マレー・プレッツ
(左)
び〟である、アウトドアへの
の学生たち。ブックバンドの
代わりに、教科書はバックパ
ックに入れて、いつでも放浪
できそうなスタイルだった。
年代に萌芽し、 ∼ 年代
の後、世界中の若者から圧倒
的な支持を集めたモデル﹁ Su
/スーパーブレイ
perBreak
ク﹂が誕生。スクールバッグ
の定番として、全米の若者を
魅了した。1990年にはコ
ーデュラ素材のボディにスウ
ェードのボトムを採用したデ
イパック﹁ライトパ
ック﹂を発表し、こ
ちらも同社を代表
する人気モデルの
ひとつとなった。ま
た、登山家のルー・
ウィテッカーは1
982年、チベット
側からエベレスト
登山に挑むことに
なり、どんな荒天に
も耐えうるテント
が必要となった。彼
がエベレストに到
着しテントを張っ
た初日、時速300
マイルの強風に襲
われた。しかしルー
が持っていたジャ
ンスポーツのドー
ムテントは、彼らを
シェルターのよう
にしっかりと守っ
た。これが現在、登
山に使われる特殊なテント・
デザインの始まりとなった。
現在、ジャンスポーツが目
指すのは、若者たちのライフ
スタイルに寄り添ったアーバ
特徴的なU字型のジッパーに
独特のカラーとデザイン。
初期のデイパックはこうだった
よ﹂とプロポーズ。それが﹃ジ
に花開いたカウンターカルチ
ャンスポーツ﹄の社名の由来
ャーは、やがて世界的な広が
となった。ドラマの脚本に使
りを見せるようになる。19
用できそうな逸話である。
69年のウッドストック・コ
ンサートはその象徴的な出来 やがて、工学系の才能があ
ったマレーはバックパッキン
事で、社会を牛耳る大人たち
グ用のアルミフレームを考案
ではなく、若者だけで数十万
する。そのフレームはアルコ
人の集客を実現させた事実は
ア社︵海軍とエメコ社との共
大きな価値観の変化を世に知
同研究で世界初のアルミ製チ
らしめた。そのウッドストッ
クの2年前となる1967年、 ェアを開発したアルミニウム
メーカー︶が主催するコンペ
オレゴン州の大学生であった
において﹁ベスト・ユーズ・
スキップ・ヨーウェルと従兄
オブ・アルミニウム賞﹂を受
弟のマレー・プレッツによっ
賞。背骨の湾曲に沿って設計
て﹃ジャンスポーツ﹄は誕生
された曲線を持つフレームは
した。
スキップ・ヨーウェルは同 〝アジャスタブルアルミフレ
ーム〟と呼ばれ、それを採用
社創業時の思い出として﹁と
した製品﹁アルミエクスター
にかく普通の会社で働く気は
ナルフレームバッグ﹂は、ア
まったくない学生だった﹂と
ウトドア業界において一躍有
後年語っている。学生時代の
名になる。人間工学などとい
彼は、ヒッピーとしてアメリ
う言葉がまだ一般的でなかっ
カ中西部を中心に放浪を繰り
た時代の話である。しかも、
機
返し、
何とか自分の好きな〝遊
70
10
11
60
ンアウトドアな製品開発。本
↑最新テクノロジーと花柄の幸せな融合。
→社名の由来となったジャン・ルイス。
2008年からスタートした復刻シリーズの
ヘリテイジ・ラインには、
ジャンスポーツ創
業当時のオリジナルラベルが採用される。
カウンターカルチャーの匂いが
ぷんぷんと漂う、
スキップの
半生記は一読の価値あり
裏表紙はチベットで現地の人から
胸毛を触られるスキップの写真
ピーター・ジェンキンス著
スキップ・ヨーウェルの半生記
50
格的なアウトドアでも、タウ
ンユースでも使用可能なコレ
70
左:SKI&HIKE/フラワー
パ ワ ー 価 格8925円 右:
STARS&STRIPES/ ネ
イビー 価格9500円共に
開口部の大きいメインコン
パートメントが特徴。
70年
代を愛する人のヘリテイ
ジ・ライン。
ジャンスポーツ
創業メンバーの
一人である
スキップ・ヨーウェル
現在はグローバル広報部長として在籍。
ブランドを広める活動や、
製品開発へのアドバイスも行っている。
ジャンスポーツ製品に関する
お問い合わせは
コスモーダジャパン
☎03-5739-1808
http://jansportjapan.com/
SUPER FX
カラー=ホワイト・フェイディ
ド・スターズ/
「スーパーFX」
シリーズのデイパック。
間口
の広いコンパートメントや、
ク
ッション性に優れたバックパ
ネルなど、
使いやすい作り。
ユ
ーズド感たっぷりのデザイン
がいい。
価格8400円
SLACKER
カラー=ハムスターブラウ
ン/ユーズド感にあふれた
ストーンウォッシュ加工キ
ャンバスのボディは、
古着
とのマッチアップも最適。
太糸のステッチもデザイン
的に斬新。
価格8190円
SKI&HIKE
カラー=フラワーパワー/編
集部最注目のフラワームーブ
メントなデザイン。
アメカジ
系ファッションとのコーディ
ネートはもちろん、
アウトド
ア系でもお洒落な組み合わせ
になるはず。
価格8925円
LANTERN
カラー=ブラック/ジャン
スポーツには珍しい機能性
の高いトートバック。
コー
ドロック付きのドローコー
ド仕様で、
絞れば中身が見
えない。
15インチのラップ
トップの収納も可能。
価格
1 万1550円
あのペンドルトンとコラボ!
サンフランシスコを拠 ルトンとジャンスポーツ
点とするデザイナーであ ︵カリフォルニア州︶は同
り、スケートボードのブ じ西海岸に所在するブラ
ランド﹁HUF﹂や﹁MA ンド。ネイティブアメリ
SH﹂のデザインを手が カンのウールパターンは
けるベニー・ゴールドと 間違いなく、ジャンスポ
のコラボは昨年からスタ ーツの製品とマッチする
ートしたが、今年はそれ ことだろう。そのデザイ
に加えてペンドルトンと ンがベニー・ゴールドとい
のトリプルコラボが9月 うのだから、
ファンにはた
発売で決定した。ペンド まらない組み合わせだ。
本国の展示会で発表されたベニー・ゴールド&ペン
ドルトン&ジャンスポーツのトリプル・コラボレー
ション。
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mono
SKAGIT
カラー=ニューストームグ
レイ・オプティマスグレイ
/EVA成型のショルダー
ストラップや夜道での安全
を確保する反射板など、
最
新のハイテク系デイパック。
価格9975円
FIFTH AVENUE
カラー=スウェーディッシュブルー・ピンクチューリ
ップスプレイガン/旅行時や移動時に便利なウエスト
ポーチ。
価格2940円
FIFTH AVENUE
カラー=ピンクプレップヒッピースキップ/60∼70
年代当時に流行したタイダイを連想させるデザイン。
価格2940円
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