空き家問題の 解決に向けて - JICE 一般財団法人 国土技術研究センター

研究報告
空き家問題の
解決に向けて
伊藤 伸一
都市・住宅・地域政策グループ
副総括
1
はじめに
二次的住宅
賃貸用又は売却用の住宅
その他の住宅
空き家率
(万戸)
900
我が国では、少子高齢化の進行・人口減少社会の進展等によ
800
り、空き家が増加している。最新の調査 においても全国で
700
820万戸に及ぶ空き家の存在が報告されている。
600
*1
空き家が発生し老朽化が進むと、倒壊の危険、治安・景観の
悪化や不動産価値の低下など周辺環境に多大な悪影響(以下、
「外部不経済」と称す)を及ぼす恐れがある。
500
7.6%
268
200
98
関する特別措置法」
(以下、
「空家特措法」*2と称す)が公布さ
0
個別の空家等の状況を把握することが可能な立場にある市町村
11.5%
300
100
管理について、第一義的な責任を有することを前提としつつ、
13.1%
8.6%
9.8%
9.4%
330
576
131
757
268
820
318
12.0%
10.0%
8.0%
6.0%
448
398
352
262
234
183
659
16.0%
14.0%
149
125
157
12.2%
212
182
448
394
400
こうした状況の中、2014年11月に「空家等対策の推進に
れ、同法において「空家等の所有者・管理者が空家等の適切な
13.5%
460
4.0%
2.0%
14
22
30
37
42
50
41
1978
1983
1988
1993
1998
2003
2008
41
0.0%
2013(年)
図2-1 空き家数の推移 出所:住宅・土地統計調査2013
(2)空き家の内訳
が地域の実情に応じた空家等に関する対策の実施主体」として
空き家は、大きく「二次的住宅(別荘等)
」
、
「賃貸用又は売
位置づけられた。
「空家特措法」においては、空き家のうち特
却用の住宅」
「その他の住宅」に分類される(図2-2参照)
。最
に「特定空家等 」について、所有者等に対して講ずることが
近10年間の推移でみると、
「賃貸用又は売却用の住宅」は、
できる措置(助言又は指導、勧告及び命令、行政代執行、略式
16%増であるのに対して、
「その他の住宅」は、50%増で約
代執行)が規定された。
「空家特措法」に基づく空家等対策計
318万戸となっている。
*3
画の策定は、全国の76%(1,323)の市区町村で予定され
ている*4。
本項では、空き家の現状と課題を整理した上で、それぞれの
課題の解決策を、全国の先進事例等から整理する。さらにまと
めとして、今後検討すべき事項について整理した。
共同住宅(木造)
1.4%
住宅・土地統計調査に基づく全国の空き家数・空き家率の推
移は、図2-1のとおりである。近年、増加率はやや鈍化しつつ
(20,400)
二次的住宅
5.0%(412,000)
(147,100)
一戸建(非木造)
空き家総数
その他の住宅
38.8% (8,195,500 戸)
一戸建(木造)
26.8%
(3,183,500)
(2,199,900)
2.1 現状
(1)空き家の推移
その他 0.2%
(594,300)
長屋建
(105,500)
空き家の現状と課題
7.3%
1.8%
1.3%
2
共同住宅(非木造)
(116,300)
賃貸用 又は
売却用の住宅
56.1%(4,600,000)
賃貸用の住宅
52.4%
売却用の住宅
3.8%
(4,291,800)
(308,200)
図2-2 空き家の構成 出所:住宅・土地統計調査2013
あるものの増加傾向は継続しており、直近2013年調査によ
れば、空き家は約820万戸、空き家率13.5%となっている。
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研究報告
すると、登記上は当該物件に居住していることとされており、
2.2 課題
空き家対策を進めて行くための課題としては、大きく次の3
厳密な意味での空き家と判断できない物件も多い(不動産登記
は、義務ではなく権利であり、適切に登記されていない物件も
点が挙げられる。
まず、住宅は個人の財産であり、行政であっても実態把握の
多いため)
。
ために敷地や住宅に無断で立ち入ることはできない。空き家の
さらに空き家の特定にあたっては、地域住民への聞き取り調
現地調査では1軒1軒の住宅等について、敷地外からの外観目
査も有効であるが、そもそも空き家に対する認識が、調査をす
視調査を行うことが中心になっている。そのため調査の手間の
る側(市町村)と空き家の所有者等で異なっている。所有者側
面でも精度の面でも「空き家の特定」が課題となる。
では、入院や海外赴任等の長期不在、年間の限られた期間での
次に、
空き家のまま継続し、
老朽化が進むと地域における「外
利用等を行っている住宅を空き家とは考えていない。また、
「マ
部不経済」となるため、周辺住民にとって大きな問題となる。
スコミの報道等で状況を把握する一般市民は、老朽化が進んだ
そのため「空き家(特に老朽化した空き家)の除却」が課題と
なる。
*6
「特定空家等」=「空き家」と認識している場合が多い」
こと
も空き家の特定を困難にしている一因と考えられる。
また、地域にニーズがあり本来利活用できる空き家が使われ
ない場合も地域経済等にとって損失となる。そのため「空き家
の利活用」が課題となる。
(2)空き家の除却が困難
住宅自体が個人資産であり、
「外部不経済」となっている空
以下に各課題について詳述する。
き家であっても、公権力を行使しての除却が進んでいない。こ
れまでも、多くの自治体(400以上)で空き家対策の条例を
(1)空き家の特定が困難
制定し、それに基づき対策が講じられている。行政代執行まで
空き家についての実態を把握するため、いくつかの市町村で
空き家数、空き家の分布状況、空き家所有者の意向調査等が実
施されている。
を対策として位置づけた条例も多いものの、実際に行政代執行
を実施した市町村はわずかである。
条例に基づく行政代執行により空き家の除却を実施した大仙
現地調査では、国土交通省住宅局の空き家調査の手引き に
*5
沿って調査が実施されているが、敷地外からの外観目視調査が
市では、除却に要した費用がまだ徴収できていないということ
であった(除却半年後のヒアリングによる)
。
中心であり、調査に手間がかかる上、抽出した空き家には、
「二
「空家特措法」により空き家の除却の手順が明確にされ、か
次的住宅」
「賃貸用又は売却用の住宅」
(図2-2参照)も含まれ
つ法的拘束力も有するようになったため、対策が円滑に実施で
る可能性もある。
きるような仕組みとはなった。しかし勧告・命令を行っても除
却等の対応が図れない所有者等の中には、そもそも対策費用の
ねん出が困難という事情の者もあり、代執行実施後円滑な費用
の回収が困難な場合も想定される。
特に地方都市においては、
「土地の価格よりも除却費用が割
*7
高となることもあり、相続が放棄される可能性」
もある。
「特定空家等」の除却を所有者が実施するにしても、行政が
代行するにしても、費用負担の問題から困難な状況と考えられ
る。
写真2-1 老朽化した空き家
写真2-2 築浅の空き家
また、写真2-1のような老朽化した空き家であれば、空き家
としての特定は容易であるが、写真2-2のような築浅の空き家
(3)空き家の利活用が困難
空き家の利活用ニーズが高い地区にあっても所有者の意向に
より、利活用が進まない場合がある。
の場合は判断が難しい(当該物件の場合は、ガスメーターに付
空き家所有者への意向調査結果(図2-3)によると、所有者
けられた注意書き;
「新しくガスを利用する場合はガス会社に
が利活用に応じない理由としては、
「経済的に貸す必要がない」
連絡すること」から推定)
。
また、空き家と想定される物件を抽出しても、所有者を特定
「知らない人に貸したくない」
「返されないことになることが心
配」といった理由が挙げられている*8。
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表3-1 調査方法の比較
【貸したくない理由】n=13 件
②使いたい時に返ってくるかわからないから 3件
③貸す必要がないから(経済的に困窮してない)
2件
②24%
③15%
④その他 6件
・子供が使う予定があるため。
・市の道路事業に入っているため。
・活用するため。
・貸したい。
・ボロ屋だから。
・回答なし。
出典:
「大都市圏郊外部等における都市構造と空き家問題の
現状等に関する調査」平成26年3月国土交通省(JICE受託調査)
課題解決に向けた取り組み
C 市
3
B 市
図2-3 空き家を貸したくない理由
A 市
④46%
都 市
①知らない人に貸したくないから 2件
①15%
対象物件
/
面積
現地調査値
2015年
10月調査
住宅地図
情報
水道閉栓
情報
2015年
9月データ
地図会社
情報
100件
/4.8ha
4件
14件
(うち現地調
査値3件)
2015年
1月データ
12件
(うち
現地調査値
2件)
3件
(うち現地調
査値1件)
2015年
1月データ
212件
/10.3ha
9件
23件
(うち現地調
査値4件)
2014年
10月データ
23件
(うち現地調
査値5件)
4件
(うち現地調
査値2件)
2014年
10月データ
671件
/23.5ha
52件
127件
(うち現地調
査値32件)
2014年
7月データ
69件
(うち現地調
査値33件)
33件
(うち現地調
査値25件)
2015年
5月データ
3.1「空き家の特定が困難」への対応
空き家問題の解決に向けては、まず実態の把握が不可欠であ
る。空き家調査は、都市全体あるいは中心市街地等の特定の地
本項では、3つの手法のメリット・ディメリットを踏まえ、
効果的かつ効率的な総体調査の方法として以下を提案する。
域において、空き家の分布状況等を把握する総体調査と、総体
調査の結果を踏まえて、空き家密度の高い地区や老朽化した空
き家の多い地区等を抽出し、所有者意向調査へとつなげる詳細
調査に大きく区分される。
① 住宅地図を基に建物がある物件を地番で整理。
(ブル
ーマップ*11がある自治体は、ブルーマップを活用)
② 当該地番における水道閉栓情報を確認。
(水道閉栓情
報は非居住を示す根拠として有効)
(1)総体調査
③ 住宅地図上で建物があり、水道が閉栓されている物件
総体調査の方法として、国土交通省住宅局の空き家調査の手
引きにおいて、住宅地図や水道閉栓情報の活用が位置づけられ
を空き家として整理。
(住宅地図作成時点以降の新築
住宅の情報をフォローすればさらに精度が高まる)
ている。こうした簡便な調査方法の有効性を把握するため、具
さらに、
体の都市において、住宅地図情報 、地図会社が所有する空き
④ 固定資産税に関する情報等を活用することにより所有
*9
家情報
、水道閉栓情報の活用の3つの手法と現地調査の比
*10
較検証を実施した(表3-1参照)
。
「住宅地図情報」は、現地調査値と比較し多くの空き家候補
者の特定も容易に可能(
「空家特措法」10条)
この調査方法であれば、手間のかかる現地調査を実施するこ
となく全て行政担当者が机上で、整理することが可能である。
が抽出された。さらに表札のある空き家が抽出できない等の問
題はあるが、調査地区における空き家の傾向把握が簡易に可能
である。
(2) 詳細調査
詳細調査のうち、特に「特定空家等」を抽出するためには、
「水道閉栓情報」も同様に、現地調査値と比較し、多くの空
現地調査が必要である。
「空家特措法」により、
「特定空家等」
き家候補が抽出された。既に建物が除却された空き家(元空き
に対しては、
立ち入り調査が認められるようになったとはいえ、
家)等の情報も含まれてしまうという問題があるが、住宅地図
調査は手間がかかる。
情報と同様に調査地区における空き家の傾向把握が簡易に可能
である。
「地図会社情報」
は、
空き家の傾向把握が簡易に可能であるが、
「特定空家等」とは何か。それは管理されない空き家の老朽
化が進み、地域における「外部不経済」となることである。こ
うした「外部不経済」となる空き家(図3-1の「倒壊等の恐れ
情報として有料である。また調査時点からの変化(新たな空き
があり隣地等に危険を及ぼす可能性のある空き家」
)の情報を
家の発生等)をフォローできないという問題がある。
入手することを考えると、実際に「外部不経済」と考える市民
からの通報で収集・整理するという方法が有効である。
宇都宮市では、2014年7月に施行された「宇都宮市空き家
等の適正管理及び有効利用に関する条例」において、市民等の
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研究報告
役割として「管理不全な状態等である空き家等があると認めら
ていないこと」
、
「除却後の土地の維持管理について地域住民等
れるときは、
市にその情報を提供するように努めるものとする」
の同意が得られていること」
、
「土地または建物を所有している
者が市税を滞納していないこと」とされている。なお、本事業
(第6条2)とされている。
は、2016年度末までの事業とされている。
― 空き家の利用・管理のされ方の分類 ―
小
問題の深刻さ・地域への悪影響
大
空き家の状況
[維持管理の程度が不全である空き家]
適切に維持
管理がされて
いる空き家
防犯や景観・
環境衛生等の
観点から問題
のある空き家
空き家の対策
空き家
の
利活用
倒壊等の恐れ
があり隣地等に
危険を及ぼす
可能性のある
空き家
老朽空き家
の
除却
(2)除却の誘導
既成市街地の空き家対策の一つとして、建物の除却を誘導し
ポケットパークを整備する事業(本庄市中心市街地等ポケット
パーク整備事業*12)が実施されている。
本 庄 駅 北 口 地 区( 約40ha)及 び 児 玉 駅 周 辺 地 区( 約
20ha)を対象に、
「本庄市空き家等の適正管理に関する条例」
の趣旨に基づく管理不全の空き家等が除却されて生じた土地
を、必要に応じ市が無償で借り受け、ポケットパークとして整
図3-1 空き家の利用・管理のされ方の分類
備する取組である。原則5年間の使用貸借契約を結び、簡易な
植栽やベンチ等を設置している。土地所有者には、固定資産税
空き家調査においては、調査の目的と精度・手間を勘案し、
の減免措置がある。
適切な方法を選択していくことが重要である。
3.2「空き家の除却が困難」への対応
老朽化が進み、地域において「外部不経済」となっている空
き家に関しては、本来空き家の所有者等が除却等必要な措置を
講じる必要がある。しかしながら所有者等に経済的な余裕がな
い等の理由により適切な対応が図られない場合は、何らかの形
で行政が支援していくことも考えられる。
空き家の除却を推進する施策として、以下を紹介する。
(1)除却費の補助
空き家の所有者から市に対して、建物・土地の寄付がなされ
たものについて、当該建物を市が除却する費用を負担する事業
写真3-1 本庄市中心市街地等ポケットパーク整備事業の取組
出典:滑川市HP
(滑川市危険老朽空き家対策事業)が実施されている。対象と
する土地・建物の条件は、滑川市の「まちなか居住を推進する
老朽化した空き家の除却を促進するため、除却後に「ファミ
エリア(図3-2参照)
」内にあり、
「物権や借地権等が設定され
リー世帯向け住宅の供給」を条件として空き家所有者に対して
除却費用の一部を助成する事業(住宅建替促進のための空き家
住宅除却助成事業*12(福生市)
)が実施されている。
対象となる住宅は、
「昭和56年5月31日以前に着工」した
もので、
「居住の用に供しない状態で概ね1年以上経過」した「戸
建て住宅又は共同住宅」とされている。助成額は、除却費用の
1/2で、戸建て住宅の場合上限50万円/戸、共同住宅の場合
上限150万円/戸とされている。
いずれの事業も空き家除却の推進に向け、有効な取組みと考
えられるが、事業実績は、1∼2件程度であり、効果は限定的
図3-2 滑川市のまちなか居住エリア 出典:滑川市HP
である。
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3.3「空き家の利活用が困難」への対応
(2)空き店舗の利活用の促進
空き家や空き店舗の利活用ニーズがあり、かつ対象となる適
所有者の「知らない人に貸したくない」
「貸し出した物件が
切に維持管理されている空き家・空き店舗については、積極的
いつ戻ってくるのかわからない」といった懸念(図2-3)を解
に利活用を進めて行くことが空き家対策となる。
消するため、地元での信用があるメンバー(商工会議所や市役
以下、空き家・空き店舗の利活用を促進する事例として以下
を紹介する。
所のOBなど)で立ち上げたまちづくり会社によるサブリース
を実施している。
店舗改修の初期投資はまちづくり会社が負担し、サブリース
(1)空き家の利活用の促進
により5年で初期投資を回収している。空き店舗の所有者には
「地域共生のいえづくり支援事業」として、空き家のオーナ
ーに建物の一部あるいは全部を提供していただき、一時保育や
10年で物件を返還する契約とすることにより空き店舗の利活
用を進めている(犬山まちづくり株式会社の取組)
。
田谷トラストまちづくりの取組
)
。
*12
賃貸借契約
管理業務委託
テナント
益的なまちづくりの場として活用されている(一般財団法人世
まちづくり会社
店舗所有者等
子供のための小さな図書館など、営利を目的としない地域の公
賃貸借契約
出店しやすい
環境づくり
内 装
外観改修
[都市景観形成助成事業]
・外観改修工事費補助
(上限500万円)
行 政
支 援
支 援
○外観改修は、
市の補助を受けまちづくり会社が実施
(駐車場の管理運営による事業収益などを充当)
○店子から受領する家賃収入と店舗所有者に支払う
家賃の差額により外観改修等の初期投資は概ね5年
で回収 [空き店舗活用事業]
・改修費補助
(1/2上限100万円)
・家賃補助
(1/2上限年50万円年1年のみ)
図3-3 サブリース事業の構造
写真3-2 図書館としての活用例(読書空間みかも)
出典:世田谷区HP
出典:
「民間資金による中心市街地再生方策に関する検討調査業務」
平成24年3月国土交通省(JICE受託調査)
空き団地(旧社宅)をリノベーションし、賃貸住宅として再
生する取組*12(小田急電鉄、座間市)では、地元市の協力(市
の子育て支援センターを団地内に立地)を得ながら、居住者の
4
まとめ
ニーズに配慮した機能(貸農園・ドッグラン・カフェ)を住棟
3章で課題解決に向けた取り組みとして空き家の除却、利活
間等に配置している。また、住戸内は極力改修を抑え、入居者
用の事例を整理した。特に空き家の除却の取り組みは、一定の
が自由にカスタマイズできるようにしている。
効果は上げられているものの「対処療法」であり限界がある。
1物件につき、100∼200万円程度の除却費が必要となる
こともあり、いずれの事業も実施例は1∼2例であった。滑川
市の事業は、2016年度末で終了する予定とのことである。
こうした老朽化した空き家の除却に関しては、
「空家特措法」
により、空き家の所有者・管理者の責任が明確化された。さら
に、
「特定空家等」に係る土地については、固定資産税等のい
わゆる住宅用地特例の対象から除外されることとなった。
これにより、所有者としては、空き家のまま所有を続けるメ
リット(固定資産税の減免)はなくなるものの、空き家を除却
するための費用を負担するインセンティブとまではならない。
写真3-3 ホシノタニ団地(座間市)の外観
住棟間に貸農園が整備されている
さらに「空家特措法」において、空き家の所有者・管理者に
適切な管理を位置づけても、将来にわたって管理していくため
出典:ホシノタニ団地HP
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研究報告
の能力(健康面・金銭面)を維持し続けることができるのかと
*5 「地方公共団体における空家調査の手法」国土交通省住
宅局
いう問題をはらんでいる。
そのため、今後は、
「対処療法」的な対策だけに留まらず抜
ない」
「外観が廃屋風」
「郵便受けに大量の郵便物やチラ
本的な対策を講じて行く必要がある。
抜本的な対策としては、適正な管理や利活用を進めない場合
のペナルティとしての課税
空き家の判定基準例として、
「電気メーターが動いてい
や、住宅の除却費を保険として
*13
予め新築住宅に位置付ける(義務付ける)
「家屋除却保険
」
*14
といった制度について検討していくべきではないかと考える。
シ等がたまっている」
「表札がない」
等が挙げられている。
*6 由井義通・久保倫子・西山弘泰編、2016、
「都市の空
き家問題」古今書院、p83
*7 由井義通・久保倫子・西山弘泰編、2016、
「都市の空
き家問題」
古今書院、p95
注釈・出典
*1 2013年住宅・土地統計調査。同調査における空き家
の定義は、二次的住宅(別荘等)
、賃貸用の住宅、売却
用の住宅及びその他の住宅である。
*2 「空家特措法」における空家等の定義は、
「建築物又はこ
れに付属する工作物であって居住その他の使用が成され
ていないことが常態であるもの及びその敷地」とされて
いる。
*3 「特定空家等」は、以下イ)
∼ニ)
のいずれかに当てはま
*8 「大都市圏郊外部等における都市構造と空き家問題の現
状把握等に関する調査」平成26年3月国土交通省都市
局(JICE受託業務)より
*9 市販の住宅地図より居住者表示のない住宅を抽出
*10 地図会社が現地調査時に空き家と判断した住宅の情報。
有料で提供される。
*11 ブルーマップとは、公図と住宅地図を重ね合わせた地番
が記載された地図。
*12「空き家等の住宅に係る課題や取組に関する調査業務」
る空き家等となる。
平成28年2月国土交通省関東地方整備局(JICE受託業
イ)そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる
務)より
おそれのある状態
ロ)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれ
のある状態
ハ)適切な管理が行われていないことにより著しく景観
を損なっている状態
ニ)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置する
ことが不適切である状態
*13 英国の「空き家管理命令(EDMOs)
」では、
「2年を超
える空き家につい正当な理由がない場合、日本の固定資
産税にあたる税金を150%引き上げる。さらに自治体
が空き家の利用権を取り上げ第三者に提供できる。
」こ
ととされている。
*14 家屋除却保険とは、
「新築戸建住宅を購入した者が住宅
の購入代金に上乗せし、除却費用を予め保険として掛け
※上記イ)
∼ニ)
については、参考となる基準が示されている。
ておくもの。
」西山弘泰氏(九州国際大学)が提案。
*4 2015年 国土交通省・総務省調査
2016.「都市の空き家問題」古今書院、P95より
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