クラウドファンディング実践事例紹介②

【 日本一の共助県を目指した「共助活動」の拡大 】
クラウドファンディング実践事例紹介②
はじめに
ています。
今後の北本における観光戦略について、地
クラウドファンディングは、自分の夢やア
域の皆さんと考え、共有するオープンミー
イデア、活動をインターネット上で発信し、
ティング「北本の観光のこと考えちゃわナイ
「資金調達」
「PR」「ファンづくり」に挑戦で
ト(以下、かんちゃわナイト)
」を定期的に
きる仕組みです。(詳しくはぶぎんレポート
開催しています。
「かんちゃわナイト」を通
No.200 2016年6月号を御覧ください。
)
して、様々なアイデアを出し合い、地域課題
また、日本に寄附文化を根付かせていく手法
の解決に取り組んでいます。
としても期待が寄せられています。今回は、
“北本の観光”にフォーカスして、地域住
前回に引き続き、NPO法人によるクラウド
民の能動的行動を促す仕掛けを積極的に行っ
ファンディングの実践事例を紹介します。
ています。特に、地域の資源である「ヒト」
◆資金調達へのチャレンジ
特定非営利活動法人 北本市観光協会
クラウドファンディング目標金額 55万円
達成金額:57.6万円(達成率104%)
FAAVO埼玉を利用(終了)
「モノ」
「コト」を磨き光らせることを目指し、
それぞれのライフステージに合わせた多様な
ライフスタイルの提案をしています。そし
て、北本のまちが持つ潜在的豊かさを顕在化
させ、地域住民の共感力を育むことができる
ような、実践的な観光のモデルルートを示し
ています。
⑴クラウドファンディングへの挑戦
「かんちゃわナイト」でアイデアを出し
合う中で、北本市の特産であるトマトと市内
に残る雑木林を保全するために生じる間伐材
とを上手に活用したイベントはできないか、
という意見が出ました。間伐材を薪として活
用することで、林の利活用が促進されます。
特定非営利活動法人北本市観光協会は、前
トマトと薪から共通にイメージされるピザを
身の任意団体「北本市まちづくり観光協会」
作ろうという声が多く上がり、雑木林の環境
での17年にも及ぶまちづくり、地域振興を中
保全活動を行っているNPO法人北本雑木林
心とした活動を通じて、市民にとってさらに有
益な活動にしていこう、社会的信用力を強化し
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の会の皆さんと議論を重ねた結果、“移動式
のピザ窯”を作ることになりました。以前か
ようという想いが強くなり、平成24年にNPO
ら興味があったクラウドファンディングの手
法人化しました。その後は事業を拡大し、観光
法を利用して“移動式のピザ窯”に必要な資
の振興を図る活動はもちろん、まちづくりの推
金を調達することにしました。そこで、県共
進を図る活動、学術、文化、芸術又はスポー
助社会づくり課(以下、共助課)に相談し、
ツの振興を図る活動などに力を入れています。
県と協定を結んでいるFAAVO埼玉を利用す
“観光”という切り口から北本市内の様々な活
ることにしました。共助課の支援を得なが
動を考え、北本市の良いところを情報発信し
ら、FAAVO埼玉で寄附を募ることで、告知
ぶぎんレポート No.202 2016 年 8・9 月号
を兼ねた広報活動の広がりが期待できると考
え た か ら で す。 実 際、 共 助 課 のfacebook
「Saitama共助style」やNPO情報ステーショ
ン「NPOコバトンびん」等でプロジェクトの
案内をしてもらい、多方面に情報発信するこ
とができました。イベントの時期から逆算し、
当日は約2,000人の来場者に“移動式のピザ
窯”を披露し、焼きたてピザをふるまいまし
た。今回のプロジェクトでは“移動式のピザ
窯”をきっかけに新たな住民交流が生まれ、
北本市の観光資源を広く広報することができ
ました。
クラウドファ
ンディングの
開始手続きと
ピザ窯の設計
を並行して行
いました。リ
ターン(支援
者へのお礼の
▲思い描いたピザ窯完成イメージ
品)の設定や“移動式のピザ窯”の製作費用
等を積算し、目標金額を設定しました。
3月末のイベント「北本 春の森めぐり」
▲本格的なピザが焼けます
の“移動式のピザ窯”による焼きたてピザを
クラウドファンディングにおいて大切なこ
リターンのメインに設定しました。より多く
とは、目標金額を達成した後のリターンをき
のイベント参加者を見込み、寄附金額の設定
ちんと行うことです。プロジェクトに賛同し
は3,000円、5,000円、7,000円という小口
てくれたファンの皆さんとの信頼関係を裏切
を多くし、参加しやすい環境を整えました。
らないことが大切です。今回は、予想以上の
その結果、資金調達に成功し、“移動式のピ
反響であったため、イベントでの焼きたてピ
ザ窯”
の材料費などを賄うことができました。
ザが行き渡らなかった方もいましたが、代わ
製作は仲間の手作りで行いました。クラウド
りに北本トマトカレー(レトルト)をお渡し
ファンディングの支援者にも顔見知りが多
することで対応しました。
く、
「地域のために」という心意気で順調に
プロジェクトの目的に沿ったリターンを設
“移動式ピザ窯”が製作されたことを考える
定しておかないと、目標達成後の対応が難し
と、普段からの人間関係づくりや地域とのつ
いです。目標金額が達成された場合、手数料
ながり、密着度が今回のクラウドファンディ
とリターンを除きますので、純粋にプロジェ
ング成功の鍵になったと思います。
「北本 春
クトに利用できる金額は設定額の6~7割程
の森めぐり」に向けて、北本市出身のミュー
度です。リターンによっては、さらに利用で
ジシャンの呼
きる金額の割合は減ります。また、目標金額
びかけで有志
に達成しなかった場合、それまでに申込みの
が集まり、ピ
あった寄附は実行されません。したがって、
ザは生地から
寄附数とリターンのバランスを考え、ある程
全て手作りで
度の寄附数を予想しながら進める必要があり
準備されまし
ます。緻密な準備があってこそ、クラウド
た。イベント
▲ピザ窯の製作風景
ファンディングは成功します。
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⑵クラウドファンディングを終えて
クラウドファンディングの資金で製作した
“移動式ピザ窯”の移動できるという利点を
生かし、
「旅するピザ窯」として、5月から
レンタルを開始しています。レンタルには北
⑶新たなクラウドファンディングに挑戦中!
埼玉県北本市で遊休農地をオシャレな畑「ポタ
ジェ」に変えたい!収穫後は「ポタージュ」作りも!
寄附サイト「ジャパンギビング」を利用
http://japangiving.jp/p/3933
本の雑木林の間伐材を利用した薪と薪用トン
グ等の基本キットがセットになっていますの
今回は、リターンのない寄附型のクラウド
で、食材だけ揃っていれば、お好きな場所
ファンディングですが、趣旨に賛同していた
で、お好きな時間に窯で焼いたピザを食べら
だける支援者を募集しています。
れます。アウトドアのピザを自然の中で楽し
北本市は中心市街地に雑木林や小さな畑、
みたい方には、NPO法人北本雑木林の会が
少し離れた場所に遊休農地がちらほら見られ
大切に守り育てている林に「旅するピザ窯」
ます。現在、そんな遊休農地を活用した農作
を持ち込んで利用することをお勧めしていま
業のシェアの仕組みにチャレンジしていま
す。気持ちのいい緑と風の中で味わうピザは
す。
「ポタジェ」という新たな手法を用いて、
格別です。
実験的にスタートしています。
「ポタジェ」
はフランス語で家庭菜園を指す言葉ですが、
いわゆる家庭菜園と違い、花やハーブ、果樹
を野菜と混植することで、見た目にも美し
い、ひとに魅せるための畑を作ることが前提
です。
▲「旅するピザ窯」の全体像
▲見た目も美しいポタジェ(イメージ)
すでに、支援者や大学の学園祭へのレンタ
ルが決まっていますが、「旅するピザ窯」の
北本市民の皆さんに北本の資源と環境を最
レンタルは取りに来られる方ならどなたで
大限に楽しみながら、遊休農地を活用したオ
も、北本市観光協会のホームページで申し込
シャレな畑づくりに取り組んでいただくこと
むことができます。焼きたてのピザを楽しみ
で、まち全体をキャンパスにし、美しい景観
たい方、是非、御利用をお待ちしています。
を作っていきたいと考えています。野菜や果
特定非営利活動法人北本市観光協会
http://www.machikan.com
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ぶぎんレポート No.202 2016 年 8・9 月号
樹、ハーブなどを育て、収穫した食材を使用
して、みんなでワイワイとポタージュスープ
にするところまでできたら最高です。一緒に
【 日本一の共助県を目指した「共助活動」の拡大 】
活動したい仲間を募集しています。景観も、
*ポタジェとは
『ポタジェ』はフランス語で家庭菜園を指す
言葉。ポタージュを語源にしていることもあり、
ポタジェで作ったお野菜やハーブをみんなでワ
イワイとポタージュスープにする。
食材も楽しめる「ポタジェ」作りが少しでも
拡がり、北本市が綺麗で美味しいまちになっ
たら良いなと思っています。
今後、「かんちゃわナイト」でアイデア出
しを行い、さらに企画を磨き上げ、ポタジェ
を実現させたいです。そして、「旅するピザ
おわりに
窯」で作った焼きたてピザとポタージュスー
「何かやりたい!しかし何から取り組んだ
プを一緒に食べられるイベントを企画したい
らいいのかわからない…。
」という皆さんも、
と考えています。
クラウドファンディングなどの方法を通じ
て、気軽に共助の取組に参加することができ
ます。行政の支援が及ばない部分も、皆の力
を合わせて作り上げていくことができます。
私たち一人ひとりが時には“共助仕掛人”と
なり、時には“支援者”となって、お互いに
▶綺麗なトマト畑
(イメージ)
絆を深めて行きましょう。
(埼玉県共助社会づくり課)
私たち、出展します!
NPO法人ARUKAS KUMAGAYA(両日出展)
特定非営利活動法人うりんこくらぶ(両日出展)
特定非営利活動法人グリーンパパプロジェクト(10日のみ)
特定非営利活動法人 ぎょうだ足袋蔵ネットワーク(11日のみ)
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