調査報告 2016 年 7 月 28 日 株式会社ジェック ジェック 2016 年 新入社員「企業人としての意識」調査報告 「自己実現の意識」の点数がやや上昇 本調査は、株式会社ジェックが担当した新入社員研修において、新入社員自身が自分の 企業人としての意識傾向を確認し成長の方向を知るために、研修開始冒頭に実施している ものです。設問では、「企業人としてもつべき考え方」を問い、回答は「そう思う」「わか らない」「そう思わない」の三択式です。 本報告では、研修現場での傾向と併せて、2016 年の特徴、および 2002 年以降の回答傾向 についてご報告します。 2016 年の結果 Ⅰ.職業人の意識 地道な努力を大切にし、言われた通りに まずやってみようとする意識 Ⅰ.職業人の 意識 Ⅱ.自己実現の意識 能力や個性を思う存分発揮しようとする意 識 Ⅴ.人間関係 の意識 Ⅱ.自己実現 の意識 Ⅲ.貢献・報酬の意識 百の知識よりも、一つの成果、業績を重んじ ようとする意識 Ⅳ.組織活動の意識 規則に従い連絡を密にしようとする意識 Ⅴ.人間関係の意識 Ⅳ.組織活動の 意識 Ⅲ.貢献・報酬 の意識 相手を尊重し礼儀作法を配慮しようとする 意識 1 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 傾向 1 「自己実現の意識」の変化 2016 年の結果は、2015 年と比較し「自己実現の意識」の平均点がやや上昇しました(14.9 点→15.1 点)。この「自己実現の意識」のスコアは、上昇と下降を繰り返しながら 15 年間では下降しており、特に 2011 年以降は下降し続けていましたが、2016 年はやや上 昇しました。 設問ごとに見てみると、設問「仕事は会社のためにしてやっているのではなく自分のた めにやっているのだ」に対して「そう思う」と答えた割合は、2015 年から 0.4 ポイン ト上昇し、設問「我々従業員は、会社の利益を生み出す手段であって、職場で個性を発 揮することは難しい」に対して「そう思わない」と答えた割合は、3.5 ポイント上昇し ました。自分を活かそうという意識は 2015 年と比較して高くなっていると考えられま す。 2 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 入社動機では、 「能力や個性が活かせる」と答えた割合は、2015 年と比較し 4.5 ポイン ト上昇し、「技術が覚えられる」も 3.4 ポイント上昇しました。それに対し、「会社に 将来性がある」と答えた割合は 7.5 ポイント低下し、この 5 年間で下降し続けていま す。これらのことから、会社に依存するのではなく、自分を活かしたい、そのために 会社を活用したいという考え方がやや強まっていると推察されます。 また、ワークライフバランスを考えて仕事をしたいという意識の高まりも、複数の回 答傾向から読み取ることができます。設問「仕事も大切だがむしろ家庭を大事にした ほうが、人間らしい生き方ができる」に対して「家庭」重視の回答割合は、2015 年と 比較し 1.3 ポイント上昇し、5 年前の 2012 年と比較し 6.3 ポイント上昇しています。 設問「給料や週休2日制が大切だとは言われるが、働き甲斐を求めることの方が人間 らしい生き方が出来る」に対して「働き甲斐」重視の回答割合は、2015 年と比較し 2.5 ポイント低下し、2012 年と比較し 8.6 ポイント低下しています。 このように、ワークライフバランスを重視し、自己実現のために、会社という場を活 用しようという意味での「自己実現の意識」が高まったと推察できます。なお、 「自己 実現の意識」のスコア変動について今後も注視する必要があります。 3 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 傾向 2 コース所感より 持続性の弱さが散見 新入社員研修を担当したインストラクターの所感(6 ページ)にあるように、例年通り、 まじめで素直、学習意欲が高く、器用であるとの報告がありました。研修では、企業人と して持つべき考え方や様々な行動の練習を学びますが、身だしなみや挨拶、報告・連絡・ 相談や納期遵守など、学んだり指摘されたことに素直に応える傾向が近年続いています。 規律を守る意識が高いことについては、設問への回答傾向でも見られます。設問「職場の モラル(道徳)は、職場のモラール(やる気)以上に重要なことだ」に対して「そう思う」 と答えた割合は、58.9%と過去 15 年間で最も高くなっています。設問「良い成績さえ上げ ていれば、会社の規則やルールは多少違反しても許される」に対して「そう思わない」と 答えた割合は、94.0%と過去 15 年間で最も高くなっています。 また、様子を見る、周りに合わせて行動する、という傾向も続いています。研修では、声 の大きなメンバーに引っ張られ、たとえ違う意見を持っていても言わない様子も見られま した。 さらに、継続している傾向として、自らコミュニケーションをとろうとしないことがあげ られます。公開コース(オープンセミナー)では、他社の新入社員と一緒に学ぶのですが、 グループ討議以外では自社の人としか話さない、昼食休憩でも自社の人と集まるという傾 向が見られました。意識調査の設問「多くの先輩と幅広く付き合うより、特定の先輩と親 密になる方が得である」に対して、 「そう思う」と答えた割合は 8.0%であり、過去 15 年で 最も高くなっています。リアルな場面での付き合いは、狭い範囲でしか交わろうとしない 傾向が継続しているようです。 4 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 そして、本年新たに指摘された傾向は、モチベーションが続かない、やり続けられないと いうものです。 ・グループワークの納期を一度守ることができても、二度目は守ることができない。 ・行動の練習はするが、体調を崩したことを理由にテストを受けようとしない。 ・二、三回挙手して当ててもらえないと諦める。 「合格点主義」で全力を出さない傾向は以前から見られましたが、テストに合格しなくて も許されるならそれでよいという動きに変わってきたのかもしれません。依存や逃避の傾 向がやや強まっていると言えます。 また、ジェックの研修では、自ら成長していく力をつけていくために、 「メタ認知」と言っ て自己を振り返るプロセスを設けています。近年は、自己の振り返りや自己に関心が高い 傾向があります。 これらの傾向を踏まえると、自分への関心は高いものの、自分の将来も考えたうえでの判 断やセルフマネジメント力が弱くなっていると言えます。 5 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 コース現場より 新入社員研修を担当した弊社インストラクターの意見 <行動に関する特徴> まじめで素直、学ぼうとする姿勢がある。 ・納期、報告・連絡・相談など、言われたことをしっかり守って行動できる。 素直さと器用さがある。 ・髪型や服装について指摘された時に、髪を留める、ワックスで固めるなど、すぐに対応する。 ・お辞儀や離席時の椅子について指摘されたら、すぐに修正する。 規律に対する意識が高い ・ネクタイが緩んでいる、スーツを着崩すなどの服装の乱れがほとんどなかった。 ・時間に対する規律も高く、休憩明けも時間前には着席し、開始数分前には自然と静かになる。 様子を見る周囲の動きに合わせようとする。 ・グループワークでなかなか自分の意見を言わずに、聞き役にまわる。 ・練習する場面でも、周囲をうかがいながら、練習を行うグループがあればやり始める。 大人しい、自分からコミュニケーションをとろうとしない ・初日、入室して着席後、挨拶はするが、それ以上のコミュニケーションをとろうとしない。 モチベーションが続かない、やり続けられない ・指示や注意についての反応は良く行動の変化も早いが、その局面を過ぎるとすぐに元に戻って しまう。 <自己の振り返りに関する特徴> 自己の振り返りへの関心が高い。素直に取り組む。 ・グループディスカッションでは、自分の過去の経験や、今まで目を背けてきた、嫌な経験まで 振り返って、皆の前で発表することができていた。 ・問いかけに対し真面目に自分のことを語り合い、議論していた。 ・自己の昔の自分のエピソードを交えて詳しく話す方も多く、自分を振り返り修正しようという 姿勢が感じられた。 「個性」への関心が強い。 ・自分の個性は何だろう?といったことをよく考えているようで、感想文、グループでの会 話などで「個性」といったことが出ていた。 プラス面のメタ認知が苦手。 ・できなかったことについてのメタ認知は得意でたくさん出てくる。グループ討議でほとんどの 方がこの傾向であるため、重苦しい雰囲気になっているのが散見された。 オブザーバーの所感 例年と比較して大変素直で、行動の変化が出やすい。 昨年より大人しく、心配になるほどだ。 今年は、元気がなく少し冷めているようだ。 6 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 まとめ(マネジメントのポイント) 社員(新入社員)には、現場に適応し、生き生きと仕事をしてやりがいを感じてほしいも のです。そのためにも、受け入れ側の体制や育成プロセスを整えておくことは必須の課題 です。 規律を守り、素直で、学ぼうとする姿勢がある好ましい面を持っており、自己を振り返る ことへの関心も強い新入社員は、将来(未来)を考え、今、自分がなすべきことに取り組 んでいくことで、成長していくことが期待されます。しかしながら、ワークライフバラン スをとることを、仕事をそこそこにやることと取り違えてしまい、許されるならやらなく ても良いという姿勢で仕事をし続けたならば、依存や逃避の傾向がさらに強まってしまい、 周りの期待に応えることができなくなってしまいますし、自分が将来こうなりたいという 自己実現も遠ざかってしまいます。 企業では、学生時代と異なり、唯一の正解というものがなく、「やり切る、やり続け る」ことが求められます。自分にとっての意味・価値がわかると前向きに取り組む素直さ がありますので、仕事の社会的意義や目の前の仕事が、その社員にとってどのような意味 を持つのか、繰り返し伝え教えていくことが重要です。この時に、上司や周りは、注意深 く見守り、まめに話を聞き、不調や焦りの様子などを見逃さないようにすることが近年で は特に求められています。新入社員は、仕事をするうえでのメンタル面はまだ未熟です。 見守っていることを示すことで、安心感や周りへの信頼感が増していきます。 同時に、職場という様々な価値観がある環境で、「自分の価値観は、多くの価値観の 中の一つでしかない」ことや、 「周りとうまくやっていくには、同調するのでも、主張する のでもなく、議論を尽くして統合していくことが必要である」という考え方が身につくよ う、特定の管理者や育成担当者が育成するのではなく、組織全体で育成に関わる仕組みを もつことも必要でしょう。 さらに、これまでの世代と(ここ数年の)新入社員では、コミュニケーションに関す る質と量の感覚が全く違う、ということを認識して対応する必要があります。 今は、情報・知識がネットから簡単に入手できる時代であり、新入社員は「ネットと現実」 の間に壁がなくなりつつある世代でもあります。そのため、「正しい、正しくない」「使え る、使えない」などの判断を、 (先ほどのコミュニケーションに関する回答傾向にもあった ように)狭い範囲で得た情報で簡単に判断してしまうことが懸念されます。あまり議論を する習慣がなく、議論や対立を避けて周りに合わせる行動をとりがちであるため、意見が 違うと感じると、あっという間に心を閉ざしてしまうことも容易に考えられます。 7 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 弊社のリーダー・マネジャー対象のコースで、新入社員育成について「美点凝視の精神」 で成長を支援しようということをお伝えしています。入社から数カ月も経つと、リーダー が新入社員に対して、成長度合いが期待通りでないなどと見てしまうことがあります。す ると、新入社員はリーダーの心理を敏感に感じ取り、モチベーションが低下し、信頼関係 が崩れる元となります。コミュニケーションの感覚が異なるという認識を前提に、 「人は(勝 手に)育つのではなく、 (周囲が)育てるものである」という意識で、新入社員の良い面に 着目して、強みを引き出していくことが、リーダーに求められます。 この結果報告をご覧いただくのは、4 月入社の新入社員も入社してから 4 カ月が経っ ている頃です。新入社員も職場に慣れ、同時に「現場は、研修や導入教育で教わった通り、 型通りに動いているわけではない」という現実に突き当たります。さらに、新入社員に対 する周りの期待も徐々に変わってきますが、この期待の変化が新入社員にはわからず、ネ ジレが解消できないと、不満を内に抱えモチベーションを低下させてしまいかねません。 上司は、 「学習・修正を行って」早期に職場に慣れたように見える新入社員に安心しがちで すが、新入社員への期待の変化、果たしてほしい行動を折に触れ伝えわからせていくこと が、継続的成長に欠かせない働きかけです。 優秀な新入社員に対しては、更に高い期待があるということを理解させることも、モチベ ーションの継続と成長を促進する上で大切です。 8 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 ■社員意識調査の概要■ 【調査名称】2016 年 新入社員 企業人としての意識調査 【調査対象】ジェック主催「新入社員基本能力体得コース」およびジェックが担当した各社新入 社員研修の受講者 【設問概要】本調査は、ジェックが考える“企業人としてもつべき考え方・意識”の傾向を調査 するものです 設問数 50 問、結果を 5 つの意識に分類し各 25 点満点 回答は、マークシート形式 【調査時期】2016 年 3 月~5 月に実施、データ数 1,500 名 1976 年に開発。以来、ジェック主催「新入社員基本能力体得コース」およびジェックが担当した 各社新入社員研修で本意識調査を実施。5 つの意識の強弱やバランスによって、個々の意識傾向、 該当年の新入社員の意識傾向をつかみます。 ご受講者はこの結果を持ち帰り、現場配属後の成長目標として活用していただいています。 ジェック主催公開コース(3 日間)では、研修の冒頭および終了時に実施し、5 つの意識の成長 をご受講者が自覚することができます。 なお、本調査は、ジェックが考える“企業人としてもつべき考え方・意識”の傾向を調査するも のであり、若者の意識傾向全般を調査するものではありません。 【企業人として重要な 「5つの意識」とは】 Ⅰ.職業人の意識・・・・地道な努力を大切にし、言われた通りにまずやってみようとする意識 Ⅱ.自己実現の意識・・・能力や個性を思う存分発揮しようとする意識 Ⅲ.貢献・報酬の意識・・百の知識よりも、一つの成果、業績を重んじようとする意識 Ⅳ.組織活動の意識・・・規則に従い、連絡を密にしようとする意識 Ⅴ.人間関係の意識・・・相手を尊重し、礼儀作法を配慮しようとする意識 9 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 【「5つの意識」経年変化】 (単位:点 / 25 点満点中) Ⅲ.貢献・報酬の Ⅳ.組織活動の 意識 意識 年 Ⅰ.職業人の 意識 Ⅱ.自己実現の 意識 2016 14.2 15.1 14.6 16.1 16.3 2015 14.3 14.9 14.8 16.1 16.4 2014 2013 14.4 15.0 15.1 15.9 14.7 15.1 16.0 16.4 16.4 16.8 2012 15.1 15.9 15.1 16.3 16.5 2011 15.3 16.2 15.3 16.6 16.7 2010 2009 15.1 15.0 16.0 15.6 14.9 14.6 16.6 16.4 16.8 16.6 2008 14.7 15.5 14.6 16.6 16.6 2007 14.2 14.3 15.1 15.2 14.1 14.2 16.2 16.2 16.2 16.2 2004 14.6 14.5 15.8 15.6 14.6 14.7 16.1 16.0 16.2 16.2 2003 14.6 16.1 14.7 16.1 16.2 2002 14.5 16.3 14.9 16.1 16.2 2006 2005 Ⅴ.人間関係の 意識 10 Copyright JECC Co., Ltd. 2016 【回答者の属性情報、アンケート情報】 (任意回答項目。データは約 1,500 件) 本文書は株式会社ジェックに帰属し、無断転載・無断複製を禁じます 【本調査に関するお問い合わせ先】 株式会社ジェック 診断推進チーム(担当:中村) 〒170-6020 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60ビル20階 TEL:03-3986-6365 FAX:03-3982-5894 E-mail:[email protected] 11 Copyright JECC Co., Ltd. 2016
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