副社長メッセージ 成長戦略と資本戦略により財務的価値を 最大化することに加え、非財務的価値も高め 持続的な企業価値の向上を目指します。 ニッポンハムグループは目指すべき定量目標である営業利益 率 5 % 以 上、ROE8 % 以 上 に 向 け、 積 極 投 資をはじめと する成長戦略により持続的な収益力の強化をします。また 加重平均資本コスト ( WACC )を意識し、 投下資本効率 の 向 上を追 求し ROE を持 続 的に高めることで財 務 的 価値を最 大化します。さらに は競争 優 位性を高める ための戦略的ブランディングや、 多様化する社会の 課題の解決に貢献するため重要課題を中心とした CSR 活動をすすめることで、 社会的価値すなわ ち非財務的価値も向上させていきます。 代表取締役副社長 新中期経営計画パート 5 における 財務目標進 状況 30 新中期 経営計画の財務目標 数値として、最 終年度の フリー・キャッシュ・フローについては、34億円のキャッ 2018 年 3月期の ROE を 8 %以 上、ROIC を 6 %以 上、 シュ・インと前期に比べ 52 億円改善しました。負債資本 3 カ年 累 計のフリー・キャッシュ・フローを120 億 円と 構成は、D/Eレシオが 0.43 、資本市場からの期待収 益 設定しています。2016 年 3月期売上高および営業利益 率を意識した加重平均資本コスト( WACC)の視点から は期初計画を上回りましたが、税金等調整前当期純利 は、最適な資本構成に近い状況と分析しています。 益および当社株 主に帰属する当期 純 利 益は 為 替 差 損 配 当 に つ い て は 、連 結 業 績 に 応じ た 利 益 配 分 を や の れ ん 等 の 減 損 損 失を計上したことなどにより、 基 本に連 結配当性向 30 %を目安としており、この方針 それぞれ 321億円(期初計画 390 億円) 、218 億円(期初 に 基 づ き、連 結 財 務 状 況 や 連 結 業 績 等 を 総 合 的 に 計画 270 億円)と計画には届きませんでした。この結果 勘案し一株 当たり33 円としました。今後も安定的かつ ROICについては、営業利益率および投下資本回転率と 継続的な配当成長を目指すとともに、自己 株 式の取得 も初年度の計画を上回り6.2 %となりましたが、ROE に については 、成 長 へ の 投 資 や 財 務 体 質を勘 案しつ つ つ いて は 、過 去 最 高 益 を 記 録した 2 0 15 年 3 月 期 の 一 株 当たりの株 主価 値と R O E の向 上を目的として機 9 . 2 % から 3 .1 ポイント低 下し 6 .1 %となりました 。 動的に実 施していきます。 ニッポンハムグループ アニュアルレポート 2016 将来の足場固めに向けて、 積極的な設備投資で事業領域の拡大と持続的な 収益力強化を目指す 新中期経営計画パート5では、 「国内事業の競争優位性 の確立」 、 「グローバル企業への加速」の実現を目的に、 ROE 経営を実践するための ROIC の導入によって、 投下資本効率を追求し、 すべての投資者の期待に応える ニッポンハムグループは、新中期経営計画パート 4が 骨太なビジネスモデルの構 築、コスト競 争力の強化、 スタートした 2012 年 4 月より R O E を経営 指 標に 取り 品 質 N o.1 経 営の 担 保 および 海 外 売 上 高 15 %の 達 成 入れました。キャッシュ・フローの創出と投資者(株主、 に向けた基盤を整 備のため、3 カ年 累 計で 1,470 億円 債 権 者 等 )の 期 待 収 益 率 である 株 主 資本コストを 超 の 積 極 的な 積 極 投 資を計 画しており、その内 訳は(下 える ROE すなわちエクイティスプレッドを最 大化させ 図表:新中計パート5 設備投資計画)のとおりです。 ることが、株 主 重 視の 経営であり、企業価値の向上に 2016 年 3月期は 522億円の設備計画に対して、工場や つながると考えています。 農 場 の 新 設 など 実 施 額 は 3 6 8 億 円となりました が、 パート 5 では、積 極 的な投 資を行う一方 で、R O E を 2017 年 3 月期は 622 億円を計画しており、2 年間累計 高め ることを事 業 戦 略 に 具体 的に 落とし込む ため、 でほぼ 計画内の予定です。投 資 規 模、事 業 領域、エリ ROIC(投下資本 税引後営業利益 率)を事 業部門別業 ア 等を勘 案した ハードルレ ートを用 いた 計 画 検 証 や 績 評 価指 標に追 加 導入しています。ROIC の構成要素 リスクシ ナリオの 検 証 等 により投 資 意 思 決 定の 精 度 は、売 上高営業利益 率、投下 資本回転率であり、事 業 をさらに高めます。また、投下資本効率を高めるため、 により密 着した指 標であると考えています。投下 資本 将来を見据えたインフラの再構築による最適生産体制 において占める比 率の高い 棚卸資産のコントロールが を 確 立 す る な ど 、選 択 と 集 中 を 進 め て い き ま す。 重要であると認識しています。2016 年 3月期の棚卸資 さらには投 資回収を確実に行うためのレビューも実 施 産は 1,374 億円で、投下資本 5,160 億円の約 4 分の 1を します。 占めています。食肉価格の上昇や取 扱い数 量の増加等 新中計パート 5 設備投資計画 (億円) キャッシュ・フロー実績・計画 新中計パート 5 新中計 パート 4 新中計 2016 年 3 カ年 3月期 パート 5 累計実績 3カ年累計計画 実績 生産設備 販売・物流設備 ファーム・処理設備 海外事業設備 その他設備 総計 517 141 198 64 61 981 501 166 360 309 134 1,470 171 35 77 41 44 368 2017 年 3月期 計画 205 99 134 109 75 622 当期純利益 減価償却費 その他 営業キャッシュ・フロー 固定資産の取得 その他 投資キャッシュ・フロー 1,470 億円(パート 4 差+489 億円) 設備投資総額(パート5累計) 【パート4⇒パート5増額のポイント】 ・海外事業設備 ・・・・・ + 245 億円(主にアジア・豪州) ・ファーム・処理設備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ + 162 億円 現金配当 その他 財務キャッシュ・フロー フリー・キャッシュ・フロー (億円) 新中計パート5 新中計 パート 4 3カ年 累計実績 2016 年 3月期 2017 年 3月期 726 583 △ 309 1,000 △ 871 62 △ 809 △ 164 △ 211 △ 375 191 188 199 138 525 △ 369 △ 122 △ 491 △ 94 176 82 34 312 205 8 525 △ 560 △9 △ 569 △ 68 34 △ 34 △ 44 実績 計画 ニッポンハムグループ アニュアルレポート 2016 31 副社長メッセージ 成長のための投資と同時に、 最適な資本・負債構成を追求 が棚 卸資 産を上 昇させる要因です。一方、食肉事 業に お ける農場 への投 資を拡 大することは、インテグレー ションを 強 み と する当 社グル ープの 調 達 力を高 め 、 メーカーとしての競 争 優 位性を確 立するための重要な 最 適資本・負債構成( D/Eレシオ)を追求する財務・ 戦略であると考えています。投下 資本が増 大する局面 資本戦略を推進していきます。D/Eレシオについては、 においては、収 益 率の向上に加え、選 択と集中により 現時点で 0.4 倍程度が加重平均資本コスト( WACC)を 資 本 効 率 の高 い資 産に入れ替えていくことが 重 要 で 低 減する最 適資本・負債構成に近い水準と認識してい あると認識しています。 ます。当面の間は、成長のための投 資に重 点的に資本 を投 入しますが、最 適な 資本・負債 構成 追 求のために R O I C の 構 成 要 素 であ る売 上 高 営 業 利 益 率 、投 下 機動的な自己 株 式の取得も検討していきます。 資本回転率を高めるための施策を、それぞれの事 業部 事 業戦 略と財務・資本 戦 略を両 輪としてバランス良 門 バリューチェーンの P D CA サイクル の中で推 進 する ことで 、R O I C を高 めます。高 付 加 価 値 商 品 の 開 発 、 くすすめることが、持続的な ROE の向上とキャッシュ・ 製造部門の高生産性ライン導入による生産性の向上、 フローの創出力を高めることにつながり、企業価値の 棚 卸 資 産 の上 流 集 約 や 商 品アイテム・製 造 ラインの 向上と株 主重視の経営に結びつくと考えています。 選 択と集 中 等による棚 卸 資 産 回 転日数の 短 縮など、 持続的成長と中長期的な企業価値向上へ。 ガバナンス体制と人財育成の強化 事 業部ごとの K PIと関連づけて管 理を行い、投下資本 効率向上をより実効性の高いものとします。また、事業 の評価基 準や役員業 績評価にも ROIC を導入し、投下 当 社グル ープ は 、2 015 年 11月にコーポレ ートガバ 資本 効 率を意 識した 経 営を事 業レベル に落とし込 ん でいきます。 ナンス 基 本 方 針を 制定しました。グル ープの目指 す姿 「 世 界で一 番の食 べる喜 びをお届けする会 社 」の実 現 ROIC =投下資本利益率(Return On Investment Capital) 投下資本(運転資金+設備資金)税引後営業利益率 ROIC 投下資本 利益率 = 売上高 投下資本 × 投下資本 回転率 2015年3月期実績 6.4% 2016年3月期実績 6.2% 2017年3月期計画 6.4% 32 ニッポンハムグループ アニュアルレポート 2016 営業利益 売上高 × 売上高 営業利益率 税引後 1- 税率 = 2.52(回) × 4.0% × 0.64 = 2.46(回) × 3.7% × 0.67 = 2.39(回) × 3.9% × 0.69 に 向 け て、グル ープ全 体 の 経 営 の 透 明 性と 効 率 性を 高め、迅 速 かつ 適 正な 意 思 決 定と業 務 執行の 適 正性 を確保し、積極 果 敢な経営判断を可能にするとともに 戦略的ブランディングと CSR によって 企業価値を向上 そ の 責 任を 明 確 に することを基 本としてそ の 充 実 に 継続的に取り組みます。 ニッポン ハ ムグ ル ー プ は 、営 業 利 益 率5% 以 上 、 R O E 8 % 以 上といった 定 量 目 標を 掲 げ るとともに 、 一 例として 2 017 年 3 月期より、「独 立 社 外 役 員・代 企業 理 念、経営理 念さらにはグル ープブランドの約 束 表 取 締役会議」、「独 立社 外役 員会議」を新たに設 置 のもと「 世 界で一 番の食 べる喜 びをお届けする会 社 」 しました。当社グループを取り巻く環境や、目指すべき を目指しています。 方向性、戦 略などについて対 話を行う場を設け、客 観 いまや企業価値は、財務的価値だけで測られるもので 的 な 意 見をいた だくことで 経 営基 盤 の 強 化 につなげ はなく、社会的価値などの非財務的価値も重要な要素と て いま す。さらに は さまざ ま な ス テ ー クホ ル ダー の なります。その重要な戦略の一つが、ブランド戦略です。 皆 様との 建 設 的な 対 話を 通して企 業価 値の向 上に努 商品ブランド、グループブランド、コーポレートブランドが めていきます。 有機的に結びつくことで、ニッポンハムグループのブラ 人 財育成も大きな課 題です。中長期的な視点に立っ ンド価値が高まることにつながると考えています。さら て経営人 財を輩出できる仕組みを構築していきます。 にはグループで、働く人のモチベーションやグループの 設定した目標の達 成度合いによって評価することに加 一体感が生まれ、これによって、競争優位性が高まり、 え、チャレンジングな目標を設 定し、挑 戦 することも グローバル市場でも勝ち抜くことが可能になると考えて 評 価する仕 組みを取り入れていきます。当 社グル ープ います。このような戦略的ブランディングの推進や社会の では 、評 価 方 法 の見 直しや研 修 制 度の見 直しを 通し 課題の解決に貢献するため重要課題を中心とした CSR て、経 営陣や 社 員の主 導力、分析力、創 造 志 向、実 行 活 動をすすめることで非 財 務 的 価 値を高めることは、 計画力、変 革志向の強化を図っています。 ROE 向上においても重要なことだと認識しています。 ROIC 向上のための要素(逆 ROIC ツリー) ・売上高伸び率(数量・金額) ・マーケットシェア ・主要ブランド売上高・構成比 売上 成長率 ・ライン操業度・工場稼働率 ・原材料費率 製造 原価率 ・物流費率・広告宣伝費率等 販管費率 ・棚卸資産回転日数 / 金額 / 数量 ・キャッシュコンバージョンサイクル ・停滞債権・滞留在庫額 運転資金 回転率 ・固定資産回転日数・遊休資産 設備資金 回転率 ・ROI 、NPV 、事業見直し 事業・ 投資評価 売上 総利益率 売上高営 業利益率 (税引後) ROIC 投下資本 回転率 ニッポンハムグループ アニュアルレポート 2016 33
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