資料(PDF 700KB)

2016/8/8
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL: 03-5919-9341(直通)
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:特別清算の動向調査
特別清算企業、3年連続増加
~再生スキームへの活用で役割高まる~
はじめに
特別清算手続きは、ゴルフ場や
不動産など、負債規模の大きい案
件の整理に使われることが多い。
特別清算は「破産」と同様の清算
手続きだが、破産手続きのように
厳格な手続きを要さず、債権者集
特別清算・倒産件数の増減率推移
(%)
10.0
5.0
0.0
-5.0
-10.0
-15.0
特別清算
倒産件数
-20.0
-25.0
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
会で出席者の過半数及び総債権額
の 3 分の 2 以上の同意を得られれば、迅速に清算することができる。特に、債権者が少数で協力
を得られる案件や、債権の大半を保有する上場企業や大企業が、関連会社や子会社の整理に特別
清算を活用するケースが多い。さらに、特別清算手続きは、裁判所に納める予納金が低額となる
場合が多く、費用のメリットも高い。そのため倒産件数は減少が続くなか、特別清算の増減率を
みると、2011 年以降、増加傾向にある。
帝国データバンクは、2008 年 1 月~2016 年 6 月までに特別清算を申請した企業を対象に、特
別清算申請前後の事業状況、業種別、業種細分類別、負債規模別に分析した。
同様の調査は 2005 年 10 月 17 日以来 3 回目。
調査結果(要旨)
1.2008 年 1 月~2016 年 6 月までに特別清算を申請した企業の数は 2525 件、負債総額は 3 兆
3795 億 4300 万円。2015 年の特別清算発生件数は 285 件で、2013 年以降、3 年連続増加
2.2015 年に特別清算を申請した企業を負債額別にみると、
「1 億円未満」
(構成比 39.3%)がト
ップ。一方、負債「10 億円以上」は 58 件発生し、全体の 20.4%を占める
3.負債 10 億円以上の企業で特別清算の申請に至った事由を分類すると、2015 年は「第二会社
方式の会社分割スキーム」を利用した企業(27 社、構成比 46.6%)がトップ。2014 年から
会社清算企業よりも第二会社方式の会社分割スキームを活用する企業数が増加
4.業種別では、「サービス業」が 8 年連続でトップ。「不動産業」は、リーマン・ショック後の
2009 年をピークに一服傾向
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2016/8/8
特別企画:特別清算の動向調査
1.特別清算・倒産件数推移
2013 年以降、3 年連続増加
2008 年 1 月~2016 年 6 月までに特別清算を申請した企業の数は 2525 件、負債総額は 3 兆 3795
億 4300 万円となった。全国企業倒産件数は、リーマン・ショック後の 2009 年は 1 万 3306 件発
生し、うち 328 件(構成比 2.5%)は特別清算による法的整理であった。09 年以降、金融円滑化
法の施行で倒産件数が抑制されたほか、東北を中心とした復興工事で建設業の倒産が大幅に減少
するなど倒産件数の減少が続き、15 年は 8517 件と 09 年比で 36.0%減となった。
2015 年の特別清算件数は 285 件となっており、2013 年以降、3 年連続で増加している。他方、
2008 年以降でピークだった 08 年(348 件)と比べると 18.1%の減少となった。倒産件数全体で
みると、ピーク時から約 4 割減るなかで、特別清算は約 2 割の減少にとどまっていることがわか
る。
また、特別清算申請企業の負債総額推移をみると、2013 年はカブトデコム(株)(札幌市、土
木建築工事、負債約 5061 億円)の大型倒産があり負債総額が急増したが、2014 年、2015 と 2300
億円台で推移している。
特別清算・倒産件数推移
(件)
400
(件)
14000
特別清算(左軸)
倒産件数(右軸)
350
12000
300
10000
250
8000
200
6000
150
100
4000
50
2000
0
0
2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
(1月~6月)
特別清算・倒産件数推移
(件)
2008年
特別清算申請企業数
倒産件数
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2008年1月以降の
累計
(1月~6月)
348
328
338
273
266
267
282
285
138
2,525
12,681
13,306
11,658
11,369
11,129
10,332
9,180
8,517
4,114
92,286
特別清算・負債総額推移
2008年
特別清算申請企業の
負債総額
負債総額
(百万円)
2016年
2008年1月以降の
累計
(1月~6月)
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
445,941
428,716
289,587
259,130
789,415
231,922
235,977
147,221
3,379,543
11,911,302 6,810,147 6,936,604 3,463,733 3,774,294 2,757,543 1,867,800 2,010,808
767,796
40,300,027
551,634
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2016/8/8
特別企画:特別清算の動向調査
2. 負債額別
2015 年は負債「10 億円以上」が 58 件、全体の 20.4%占める
2015 年に特別清算を申請した企業を負債額別にみると、
「1 億円未満」
(構成比 39.3%)がトッ
プとなった。次いで、「1 億円~5 億円未満」(同 28.8%)、「10 億円~50 億円未満」(同 17.2%)
となっている。
負債「10 億円以上」は 58 件発生し、全体の 20.4%を占め、これを業種別にみると、サービス
業(15 件)が最多であった。また「100 億円以上」は 4 件発生しており、負債額トップはマリー
ナ事業を手がけていた蒲郡海洋開発(株)(2015 年 2 月、愛知県、負債 313 億 9100 万円)がト
ップとなった。
特別清算は、上場企業や大企業が子会社・関連会社を整理するのに用いられるケースや、不動
産・ゴルフ場など負債規模の大きい案件に使われることが多い。このため、全体の倒産のなかで
は、
「負債 10 億円以上」の構成比が 3.1%にとどまるのに対し、特別清算はそれを大きく上回って
いる。
負債規模別
負債額
(件)
2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
1億円未満
1億円~5億円未満
5億円~10億円未満
10億円~50億円未満
50億円~100億円未満
100億円以上
合計
115
105
38
72
12
6
348
116
84
46
64
11
7
328
115
100
48
63
5
7
338
86
83
35
58
7
4
273
84
80
42
50
6
4
266
103
64
35
50
10
5
267
102
91
31
48
9
1
282
112
82
33
49
5
4
285
(%)
(件)
2016年
構成比 (1月~6月)
39.3
44
28.8
38
11.6
20
17.2
28
1.8
6
1.4
2
100.0
138
【参考】主な倒産企業 上位10社
負債
(億円)
5,061
1 カブトデコム(株)
1,677
2 ケイアール不動産(株)
681
3 JPエクスプレス(株)
550
4 アルファ-都市開発(株)
350
5 木村産業(株)
340
6 パシフィックスポーツアンドリゾーツ(株)
313
7 蒲郡海洋開発(株)
311
8 新武蔵カントリークラブ(株)
238
9 小木津産業(株)
234
10 (株)エービー産業
商号
業種
都道府県
倒産年月
土木建築工事業
不動産業
宅配便事業者
土地売買業
不動産賃貸業
持株会社
マリーナ業
ゴルフ場運営
ゴルフ場運営
木造建築工事業
北海道
東京都
東京都
神奈川県
大阪府
東京都
愛知県
東京都
茨城県
大阪府
2013年4月
2008年4月
2010年10月
2009年1月
2010年11月
2012年10月
2015年2月
2011年3月
2009年4月
2010年5月
※2008年1月~2016年6月までに特別清算を申請した企業
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特別企画:特別清算の動向調査
3. 特別清算の申請事由
2014 年以降、第二会社方式の会社分割が増加
2008 年 1 月~2016 年 6 月までに特別清算を申請した企業のうち、負債 10 億円以上を対象に特
別清算の申請に至った事由を分類すると、2015 年は「第二会社方式の会社分割スキーム」を利用
した企業が 27 社(構成比 46.6%)となり、2014 年に続いてトップとなった。第二会社方式とは、
会社(以下、旧会社)のなかで「グッド」
「バッド」に分類し清算する流れで、利益を生み出せる
採算事業等を会社分割の形式で新会社に承継、金融債務が残された旧会社を特別清算するスキー
ムである。直近では 2014 年、2015 年と、会社清算よりも第二会社方式の会社分割スキームを活
用する特別清算申請企業の数が上回っている。
金融機関や債権者に事前の承諾なく、突然、会社分割による第二会社方式で新設分割を行い、
旧会社を特別清算・破産させる濫用的会社分割が問題となっている。2014 年の改正会社法によっ
て、新会社(事業承継会社)に承継されない債権者を害することを知って会社分割がなされた場
合、旧会社の債権者は新会社に対し、債務の履行を請求できるようになった。しかし、それだけ
は濫用的会社分割への対策としては不十分との指摘も多い。
特別清算の申請事由
(件)
2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
会社分割後に関係会社に事業譲渡
別会社に事業譲渡
第二会社方式の会社分割スキームを利用
会社清算
合計
2
2
33
53
90
1
3
24
54
82
2
3
19
51
75
2
2
22
43
69
1
27
32
60
3
23
39
65
1
2
31
24
58
5
27
26
58
(%)
(件)
2016年
構成比 (1月~6月)
-
8.6
2
46.6
14
44.8
20
100.0
36
※負債10億円以上の特別清算申請企業のみ集計
第二会社方式の流れ
企業(旧会社)
切り離し
採算事業・部門を承継し存続
第二会社
採算事業・部門
会社分割
事業譲渡
不採算事業・部門
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特別清算or破産
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特別企画:特別清算の動向調査
4. 業種別
「サービス業」が 8 年連続でトップ
2008 年 1 月~2016 年 6 月までに特別清算を申請した企業を業種別にみると、2008 年~2015
年まで「サービス業」が 8 年連続でトップとなった。
2015 年に特別清算を申請した 285 社を業種細分類別でみると、
「不動産業」
(36 件、前年比 2.7%
減)が最多となった。従前から多かった「不動産業」は、リーマン・ショック後の 2009 年に直近
ピークとなる 50 件発生したが、その後は一服傾向にある。
次いで、
「旅館・その他宿泊所」
(20 件、同 66.7%増)、
「広告・調査・情報サービス業」
(20 件、
同増減なし)
、「飲食料品小売業」(16 件、同 128.6%増)が続いた。
業種別件数
業種別
建設業
製造業
卸売業
小売業
運輸・通信業
サービス業
不動産業
その他
合計
(件)
2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
23
50
55
51
15
89
44
21
348
21
54
55
44
16
80
50
8
328
26
60
52
43
15
83
40
19
338
13
52
44
38
8
73
29
16
273
22
43
50
31
12
65
30
13
266
23
53
39
28
6
74
25
19
267
24
41
47
31
16
67
37
19
282
15
56
49
39
12
63
36
15
285
(%)
(件)
構成比
5.3
19.6
17.2
13.7
4.2
22.1
12.6
5.3
100.0
(1月~6月)
2016年
15
26
22
25
8
25
12
5
138
2015年 業種細分類別「特別清算」件数 上位10社
主業名
1
2
2
4
5
6
7
8
8
8
不動産業
旅館・その他宿泊所
広告・調査・情報サービス業
飲食料品小売業
その他の卸売業
運輸業
繊維・衣服・繊維製品卸売業
総合工事業
食料品・飼料・飲料製造業
金融・保険業
2015年
前年比
(%)
36 ▲ 2.7
20
66.7
20
0.0
16 128.6
15
15.4
12 ▲ 25.0
11
83.3
10 ▲ 41.2
10
66.7
10
25.0
注1:2015年の「特別清算」件数が上位10にランクインした業種
注2:業種名(コード)は「帝国データバンク産業分類細分類」による
注3:当該企業の事業内容のうち、取引額が最も大きいものを主業として集計
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特別企画:特別清算の動向調査
5.まとめ
2008年1月~2016年6月までに特別清算を申請した企業は2525件、負債総額は3兆3795億4300
万円となった。2015年は285件となっており、2013年以降、増加傾向が続いている。他方、直近
では、08年(348件)と比べると約18.1%の減少となったが、倒産件数全体でみると、ピーク時か
ら約4割減るなかで、特別清算は約2割の減少にとどまっている
また、負債10億円以上の企業で特別清算申請前後の事業状況をみると、2015年は「第二会社方
式の会社分割スキーム」を利用した企業が27社(構成比46.6%)となり、最多となった。2014年、
2015年と、会社清算企業よりも第二会社方式の会社分割スキームを活用する特別清算申請企業が
増加傾向にある。
特別清算は破産と同様に清算手続きではあるものの、近年では、私的整理や再生など事業再生
を目的としたスキームとしての活用が広がっている。こうしたことから、今後においても地方を
中心に第二会社スキームや事業譲渡型の特別清算が増える可能性が否めない。
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東京支社情報部
担当:田中 祐実
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