リスクアセスメント講習 奥村技術士・労働安全コンサルタント事務所 1. リスクアセスメント実施フロー STEP 1 対象設備の決定 STEP 2 危険源の抽出 STEP 3 リスクレベルの評価 STEP 4 安全方策の実施 STEP 5 残留リスクの明示 ・関係する災害事例、ヒヤリハットの把握 ・設備を中心に危険源を抽出 ・トラブル時の対応作業や非定常作業も含めて リスク分析する ・安全防護策 ・リスクは許容 範囲か？ 危険源の除去 隔離による安全防護 停止による安全防護 非常停止装置の設置等 治具、保護具の使用 作業標準の制・改定 教育訓練、危険表示 終了 1 ◆(STEP 1) 対象設備の決定 リスクアセスメント責任者が、ライン内にある設備・作業の中から 過去の災害やヒヤリハット事例等によりリスクアセスメント を実施する必要がある設備 危険有害性を有する作業 を把握、確認します。 ◆(STEP 2) 危険源の抽出 設備と作業工程を混同しないように、設備の危険源に着目 することが重要です。エネルギーがあるところに危険源がある。 エネルギーがどこにあるか見極める。傷害が起きるかどうかを 先に考えないことが大切です。 危険源の抽出方法＞＞設備毎に危険源を追求する危険源列挙法を採用する。但し、非定常作業で関わる 危険源が見落とされる場合があるので、非定常作業を含む下記 5項目を考慮しながら列挙すること。（但し、 日常性の高い項目から洗い出すこと。） 2 危険源の特定方法 エネルギーに着目して危険有害要因を列挙する 評価のバラツキを 抑えるために標準化 しました。 設備を中心に、 潜在リスクをもれなく 挙げるのがポイント。 (災害は設備と人の 接点で発生する) 危険源の特定演習 （演習） 下図の設備より、グループのみんなで 設備の危険源を抽出してください 個人で5分抽出。 その後グループで10分ブレーンストーミングで抽出 重要 重要 ＜ 設備仕様 ＞ 金属プレス装置 型締め力 ： 30ton 電源 ： AC200V 油圧 ： 7MPa（70kgf/㎠） 圧縮エアー： 0.5MPa（5kgf//c㎡) 金型 ： 上100kg 下100kg ＜ 危険源の特定 ＞ ・ エネルギーが存在する箇所 ・ 有害物資などの存在 危険源 種類 工 程 部 位 予測される事故、障害 3 ＜ 危険源の特定 ＞ ・ エネルギーが存在する箇所 ・ 有害物資などの存在 危険源の特定演習 抽出例 重要 重要 ※ 安全衛生パトロール的な内容になっていませんか。 網羅的にあげるためには、あくまでも上記の観点で。 危険源 種類 工 程 A １ プレス下降 金型にはさまれる A １ プレス上昇 上型と本体との間にはさまれる A １ 油圧 油圧配管が壊れ油が人に当たる A １ プレス品のエッヂ プレス品のエッヂで手を切る B １ 本体 （位置ｴﾈﾙｷﾞｰ） 地震等で転倒 B １ 上型 （位置ｴﾈﾙｷﾞｰ） 上型が落ちて下型にはさまれる E １ 電気配線 被覆が破れ感電する E １ ポンプモーター 感電 電源 ：AC200V E １ スイッチBOX 破損時、感電 油圧 ：7MPa（70kgf/㎠） F １ ポンプモータ 加熱時、やけど 圧縮エアー：0.5MPa（5kgf//c㎡) G １ 油圧ポンプ モータから騒音が発生。耳の障害 金型 ：上100kg 下100kg J １ プレス油ミスト エアーブロー時に飛散し吸い込む ＜ 設備仕様 ＞ 金属プレス装置 型締め力 ： 30ton 部 位 予測される事故、障害 重要 重要 危険源の特定演習 （演習） 身近で簡単な設備を題材に グループのみんなで会話して 危険源 種類 工 程 部 位 予測される事故、障害 設備の危険源を抽出してください ＜ 危険源の特定 ＞ ・ エネルギーが存在する箇所 ・ 有害物資などの存在 身近で簡単な設備 4 危険源に近づく頻度基準（お助けシート） 点 数 生産に直接かかわる作業 機械の清掃・点検・ トラブル・チョコ停等の発生 (原料･製品の加工･運搬) 調整・段取りによる作業 による復旧作業 4 1回/日以上 作業時には常に危険源 トラブル実績が多く何度 に近づく も処理 必要に応じて危険源に トラブル事例が時々ある 容易に危険源に触れられる 通常は危険源に近 づか トラブル事例がまれに 目一杯伸ばすと触れられる ない ある めったに危険源に近づか ない 想定されるが発生した 1回/週以上 3 危険源までの距離 無意識でも危険源に触れる 近づく 1回/月以上 2 1 それ以下 危険源に触れられない 実績がない ケガが発生する可能性基準（お助けシート） 危険事象別採点 挟まれ 転倒 衝突 墜落 感電 高温 安全対策の状況 巻き込まれ 落下 （ﾘﾌﾄ・ｴﾚｶ） 低温 可能性が 安全対策が全くされて 危険個所がむき 作業床以外で作業安定性の悪い台車 手摺り、安全柵等 電線が露出してお 噴出などによる いない。表示や標識が 出しで体の一部 吊荷の周囲が狭い等の使用。路面の がない り作業面が狭い 被災危険がある 非常に高い あっても不備が多い。 が届く 吊荷下に人がいる 急傾斜凹凸がある 危険状態で 点数 ケガが発生 する可能性 6 可能性が 4 危険源の遮蔽が 注意力を高めないと災害 につながる。 装置などが無い、または ているが体の一 不安定な吊作業 悪い 使用 り作業面に余裕が 出しで体の一部が が不十分で暴露さ 可能性が 安全装置等はあるが 安全装置付ｶﾊﾞ 〔積み荷、障害物） ある 床面に段差がある 路面の傾斜・凹凸 安全帯を使用 届く 活線作業用の保護 高低温部が遮蔽 突沸、噴出等によ ルールを守っていても る状態 電線が露出してお 高低温部がむき 部が届く 人的要因 （ヒューマンエラー等） 全くされず暴露され る吹き出しあり 脚立、椅子など 機能していない。 有害物 異物目入 安全柵、カバーや安全 カバー等が付い 床面が滑り易い 前方の見通しが 高い 2 有害光線 危険源からの遮蔽 有害物蒸気吸入 ルールを守っていても 可能性有り れる危険がある。 注意力を高めないと災害 につながる可能性が高い 危険源からの遮蔽 こぼれ、はね等の ルールを無視すると 多少不備がある。 ｰ等が付いている 専用吊具、道具を が若干ある。 ある が体の一部が届く 使用 可能性が 安全装置が完備され、 危険個所へ体の 滑り止めがある 平滑路面での運搬 有効な手摺り 電線被覆部分へ 危険源への立ち入りが どの部分も届かな － ｽﾄｯﾊﾟがある 体の一部も届かな り体のどの部分も 完璧で体のどの部 有効な排気装置 災害はほとんど起こらな 1 殆ど無い 困難。 い 踏み台を使用 具を着用 ｽﾄｯﾊﾟがない 柵などがある い されているが体の一 はされているが多少 可能性有り 災害につながる 部が届く危険性有 不備がある 可能性がある。 断熱、ｶﾊﾞｰ等によ 危険源の遮蔽が 届かない 分にも届かない 保護具の着用 あり 特別注意しなくても い。 5 ケガの程度基準（お助けシート） 危険事象別採点 点数 ケガの程度 10 7 4 致命傷 重傷 中傷 ケガの内容 挟まれ 落下 衝突 巻き込まれ 転倒 （ﾘﾌﾄ・ｴﾚｶ） 軽傷 感電 高温 有害光線 低温 異物目入 有害物 死亡又は手足の切断 死亡 死亡の可能性有 死亡の可能性有 死亡の可能性有 死亡の可能性有 死亡の可能性有 死亡失明可能性 多量致死性物質 失明等の重大な障害 重度障害 10kg・m以上 5m以上の高所 ２００Ｖ以上 放射能漏れ 毒物との接触 （障害等級３級以上） （腕脚損失） 接地低抵抗 20%以上の火傷 20km以上の車 重度のじん肺 骨折等入院の必要なｹｶﾞ重度の打撲・傷 重度の打撲・傷 重傷・入院 重度の打撲・傷 重傷 入院治療必要 重大な視力低下 致死性物質 または結果的に障害 重度の骨折 重度の骨折 永久後遺障害 重度の骨折 ２００Ｖ以上 10%以上の火傷 ﾚｰｻﾞⅣ0.5W越 毒物との接触 （４～１０級） 指などの損失 （5～10kg・m） 2m以上5m未満 高抵抗・ぬれ 片腕で10%相当 身体障害1KW～ 致命傷・重要リスク以外 重度の打撲・傷 重度の打撲・傷 全治９日以上 重度の打撲・傷 中傷 重度の火傷 視力低下 重度の障害中毒 のケガを発生しうる。 (2～5kg・m） 重度の打撲・傷 軽度の骨折 200V高抵抗乾 手のひらサイズ ﾚｰｻﾞⅢ～0.5W 特化物3類 1m以上2m未満 100V低抵抗ぬれ で1% 身体障害～0.5kw 有機溶剤1種 軽度の火傷 ほとんど影響無 軽微な障害中毒 軽度の骨折 （１１～１４級） 1 墜落 応急手当にて労働継続 軽度の打撲・傷 全治８日以下 軽度の打撲・傷 軽傷 が可能なケガを発生し 軽度の打撲・傷 （～2kg・m） 軽度の打撲・傷 1m未満 100V高抵抗 ﾚｰｻﾞⅡ 有機溶剤2,3種 ２４V以下 1mW以下 一時的障害 得る。 リスクレベル リスクレベル＝頻度＋可能性＋ケガの程度 リスクレベル ポイント 対策 Ⅰ ～6 許容可能とする。 Ⅱ 7～9 維持監視とする。 Ⅲ 10～12 費用対効果を見ながら低減努力。 Ⅳ 13～15 優先的にリスク低減対策を実施。 Ⅴ 16～20 直ちにリスク低減対策を実施。 6 重要 重要 危険源の特定演習 （演習） 「危険源の特定演習」で抽出した危険源に対して グループのみんなで 準備する道具 リスク評価してください ② 評価基準 （お助けツール） 危険源 部 位 ＜ 設備仕様 ＞ 金属プレス装置 予測される事故、障害 プレス下降 金型にはさまれる プレス上昇 上型と本体との間にはさまれる 油圧 油圧配管が壊れ油が人に当たる プレス品のエッヂ プレス品のエッヂで手を切る 本体 （位置ｴﾈﾙｷﾞｰ） 地震等で転倒 上型 （位置ｴﾈﾙｷﾞｰ） 上型が落ちて下型にはさまれる 電気配線 被覆が破れ感電する ポンプモーター 感電 スイッチBOX 破損時、感電 ポンプモータ 加熱時、やけど 油圧ポンプ モータから騒音が発生。耳の障害 プレス油ミスト エアーブロー時に飛散し吸い込む 評価例 ① リスク評価シート 作 業 区 分 a 危険に さらされ る頻度 4 危険状態で ケガが発生 する可能性 2 発 生した 場 合のケ ガの程度 10 リスクの 大きさ リスク レベル 16 Ⅴ 型締め力 ： 30ton 電源 ：AC200V 油圧 ：7MPa（70kgf/㎠） 圧縮エアー：0.5MPa（5kgf//c㎡) 金型 ：上 100kg 下100kg 重要 重要 危険源の特定演習 （演習） 身近で簡単な設備を題材に 準備する道具 グループのみんなで会話して ① リスク評価シート リスク評価してください ② 評価基準 （お助けツール） 危険源 部 位 予測される事故、障害 作 業 区 分 危険に さらされ る頻度 危険状態で ケガが発生 する可能性 発生した 場合のケ ガの程 度 リスクの 大きさ リスク レベル 身近で 簡単な 設備 7 リスクアセスメント評価シート記入マニュアル リスクアセスメント評価シートに、下記のようにまとめます。 ◆(STEP 3) リスクレベルの評価 特定された危険有害要因について、労働災害をもたらすリスクの現状評価を 行うため、その被害の大きさを推定し、被害の大きさをリスクレベルとして表します。 リスクレベルは、評価した評価点によりⅠ～Ⅴとなります。 複数で行い、リスクの大きさに著しい差が生じた場合はみんなの合意によって 調整します。最大の点数を採用するのが基本ですが、上下一人を切り捨てた 後に最大リスクを採用するのも一手法です。 リスク大 早急な対策が必要 安全とは危険源が許容できる 範囲内であるということ！ リスク小 Ⅰ： 許容できる Ⅱ： 多少問題がある Ⅲ： かなり問題あり Ⅳ： 重大な問題 Ⅴ： 許容できない 8 ◆（STEP4） 安全方策の実施 リ ス ク基 準 で 安 全 を考 え る イ ＜リスク低 減方策＞ 本質的安全設計 方策 危険源 に対して のみ施した 安全上 の対策 防護棚 （ガード） リスクは設計 段階で減らす 隔離による 安全防護 安全防 護装置（１） （インターロック装 置） ロ 危険源 を受入可能な リスク レ ベル に出来 ない場合、 近づけなくするあるいはやむ を得ず近づく場合は止めな いと近づけな くする手段 保 護 方 策 安全防 護装置（２） （トリップ装置 ） 停止による 安全防護 防護棚 （ガード） 非常停止 装置 ハ 付加防 護方策 危険源 を受入可能な リスクレ ベ ルに出来な い場合、ﾊ ｰﾄﾞ的対応 の付加 的手段として 実施 使用上の情報 （残存 リスク） イロハを実施して もな お残ったリ ス クについて 使用上の 通知、警 告を行 う おたすけシートに 基づき妥当性検証 エネルギ・ゼロ状態 の確保（ZM/S） 危険状態表示 ニ 安全方策には、 （イ）危険源を根本から排除する 本質的安全設計方策 （ロ）危険源は残るが近づけない ようにする安全防護 （ハ）機械的対策を付加する 付加防護方策 （ニ）対策してもなお残るリスクに 対して通知警告する使用上の 情報 の４つがあります。 以降は個別に資料を請 求してください。 安 全防護 付属文書 （確認結果） ↓ 条件付 きインターロック装置 （ISO14119）として リスク情報をみんなで 共有し合う 9
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