アジアニューズレター トピックス Ⅰ. タイにおける太陽光エネルギー事業の立上げ Ⅱ. ベトナムの最近の太陽光エネルギー政策と立法 コラム シンガポール新会社法解説(第 8 回)~少数株主の権利~ 2016 年 7 月号 Ⅰ. タイにおける太陽光エネルギー事業の立上げ 執筆者:小原 英志、Jirapong Sriwat、Apinya Sarntikasem タイにおける発電事業への民間投資は、総発電規模に応じて次の三つに分類できます。(1)独立発電業者(IPP)、(2)小規模発電 業者(SPP)、(3)零細規模発電業者(VSPP)であり、総発電規模がそれぞれ、90 メガワット超、10 メガワットから 90 メガワットの間、 10 メガワット未満の発電及び売電にかかる民間の事業を指しています。タイにおいて特に注目すべき点は、電力供給産業が国有 の政策に基づいていることです。そして、独立発電業者及び小規模発電業者からの電力の購入者はタイ王国発電公社(EGAT)の みに限られ、零細発電業者からの電力の購入者はタイ地方電力公社(PEA)に限られています。 独立発電業者として事業を運営する者の選別には入札が用いられることから、しばしば低額な入札を強いられているようであ り、独立発電業者としての投資は一般論としてはそれほど収益の大きいものではなく、小規模発電業者としての投資に比較して 普及しているとは言えません。また、零細規模発電業者は屋上太陽光エネルギー事業の運営のようなごく小規模な発電にかかる 民間事業を行うものであり、小規模発電業者への投資のように収益性のあるものではありません。 結局、タイにおける太陽光エネルギー事業への投資の大半は、小規模発電業者の形式で行われており、本稿も主として小規模 発電業者とこれに関係するタイの法規則に焦点を当てるものです。 1. 小規模発電業者の設立 小規模発電業者とは、2007 年の再生可能エネルギーによる発電のための小規模発電業者からの電力の買取りに関する規制 (その後の改正を含む)及び 2007 年の熱電併給システムによる発電のための小規模発電業者からの電力の買取りに関する規制 (その後の改正を含む)に定義されている通り、民間の又は公的な機関により運営されている事業であり、(a)風力、太陽光エネル ギー、小規模水力といった伝統的でない電源、若しくは廃棄物、残留物若しくはバイオマスなどの燃料、又は(b)天然ガス、石炭又 は原油といった伝統的なエネルギーの熱電併給システムによる利用のいずれかによる発電を行うものをいいます。 本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要が あります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、当事務所又は当事務所のクライアントの見解ではありません。 西村あさひ法律事務所 広報室 Tel: 03-6250-6201 E-mail: [email protected] Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -1- 太陽光エネルギーを含む再生可能エネルギーによる発電のために、小規模発電業者として事業を行うためのライセンスの申請 には、会社の登記書類、配線や器具の設計図、必要とされる保証書などの書類及び関連する証明書に加え、タイ王国発電公社 への電力売却にかかる要請書及び申込書の提出が求められます。書類の提出から 90 日以内に、タイ王国発電公社から申請人 に対してライセンスの付与の可否(すなわち同公社において電力を購入するか否か)について通知があります。小規模発電業を運 営するライセンスが与えられた場合、その後 2 年以内に電力売買契約書が締結されなければならず、さもなくば申請人からの電 力売買の要請と申込みは取り消されたものとみなされます。 EGATに対する小 規模発電業者ラ イセンスの申請 EGATからの 90 日 営業開始 ライセンス承認の 通知 EGATとの電力売 買契約書の締結 2年 EGATによる送 電網の検査と品 質管理調査 発電システムの 設置と試験 [図:小規模発電業の運営ライセンスの申請から営業開始までの手続] タイ王国発電公社からのライセンスの取得後、小規模発電業者として事業を行う者は、送電の開始前に、再生可能エネルギー による発電のための小規模発電業者からの電力を購入する際の規制で定められている条件を、追加で満たす必要があります。 この条件とは、(ⅰ)電力売買契約書の締結の少なくとも 15 日前までに、環境に与える影響に関する調査報告書を提出すること (該当する場合)、(ⅱ)同公社の定める営業開始日の少なくとも 10 日前までに、電力事業の運営に必要なライセンス類(下記の一 覧表に例示しました)を提示すること、及び(ⅲ)派生電力の売買契約、電力の安全性に関するサービス契約、送電網の接続にか かる契約、その他同公社が必要と定めた契約を締結することです。 資格及びライセンス 工場免許証(Ror.Ngor. 4) ビル建設許可証(必要な場合) 電力産業運営免許証 発電管理免許証 電力産業運営免許証 電力品質証明書 発行者 産業省 地方行政府の関連部署(すなわち、県庁若しくは郡の行政機関)又は産業用地庁 電力管理委員会 電力管理委員会 電力管理委員会 タイ王国発電公社 小規模発電業者の運営方法は、次の二つに分類することができます。いわゆる「固定契約」によるか「非固定契約」によるかで す。固定契約とは、長期に渡る電力売買契約のことであり、その期間は 20 年から 25 年の間で定められ、電力消費のピークとな る月に高い電力需要に応える必要があるものです。他方、非固定契約とは、短期の電力売買契約のことであり、その期間は 5 年 を超えることはなく、ピークとなる月の電力供給が必要でない代わりに、売買代金が固定契約の業者に比較して低い単価で支払 われます。 タイ王国発電公社と発電業者の間で締結される固定契約と非固定契約のいずれについても、同公社の電力売買契約雛形が利 用されます。固定契約については、不可抗力の場合、小規模発電業者への補償をすることで、同公社が小規模発電業者により 生成される電力を削減する権利があります。他方、非固定契約の雛形には、このような不可抗力時の発電業者への電力削減の 補償に関する規定はありません。 Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -2- 2. 電力代金の支払い 2007 年以来、タイ王国発電公社は、発電業者へ支払う電力代金の計算にあたり、歩合加算方式を採用しています。この方式に よると、加算される歩合は、現行の電力卸売価格の最上位にあたるものであり、太陽光エネルギー発電の場合はキロワットあたり 8 バーツ程度です。仮にこの加算歩合が実際にタイ王国発電公社で発生したコスト次第で変化して電気料金の形で消費者に転 嫁されるとすれば、消費者にとって過大な負担でしょう。そこで、2015 年には電力規制委員会が再生可能エネルギーにより発電さ れた電力の購入について、歩合加算に代えて電気料金表(FiT)政策を採用し、特に歩合加算方式の下では認められていなかった 小規模発電業者の事業ライセンスの申請者に適用することが予定されています。 3. タイにおける太陽光エネルギー事業の促進 2014 年 12 月、タイ王国投資委員会(BOI)は、再生可能エネルギー事業への投資の新たな促進政策を発表しました。この政策 の下では、太陽光エネルギー事業には、次のようなインセンティブが与えられています。すなわち、(土地代及び流動資産を除い た)投資に 100%影響する 8 年間の法人税免除措置、機械類に対する輸入税の免除措置、輸出用産品の製造に利用される重要 な原材料に対する輸入税について 1 年間の免除措置(タイ王国投資委員会が適切と考えれば延長も可能です)及び租税以外の 措置があります。 お ばら ひで し 西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士 バンコク事務所代表 [email protected] 2013 年 7 月バンコク事務所設立とともに、同事務所代表就任。2008 年~2009 年 三菱東京 UFJ 銀行米州法務室 (在ニューヨーク)、2011 年~2013 年 タイ Tilleke & Gibbins に出向。現在はバンコクを拠点として、タイ王国を中心と した東南アジア諸国における出資、合併、買収等の M&A 案件、コーポレート案件等に広く携わる。 小原 英志 ジ ラ ポ ン スリワット 西村あさひ法律事務所 バンコク事務所 タイパートナー※ [email protected] 2004年タイ国弁護士登録。2004年~2013年 バンコクのリンクレーターズ法律事務所での実務経験を経て、2013年8 月から西村あさひ法律事務所バンコク事務所にて勤務。タイ王国を中心とした国際コーポレートファイナンス、M&A 取引、事業再生/倒産、資源エネルギー等の国内外の数多くの案件に関与し幅広い知識と実務経験を有する。 Jirapong Sriwat ※外国法共同事業を営むものではありません。 アピンヤー サーンティカセーム 西村あさひ法律事務所 バンコク事務所 フォーリンアトーニー [email protected] 2009年タイ国弁護士登録。2009年~2010年 チュラーロンコーン大学法学部にて講師を勤める。2014年12月から西 村あさひ法律事務所バンコク事務所にて勤務。 Apinya Sarntikasem Ⅱ. ベトナムの最近の太陽光エネルギー政策と立法 執筆者:今泉 勇、Maria Glenda Ramirez、Nguyen Dang Minh ベトナム政府は、再生可能エネルギー計画にあたり、主に風力とバイオマスによる発電に焦点を絞ってきましたが、最近、高い 太陽光照射水準のある国において適当とされるように、ベトナムにおいても太陽光エネルギーが中心となりはじめようとしていま す1。 アジア開発銀行によると、この国で太陽光エネルギー発電が技術的にかつ潜在的に可能とされる能力は 130 億ワットにのぼる 1 アジア開発銀行「大メコン圏における再生可能エネルギー開発とその潜在力」(2015 年)120 頁。http://www.adb.org/sites/default/files/publication/161898/ren ewable-energy-developments-gms.pdf. Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -3- ものの、2015 年の時点では 400 万ワット分の設備しかなく、主に研究と農村の電化のために利用されているに過ぎませんでした 2 。 その後、太陽光エネルギー部門ではいくつかの進展が見られました。2016 年 3 月 18 日には、首相決定(428/QD-TTg)により 「2030 年に向けた 2011-2020 年期における電力開発に関する国のマスタープラン」の改正がなされています。法律上の文書とし ては、初めて太陽光エネルギー発電の詳細な目標値が記載されるに至りました。発電量としては、2020 年までに 8 億 5000 万 ワット、2025 年までに 40 億ワット、2030 年までに 120 億ワット、発電総量に占める割合としては、2020 年までに 0.5%、2025 年ま でに 1.6%、2030 年までに 3.3%が目標とされています3。 1. 太陽光エネルギー開発に関する首相決定案 2016 年 5 月 11 日には、チン・ディン・ズン副首相の隣席の下、政府高官が集い、太陽光エネルギー開発に対する援助の仕組 みに関する首相決定案(以下「首相決定案」といいます。)が議論されました4。この首相決定案が採択されれば、ベトナム法制にお いて初めて公布される太陽光エネルギーに特化した事業者向けの詳細なガイドライン及び優遇措置を定めた規制となるでしょう。 現在は、太陽光エネルギーに関する規制は、エネルギー、環境及び再生可能エネルギーの計画に関する一般法(2004 年 12 月 3 日付第 28/2004/QH11 号電力法、2014 年 6 月 23 日付第 55/2014/QH13 号環境保護法、並びに 2015 年 11 月 25 日付第 2068/QD-TTg 号再生可能エネルギーに関する 2030 年までの開発戦略及び 2050 年までの展望に関する首相決定)に組み込ま れたものに限られています。 首相決定案(第 3 版)は光起電力(PV)方式を用いる発電プロジェクトに適用されますが5、現行法令は次のような優遇措置を投資 家に定めています。 (a) 太陽光エネルギープロジェクトへの投資資金を国内金融市場及びオフショア市場において調達することが認められ6、現行 法令に基づく国による投資信用及び輸出信用についての優遇を受けられる7(現在のベトナム開発銀行による各プロジェクト への貸付上限額は総投資額の 70%で、貸付期間は最長 12 年であり、優遇金利が適用8) (b) ベトナム国内で入手することが不可能であって輸入されるプロジェクトの固定資産の構成品、原材料、供給物及び半製品に ついての輸入関税の免除9 (c) 現行税法が定める投資優遇措置に該当するプロジェクトに適用される投資優遇措置に基づく法人所得税の免除または減 額 国の送電網に接続する太陽光エネルギープロジェクト、送電線及び変電所もまた、投資優遇措置を受けられるプロジェクトに適 用される投資優遇措置に基づく土地使用料及び地代の免除又は減額を受けることができます10。 2 アジア開発銀行「発電部門の評価、戦略及び道標」(2015 年)8-9 頁。http://www.adb.org/sites/default/files/institutional-document/178616/vie-energy-r oad-map.pdf. 3 2016 年 3 月 18 日付の決定 428/QD-TTg 号第 3 条(a)。 4 首相決定案(第 3 版)は http://icon.com.vn/Portals/0/654-quyet dinh Thu tuong ve dien mat troi.doc(ベトナム語版のみ)。 5 首相決定案第 1.2 条 6 首相決定案第 11.1 条(a) 7 首相決定案第 11.1 条(b) 8 2011 年 8 月 30 日付第 75/2011/ND-CP 号国による投資信用及び輸出信用に関する政令第 7 条及び第 8 条。国による投資信用及び輸出信用の正確な貸付金利は、 (ⅰ)ベトナムドン建の国による投資信用貸付の年利は 8.55%、(ⅱ)ベトナムドン建の国による輸出信用貸付の年利は 6.9%(2011 年 8 月 30 日付第 75/2011/ND-CP 号 国による投資信用及び輸出信用に関する政令第 10 条、2015 年 5 月 19 日付第 76/2015/TT-BTC 号国による投資信用貸付及び輸出信用貸付の金利、並びに金利差 に関する投資後支援に関する通達第 1 条及び第 2 条)。 9 首相決定案第 11.2 条 10 首相決定案第 12.1 条 Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -4- 2. 買入価格 (1) 送電網に接続する太陽光エネルギープロジェクトの場合 首相決定案(第 3 版)は、ベトナム電力公社(EVN)又はその授権を受けた法主体が、太陽光エネルギープロジェクトにより発電さ れた全ての電力を、11.2 米セント/kWh(平均 1,800 ベトナムドン/kWh(およそ 8.89 円/0.8 米ドル))で買い入れる責任を負うと定めて います。一般電力の最低料金と最高料金は、2014 年 4 月 7 日付第 28/2014/QD-TTg 号電力小売り料金制度に関する首相決定 に定められています。この料金は、送電網に接続する太陽光エネルギープロジェクトのうち、太陽光電池効率が 16%を上回り、か つ発電能力が 100 メガワット(1 億ワット)未満のものにのみ適用されます11。 (2) 屋上に設置される太陽光エネルギープロジェクトの場合 屋上に設置され、送電網に接続する太陽光エネルギープロジェクトについては、EVN 又はその授権を受けた法主体が、余剰電 力を、3,150 ベトナムドン/kWh(付加価値税を除く。)(およそ 15 米セント)で買い入れます。この価格は、ベトナムドンと米ドルの為替 レートの変動に伴って調整されます12。 3. 終わりに 2016 年 5 月 11 日の会議において、ズン副首相は、商工省(MOIT)に、太陽光エネルギー開発のための優遇措置を制定するに あたっては、他国の事例を検討し、その経験に学ぶよう指示をしました。また、MOIT 及び地方当局に、その計画において、他の 計画との矛盾が生じることを避けるため、再生可能エネルギー資源の開発地域を特定するよう助言しました。ベトナム政府は、太 陽光エネルギーは未開発ではあるものの有望な潜在能力、及び同部門に多くの投資家が関心を示していることを考慮し、首相決 定案を速やかに採択するよう熱心に取り組んでいるように見受けられます。 いまいずみ いさむ 西村あさひ法律事務所 ホーチミン事務所 弁護士 [email protected] 2006年弁護士登録。2016年ベトナム外国弁護士登録。国内案件における M&A、一般企業法務の経験を生かし、ア ジア各地の新興国へ進出・展開する日系企業案件を担当。インドの Khaitan&Co 法律事務所への出向、東京事務所 での集中的なアジア業務対応の経験後、2016年3月より当事務所ホーチミン事務所にて勤務開始。 今 泉 勇 マ リ ア グレンダ ラ ミ レ ス 西村あさひ法律事務所 ホーチミン事務所 フォーリンアトーニー [email protected] 1996年フィリピン国弁護士登録。2008年ベトナム外国弁護士登録。2015年7月から西村あさひ法律事務所ホーチミン 事務所にて勤務。 Maria Glenda Ramirez グ エ ン ダ ン ミ ン 西村あさひ法律事務所 ホーチミン事務所 パラリーガル [email protected] 2012年5月から西村あさひ法律事務所ホーチミン事務所にて勤務。2016年ベトナム社会主義共和国弁護士登録。 Nguyen Dang Minh E AE AE 11 首相決定案第 2.1 条及び第 13.1 条 12 首相決定案第 13.2 条 E Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -5- シンガポール新会社法解説(第8回)~少数株主の権利~ 前回は、株主代表訴訟制度の概要について紹介しました。今回は、少数株主の権利保護の観点から、シンガポールの会 社法でどのような手当がなされているのかについて紹介します。 1. 帳簿閲覧権 各株主は、会社法上、会社が作成・保管義務を負う一定の書類(株主名簿、役職員名簿、役員の持株記録、社債権者名 簿及び担保記録)、株主総会議事録、会社資産に対する登録担保設定証書、及び財務諸表その他定時株主総会に提出さ れる書類について、閲覧権が認められています。 上記以外の書類(例えば、取締役会名簿、取引先名簿及び会計帳簿等)の帳簿閲覧権は、会社法上は認められておりま せんが、定款に規定することにより、各株主に対して付与することができると解釈されています。もっとも、会社法改正に 伴って新たに施行された非公開会社のモデル定款では、法令で認めれたもの又は株主総会若しくは取締役会で個別に認 められた場合を除き、各株主は帳簿閲覧権を有しないと規定されています。他方、合弁会社において、少数株主に会社法 で認められたもの以外の書類についての帳簿閲覧権を付与することが合意されている場合には、モデル定款を採用せず、 少数株主が閲覧できる書類を定款で列挙する場合もあります。 2. 少数株主への抑圧に対する救済措置 会社又は取締役が、(i)会社の事業運営に関し、株主に対して抑圧的な行為を行う場合、(ⅱ)株主の利益に反する行為を 行う場合、(ⅲ)株主に対して不公正に差別的な行為を行う場合、当該行為・決議の影響を受ける株主は、裁判所に対して、 救済処分を申し立てることができます。裁判所は、株主の権利が侵害されていると判断した場合、その裁量により、当該行 為の差し止め、内容の変更、他の株主又は会社による当該株主の株式等の買い取り、会社の解散を命じることになりま す。 判例・実務上、多数株主及びその指名取締役が少数株主との合弁会社のビジネス機会を多数株主等が支配する会社に 奪わせた場合、取締役の配当を高額にして、株主への配当金額を行わない又は少額の配当を行った場合、少数株主の持 株割合を不当に減少させる場合等が、少数株主への抑圧であると考えられています。なお、スクイーズ・アウトと少数株主 への抑圧に対する救済措置との関係については別の機会に紹介します。 3. 解散請求 シンガポールの会社法では、会社の解散事由の一つとして、解散を命じることが公正であると裁判所が判断した場合、が 規定されています。この裁判所が解散を命じることが公正な場合として、判例・実務上、合弁会社においてデッドロックが発 生し解決できない場合、多数株主が少数株主の権利を不公平に取り扱っている場合が含まれると考えられています。 4. 違法行為差止請求 会社又は取締役が、会社法に違反する行為を行う場合、株主は裁判所に対して、当該違法行為の差し止めを求めること が認められています。また、会社、取締役又は他の株主が、定款に違反する行為を行おうとする場合にも、株主は、裁判 所に対して、差止請求を行うことができると考えられています。 西村あさひ法律事務所 シンガポール事務所 弁護士 佐藤 正孝 Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -6- 西村あさひ法律事務所 海外ネットワーク バンコク事務所 北京事務所 上海事務所 Tel: +66-2-168-8228 E-mail: [email protected] Tel: +86-10-8588-8600 E-mail: [email protected] Tel: +86-21-6171-3748 E-mail: [email protected] 小原英志(代表)、下向智子、ジラポン・スリワット、 アティターンポーン・ウワンノ、トモヨシ・ジャイオブ オーム、アピンヤー・サーンティカセーム、カーン ター・ティップターン 中島あずさ(首席代表)、大石和也(代表) 前田敏博(首席代表)、野村高志(代表) ハノイ事務所 ホーチミン事務所 ジャカルタ事務所* Tel: +84-4-3946-0870 E-mail: [email protected] Tel: +84-8-3821-4432 E-mail: [email protected] Tel: +62-21-2933-3617 E-mail: [email protected] 小口光、武藤司郎、廣澤太郎、村田智美 グエン・テイ・タン・フォン、ブイ・ヴァン・クワン グエン・トゥアン・アン、グエン・ホアン・トゥアン グエン・マン・クオン、グエン・ホアン・リー ヴ・レ・バン、ハー・ホアン・ロック、大矢和秀 平松哲、今泉勇、チョン・フゥ・グー マイ・ティ・ゴック・アン、カオ・チャン・ギア ファン・ティー・ビック・フィン、マリア・グレンダ・ラミ レス、レ・ティ・タン・マイ、チャン・コック・ダット *提携事務所 町田憲昭 アレクサンダー・アグスティヌス・フタウルック シンガポール事務所 ヤンゴン事務所 Okada Law Firm Tel: +65-6922-7670 E-mail: [email protected] Tel: +95-(0)1-382632 E-mail: [email protected] Tel: 080-9042-4590 E-mail: [email protected] 山中政人(共同代表)、宇野伸太郎(共同代表)、佐藤正孝 煎田勇二、桜田雄紀、眞榮城大介、吉本智郎、早川皓太郎 イカング・ダーヤント、シャロン・リム、ディーパク・シンマー メリッサ・タン・スー・イン 湯川雄介(代表)、チー・チャン・ニェイン 岡田早織(代表) (香港) *関連事務所 当事務所のアジアプラクティスは、日本とベトナム、インドネシア、シンガポール、フィリピン、タイ、マレーシア、ラオス、カンボジア、ミャンマー、イン ド、中国、台湾、香港、韓国等を含むアジア諸国との間の、国際取引を幅広く取り扱っております。例えば、一般企業法務、企業買収、エネルギー・天然資源関 連、大型インフラ、プロジェクト・ファイナンス、知的財産権、紛争処理、進出及び撤退等の取引について、同地域において執務経験のある弁護士が中心とな り、同地域のビジネス及び法律実務を熟知した、実践的な法律サービスの提供を行っております。本ニューズレターは、クライアントの皆様のニーズに即応すべ く、同地域に関する最新の情報を発信することを目的として発行しているものです。 Ⓒ Nishimura & Asahi 2016 -7-
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