「高額な新薬」適正投与へ指針 厚労省、医療費を抑制

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「高額な新薬」適正投与へ指針 厚労省、医療費を抑制
病院や医師に要件
2016/7/21 2:00 日本経済新聞 電子版
厚生労働省は抗がん剤などの高額な画期的新薬の適正使用に乗り出す。病院に一定
の経験がある専門医を置き、緊急対応ができることなどを要件とする使用ガイドライン(指
針)を作る。新薬は思わぬ副作用が出るほか、医療費も高騰しがちなため、医師や医療機
関に対し投与の適正化を促す。指針の第1弾はがん免疫治療薬「オプジーボ」とし、指針
を満たさない場合は公的医療保険を適用しない方針だ。
厚労省は近く開く中央社会保険医療協議会(中医
協)で議論を始める。指針は各学会と共同で検討し、
2016年度末までにまとめる。早ければ17年度中に適
用する。
画期的な新薬の中には1回あたりの価格が数万円
以上になり、医薬品メーカーの年間売上高が1000億
円規模になるようなものがある。こうした薬を使う場
合、患者に対しては税金や保険料で賄う公的医療保
険の適用などにより、実際の負担を抑えている。
厚労省は今後、税金と保険料で患者負担を賄う部
分が大きくなるとみており、医師や患者向けの指針を
作って適正な投与を促す。病院と医師、患者向けに
要件を設け、病院には入院設備があり24時間の診療
が可能であること、医師には一定のがん化学療法の経験をそれぞれ求める方向だ。
患者にも使用に一定の条件をつけるが、年齢で差別しないようにする。ただ投薬しても
効き目がない場合もあり、どの患者に効果があるか調べ、一定の効果が期待できる患者
に限ることも検討する。また地方などで治療が受けにくくならないよう目配りする方針だ。
指針対象とする最初の新薬はオプジーボ。1人あたり年3500万円の超高額薬だが、手術
のできない末期がん患者にも劇的な効果があると期待される。
ただ患者5万人にオプジーボを1年間使うと、薬代
だけで1兆7500億円かかる。これは薬剤費全体の2
割に相当する。日本医師会も「皆保険制度が維持で
きなくなる」との危機感を持ち、何らかの対策が必要
とみる。
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXLASFS20H2...
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厚労省はオプジーボと並行し、高コレステロール血
症治療薬「レパーサ」の指針づくりも進める。今年4月
に発売し、1キットあたりの価格は2万2948円。ただ
繰り返し投与するため、患者負担は高くなりがち。厚
労省は適正使用を促し、薬剤費の増加を抑えたい考
えだ。
12年度の薬剤費は8.5兆円と、この10年で2兆円増
えた。近年はC型肝炎治療薬「ソバルディ」など、高額
薬が相次ぎ登場している。中小企業の社員が加入す
る全国健康保険協会(協会けんぽ)では高額薬剤の
使用が増え、15年度の保険給付費が6.3%増えるな
ど保険財政にも影響が出つつある。
厚労省は指針の導入とともに、保険適用の対象と
する病気を拡大する際に、価格も引き下げる案も検討する方針だ。医療費が膨張する中
で、適用範囲が広くなりすぎているとの指摘もある。薬を使いたいという患者の希望に歯
止めをかけるわけにはいかないため、医療費抑制とどう両立するかが課題になる。
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