浦添市中小企業・小規模企業振興基本条例(案) (前文) わたしたちの

浦添市中小企業・小規模企業振興基本条例(案)
(前文)
わたしたちのまち浦添は、沖縄本島の南側に位置し、西海岸沿いにあって、
交通の利便性や開発における高い潜在力を有する地域である。浦添の歴史は古
く、沖縄の歴史上最初に王統が確立した地域として知られ、12世紀後半から
約 220 年間に渡り政治、経済、文化の中心地として栄えてきた。
戦前は農村として栄えた浦添だが、戦後においては、人口が急増し、国道5
8号沿線においては、沖縄県を代表する企業が集積し、県の産業発展に寄与し
てきた。その間、米軍基地の影響を受けた商店街の振興、沖縄県卸商業団地の
移転など商工業中心の経済地域として発展してきた。現在においては、県内流
通企業を核としながら、小企業者が多数を占める本市の中小企業及び小規模企
業が独自の企業活動を行うことで、雇用の担い手と地域経済の活性化及び市民
生活や地域の行事等に貢献している。
まちづくりの原動力となる市民一人ひとりが安心して健やかに夢を持って暮
らせる社会を実現し、浦添市が今後も発展していくためには、中小企業及び小
規模企業が地域に根差して、創業及び事業の継続を行うことが、地域住民の雇
用並びに各自治会、通り会などと連携した地域力の向上ひいては、地元の振興
につながっていくものである。
中小企業及び小規模企業の振興が、地域経済の発展に大きく関わり、市民生
活及び福祉の向上に寄与することを、市、企業及び市民が十分理解し、中小企
業及び小規模企業の振興と地域経済のさらなる発展を図るため、この条例を制
定する。
【解説】
条例制定の背景や趣旨・目的・基本原則を述べた文章が「前文」といわれるも
のです。前文は具体的な法規を定めたものではなく直接法的効果が生ずるもの
ではありませんが、条例の一部を構成するものであり、各条項の基準となりま
す。
浦添市の歴史的背景や今後の方向性、中小企業・小規模企業の役割の重要性
や条例の目的について記述しています。
(目的)
第1条 この条例は、中小企業・小規模企業が産業及び経済の発展に果たす役
割の重要性に鑑み、本市の中小企業・小規模企業の振興に関して基本となる事
項を定め、市、企業及び市民等各関係者がそれぞれの役割及び責務を明確にし、
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相互理解を深めることによって、地域産業の安定化・活性化を推進し、もって
市民生活の向上を図るとともに、地域社会の発展に寄与することを目的とする。
【解説】
条例の立法目的を規定しています。目的規定は、一見して条例の内容を理解
できるよう表現したものです。
ここでは、企業の振興に関する基本事項・役割・責務を示すことによって、
本市の地域社会の発展及び市民生活の向上を図ることを目的としています。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各
号に定めるところによるものとする。
(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和 38 年法律第 154 号)第2条第 1 項各
号に規定する事業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(2) 小規模企業者 中小企業基本法(昭和 38 年法律第 154 号)第2条第5項
に規定する事業者及び小規模企業振興基本法(平成 26 年法律第 94 号)第2条
第2項に規定する事業者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをい
う。
(3) 中小企業関係団体 中小企業団体の組織に関する法律(昭和 32 年法律第
185 号)第3条第1項各号に規定する中小企業団体、商工会議所、中小企業団
体中央会、中小企業家同友会、商店街振興組合並びにこれらに準ずる団体で市
長が特に認めるもののうち、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(4) 大企業者 中小企業者・小規模企業者・小企業者以外の事業所であって、
市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(5) 商店街 小売業、飲食業及びサービス業を営む店舗が集積している地域を
いう。
(6) 商店会 商店街にあって、主として小売業、飲食業又はサービス業を営む
者で構成され、これらの事業者の事業の健全な発展及び商店街の振興に寄与す
ることを目的として組織された団体をいう。
(7) 金融機関等 この条例において「金融機関等」とは、銀行、信用金庫、そ
の他の金融業を行うもの及び信用保証協会をいう。
(8) 学校 学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第 1 条に規定しているものを
いう。
(9) 市民 市内に在住、在勤又は在学をするものをいう。
【解説】
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条例の中で用いる用語の意義を定めるものです。
中小企業基本法、中小企業支援法、小規模企業振興基本法及び経済産業省にお
ける定義を用いています。
(基本方針)
第3条 中小企業・小規模企業の振興は、地域産業が栄え、かつ、活力のある
まちづくりを目標とし、中小企業者・小規模企業者の自らの創意工夫及び自主
的な努力を尊重しつつ、国、県その他の関係機関との連携を図り、協力を得な
がら、市の地域特性に適した施策を、市、中小企業者、小規模企業者、中小企
業者関係団体、大企業者、商店会、金融機関等、学校及び市民が協働して推進
することを基本とする。
【解説】
本条は、第1条の目的である中小企業・小規模企業の振興を実現するための
振興施策全体の基本方針を規定しています。
中小企業者・小規模企業者、自らの努力を前提とする一方で、国・県その他
の関係団体との連携を図りながら、市の地域特性に適した施策を市全体総ぐる
みで協働して施策を推進することを示しています。
(基本的施策)
第4条 前条の基本方針に基づく基本的施策は、次のとおりとする。
(1) 中小企業者・小規模企業者の経営基盤の強化を図ること。
(2) 中小企業者・小規模企業者の資金調達の円滑化を図ること。
(3) 中小企業者・小規模企業者の人材の確保及び育成を図ること。
(4) 中小企業者・小規模企業者が行う雇用の促進及び就労関係の改善等への支
援を図ること。
(5) 中小企業者・小規模企業者の販路拡大を図ること。
(6) 中小企業者・小規模企業者に関する情報発信を図ること。
(7) 経済的・社会的環境の著しい変化への中小企業者・小規模企業者の適応の
円滑化を図ること。
(8) 地域資源の利活用による産業・観光の発展及び創出により、市内消費の拡
大を図ること。
(9) 商店街の振興を図ること。
(10) ものづくりの振興を図ること。
(11) 中小企業者・小規模企業者と農業、漁業その他の産業との連携促進を図る
こと。
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【解説】
第3条の基本方針を実現するための基本的施策を規定しています。本条は、
市のみが行う施策としての規定ではなく関係者全体の共通認識としての位置づ
けを図っています。
(市の責務)
第5条 市は、前条の基本的施策を実施するに当たっては、市民の理解と協力
を得ながら、国、県、その他関係機関との連携及び協力を図り、社会経済情勢
の変化に対応した中小企業者・小規模企業者の振興に関する施策を策定し、実
施する責務を有する。
2 市は、工事の発注、物品及び役務の調達等に当たっては、予算の適正な執
行に留意しつつ、中小企業者・小規模企業者の受注機会の増大に努めなければ
ならない。
【解説】
中小企業・小規模企業の振興を推進していくために、市が担っていく責務に
ついて規定しています。
条例では、市の役割を「責務」とすることにより、中小企業・小規模企業の
役割、市民の協力よりも強く義務付けています。中小企業・小規模企業の振興
を推進していくために、社会情勢・経済環境の変化に即した施策の実現や、国
等との連携及び関係機関の協働の推進に努めることを規定しています。
また、2項では、市内事業所は地域経済、雇用を支える重要な役割を担って
いることから、建設工事等の発注や物品、役務の調達に当たっては、受注機会
の確保に努めることを規定しています。
(中小企業者・小規模企業者の役割)
第6条 中小企業者・小規模企業者は、経済的社会的環境の変化に即応し、経
営革新、経営基盤の強化、従業員の福利の向上、企業人材の育成及び雇用の確
保に積極的に取り組むよう努めなければならない。
2 中小企業者・小規模企業者は、地域経済の振興を図るため、市内において
生産され、製造又は加工される産品(以下市産品という。)の利活用及び商工会
議所等の中小企業団体への加入に努めるものとする。
【解説】
中小企業・小規模企業の振興を推進していくために、中小企業者・小規模企
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業者の役割を規定しています。
1項では、事業者が基本方針に定める創意工夫と自助努力に基づく事業活動
を行うことにより、経営基盤の強化、従業員の育成、雇用の安定、福利厚生の
充実に取り組むことを規定しています。
2項では、中小企業者・小規模企業者が営む事業の改善発達を図るため様々
な地域振興事業に取り組んでいることから、このような活動を行っている中小
企業関係団体への加入及び市産品の利活用による地域活性化に努めることを規
定しています。
(中小企業関係団体の役割)
第7条 商工会議所等の中小企業関係団体は、基本方針に基づき、中小企業者・
小規模企業者の経営の向上及び改善に積極的に取り組むとともに、市が行う中
小企業者・小規模企業者の振興に関する施策の実施について協力するよう努め
るものとする。
【解説】
中小企業関係団体は、中小企業者・小規模企業者を支援していこうとする団
体です。技術の向上・開発、経営の合理化など中小企業者・小規模企業者を取
り巻く環境を改善するなど、中小企業者・小規模企業者の抱えている様々な諸
問題を是正するための役割を担っています。中小企業関係団体は、このような
活動に積極的に取り組むことや市との連携・協力により中小企業者・小規模企
業者の振興に努めることを規定しています。
(大企業者の役割)
第8条 大企業者は、基本方針に基づき、中小企業者・小規模企業者と共に地
域社会を構成する一員として社会的責任を自覚するとともに、中小企業者・小
規模企業者が地域経済を支える重要な存在であることを認識し、中小企業者・
小規模企業者との連携に努めるものとする。
2 大企業者は、地域経済の振興を図るため、市産品の利活用及び商工会議所
等の中小企業関係団体への加入に努めるものとする。
【解説】
大企業者は、数は少ないが、多くの労働者を雇用しており、地域社会や中小
企業者・小規模企業者に対し大きな影響力を有していることから、中小企業・
小規模企業の振興に関して一定の役割を求めるものです。
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(商店街で事業を営む者の役割)
第9条 商店街で事業を営む者は、商店街の振興を図るため、商店会への加入
に努めるものとする。
2 商店街で事業を営む者は、商店会が商店街の振興に関する事業を実施する
ときは、応分の負担により当該事業に協力するよう努めるものとする。
【解説】
商店街の振興を推進するために、事業者は商店会への加入や商店会が実施す
る事業に対しての応分負担をすることを規定しております。
商店会は、事業者の協力を得る為に、加入促進の取り組みや事業内容の周知
を図ることなどを規定しています。
(金融機関等の役割)
第 10 条 金融機関等は、基本方針に基づき、中小企業・小規模企業が経営の革
新及び経営基盤の強化に取り組むことができるよう円滑な資金の供給、経営相
談、販路拡大の支援等を行い、中小企業・小規模企業の育成及び発展に協力す
るよう努めるものとする。
2 金融機関等は、中小企業・小規模企業が市の経済発展に果たす役割を理解
し、市が実施する中小企業振興施策に協力するよう努めるものとする。
【解説】
金融機関等は、中小企業・小規模企業が、経営の革新及び経営基盤の強化に
取り組むことができるよう資金調達や支援等に努め、中小企業・小規模企業が、
本市経済振興に果たす役割を認識し、その経営安定化に協力することを規定し
ています。
(学校の役割)
第 11 条 学校は、中小企業者・小規模企業者の事業活動が市の発展に貢献して
いることへの理解を深めるよう促し、振興施策及び振興事業への参加に配慮す
るよう努めるものとする。
2 学校は、中小企業者・小規模企業者と連携して地域の将来を担う人材の育
成に努めるとともに、地域経済の振興に努めるものとする。
【解説】
学校と市内事業者が連携し、中小企業・小規模企業がどのような事業活動を
行っているか会社見学、職業体験等の活動を通して学ぶ機会を設け、将来地域
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に貢献できる人材の育成に努めていただきたいとの思いを込め、学校の役割と
して規定しています。
(市民の理解と協力)
第 12 条 市民は、中小企業者・小規模企業者の振興が市民生活の向上において
果たす役割の重要性を理解し、中小企業者・小規模企業者の健全な発展に協力
するよう努めるものとする。
2 市民は、消費者として市産品及び市内で提供される商業サービスを利用す
るよう努めるものとする。
【解説】
市民の皆さまにも市内の中小企業者・小規模企業者を振興することによって、
市民生活の向上、地域経済の活性化に寄与することを理解してもらい、市産品
や市内で提供される商業サービス等の利用や参加をすることで、中小企業者・
小規模企業者の振興に協力することを求めるものです。
(中小企業・小規模企業振興会議)
第 13 条 本条例に掲げる目的の達成に向けて、企業者・中小企業関係団体、学
識経験者、金融機関、その他の多様な構成員により、中小企業・小規模企業振
興会議(以下「振興会議」という。)を設置する。
2 振興会議は、次に掲げる事項に取組むものとする。
(1)振興施策について審議し、必要に応じて調査及び研究を行うこと。
(2)効果的かつ実効性のある振興施策については、市長に提案するとともに、検
証を行うこと。
3 市長は、振興会議において、振興施策の実施状況を報告するものとする。
【解説】
中小企業者・小規模企業者からの意見や課題を抽出し、振興施策に対する調
査、検証、効果的な施策の提案を行い、市の振興計画やビジョン、予算などに
反映させることによって、PDCAを確立させ、本条例の推進を図り、振興施
策の実施について審議する機関として規定しています。
(委任)
第 14 条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、
市長が別に定める。
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【解説】
委任規定とは、条例に規定している事項に関し、細目的な条項を条例以外の
規定で定めるためのもので、一般に条例本則の末尾におかれます。
附則
この条例は、平成○○年○○月○○日から施行する。
【解説】
ここでは、条例の効力が発生する日を定めています。
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