簡易講演要旨集 - NPO法人 グリーンテクノバンク

グリーンテクノバンク・てん菜研究会
第 14 回技術研究発表会(一般講演)
簡易講演要旨集
日 時 : 平成28年7月20日(水) 10時00分~16時40分
場 所 : 北農ビル 19階 第2、3、4会議室 (札幌市中央区北4条西1丁目)
<発表12分、質疑応答2分:1鈴11分、2鈴12分、3鈴14分>
1.ビート・タバコ異科接木の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10:10
○田添沙織・久保友彦(北海道大学大学院農学院)
2.テンサイ新品種「KWS 2K314」の特性について
・・・・・・・・・・・・10:25
○近藤悠真・佐藤悠子・安達時雄・大竹 勝・斎藤英俊(日本甜菜製糖株式会社)
3.「リボルタ」の抽苔軽減対策試験について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10:40
○藤井 寛・根津隆次(北海道糖業株式会社)
4.ビート西部萎黄ウイルス抵抗性育種の試み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10:55
○黒田洋輔・上田重之・岡崎和之・高篠賢二・豊島真吾・高橋宙之・松平洋明・田口和憲
(農研機構北海道農業研究センター)
5.ビート西部萎黄ウイルス(BWYV)に対する抵抗性育種素材の選抜
1
2
・・・・・・・・・11:10
1
○上田重文 ・三宅規文 ・高橋宙之 (1 農研機構北海道農業研究センター、2 道総研十勝農試)
6.テンサイ西部萎黄病に関与するウイルスの寄生性、ELISA 検出および分類学的考察 ・・11:25
吉田 直人・丹羽 昌信・〇玉田 哲男 (ホクレン農総研)
7.次世代シーケンサーを活用したテンサイ共生細菌の解析 ・・・・・・・・・・・・・11:40
○岡崎和之・高橋宙之・田口和憲・黒田洋輔・上田重文・池田成志
(農研機構北海道農業研究センター)
8.てん菜移植栽培における省力・低コスト化推進のための
○鷹田秀一
栽植密度低減栽培と問題点 ・・・・・・・・ 13:45
・渡部敏裕 ・大崎満 (1北海道地域農業研究所・2北海道大学大学院農学院)
1,2
2
2
9.直播栽培と移植栽培におけるテンサイ品種の収量反応
・・・・・・・・・・・・・ 14:00
○池谷聡(道総研北見農業試験場)
10.JST CREST「農業ビッグデータ」の概要と
てん菜の網羅的データ収集法に関す考察
○平藤雅之(農研機構北海道農業研究センター、筑波大生命環境科学研究科)
・・・ 14:15
GTBH てん菜研究会第 13 回技術研究発表会簡易講演要旨
11.てん菜育種における遺伝的変異は生育環境を変化させてきたか?
・・・・・・・・14:30
○臼井靖浩・廣田知良・田口和憲・小南靖弘・下田星児・岡崎和之・黒田洋輔・松平洋明・
平藤雅之(農研機構北海道農業研究センター)
12.アメリカ合衆国におけるテンサイの育種研究について・ ・・・ ・・・・・・・・・14:45
○田口和憲(農研機構北海道農業研究センター)
13.ドイツ畑作地域における新たな集団的営農システムの取り組み
-作業受委託システムやトランスボーダーファーミングを中心に- ・・・・・15:00
○若林勝史 1・鈴木剛 2・澁谷幸憲 1・吹上和義 3・成田勇治 3・横岡智 3
(1農研機構北海道農業研究センター、2道総研中央農業試験場、3鹿追町農業協同組合)
1.ビート・タバコ異科接木の検討
○田添沙織・久保友彦
(北海道大学大学院農学院)
テンサイの採種には春化処理が必要であるが、これは時間と手間を要する過程である。
一方で、花成の分子機構は明らかになりつつあり、花成促進因子の供給が鍵となることが
わかっている。ここで、タバコは広範な植物種に接木可能だという報告があり、タバコ(多
年生・中性)から接木面を介してテンサイに花成促進因子を輸送できれば花成が誘導される
かもしれない。以上の背景から、テンサイとタバコの接木可能性について検討した。
2.テンサイ新品種「KWS
2K314」の特性について
○近藤悠真・佐藤悠子・安達時雄・大竹勝・斎藤英俊
(日本甜菜製糖株式会社 札幌支社 農技開発部 農技開発課)
「KWS 2K314」は、収量性・病害抵抗性を兼ね備えたテンサイ新品種である。
対照品種の「かちまる」と比較して、根重はやや重く、根中糖分は同等、糖量はやや多か
った。また、そう根病・褐斑病・黒根病に対して高い耐病性を示した。これらの特性から、
本品種を「かちまる」に置き換えることで、耕作者の収益性向上に寄与できる。
GTBH てん菜研究会第 13 回技術研究発表会簡易講演要旨
3.
「リボルタ」の抽苔軽減対策試験について
○藤井寛・根津隆次
(北海道糖業株式会社)
各種病害抵抗性を有する「リボルタ」は抽苔耐性がやや弱いため、早期播種や過度な低
温による馴化処理は避けて栽培しているが、気象の急激な変化等により意図せず低温に当
たる場合がある。このため、この場合の抽苔発生リスクを下げる方法の検討を行った。本
試験では、低温(春化)処理を行った「リボルタ」苗に、高温処理を実施し脱春化を引き
起こすことで、抽苔発生リスクを軽減できないか検討した。その結果、30℃・12 時間、5℃・
12 時間の処理を 7 日間実施すること等で抽苔発生の軽減が見られた。
4.ビート西部萎黄ウイルス抵抗性育種の試み
○黒田洋輔・上田重之・岡崎和之・高篠賢二・豊島真吾・高橋宙之・松平洋明・
田口和憲
(農研機構北海道農業研究センター)
近年、北海道ではビート西部萎黄ウイルス(BWYV)の発生が著しい。BWYV は、砂糖用の
ビートであるテンサイに感染することにより、葉が黄変して、ショ糖収量の減収を引き起
こす。BWYV は、媒介昆虫のモモアカアブラムシによって様々な種類の植物へ感染するため、
テンサイを対象とした防除だけでは病害のまん延防止が困難である。本発表では、BWYV の
発生や蔓延の防止に最も有効な手段の一つである BWYV 抵抗性品種開発の試みについて紹
介する。
GTBH てん菜研究会第 13 回技術研究発表会簡易講演要旨
5.ビート西部萎黄ウイルス(BWYV)に対する抵抗性育種素材の選抜
○上田重文 1・三宅規文 2 ・高橋宙之 1
(1 農研機構北海道農業研究センター、2 道総研十勝農試)
テンサイ西部萎黄病は、モモアカアブラムシなどアブラムシ類によって媒介される Beet
western yellows virus (BWYV) が病原である。北海道で発生する BWYV に対する抵抗性を
有する遺伝資源の探索を目的として、米国農務省(USDA)から分譲を受けた 4 系統につい
て抵抗性試験を行った。USDA 遺伝子資源及びリッカ(感受性品種)に対して、BWYV 保毒モ
モアカアブラムシを、3 日間接種、殺虫後、ガラス室条件下で育苗し、全株について RT-PCR
により BWYV の感染を確認した上で、生育状況と発病程度を約 4 ヶ月間調査した。その結
果、USDA 系統は感受性品種に比べてほとんど発病が確認されなかった。このことから、導
入した USDA 系統は、北海道で発生する BWYV に対し耐病性を有することが示唆された。
6.テンサイ西部萎黄病に関与するウイルスの寄生性、ELISA 検出および分類学的考察
吉田直人・丹羽昌信・○玉田哲男
(ホクレン農総研)
ビート西部萎黄ウイルス(BWYV)には、寄生性の異なる系統が存在するとされている。
本試験では、各種作物から分離されたウイルスの特徴付を行った。接種試験の結果、アブ
ラナ科作物とテンサイから検出されたウイルス分離株の間には、寄生性にかなりの違いが
みられた。しかし、いずれのウイルスも市販の ELISA キットにより検出された。一部塩基
配列解析の結果、アブラナ科作物から分離されたウイルスは、Brassica yellows virus
(BrYV)と同定された。一方、テンサイから分離されたウイルスは、アブラナ科作物には寄
生性が低く、上記 BrYV および欧米産 BWYV とは、生物学的および遺伝的に異なる特徴を持
っていることがわかった。
GTBH てん菜研究会第 13 回技術研究発表会簡易講演要旨
7.次世代シーケンサーを活用したテンサイ共生細菌の解析
○岡崎和之・高橋宙之・田口和憲・黒田洋輔・上田重文・池田成志
(農研機構北海道農業研究センター)
我々の研究グループではテンサイの微生物資材の開発に向けた研究開発を行っており、
テンサイの生育促進菌として複数の菌株を分離してきた。安定した効果が期待できる微生
物資材を開発するには、共生微生物相を解析することが重要である。近年、次世代シーケ
ンサー(NGS)を使用した受託解析サービスの低価格化が進んでおり、利用し易い環境が整
ってきている。NGS は従来法に比べて解析に要する時間や労力が少なく、得られるデータ
量は飛躍的に多い。今回の発表では、細根の共生細菌相の経時的変化の解析結果を中心に
次世代シーケンサーのテンサイ共生細菌相解析への応用事例を紹介する。
本成果は農林水産省の「農食研究事業(26065B)
」で得られた成果である。
8.てん菜移植栽培における省力・低コスト化推進のための栽植密度低減栽培と問題
点
○ 鷹田秀一 1,2・渡部敏裕 2・大崎満 2
(1北海道地域農業研究所、2北海道大学大学院農学院)
テンサイ移植栽培では多くの労働力とコストを要することから、安定した作付け確保の
ためには一層の省力化と収益性の向上が切望されている。栽植密度低減栽培により苗の生
産管理コスト低減や運搬・定植作業の効率化が期待できるが、一方製糖工程に悪影響を与
える非糖分が大きく上昇する問題が認識されている。H1,H2 年の2カ年十勝地方 31 の同一
農家で実施した栽植密度試験データより、直線回帰式を用い粗植による非糖分含量レベル
や非糖分増加量を算出し土壌分析値との関連性を検討した。菜根中のカリウム含量は糖蜜
糖分に最も影響を与えるが、2カ年ともにカリウム含量レベルは下層土のカリウム含量と
高い正相関関係が確認された。またナトリウム含量は作土層の苦土加里比と正相関が確認
され、粗植によるナトリウム含量増加程度は苦土加里比と負相関関係が認められた。
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9.直播栽培と移植栽培におけるテンサイ品種の収量反応
〇池谷聡
(道総研北見農業試験場)
直播栽培に適する品種特性とは何かを考察するために、多収品種「リッカ」と高糖分品
種「アマホマレ」を直播と移植で栽培し、収量性を比較した。根重は、移植では「リッカ」
の方が重かったが、直播では両品種にほとんど差はなかった。一方根中糖分では、移植、
直播ともに「アマホマレ」の方が高かった。このため糖量は、移植では「リッカ」の方が
多いが、直播では「アマホマレ」が並からやや多い傾向となった。以上のように、移植と
直播では両品種の収量反応が異なった。このことから、移植で糖量の多い品種が必ずしも
直播で有利ではない可能性が示唆された。また「アマホマレ」の持つ特性の直播での優位
性を検討した。
10.JST CREST「農業ビッグデータ」の概要とてん菜の網羅的データ収集法に関す
る考察
〇平藤雅之
(農研機構北海道農業研究センター、筑波大生命環境科学研究科)
作物は環境の影響を受けて成長しているため、栽培管理、品種改良等では成長量、土壌
水分等を時系列的に測定し、複雑系現象として解析・評価・制御を行う必要がある。JST
CREST「農業ビッグデータ」
(フィールドセンシング時系列データを主体とした農業ビッグ
データの構築と新知見の発見、H27~32、研究代表者:平藤雅之)では、センサネットワー
ク、ドローン等を用いてデータを時系列的に収集し農業ビッグデータを自動構築するシス
テム及び新知見を探索するビッグデータ解析手法を開発している。新知見として、てん菜
の生育特性及び雑種強勢メカニズムの解明に向けた網羅的データ収集法について考察する。
GTBH てん菜研究会第 13 回技術研究発表会簡易講演要旨
11.てん菜育種における遺伝的変異は生育環境を変化させてきたか?
〇臼井靖浩・廣田知良・田口和憲・小南靖弘・下田星児・岡崎和之・黒田洋輔・
松平洋明・平藤雅之
(農研機構北海道農業研究センター)
作物にとって、取り巻く環境の変化は、生育・収量に大きな影響を及ぼすだけでなく、
作物自体も周辺環境に大きな影響を及ぼしている。作物や品種により、草姿や光合成能力
等は大きく異なり、土壌や大気といった周辺環境に及ぼす影響は異なる。しかし、これま
でてん菜の遺伝的背景が異なる系統間で、生育環境に及ぼす影響について明らかにした研
究は少ない。
本研究では、
遺伝的変異が周辺環境にどのような影響を及ぼすかを検討する。
12.アメリカ合衆国におけるテンサイの育種研究について
〇田口和憲
(農研機構北海道農業研究センター)
演者は、2014 年 10 月から農研機構の長期在外研究制度の下でウィスコンシン大学マデ
ィソン校においてトウモロコシのゲノム育種研究手法を習得してくる機会を得て、1 年間
アメリカ合衆国に滞在した。また、近年は、国際学会への参加を通じてアメリカ合衆国の
テンサイ育種研究者との交流も活発に行っており、ミシガン州ならびにカリフォルニア州
のてん菜生産地を訪問する機会を得た。そこで、アメリカ合衆国のテンサイ生産地の様子
や最近のアメリカ合衆国におけるテンサイ育種研究の動向について報告する。
GTBH てん菜研究会第 13 回技術研究発表会簡易講演要旨
13.ドイツ畑作地域における新たな集団的営農システムの取り組み
-作業受委託システムやトランスボーダーファーミングを中心に-
○若林勝史 1・鈴木剛 2・澁谷幸憲 1・吹上和義 3・成田勇治 3・横岡智 3
(1農研機構北海道農業研究センター、2道総研中央農業試験場、
3鹿追町農業協同組合)
北海道畑作地域では経営規模の拡大に伴い根菜類の作付減少が進行している。それら作
物の労働負担軽減を図るためにも、高性能大型機械の効率的運用が求められる。そこで、
南ドイツにおける農地の面的集積や機械共同利用、さらにマシネンリングやトランスボー
ダーファーミングといった農業機械の効率的運用を目指す集団的営農システムについて事
例調査し、その運営実態を明らかにした。調査の結果、そこでは農地の面的集積や共同利
用により機械の稼働率向上が図られ、機械運用コストの削減が図られていた。また、運営
にあたっては生産者らが主体的に関与するボトムアップ型の体制を特徴としていた。