〔Ⅰ―4〕月の公転軌道 〔月は、くねくね、くねりながら太陽の周りを公転する〕

平成 28 年 8 月 8 日
〔Ⅰ―4〕月の公転軌道
〔Ⅰ―4〕月の公転軌道
〔月は、くねくね、くねりながら太陽の周りを公転する〕
前岡光明
はじめに
月は地球の周りを公転運動している。そして、地球は太陽の周りを公転運動している。だから、
月は、重ねた銅線コイル(バネ)で円の形をなぞったように、あるいはテスト答案の赤ペンのハナ
マルのように、くるくる地球の周りを回りながら太陽の周りを回っていると考えたくなるが、そう
ではない。
月は、地球の外側(太陽と反対側)の満月の状態から前に出、内側の新月の状態から後ろに下が
って、再び外側に出る。そうやって地球にもつれながら、太陽の周りを公転している。太陽の周り
を公転する月の軌跡は、蛇がくねくね動いて砂地につけた跡のようである。
1 月の公転速度
月が地球の前へ出たり、後ろに下がったりする。
それは、月の公転速度が速くなったり遅くなったり変化するのだろうか?
太陽の周りの公転運動として見ると、角運動量保存の法則で、月が太陽に近づいた時に速度が速
まり、遠ざかった時は遅くなる傾向はあるはずである。でも、それは、わずかなものであろう。
地球の公転速度は平均 30km/sec、そして月が地球の周りを公転する平均速度は1km/sec である。
新月の時に月は地球の真横(内側)に居て速度は 30km/sec である。
それから、速度を減じて地球の真うしろにくると 30-1=29 km/sec になっている。
それから月は加速して真横(外側)の満月となった時の速度は 30km/sec、そして地球の前に出て
きたときの速度は 30+1=31 km/sec になっている。そして、減速して新月の 30km/sec となる。
しかし、これは、地球軌道に月の動きを投影した時の、月の見かけの速さであって、実際の月は
ほぼ等速で動いているはずである。
太陽の周りを回る月の公転速度は、地球軌道がすなおな円弧であるのに対し、月の軌道はくねく
ね小刻みにくねる分だけ距離が長いから、地球の公転速度 30km/sec を上回ろう。
それでは、どうして、月は速度を変えずに、地球の後になったり前になったり出来るのか?
2 月までの距離の変化
地球から月までの距離は、満月の時で 35.6 万㎞、新月の時で 40.7 万㎞である。その差は 10%も
ある。
満月の時は、外側にいる月を太陽と地球の両方が力を合わせて引き寄せるので、月は地球に近づ
く。新月の時は、太陽と地球は、間にいる月を反対側から引っ張り合うので、月は地球から離れる。
ということは、月は内側(太陽に近い方)を進むときは距離が長くなっているので時間がかかり、
それで遅れて地球の後に来る。反対に、外側を進むときは距離が短いから、地球の先に来るのだ。
月が地球に絡みながら太陽の周りを公転する動きを、私はなんとかイメージすることが出来る。
月は、蛇の頭がくねるように地球の前後を左右する。
しかし、火星のように二つの衛星がある場合は、彼らの動きをイメージし難しい。平面図に描い
た軌道は交差しているが、彼らは絶対に衝突しないのだ。
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平成 28 年 8 月 8 日
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3 二つの衛星の速度の違い
私は、ふと思った、火星の二つの衛星の絶対速度は、外側と内側とで、どちらが速いのか?
惑星と衛星の絶対速度を比べれば、例えば、地球と月では月のほうが速い。月は地球の周りをく
ねるから、公転運動の移動距離が大きく、その分、絶対速度が速くなる。
直感的には、外側にある衛星ほど絶対速度が速いように思える。
しかし、外側の衛星は内側の衛星に比べて、火星に対する公転速度は遅いという事実がある。
そして、太陽に対する公転運動を考えると、外側ほどくねる幅(振幅)が大きくなる。
でも、外側は内側に比べてくねる回数が少ない。
どちらが速いかは、簡単には決めつけられない。
以下に、このことを考察した。
公転運動の式 GM = rv2
(参考文献1「8.1 万有引力と遠心力」参照)
内側の衛星の半径r1、速度v1、外側の衛星でr2、v2とする。
中心星(火星)は共通だから、r1v12=r2v22 ――(1)
公転周期 T=2πr/v
速度と公転周期の関係は、v=2πr/T である。
v1=2πr1/T1
v2=2πr2/T2
これらを(1)に代入すると、
r1(2πr1/T1)2=r2(2πr2/T2)2
T12/T22 = r13/r23
∴ T2/T1 = (r2/r1)3/2 ――(2)
また、回転数(公転数)Nと公転周期Tの関係は、N=2πr0/T、である。
ただし、r0:中心星(火星)の公転半径
これらの衛星の縦方向の経路は、2πr0で、同じである。したがって、横方向の移動距離Lを比
べれば、その絶対速度の大小がわかる。
横方向の移動距離(累積) L=振幅×回転数=2r×N
内側の衛星
外側の衛星
振幅
2r1
2r2
公転周期
T1=2πr1/v1
T2=2πr2/v2
回転数
N1=2πr0/T1
N2=2πr0/T2
横方向の移動距離(累積) L1=2r1×N1
L2=2r2×N2
横方向の移動距離(累積)を比べる。
L1/L2=(2r1×N1)/(2r2×N2)
=(2r1×2πr0/T1)/(2r2×2πr0/T2)
=(r1/r2)×(T2/T1)
ここに(2)を代入。
3/2
=(r1/r2)×(r2/r1)
=(r2/r1)1/2
ここで、r2>r1だから、L1/L2>1 すなわち L1>L2
内側の衛星の横方向の移動距離(累積)のほうが長い。
すなわち、内側の衛星の絶対速度は、外側の衛星よりも速い。
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平成 28 年 8 月 8 日
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4 太陽から離れた位置の衛星たち
太陽から遠く離れた惑星の衛星の軌道は、太陽引力が弱いので、月の軌道のように内側に(引っ
張られて)膨らんでいないだろう。
そうすると、そのような衛星は、その惑星の前へ行ったり後ろに下がったり出来ないだろう。
そのような衛星は、内側と外側と半径が変わらずに、すなわち走行距離が同じでmどうやって惑
星と衝突せずに公転し続けることが出来るのだろうか?
でも、
衛星は遠心力で惑星と一定の距離を置いて釣り合っているのだから、
ぶつかるわけがない。
そのような衛星は、どのような仕組みで惑星の前へ出たり、後ろに下がったりするのだろうか?
これは、衛星の公転周期と惑星の公転周期のあいだに脈絡がないということだろうか?
私は、わからなくなった。
5 月は蛇の頭であること
「2.月までの距離の変化」で、
「月が地球に絡みながら太陽の周りを公転する動きを、私はなんと
かイメージすることが出来る。月は、蛇の頭がくねるように地球の前後を左右する」と書いた。
でも、これでは言葉が足りない。
蛇の頭は地球に同じ顔しか見せないのだから、蛇の頭はくねると同時に回転してなければならな
い。
遠くから、月の動いた軌跡だけを見たら、その動きは蛇の頭のようにくねくね左右に振れながら
前進していく。しかし、月は蛇の頭のように前を向いて前進しているのではなく、常に地球の方を
見ながら前進しているのだ。
それは、月は地球の周りを動いているから、見かけ上、月は自転しているのだ。
ややこしくなった。
あとがき
たくさんの衛星を従えた惑星の公転運動は、それらがもつれ合うようにして太陽の周りを回る。
それにリングもある。それら同士は絶対に(?)
、ぶつからないのだ。
でも、そこに逆行衛星が混じっていたら大変だ。逆行衛星は他の順行衛星に衝突することがある
のだろう。
これらの衛星の軌跡をシュミレーションした動画はおもしろいだろう。
キーワード: 月の軌跡、月の公転速度、公転周期、角運動量保存の法則、地球から月までの距離、
衛星の軌跡、衛星、二つの衛星、逆行衛星
参考文献:
1.
「古典力学による星形成論」(http://members2.jcom.home.ne.jp/ippei4/)(ヤフーなどでホーム
ページ「前岡光明の机の上」を検索してください)
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